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'''気分安定薬'''(きぶんあんていやく、mood stabilizer)は、激しい持続的な気分の変化を特徴とする[[気分障害]]、典型的には[[双極性障害]]の治療に用いられる{{仮リンク|精神科の薬|en|psychiatric medication}}である。ムードスタビライザー。
'''気分安定薬'''(きぶんあんていやく、mood stabilizer)は、激しい持続的な気分の変化を特徴とする[[気分障害]]、典型的には[[双極性障害]]の治療に用いられる{{仮リンク|精神科の薬|en|psychiatric medication}}である。ムードスタビライザーとも呼ばれる


==用途==
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:徐放性製剤(デパケンR)としても入手できる。この薬は、特にパルプロ酸を摂取したとき強く胃を刺激する。[[:en:Liver function tests|肝機能]]と[[全血球計算]]([[:en:Full blood count|CBC]])を監視すべきである。
:徐放性製剤(デパケンR)としても入手できる。この薬は、特にパルプロ酸を摂取したとき強く胃を刺激する。[[:en:Liver function tests|肝機能]]と[[全血球計算]]([[:en:Full blood count|CBC]])を監視すべきである。
* '''[[ラモトリギン]]([[グラクソ・スミスクライン|ラミクタール]])'''
* '''[[ラモトリギン]]([[グラクソ・スミスクライン|ラミクタール]])'''
:双極性うつ病に特に有効である。通常の投与量は毎日100-200mgで、2週間ごとに25mgを増強できる。<ref>Healy D. 2005 Psychiatric Drugs explained 4th ed. Churchill Liviingstone: London p.110</ref> とても稀であるが命にかかわる可能性がある皮膚疾患の[[スティーブンス・ジョンソン症候群]]の兆候や症状を監視すべきである。
:双極性うつ病に特に有効である。通常の投与量は毎日100-200mgで、2週間ごとに25mgを増強できる。<ref>Healy D. 2005 Psychiatric Drugs explained 4th ed. Churchill Liviingstone: London p.110</ref> とても稀であるが命にかかわる可能性がある皮膚疾患の[[スティーブンス・ジョンソン症候群]]の兆候や症状を監視すべきである。2008年の[[出版バイアス]]の調査で急性のエピソードやラピッド・サイクルに有効性が見られなかった<ref>{{cite journal |author=Nassir Ghaemi S, Shirzadi AA, Filkowski M |title=Publication bias and the pharmaceutical industry: the case of lamotrigine in bipolar disorder |journal=Medscape J Med |volume=10 |issue=9 |pages=211 |year=2008 |pmid=19008973 |pmc=2580079}}</ref>
* '''[[カルバマゼピン]]([[ノバルティス|テグレトール]])'''
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:カルバマゼピンは[[白血球]]数を下げるので、CBCを監視すべきである。[[治療薬物モニタリング]]が必要とされる。カルバマゼピンは、2005年に[[アメリカ食品医薬品局]]によって双極性障害の治療に認可されたが、以前から広く用いられていた。
:カルバマゼピンは[[白血球]]数を下げるので、CBCを監視すべきである。[[治療薬物モニタリング]]が必要とされる。カルバマゼピンは、2005年に[[アメリカ食品医薬品局]]によって双極性障害の治療に認可されたが、以前から広く用いられていた。
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気分安定薬はたまに、リチウムと[[抗てんかん薬]]のひとつのように併用される。
気分安定薬はたまに、リチウムと[[抗てんかん薬]]のひとつのように併用される。

==有効性==
アメリカで[[アメリカ国立精神衛生研究所]]が出資した、4361人双極性障害の患者に対する大規模な試験であるSTEP-BD計画が実施された。STEP-BD計画における1,742を対象とした1年後の追跡調査で、23%(409人)だけが気分エピソードを体験せず、1つ以上の気分エピソードは32%(551人)で、また32%(551人)が脱落していた<ref name="pmid18198271">{{cite journal |author=Schneck CD, Miklowitz DJ, Miyahara S, ''et al.'' |title=The prospective course of rapid-cycling bipolar disorder: findings from the STEP-BD |journal=Am J Psychiatry |volume=165 |issue=3 |pages=370–7; quiz 410 |year=2008 |month=March |pmid=18198271 |doi=10.1176/appi.ajp.2007.05081484}}</ref>。

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==診療ガイドライン==
==診療ガイドライン==
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それでもなお、うつの相の期間に気分安定薬に追加で[[抗うつ薬]]がよく処方される。しかしながら、これはいくつかの危険性をもたらし、抗うつ薬は[[双極性障害|双極性患者]]に[[躁病]]、[[精神病]]、またほかの支障をきたす問題を誘発する—特に単剤で摂取した場合で、気分安定薬と併用した場合にも。うつ相の双極性障害を治療する抗うつ薬の有効性は未知である。
それでもなお、うつの相の期間に気分安定薬に追加で[[抗うつ薬]]がよく処方される。しかしながら、これはいくつかの危険性をもたらし、抗うつ薬は[[双極性障害|双極性患者]]に[[躁病]]、[[精神病]]、またほかの支障をきたす問題を誘発する—特に単剤で摂取した場合で、気分安定薬と併用した場合にも。うつ相の双極性障害を治療する抗うつ薬の有効性は未知である。


抗うつ薬が双極性患者に与えられた場合、いくつかの危険を招く。それらは急性の双極性うつ病と、再発防には効果がなく、ラピッド・サイクルの原因になる。ほかの治療や偽薬と比べて抗うつ薬には恩恵がないことを研究は示している。抗うつ薬はまた非致死的な自殺行動の高い比率につながる。再発は抗うつ薬による治療にも相関する。これは抗うつ薬単独で用いるよりも、気分安定薬と抗うつ薬を併用する場合に少なくなるだろう。いくつかの以前の研究からの証拠がラピッド・サイクルが抗うつ薬の使用に相関していることを示している。ラピッド・サイクルとは、双極性障害の人が1年以内に躁あるいはうつのような気分エピソードを4回以上経験した場合である。これらの問題は抗うつ薬の医薬品が広範な使用になってきて以来、広く認められるようになっている。抗うつ薬の医薬品で双極性患者を治療する際に、それらが引き起こす危険性に関して警告する必要がある。
抗うつ薬が双極性患者に与えられた場合、いくつかの危険を招く。それらは急性の双極性うつ病と、再発防には効果がなく、ラピッド・サイクルの原因になる。ほかの治療や偽薬と比べて抗うつ薬には恩恵がないことを研究は示している。抗うつ薬はまた非致死的な自殺行動の高い比率につながる。再発は抗うつ薬による治療にも相関する。これは抗うつ薬単独で用いるよりも、気分安定薬と抗うつ薬を併用する場合に少なくなるだろう。いくつかの以前の研究からの証拠がラピッド・サイクルが抗うつ薬の使用に相関していることを示している。ラピッド・サイクルとは、双極性障害の人が1年以内に躁あるいはうつのような気分エピソードを4回以上経験した場合である。これらの問題は抗うつ薬の医薬品が広範な使用になってきて以来、広く認められるようになっている。抗うつ薬の医薬品で双極性患者を治療する際に、それらが引き起こす危険性に関して警告する必要がある。


ラモトリギン、カルバマゼピン、バルプロとその他の気分安定薬と抗けいれん薬の使用は、うつ病を促進する慢性的な葉酸欠乏症を引き起こす可能性がある。同様に、「葉酸欠乏症は、うつ病の危険性を増加させたり、抗うつ薬の作用を軽減する可能性がある」<ref>Stephen M. Stahl, MD, PhD. Novel Therapeutics for Depression: L-methylfolate as a Trimonoamine Modulator and Antidepressant-Augmenting Agent. http://www.cnsspectrums.com/aspx/articledetail.aspx?articleid=1267.</ref>L-メチル葉酸(正式には5-MTHFあるいは[[レボフォリン酸]]として知られる)は、3つの中枢神経系の神経伝達物質の合成を促進する中枢性トリモノアミン調整因子である:ドーパミン、ノルエピネフリンとセロトニン。気分安定薬と抗けいれん薬は[[葉酸]]の吸収とL-メチル葉酸の生成を'''阻害する'''可能性がある。Lメチル葉酸が増強された医療向け食品は、抗うつの神経伝達物質の合成を促進することで、リチウムと抗うつ薬を含むこれらの医薬品の抗うつ作用を向上させる可能性がある。
ラモトリギン、カルバマゼピン、バルプロとその他の気分安定薬と抗けいれん薬の使用は、うつ病を促進する慢性的な葉酸欠乏症を引き起こす可能性がある。同様に、「葉酸欠乏症は、うつ病の危険性を増加させたり、抗うつ薬の作用を軽減する可能性がある」<ref>Stephen M. Stahl, MD, PhD. Novel Therapeutics for Depression: L-methylfolate as a Trimonoamine Modulator and Antidepressant-Augmenting Agent. http://www.cnsspectrums.com/aspx/articledetail.aspx?articleid=1267.</ref>L-メチル葉酸(正式には5-MTHFあるいは[[レボフォリン酸]]として知られる)は、3つの中枢神経系の神経伝達物質の合成を促進する中枢性トリモノアミン調整因子である:ドーパミン、ノルエピネフリンとセロトニン。気分安定薬と抗けいれん薬は[[葉酸]]の吸収とL-メチル葉酸の生成を'''阻害する'''可能性がある。Lメチル葉酸が増強された医療向け食品は、抗うつの神経伝達物質の合成を促進することで、リチウムと抗うつ薬を含むこれらの医薬品の抗うつ作用を向上させる可能性がある。

2013年1月5日 (土) 05:45時点における版

気分安定薬(きぶんあんていやく、mood stabilizer)は、激しい持続的な気分の変化を特徴とする気分障害、典型的には双極性障害の治療に用いられる精神科の薬である。ムードスタビライザーとも呼ばれる。

用途

双極性障害[1]の治療に用いられ、気分安定薬はうつの波を抑える。気分を安定化する薬はまた、境界性パーソナリティ障害[2]統合失調感情障害にも用いられる。

「気分安定薬」の用語は、機序ではなくむしろ効果の説明である。より正確な用語がこれらの薬剤を分類するのに用いられる。

一般的に気分安定薬に分類される薬を挙げる:

抗てんかん薬

「気分安定薬」として説明される多くの薬剤は抗てんかん薬に分類されている。「抗てんかん気分安定薬」("anticonvulsant mood stabilizers")の用語は、時としてこれらの種類を指すのに用いられる。[3]少なくとも、気分障害の治療に用いられている抗てんかん薬の大部分の機序の予備的理解であるが、しかし、このグループもまた、機序よりも効果によって定義されている。

徐放性製剤(デパケンR)としても入手できる。この薬は、特にパルプロ酸を摂取したとき強く胃を刺激する。肝機能全血球計算CBC)を監視すべきである。
双極性うつ病に特に有効である。通常の投与量は毎日100-200mgで、2週間ごとに25mgを増強できる。[4] とても稀であるが命にかかわる可能性がある皮膚疾患のスティーブンス・ジョンソン症候群の兆候や症状を監視すべきである。2008年の出版バイアスの調査で急性のエピソードやラピッド・サイクルに有効性が見られなかった[5]
カルバマゼピンは白血球数を下げるので、CBCを監視すべきである。治療薬物モニタリングが必要とされる。カルバマゼピンは、2005年にアメリカ食品医薬品局によって双極性障害の治療に認可されたが、以前から広く用いられていた。
オクスカルバゼピン(本邦未発売)には双極性障害に対するFDAの認可はない。それでも、良好な忍容性で双極性障害の患者の約半分に有効であると思われる。[6]
トピラマートには、双極性障害に対するFDAの認可はない。2006年のコクラン・コラボレーションは、双極性疾患のどの周期中にも、トピラマートの使用の推奨のための証拠は不十分であると結論を出した。[7]
リルゾールには、双極性障害に対するFDAの認可はない。この薬はよくルー・ゲーリッグ病に用いられるが、双極性障害の治療のための潜在的な候補でもある。リルゾールは、いくらかの最近の気分および不安障害の研究で抗うつ薬の特性を示している。リルゾールは、Husseini Manji医師と仲間によって双極性うつ病に対して試験された。彼らは、14名の急性うつになった双極性患者に対して同薬と同時にリチウムを8週間にわたって投与した。躁に切り替わる証拠もなく著しい改善が見られた。「これら結果は、リルゾールが双極性うつ病の被験者に抗うつ作用があったかもしれないことを示唆している」とチームは述べている。[8]肝炎のような肝疾患の患者は特に注意深く、定期的な肝機能検査を含む安全の監視を行い監視すべきである。
ガバペンチンには、双極性障害に対するFDAの認可はない。ランダム化比較試験はガバペンチンが治療に有効でないことを示唆しているが、多くの精神科医たちが処方し続け肯定的な報告がされ、それは「低品質」な文献レビューである。[9]

その他

リチウムは、アメリカ食品医薬品局によって初めて認可された「古典的」な気分安定薬で今なお治療によく用いられる。確実にリチウムの水準を治療域に保つために、治療薬物モニタリングが必要とされる:0.6もしくは0.8-1.2mEq/L(あるいはミリモル)。毒性の兆候や症状は吐き気、嘔吐、下痢および運動失調を含んでいる。[10]最も一般的な副作用は、傾眠と体重増加である。リチウム使用のまれな副作用は、視力障害、手のかすかな震え、少し体調が悪いと感じることである。一般に、これらの副作用はリチウムの治療開始から最初の数週間に生じる。これらの症状は用量の低減によって多くの場合改善できる。[11]自殺を含めた総死亡率が低いことも特徴である[12]

気分安定薬はたまに、リチウムと抗てんかん薬のひとつのように併用される。

有効性

アメリカでアメリカ国立精神衛生研究所が出資した、4361人双極性障害の患者に対する大規模な試験であるSTEP-BD計画が実施された。STEP-BD計画における1,742を対象とした1年後の追跡調査で、23%(409人)だけが気分エピソードを体験せず、1つ以上の気分エピソードは32%(551人)で、また32%(551人)が脱落していた[16]

2009年のコクラン共同計画のレビューは、維持療法ではオランザピン(ジプレキサ)よりもリチウムのほうが有効であった[17]

STEP-BD計画において、抗うつ薬を使用した場合のラピッド・サイクルの危険性が3.8倍であり抗うつ薬の使用の制限が示唆されている[16]。またSTEP-BDにおいて、気分安定薬に抗うつ薬を補助追加しても偽薬と違いがなかった[18]

診療ガイドライン

日本うつ病学会のガイドラインの推奨[19]
躁病エピソード 大うつ病エピソード 維持療法
最も推奨 リチウムと非定型抗精神病薬の併用(中等度以上)
リチウム(軽度)
リチウム
推奨 バルプロ酸
非定型抗精神病薬
バルプロ酸と非定型抗精神病薬の併用
クエチアピン
リチウム
オランザピン
ラモトリギン
ラモトリギン
オランザピン
クエチアピン
リチウムまたはバルプロ酸とクエチアピンの併用
リチウムとラモトリギンの併用
アリピプラゾール
リチウムとアリピプラゾールの併用
リチウムとバルプロ酸の併用
バルプロ酸
推奨されうる 気分安定薬2剤以上の併用
気分安定薬と非定型抗精神病薬の併用
電気けいれん療法
リチウムとラモトリギンの併用
電気けいれん療法
ガルバマゼピン
リスペンドン特効性注射剤(十分な心理教育を行ってもなお服薬不遵守の患者)
上記以外の気分安定薬同士、あるいは
気分安定薬と非定型抗精神病薬の組み合わせ
甲状腺ホルモン剤
非推奨 ラモトリギン
トピラマート
ベラパミルなど
三環系抗うつ薬の使用
抗うつ薬による単独治療など
抗うつ薬(特に三環系抗うつ薬)の使用
抗うつ薬単剤での治療など

抗うつ薬との関係

多くの気分安定薬は単に「抗躁」剤で、躁病および気分の循環と移行の治療に有効であり、しかしうつ病の治療には有効ではないこと意味する。例外として、炭酸リチウムは躁とうつの症状の両方を治療する。一方で、バルプロ酸カルバマゼピンのような抗躁剤は、リチウムが可能なようには直接にはうつを治療できず、躁から抜け出し気分が循環するのを予防して保つことによって、双極性患者のうつを防ぐのを助けると考えられている。

それでもなお、うつの相の期間に気分安定薬に追加で抗うつ薬がよく処方される。しかしながら、これはいくつかの危険性をもたらし、抗うつ薬は双極性患者躁病精神病、またほかの支障をきたす問題を誘発する—特に単剤で摂取した場合で、気分安定薬と併用した場合にも。うつ相の双極性障害を治療する抗うつ薬の有効性は未知である。

抗うつ薬が双極性患者に与えられた場合、いくつかの危険を招く。それらは急性の双極性うつ病と、再発予防には効果がなく、ラピッド・サイクルの原因になる。ほかの治療や偽薬と比べて抗うつ薬には恩恵がないことを研究は示している。抗うつ薬はまた非致死的な自殺行動の高い比率につながる。再発は抗うつ薬による治療にも相関する。これは抗うつ薬単独で用いるよりも、気分安定薬と抗うつ薬を併用する場合に少なくなるだろう。いくつかの以前の研究からの証拠がラピッド・サイクルが抗うつ薬の使用に相関していることを示している。ラピッド・サイクルとは、双極性障害の人が1年以内に躁あるいはうつのような気分エピソードを4回以上経験した場合である。これらの問題は抗うつ薬の医薬品が広範な使用になってきて以来、広く認められるようになっている。抗うつ薬の医薬品で双極性患者を治療する際に、それらが引き起こす危険性に関して警告する必要がある。

ラモトリギン、カルバマゼピン、バルプロとその他の気分安定薬と抗けいれん薬の使用は、うつ病を促進する慢性的な葉酸欠乏症を引き起こす可能性がある。同様に、「葉酸欠乏症は、うつ病の危険性を増加させたり、抗うつ薬の作用を軽減する可能性がある」[20]L-メチル葉酸(正式には5-MTHFあるいはレボフォリン酸として知られる)は、3つの中枢神経系の神経伝達物質の合成を促進する中枢性トリモノアミン調整因子である:ドーパミン、ノルエピネフリンとセロトニン。気分安定薬と抗けいれん薬は葉酸の吸収とL-メチル葉酸の生成を阻害する可能性がある。Lメチル葉酸が増強された医療向け食品は、抗うつの神経伝達物質の合成を促進することで、リチウムと抗うつ薬を含むこれらの医薬品の抗うつ作用を向上させる可能性がある。

機序

たいていの気分安定薬は、最古で最も有名な気分安定化の薬であるリチウムの重要な例外を除いて抗てんかん薬である。[要説明]

リチウム、バルプロとカルバマゼピンのようないくつかの気分安定薬の下流標的の候補はアラキドン酸カスケードである。[21]


関連項目

脚注

  1. ^ Texas State - Student Health Center”. Health Education Resource Center (2006年9月7日). 2008年8月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月31日閲覧。
  2. ^ NIMH and Borderline Personality Disorder”. The National Institute of Mental Health (2010年8月24日). 2011年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月31日閲覧。
  3. ^ Ichikawa J, Dai J, Meltzer HY (July 2005). “Lithium differs from anticonvulsant mood stabilizers in prefrontal cortical and accumbal dopamine release: role of 5-HT(1A) receptor agonism”. Brain Res. 1049 (2): 182–90. doi:10.1016/j.brainres.2005.05.005. PMID 15936730. http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0006-8993(05)00716-X. 
  4. ^ Healy D. 2005 Psychiatric Drugs explained 4th ed. Churchill Liviingstone: London p.110
  5. ^ Nassir Ghaemi S, Shirzadi AA, Filkowski M (2008). “Publication bias and the pharmaceutical industry: the case of lamotrigine in bipolar disorder”. Medscape J Med 10 (9): 211. PMC 2580079. PMID 19008973. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2580079/. 
  6. ^ Ghaemi SN, Berv DA, Klugman J, Rosenquist KJ, Hsu DJ (August 2003). “Oxcarbazepine treatment of bipolar disorder”. J Clin Psychiatry 64 (8): 943–5. doi:10.4088/JCP.v64n0813. PMID 12927010. 
  7. ^ Vasudev K, Macritchie K, Geddes J, Watson S, Young AH. Topiramate for acute affective episodes in bipolar disorder. Cochrane Database of Systematic Reviews 2006, Issue 1. Art. No.: CD003384. doi:10.1002/14651858.CD003384.pub2.
  8. ^ By JANE COLLINGWOOD.Emerging Bipolar Therapies.http://psychcentral.com/lib/2007/emerging-bipolar-therapies/.
  9. ^ Williams, John W.; Ranney, Leah; Morgan, Laura C.; Whitener, Lynn (2009). “How reviews covered the unfolding scientific story of gabapentin for bipolar disorder”. General Hospital Psychiatry 31 (3): 279–287. doi:10.1016/j.genhosppsych.2009.02.006. PMID 19410108.  編集
  10. ^ Marmol, F. (2008). “Lithium: bipolar disorder and neurodegenerative diseases Possible cellular mechanisms of the therapeutic effects of lithium”. Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry 32 (8): 1761–1771. doi:10.1016/j.pnpbp.2008.08.012. PMID 18789369.  編集
  11. ^ Kozier, B et al. (2008). Fundamentals Of Nursing, Concepts, Process, and Practice. London: Pearson Education. p. 189.
  12. ^ 日本うつ病学会 2012, pp. 11–12.
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  16. ^ a b Schneck CD, Miklowitz DJ, Miyahara S, et al. (March 2008). “The prospective course of rapid-cycling bipolar disorder: findings from the STEP-BD”. Am J Psychiatry 165 (3): 370–7; quiz 410. doi:10.1176/appi.ajp.2007.05081484. PMID 18198271. 
  17. ^ Cipriani A, Rendell JM, Geddes J (2009). Cipriani, Andrea. ed. “Olanzapine in long-term treatment for bipolar disorder”. Cochrane Database of Systematic Reviews (Online) (1): CD004367. doi:10.1002/14651858.CD004367.pub2. PMID 19160237. 
  18. ^ Sachs GS, Nierenberg AA, Calabrese JR, et al. (April 2007). “Effectiveness of adjunctive antidepressant treatment for bipolar depression”. N. Engl. J. Med. 356 (17): 1711–22. doi:10.1056/NEJMoa064135. PMID 17392295. 
  19. ^ 日本うつ病学会 2012, pp. 16–18.
  20. ^ Stephen M. Stahl, MD, PhD. Novel Therapeutics for Depression: L-methylfolate as a Trimonoamine Modulator and Antidepressant-Augmenting Agent. http://www.cnsspectrums.com/aspx/articledetail.aspx?articleid=1267.
  21. ^ Rao JS, Lee HJ, Rapoport SI, Bazinet RP (June 2008). “Mode of action of mood stabilizers: is the arachidonic acid cascade a common target?”. Mol. Psychiatry 13 (6): 585–96. doi:10.1038/mp.2008.31. PMID 18347600. 

参考文献