カティア・ブニアティシヴィリ

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カティア・ブニアティシヴィリ
ხატია ბუნიათიშვილი
Khatia Buniatishvili
生誕 (1987-06-21) 1987年6月21日(36歳)
グルジア・ソビエト社会主義共和国バトゥミ
(現ジョージア (国)の旗 ジョージア(グルジア))
住居 フランスの旗 フランス
職業 クラシック ピアニスト
公式サイト khatiabuniatishvili.com
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カティア・ブニアティシヴィリグルジア語: ხატია ბუნიათიშვილი [xatʼia buniatʰiʃvili] ハティア・ブニアティシュヴィリ、Khatia Buniatishvili, 1987年6月21日-)は、ジョージア(グルジア)出身のピアニストフランスパリ在住。

人物・来歴[編集]

3歳の時に母親の下でピアノのレッスンを始めた [1]。幼少のころは母親から与えられたモーツァルトレクイエムを聞くことに熱中していた[2]。 6歳でトビリシ室内管弦楽団と初のコンサートを行い、10歳からヨーロッパウクライナアルメニアイスラエルアメリカ合衆国でコンサートを行った [3]。彼女は、ヴァイオリンを完璧なピッチで演奏できたにもかかわらずピアノを選び、姉のグヴァンツァと一緒にピアノを学び、連弾に興じていた [4]。 その間、1999年、12歳のときにミシェル・ソニーが主宰するSOSタレント財団において彼に師事 [5][6]。 トビリシ中央音楽学校を卒業後、2004年にトビリシ州立音楽院に入学[3]。その後、トビリシで行われたピアノコンクールでオレグ・マイセンベルクに見いだされ、ウィーン国立音楽大学へ転籍[7]

2008年、カーネギー・ホールでデビュー[8]。 2010年にボレッティ・ブイトーニ財団賞を受賞。BBCシリーズの新世代アーティストにも加わった [9]。 ウィーン楽友協会とウィーン・コンツェルトハウスにより2011-12シーズンのライジングスターとしてノミネートされ、2012年にはエコー・クラシック賞で最優秀新人賞を受賞した [10]パリ管弦楽団パーヴォ・ヤルヴィ指揮)、ロサンゼルス交響楽団ウィーン交響楽団フランス国立管弦楽団ダニエレ・ガッティ指揮)、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団等のオーケストラと共演してきた。また、ギドン・クレーメルルノー・カピュソン等のヴァイオリニストとも共演している [11]。 母国語であるグルジア語の他、フランス語英語ドイツ語ロシア語等を話す。

彼女はピアノを「音楽の孤独の象徴」と表現しており[12]、曲の解釈を非常に深く追求した、非常に技巧的な演奏を行う。その解釈に基づいた演奏については評価を二分する要因になっていることもあるが、協奏曲の演奏における指揮者とのインタビュー[2]にもあるように、オーケストラとの一体感は非常に高い。また、自身の容姿、演奏スタイル、音楽への取り組み方を全面に押し出した様々なモデル活動、トーク番組、ドキュメント番組にも積極的に取り組み、「ピアノ界のビヨンセ」と呼ばれたこともある[13]。2017年のフランスF2のドキュメンタリー番組"Stupéfiant!"は、「ブニアティシヴィリは自身の演奏のポリシーと魅力を世界中に余すところなく披露しているが、プーチンのいるロシアではそれを拒んでいる」と述べた。[14]。また、2017年7月に開催されたパリ祭についても、ゲルギエフが指揮を担当することになったため出演を断ったと伝えられた[15]。インタビューによるとゲルギエフがプーチン政権を後押ししていることがその理由であると述べている[16][17]

2010年、Sony Classicalと独占契約 [18]。 彼女の2011年のデビューアルバムはリスト生誕200周年を記念したものであり、ソナタロ短調愛の夢第3番ラ・カンパネッラハンガリー狂詩曲第2番メフィスト・ワルツが収録されている [19]。 このアルバムについて、Classic FMは「ブニアティシヴィリは若い頃のマルタ・アルゲリッチを彷彿する激しい気性と技法を持つ若いアーティストである」とアルバムのレビューで述べている [20]。 一方、グラモフォン誌はあまり印象を残していない。Jed Distlerはその批評において「愛の夢第3番は構成においてもリズムおいても曖昧である」と批評し、「彼女の特徴である落ちつかないリズム感、計算外の躍動感、全体的な無計画さも何度か聞いているうちに次第に薄れてくる」と述べている [21]。 この録音の後には、2012年にショパンのアルバムを出した。このアルバムには独奏曲とピアノ協奏曲第2番ヘ短調(パリ管弦楽団、パーヴォ・ヤルヴィ指揮)から構成された。ガーディアン誌は「これは今日の最もエキサイティングで技術的に才能のある若いピアニストが本心からストレートに弾いている」とレポートしている [22]。 一方、グラモフォンは、ピアノ協奏曲の録音について「休止の欠如と過度に速い演奏」と批判した [23]。 2014年には3枚目のアルバム”Motherland”をリリースした。彼女の以前のアルバムのように特定の作曲家を取り上げるのではなく、母国ジョージアの音楽を含む個人的に重要な曲によって構成され、彼女の母に捧げられた [24] [25]。 続いて2016年にムソルグスキー展覧会の絵』他を収録した4枚目のアルバム”Kaleidoscope”がリリースされた。また、ラヴェルとベートーヴェンのピアノ協奏曲のDVD/ブルーレイがリリースされた。

Art on Ice Tour 2014にて演奏(スウェーデンストックホルム)

また、欧州を中心に開催されているスケートのスポーツイベントとして2014年のArt on Ice Tour[26]および2016年のIce Legends[27] [28]においてスケーターの演技にあわせたピアノ演奏を行った。

初来日は2010年。ラ・フォル・ジュルネにおいてショパンを演奏し注目された。2012年10-11月、ギドン・クレーメル率いるクレメラータ・バルティカと来日共演[29][30]。2016年2月の来日の際には、NHK交響楽団と共演も行った[29][31]。2017年11月にも来日し、名古屋、東京、大阪、札幌でリサイタルを開催した他[29]新日本フィルハーモニー交響楽団[32]広島交響楽団とも共演した[33]

受賞歴[編集]

  • 2003年 ホロウィッツピアノコンクール特別賞 - エリザベス・レオンスカヤスカラシップ第1位[34]
  • 2005年 第3回トビリシ・インターナショナル・ピアノコンクール - 「芸術のための特別賞」特別賞「ジョージア・ベスト・ピアニスト」賞第2位[35]
  • 2008年 第12回アーサー・ルービンシュタイン国際ピアノマスターコンクール第3位 - 特別賞「ショパン最優秀奏者」と「聴衆者賞」[36]
  • 2010年 ボレッティ・ブイトーニ財団賞[3]
  • 2012年 エコークラシック新人賞(ピアノ部門)[37]
  • 2016年 エコークラシック賞ソロレコーディング(19世紀ピアノ部門)[38]

ディスコグラフィー[編集]

いずれもSony Classical からリリースされている。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ Khatia Buniatishvili Biography”. Official Website. 2014年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月20日閲覧。
  2. ^ a b NHK Eテレ クラシック音楽館「第1831回 定期公演 Bプログラム対談・パーヴォ×カティア シューマンのピアノ協奏曲」, 2016年5月15日放送。
  3. ^ a b c Borletti-Buitoni Trust: Khatia Buniatishvili Biography”. Borletti-Buitoni Trust website. 2014年5月20日閲覧。
  4. ^ Khatia Buniatishvili”. Verbier Festival. 2011年6月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月7日閲覧。
  5. ^ Michel-Sogny SOS Tarent Foundation”. 2017年6月20日閲覧。
  6. ^ Benefiz für Kinderdörfer”. 2017年6月20日閲覧。
  7. ^ レコード芸術, Vol. 62, No. 752, pp.14-17, 2013年5月
  8. ^ カティア・ブニアティシヴィリ・プロフィール・ミュージックプラント”. 2017年6月20日閲覧。
  9. ^ BBC Radio 3 New Generation Artist 2009 - 2011”. BBC Radio 3 website. 2017年6月13日閲覧。
  10. ^ Echo Klassik Newcomer of the Year 2012”. Echo Klassik. 2014年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月13日閲覧。
  11. ^ Khatia Buniatishvili Concert Schedule”. 2014年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月20日閲覧。
  12. ^ Khatia Buniatshvili”. BBC. 2010年12月7日閲覧。
  13. ^ Stupéfiant! La Beyoncé du piano”. France TV. 2017年3月27日閲覧。
  14. ^ Stupéfiant! La Beyoncé du piano”. France TV. 2017年11月16日閲覧。
  15. ^ ხატია ბუნიათიშვილმა ბასტილიის დღისადმი მიძღვნილ კონცერტში მონაწილეობაზე უარი გერგიევის გამო თქვა(カティア・ブニアティシヴィリ、パリ祭での演奏を拒否)”. On.ge. 2017年11月24日閲覧。
  16. ^ Khatia Buniatishvili über Menschenrechte(ブニアティシヴィリ:人権について)”. Kölner Treff. 2017年11月24日閲覧。
  17. ^ ბუნიათიშვილი: გერგიევთან არასდროს დავუკრავ, რადგან პუტინის პოლიტიკას უწევს პროპაგანდას(ブニアティシヴィリ:プーチンの政策を喧伝するゲルギエフとは決して演奏しない。)”. On.ge. 2017年11月24日閲覧。
  18. ^ “New Sony signing - Khatia Buniatishvili”. http://www.gramophone.co.uk/classical-music-news/new-sony-signing-khatia-buniatishvili 
  19. ^ Khatia Buniatishvili Chopin Album”. Sony Music Website. 2014年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月13日閲覧。
  20. ^ A name to remember”. Classic FM Music Magazine. 2017年6月13日閲覧。
  21. ^ Distler, Jed. “A pianist bound to raise eyebrows opts for a big-beast Lisztian debut”. Gramophone (September 2011) 
  22. ^ Pritchard, Stephen. “Khatia Buniatishvili: Chopin – review”. The Guardian. 2017年6月13日閲覧。
  23. ^ Nicholas, Jeremy. “Maverick pianist moves from Liszt to Chopin”. Gramophone (Awards 2012) 
  24. ^ Motherland Album”. 2014年5月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月13日閲覧。
  25. ^ Espinosa, Pablo (January 17, 2015). “Disquero: Joyas musicales talladas a mano” (Spanish). La Jornada (DEMOS Desarrollo de Medios, S.A. de C.V.): 16a. 
  26. ^ Art on Ice Tour 2014”. 2017年11月13日閲覧。
  27. ^ icelegens”. 主催者によるインスタグラム. 2017年11月13日閲覧。
  28. ^ アイスレジェンド2016”. swissinfo.ch. 2017年11月13日閲覧。
  29. ^ a b c 演奏会履歴”. 2017年6月13日閲覧。
  30. ^ サントリースペシャルステージ ギドン・クレーメル”. 2017年6月21日閲覧。
  31. ^ NHK交響楽団 第1831回 定期公演 B”. 2017年6月21日閲覧。
  32. ^ 新日本フィルハーモニー交響楽団・♯10 ルビー <アフタヌーン コンサート・シリーズ>”. 2017年11月14日閲覧。
  33. ^ 広島交響楽団コンサート一覧”. 2017年6月21日閲覧。
  34. ^ Khatia Buniatishvili”. medici.tv. 2016年6月6日閲覧。
  35. ^ Khatia Bunistishvili”. Musical Olympus Foundation. 2010年12月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月7日閲覧。
  36. ^ Khatia Buniatishili”. The Jerusalem International Chamber Music Festival. 2011年7月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月7日閲覧。
  37. ^ Khatia Buniatishvili receives an award at the Echo Klassik 2012”. Getty Images. 2016年6月6日閲覧。
  38. ^ ECHO Klassik Prize Winners 2016”. ECHO Klassik. 2017年11月14日閲覧。
  39. ^ 'Franz Liszt' Album Information”. 2017年6月13日閲覧。
  40. ^ 'Chopin' Album Information”. 2017年6月13日閲覧。
  41. ^ 'Motherland' Album Information”. 2017年6月13日閲覧。
  42. ^ 'Kaleidoscope' Album Information”. 2017年6月13日閲覧。
  43. ^ 'DVD/Blue-ray' Album Information”. 2017年6月13日閲覧。
  44. ^ 'Rachmaninoff' Album Information”. 2017年6月14日閲覧。
  45. ^ 'Schubert' Album Information”. 2019年2月22日閲覧。

外部リンク[編集]