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#転送 [[幾何学]]
'''離散幾何学'''(りさんきかがく、{{lang-en-short|discrete geometry}})または'''組合せ幾何学'''(くみあわせきかがく、{{lang-en-short|combinatorial geometry|links=no}})とは、[[離散数学|離散的]]な幾何的対象についての[[組合せ論|組合せ]]的な性質および構成手法について研究する[[幾何学]]の一分野である。離散幾何学のほとんどの問題は[[点 (数学)|点]]、[[直線]]、[[平面]]、[[円 (数学)|円]]、[[球面]]、[[多角形]]などの基本的な幾何的対象の[[有限集合|有限]]または[[離散空間|離散的]]な[[集合]]にまつわるものであり、この主題ではそれらが「どのように[[交叉 (集合論)|交叉]]するか」や「どのようにより大きな対象を[[集合の被覆|被覆]]しうるのか」といった組合せ的な性質に焦点を当てる。

離散幾何学は{{仮リンク|凸幾何学|en|convex geometry}}や[[計算幾何学]]と多くを共有するほか、[[有限幾何学]]、[[組合せ最適化]]、{{仮リンク|デジタル幾何学|en|digital geometry}}、{{仮リンク|差分幾何学|en|discrete differential geometry}}、{{仮リンク|幾何的グラフ理論|en|geometric graph theory}}、[[トーリック多様体|トーリック幾何学]]、{{仮リンク|組合せ位相幾何学|en|combinatorial topology}}とも近い関係にある。

== 歴史 ==
[[多面体]]や[[図形の敷き詰め]]は[[ヨハネス・ケプラー|ケプラー]]や[[オーギュスタン=ルイ・コーシー|コーシー]]のような人々によって長きにわたって研究されてきたが、現代的な離散幾何学の起源は19世紀後半である。初期に研究されたテーマは{{仮リンク|アクセル・テュー|en|Axel Thue|label=テュー}}による[[球充填#円充填|円充填]]の密度や、{{仮リンク|カール・テオドール・レイ|en|Theodor Reye|label=レイ}}と{{仮リンク|エルンスト・シュタイニッツ|en|Ernst Steinitz|label=シュタイニッツ}}による{{仮リンク|点と直線の配置|en|configuration (geometry)|label=射影配置}}、[[ヘルマン・ミンコフスキー|ミンコフスキー]]による{{仮リンク|数の幾何学|en|Geometry of numbers}}、そして、[[ピーター・ガスリー・テイト|テイト]]、{{仮リンク|パーシー・ジョン・ヒーウッド|en|Percy John Heawood|label=ヒーウッド}}、{{仮リンク|ヒューゴ・ハドウィガー|en|Hugo Hadwiger|label=ハドウィガー}}による[[四色定理|地図の彩色]]だった。

{{仮リンク|ラースロー・フェイェス・トート|en|László Fejes Tóth}}、[[ハロルド・スコット・マクドナルド・コクセター|H・S・M・コクセター]]、[[ポール・エルデシュ]]が離散幾何学の基礎を築いた<ref name = "Intuitive">{{Citation
| last = Pach
| first = János
| title = Intuitive Geometry, in Memoriam László Fejes Tóth
| publisher = Alfréd Rényi Institute of Mathematics
| year = 2008
| url = http://www.renyi.hu/conferences/intuitiv_geometry/|display-authors=etal}}
</ref><ref>
{{Citation
| last = Katona
| first = G. O. H.
| title = Laszlo Fejes Toth – Obituary
| journal = Studia Scientiarum Mathematicarum Hungarica
| volume = 42
| issue = 2
| pages = 113
| year = 2005
}}
</ref><ref name = "DiscreteGeom1">
{{Citation
| first = Imre
| last = Bárány
| author-link = Imre Bárány
| editor-last = Horváth
| editor-first = János
| contribution = Discrete and convex geometry
| title = A Panorama of Hungarian Mathematics in the Twentieth Century, I
| year = 2010
| pages = 431–441
| place = New York
| publisher = Springer
| isbn = 9783540307211
}}
</ref>。

== トピック ==

=== 多面体とポリトープ ===
{{main|多面体|ポリトープ}}
'''ポリトープ'''(超多面体)は平坦な縁を持つ幾何的対象である。これは任意の一般の次元数について存在する。[[多角形]]は2次元、多面体は3次元、[[多胞体]]は4次元のポリトープである。一部の理論ではこの概念がさらに一般化され、非有界な多面体({{仮リンク|無限胞体|en|apeirotope}}や[[図形の敷き詰め]])や{{仮リンク|抽象多面体|en|abstract polytope}}のような対象までもが含まれる。

離散幾何学においてポリトープを研究する切り口のいくつかを以下に挙げる。
* {{仮リンク|多面体組合せ論|en|polyhedral combinatorics}}
* {{仮リンク|格子凸多面体|en|Integral polytope}}
* [[エルハート多項式]]
* [[ピックの定理]]
* {{仮リンク|ハーシュ予想|en|Hirsch conjecture}}

=== 充填、被覆、敷き詰め ===
{{main|球充填|図形の敷き詰め}}
充填、被覆、そして敷き詰めは、いずれも一定の対象(典型的には円、球、タイル)をある規則にしたがって曲面や[[多様体]]上に配置する方法である。

'''球充填'''はある格納空間の中での互いに重なり合うことのない[[球面|球]]の配置である。球は全て同一の大きさであるものと考え、空間は3次元[[ユークリッド空間]]であることが普通であるが、異なる球や一般の次元のユークリッド空間(2次元なら[[球充填#円充填|円充填]]、高次元では[[超球]]充填)、あるいは{{仮リンク|双曲空間|en|hyperbolic space}}のような[[非ユークリッド幾何学|非ユークリッド]]空間を考慮するように[[パッキング問題|充填問題]]を一般化することもできる。

平面の'''敷き詰め'''とは、重なったり隙間ができたりしないように、タイルと呼ばれる単一または複数の幾何的図形を[[平面]]に貼ることである。これも高次元に一般化される。

この領域の具体的なトピックには以下が含まれる。
* [[球充填#円充填|円充填]]
* [[球充填]]
* [[ケプラー予想]]
* [[準結晶]]
* {{仮リンク|非周期タイリング|en|aperiodic tiling}}
* {{仮リンク|周期グラフ (幾何学)|en|Periodic graph (geometry)|label=周期グラフ}}
* {{仮リンク|細分割規則|en|subdivision rule}}

=== 構造の剛性と柔軟性 ===
{{main2|詳細は「{{仮リンク|構造剛性|en|structural rigidity}}」を}}
[[File:Structural rigidity basic examples.svg|thumb|150px|[[グラフ (離散数学)|グラフ]]が回転ヒンジで連結される棒として描かれている。左上の正方形で表された[[閉路グラフ]] {{math|C{{sub|4}}}} は左からの青い矢印の力で押し傾けて右上の平行四辺形にすることができるため、剛でないグラフ(flexible graph)である。下の三角形で表された {{math|K{{sub|3}}}} はどんな力を加えても形を変えないので、剛グラフ(rigid graph)である。]]
'''構造剛性'''は[[リンク機構]]や[[蝶番|ヒンジ]]のような関節で連結された剛体の複合物の可動性について説明する[[組合せ論|組合せ的]]な理論である。

この領域のトピックには以下が含まれる。
* {{仮リンク|コーシーの定理 (幾何学)|en|Cauchy's theorem (geometry)|label=コーシーの定理}}
* {{仮リンク|フレキシブル多面体|en|flexible polyhedron}}

=== 接続構造 ===
{{main2|詳細は「{{仮リンク|接続構造|en|incidence structure}}」を}}
[[File:Fano plane with nimber labels.svg|thumb|right|150px|接続構造の一例である[[ファノ平面]]。7つの点と7つの直線を持つ。]]
接続構造は、その公理的定義に見出せるように、({{仮リンク|アフィン平面 (接続幾何学)|en|affine plane (incidence geometry)|label=アフィン}}、[[射影平面|射影]]、{{仮リンク|メビウス平面|en|Möbius plane|label=メビウス}}などの)平面を一般化する。接続構造はそれらの高次元のものについても一般化するものであり、有限の構造は時に[[有限幾何]]と呼ばれる。

形式的には、'''接続構造'''とは3つ組
:<math>C=(P,L,I).\,</math>
のことである。ここで、{{mvar|P}} は「点」の集合、{{mvar|L}} は「直線」の集合、そして、{{math|''I'' &subseteq; ''P'' &times; ''L''}} は {{仮リンク|接続 (接続幾何学)|en|incidence (geometry)|label=接続}} 関係である。{{mvar|I}} の元は{{仮リンク|旗 (幾何学)|en|flag (geometry)|label=旗}}と呼ばれる。また、
:<math>(p,l) \in I,</math>
であるとき、点 {{mvar|p}} は直線 {{mvar|l}} 上にあるという。

この領域のトピックには以下が含まれる。
* {{仮リンク|点と直線の配置|en|configuration (geometry)}}
* {{仮リンク|直線アレンジメント|en|arrangement of lines}}
* {{仮リンク|超平面アレンジメント|en|arrangement of hyperplanes}}
* [[建物 (数学)|建物]]

=== 有向マトロイド ===
{{main2|詳細は「{{仮リンク|有向マトロイド|en|oriented matroid}}」を}}
'''有向マトロイド'''は、[[有向グラフ]]の性質や[[順序体]]上の[[線型空間]](特に{{仮リンク|順序線型空間|en|ordered vector space}})におけるベクトル同士の位置関係の性質を抽象化する[[数学的構造]]である<ref>[[Rockafellar]] 1969. Björner et alia, Chapters 1-3. Bokowski, Chapter 1. Ziegler, Chapter 7.</ref>。なお、通常の(非有向)[[マトロイド]]は、有向とは限らないグラフや順序づけられているとは限らない[[線型空間]]におけるベクトル同士の位置関係の性質を抽象化するものである<ref>Björner et alia, Chapters 1-3. Bokowski, Chapters 1-4.</ref><ref>マトロイドおよび有向マトロイドは他の数学的抽象概念をさらに抽象化したものであるため、ほぼ全ての関連書籍は一般向けではなく数理系の科学者向けに書かれている。<!-- 有向マトロイドについて学ぶには、[[d:Q102167693|ネーリング]]と[[アルバート・タッカー|タッカー]]による、有向マトロイドの考え方が吹き込まれた[[線型最適化]]の教科書を学び、その後に{{仮リンク|ギュンター・ツィーグラー|en|Günter M. Ziegler|label=ツィーグラー}}のポリトープについてのレクチャーに進むのが良い準備となる。 --></ref>。

=== 幾何的グラフ理論 ===
{{main2|詳細は「{{仮リンク|幾何的グラフ理論|en|geometric graph theory}}」を}}
'''幾何的グラフ'''とは[[頂点 (グラフ理論)|頂点]]や{{仮リンク|辺 (グラフ理論)|zh|邊 (圖論)|fr|Arête (théorie des graphes)|label=辺}}が[[幾何学|幾何的]]対象と関連付けられている[[グラフ (離散数学)|グラフ]]のことである。例えば、ユークリッドグラフ、[[多面体]]や[[ポリトープ]]の1-{{仮リンク|スケルトン (位相幾何学)|en|skelton (topology)|label=スケルトン}}、{{仮リンク|単位円板グラフ|en|unit disk graph}}、{{仮リンク|可視性グラフ|en|visibility graph}}が挙げられる。

この領域のトピックには以下が含まれる。
* [[グラフ彩色]]
* [[多面体グラフ]]
* {{仮リンク|ランダム幾何的グラフ|en|random geometric graph}}
* [[ボロノイ図]]と[[ドロネー三角形分割]]

=== 単体複体 ===
{{main|単体複体}}
'''単体複体'''とは[[点 (数学)|点]]、[[線分]]、[[三角形]]や、それらの高次元版である[[単体 (数学)|単体]]を同じ次元の面で貼り合わせることによって構成される、ある種の[[位相空間]]である。より抽象的な概念であり現代的な単体的ホモトピーの理論に現れる{{仮リンク|単体的集合|en|simplicial set}}と混同してはならない。単体複体の純粋に組合せ論的な対応概念は{{仮リンク|抽象単体複体|en|abstract simplicial complex}}である。{{仮リンク|Vietoris–Rips複体|en|Vietoris–Rips complex|label=ランダム幾何的複体}}も参照。

=== 位相的組合せ論 ===
{{main2|詳細は「{{仮リンク|位相的組合せ論|en|Topological combinatorics}}」を}}
[[位相幾何学]]に組合せ論の概念を用いた組合せ位相幾何学は、20世紀前半になると[[代数的位相幾何学]]へと発展した。

1978年、[[ラースロー・ロヴァース]]による[[クネーザーグラフ|クネーザー予想]]の証明によって、組合せ論の問題を解くために代数的位相幾何学の手法が用いられるという逆の状況が生じ、新たな'''位相的組合せ論'''の研究が始まった。ロヴァースの証明に用いられた{{仮リンク|ボルスク–ウラムの定理|en|Borsuk–Ulam theorem}}はこの新しい分野において重要な役割を果たしているほか、多くの等価・類似の命題が存在し、[[公平分割問題]]の研究に用いられている。

この領域のトピックには以下が含まれる。
* {{仮リンク|スペルナーの補題|en|Sperner's lemma}}
* {{仮リンク|正則地図|en|regular map (graph theory)}}

=== 格子と離散群 ===
{{main|格子 (数学)|離散群}}
'''離散群'''とは[[離散位相]]を備えた[[群 (数学)|群]]のことであり、この位相により[[位相群]]となる。また、ある位相群の'''離散部分群'''とは[[相対位相]]が離散であるような[[部分群]]のことである。例えば、(通常の[[距離空間|距離位相]]を伴う)[[整数]] '''Z''' の加法群は[[実数]] '''R''' の加法群の離散部分群となるが、[[有理数]] '''Q''' の加法群はそうではない。

[[局所コンパクト]]な位相群における'''格子'''とは[[商位相空間]]が有限な[[不変測度]]を持つ離散部分群のことである。'''R'''{{sup|{{mvar|n}}}} の部分群の特別な場合については、これは通常の幾何的概念としての格子にあたるものであり、格子の代数的構造と全ての格子の全体の幾何に対しての理解が比較的進んでいる。1950年代から1970年代にわたって得られた[[アルマン・ボレル|ボレル]]、{{仮リンク|ハリシュ=チャンドラ|en|Harish-Chandra}}、[[ジョージ・モストウ|モストウ]]、[[玉河恒夫|玉河]]、{{仮リンク|M・S・ラグナサン|en|M. S. Raghunathan}}、[[グレゴリー・マルグリス|マルグリス]]、{{仮リンク|ロバート・ジマー (数学者)|en|Robert Zimmer (mathematician)|label=ジマー}}の深い結果は、種々の例を提示するとともに理論の多くを[[局所体]]上の[[冪零群|冪零]]な[[リー群]]と{{仮リンク|半単純代数群|en|semisimple algebraic group}}の設定に一般化した。1990年代には{{仮リンク|ハイマン・バス|en|Hyman Bass|label=バス}}と{{仮リンク|アレクサンデル・ルボツキ|en|Alexander Lubotzky|label=ルボツキ}}が木格子の研究を創始し、現在も活発な研究分野である。

この領域のトピックには以下が含まれる。
* {{仮リンク|反射群|en|reflection group}}
* {{仮リンク|三角群|en|triangle group}}

=== デジタル幾何学 ===
{{main2|詳細は「{{仮リンク|デジタル幾何学|en|digital geometry}}」を}}
'''デジタル幾何学'''では、2Dや3Dの[[ユークリッド空間]]のオブジェクトを[[デジタイズ]]した[[画像]]や[[スケールモデル|モデル]]とみなされるような[[離散空間|離散]]集合(多くは離散[[点 (数学)|点]]集合)を取り扱う。

単純に言えば、'''デジタイズ'''とはオブジェクトをその点の離散集合に置き換えることである。テレビ画面や新聞で目にする画像も、コンピュータの[[ビットマップ画像#ラスター表現|ラスタ表示]]も、実は[[デジタル]]画像なのである。

主な応用領域は[[コンピュータグラフィクス]]や[[画像解析]]である<ref>[https://www.springer.com/us/book/9783319120980 Li Chen, Digital and discrete geometry: Theory and Algorithms, Springer, 2014. ]を参照。</ref>。

=== 差分幾何学 ===
{{main2|詳細は「{{仮リンク|差分幾何学|en|discrete differential geometry}}」を}}
'''差分幾何学'''とは[[微分幾何学]]の概念に対応する離散の概念の研究分野である。滑らかな曲線や曲面の代わりに、[[多角形]]や[[ポリゴンメッシュ|メッシュ]]、[[単体複体]]が登場する。コンピュータグラフィクスや位相的組合せ論の研究に用いられる。

この領域のトピックには以下が含まれる。
* {{仮リンク|離散ラプラス作用素|en|discrete Laplace operator}}
* {{仮リンク|外差分法|en|discrete exterior calculus}}
* [[和分差分学]]
* {{仮リンク|離散モース理論|en|discrete Morse theory}}
* {{仮リンク|スペクトル形状解析|en|spectral shape analysis}}

== 関連項目 ==
* ''{{仮リンク|Discrete and Computational Geometry|en|Discrete and Computational Geometry}}''(論文誌)
* [[離散数学]]
* [[ポール・エルデシュ]]

== 脚注 ==
{{reflist}}

== 参考文献 ==
* {{cite book |author=Bezdek, András |title=Discrete geometry: in honor of W. Kuperberg's 60th birthday |publisher=Marcel Dekker |location=New York, N.Y |year=2003 |isbn=0-8247-0968-3 }}
* {{cite book |author=[[Károly Bezdek|Bezdek, Károly]] |title=Classical Topics in Discrete Geometry |publisher=Springer |location=New York, N.Y |year=2010 |isbn=978-1-4419-0599-4 }}
*{{cite book |author=[[Károly Bezdek|Bezdek, Károly]] |title=Lectures on Sphere Arrangements - the Discrete Geometric Side |publisher=Springer |location=New York, N.Y |year=2013 |isbn=978-1-4614-8117-1}}
* {{cite book |last1=Bezdek|first1=Károly|last2=Deza|first2=Antoine|last3=Ye|first3=Yinyu|author-link1=Károly Bezdek|title=Discrete Geometry and Optimization |publisher=Springer |location=New York, N.Y |year=2013 |isbn=978-3-319-00200-2}}
* {{cite book |last1=Brass|first1=Peter|last2=Moser|first2=William|last3=Pach|first3=János|author-link3=János Pach|title=Research problems in discrete geometry |publisher=Springer |location=Berlin |year=2005 |isbn=0-387-23815-8 }}
* {{cite book |last1=Pach|first1=János|author-link1=János Pach|last2=Agarwal|first2=Pankaj K.|title=Combinatorial geometry |url=https://archive.org/details/combinatorialgeo0000pach|url-access=registration|publisher=Wiley-Interscience |location=New York |year=1995 |isbn=0-471-58890-3 }}
* {{cite book |author= [[Jacob E. Goodman|Goodman, Jacob E.]] and O'Rourke, Joseph |title=Handbook of Discrete and Computational Geometry, Second Edition |publisher=Chapman & Hall/CRC |location=Boca Raton |year=2004 |isbn=1-58488-301-4 }}
* {{cite book |last=Gruber|first=Peter M.|author-link=Peter M. Gruber|title=Convex and Discrete Geometry |publisher=Springer |location=Berlin |year=2007 |isbn=978-3-540-71132-2 }}
* {{cite book |author=Matoušek, Jiří |title=Lectures on discrete geometry |publisher=Springer |location=Berlin |year=2002 |isbn=0-387-95374-4}}
* {{cite book |author=[[Vladimir Boltyanski]], [[Horst Martini]], Petru S. Soltan |title=Excursions into Combinatorial Geometry |publisher=Springer |year=1997 |isbn=3-540-61341-2}}

{{数学}}
{{Geometry-footer}}
{{Normdaten}}
[[Category:数学の分野]]
[[Category:離散幾何学|*]]
[[Category:数学に関する記事]]

2023年7月8日 (土) 16:59時点における版

の集まりと対応する単位円板グラフ英語版

離散幾何学(りさんきかがく、: discrete geometry)または組合せ幾何学(くみあわせきかがく、英: combinatorial geometry)とは、離散的な幾何的対象についての組合せ的な性質および構成手法について研究する幾何学の一分野である。離散幾何学のほとんどの問題は直線平面球面多角形などの基本的な幾何的対象の有限または離散的集合にまつわるものであり、この主題ではそれらが「どのように交叉するか」や「どのようにより大きな対象を被覆しうるのか」といった組合せ的な性質に焦点を当てる。

離散幾何学は凸幾何学英語版計算幾何学と多くを共有するほか、有限幾何学組合せ最適化デジタル幾何学英語版差分幾何学英語版幾何的グラフ理論英語版トーリック幾何学組合せ位相幾何学英語版とも近い関係にある。

歴史

多面体図形の敷き詰めケプラーコーシーのような人々によって長きにわたって研究されてきたが、現代的な離散幾何学の起源は19世紀後半である。初期に研究されたテーマはテュー英語版による円充填の密度や、レイ英語版シュタイニッツ英語版による射影配置英語版ミンコフスキーによる数の幾何学英語版、そして、テイトヒーウッド英語版ハドウィガー英語版による地図の彩色だった。

ラースロー・フェイェス・トート英語版H・S・M・コクセターポール・エルデシュが離散幾何学の基礎を築いた[1][2][3]

トピック

多面体とポリトープ

ポリトープ(超多面体)は平坦な縁を持つ幾何的対象である。これは任意の一般の次元数について存在する。多角形は2次元、多面体は3次元、多胞体は4次元のポリトープである。一部の理論ではこの概念がさらに一般化され、非有界な多面体(無限胞体英語版図形の敷き詰め)や抽象多面体英語版のような対象までもが含まれる。

離散幾何学においてポリトープを研究する切り口のいくつかを以下に挙げる。

充填、被覆、敷き詰め

充填、被覆、そして敷き詰めは、いずれも一定の対象(典型的には円、球、タイル)をある規則にしたがって曲面や多様体上に配置する方法である。

球充填はある格納空間の中での互いに重なり合うことのないの配置である。球は全て同一の大きさであるものと考え、空間は3次元ユークリッド空間であることが普通であるが、異なる球や一般の次元のユークリッド空間(2次元なら円充填、高次元では超球充填)、あるいは双曲空間英語版のような非ユークリッド空間を考慮するように充填問題を一般化することもできる。

平面の敷き詰めとは、重なったり隙間ができたりしないように、タイルと呼ばれる単一または複数の幾何的図形を平面に貼ることである。これも高次元に一般化される。

この領域の具体的なトピックには以下が含まれる。

構造の剛性と柔軟性

グラフが回転ヒンジで連結される棒として描かれている。左上の正方形で表された閉路グラフ C4 は左からの青い矢印の力で押し傾けて右上の平行四辺形にすることができるため、剛でないグラフ(flexible graph)である。下の三角形で表された K3 はどんな力を加えても形を変えないので、剛グラフ(rigid graph)である。

構造剛性リンク機構ヒンジのような関節で連結された剛体の複合物の可動性について説明する組合せ的な理論である。

この領域のトピックには以下が含まれる。

接続構造

接続構造の一例であるファノ平面。7つの点と7つの直線を持つ。

接続構造は、その公理的定義に見出せるように、(アフィン英語版射影メビウス英語版などの)平面を一般化する。接続構造はそれらの高次元のものについても一般化するものであり、有限の構造は時に有限幾何と呼ばれる。

形式的には、接続構造とは3つ組

のことである。ここで、P は「点」の集合、L は「直線」の集合、そして、IP × L接続英語版 関係である。I の元は英語版と呼ばれる。また、

であるとき、点 p は直線 l 上にあるという。

この領域のトピックには以下が含まれる。

有向マトロイド

有向マトロイドは、有向グラフの性質や順序体上の線型空間(特に順序線型空間英語版)におけるベクトル同士の位置関係の性質を抽象化する数学的構造である[4]。なお、通常の(非有向)マトロイドは、有向とは限らないグラフや順序づけられているとは限らない線型空間におけるベクトル同士の位置関係の性質を抽象化するものである[5][6]

幾何的グラフ理論

幾何的グラフとは頂点中国語版フランス語版幾何的対象と関連付けられているグラフのことである。例えば、ユークリッドグラフ、多面体ポリトープの1-スケルトン英語版単位円板グラフ英語版可視性グラフ英語版が挙げられる。

この領域のトピックには以下が含まれる。

単体複体

単体複体とは線分三角形や、それらの高次元版である単体を同じ次元の面で貼り合わせることによって構成される、ある種の位相空間である。より抽象的な概念であり現代的な単体的ホモトピーの理論に現れる単体的集合英語版と混同してはならない。単体複体の純粋に組合せ論的な対応概念は抽象単体複体英語版である。ランダム幾何的複体英語版も参照。

位相的組合せ論

位相幾何学に組合せ論の概念を用いた組合せ位相幾何学は、20世紀前半になると代数的位相幾何学へと発展した。

1978年、ラースロー・ロヴァースによるクネーザー予想の証明によって、組合せ論の問題を解くために代数的位相幾何学の手法が用いられるという逆の状況が生じ、新たな位相的組合せ論の研究が始まった。ロヴァースの証明に用いられたボルスク–ウラムの定理英語版はこの新しい分野において重要な役割を果たしているほか、多くの等価・類似の命題が存在し、公平分割問題の研究に用いられている。

この領域のトピックには以下が含まれる。

格子と離散群

離散群とは離散位相を備えたのことであり、この位相により位相群となる。また、ある位相群の離散部分群とは相対位相が離散であるような部分群のことである。例えば、(通常の距離位相を伴う)整数 Z の加法群は実数 R の加法群の離散部分群となるが、有理数 Q の加法群はそうではない。

局所コンパクトな位相群における格子とは商位相空間が有限な不変測度を持つ離散部分群のことである。Rn の部分群の特別な場合については、これは通常の幾何的概念としての格子にあたるものであり、格子の代数的構造と全ての格子の全体の幾何に対しての理解が比較的進んでいる。1950年代から1970年代にわたって得られたボレルハリシュ=チャンドラ英語版モストウ玉河M・S・ラグナサン英語版マルグリスジマー英語版の深い結果は、種々の例を提示するとともに理論の多くを局所体上の冪零リー群半単純代数群英語版の設定に一般化した。1990年代にはバス英語版ルボツキ英語版が木格子の研究を創始し、現在も活発な研究分野である。

この領域のトピックには以下が含まれる。

デジタル幾何学

デジタル幾何学では、2Dや3Dのユークリッド空間のオブジェクトをデジタイズした画像モデルとみなされるような離散集合(多くは離散集合)を取り扱う。

単純に言えば、デジタイズとはオブジェクトをその点の離散集合に置き換えることである。テレビ画面や新聞で目にする画像も、コンピュータのラスタ表示も、実はデジタル画像なのである。

主な応用領域はコンピュータグラフィクス画像解析である[7]

差分幾何学

差分幾何学とは微分幾何学の概念に対応する離散の概念の研究分野である。滑らかな曲線や曲面の代わりに、多角形メッシュ単体複体が登場する。コンピュータグラフィクスや位相的組合せ論の研究に用いられる。

この領域のトピックには以下が含まれる。

関連項目

脚注

  1. ^ Pach, János (2008), Intuitive Geometry, in Memoriam László Fejes Tóth, Alfréd Rényi Institute of Mathematics, http://www.renyi.hu/conferences/intuitiv_geometry/ 
  2. ^ Katona, G. O. H. (2005), “Laszlo Fejes Toth – Obituary”, Studia Scientiarum Mathematicarum Hungarica 42 (2): 113 
  3. ^ Bárány, Imre (2010), “Discrete and convex geometry”, in Horváth, János, A Panorama of Hungarian Mathematics in the Twentieth Century, I, New York: Springer, pp. 431–441, ISBN 9783540307211 
  4. ^ Rockafellar 1969. Björner et alia, Chapters 1-3. Bokowski, Chapter 1. Ziegler, Chapter 7.
  5. ^ Björner et alia, Chapters 1-3. Bokowski, Chapters 1-4.
  6. ^ マトロイドおよび有向マトロイドは他の数学的抽象概念をさらに抽象化したものであるため、ほぼ全ての関連書籍は一般向けではなく数理系の科学者向けに書かれている。
  7. ^ Li Chen, Digital and discrete geometry: Theory and Algorithms, Springer, 2014. を参照。

参考文献