DECT
DECT(デクト、英語: Digital Enhanced Cordless Telecommunications、デジタル強化無線電気通信)とは、欧州電気通信標準化機構(英語: European Telecommunications Standards Institute:ETSI)が1988年に策定したデジタルコードレス電話規格である。
概要
[編集]規格はデジタルコードレス電話向けに開発されたが、IMT-2000の要求事項をも満たすため、国際的には携帯電話の技術的条件の一種である (IMT-FT)。
日本では、2010年(平成22年)10月26日に総務省令のデジタルコードレス電話の無線局の技術基準が改正[1][2]され、技術的条件の告示が制定[3]された。また、2011年(平成23年)3月に電波産業会 (ARIB) も標準規格[4]を策定した。技術的要件の文脈で、3G相当である事から日本向けDECTを「広帯域デジタルコードレス電話」と呼ぶ事もある(2G相当の自営PHSは「狭帯域デジタルコードレス電話」)[5]。
無線LAN (Wi-Fi) 使用周波数である2.4GHz帯(ISMバンド)と被らないため、混信の影響が少ない特徴を持つ。
用途
[編集]- 家庭用デジタルコードレス電話として固定電話に接続。
- ホームセキュリティ関連機器と電話機との連携。
- 事業所向けの内線電話に多数の自営基地局を設置して使用。
- 屋外で電気通信事業者の基地局と接続し、移動体通信として利用。
- 需要の少ない地域においての公衆交換電話網の代替。
- GSMとのデュアルモード端末による国際ローミング。
- いくつかの無線チャネルを束ねて無線アクセスに利用。
次世代DECT
[編集]次世代DECTとも呼ばれるCAT-iq (Cordless Advanced Technology - internet and quality) は、自営通信(家庭、事業所など)向けに高品質音声 (VoIP) やインターネットとの接続性を提供する。ブロードバンド回線に接続されたホームゲートウェイ等を親機とする。これまでコードレス電話市場にて培われた低コスト性、低消費電力性からセンサーネットワークに向けた仕様の制定も進行している。
アプリケーションは音声ストリーミングや内線通話、ビデオ会議など、無線LANが苦手としていた分野を想定しており、既に普及しているPCやゲーム機等の無線LANによる通信の置き換えを狙ったものではない[6]。IPベースのホームゲートウェイをベースとしてFixed Mobile Convergenceの一種とも捉えられている。また、日本国内においてはNext Generation Networkとの絡みもある。
IoT向けにはDECT ULE (Ultra Low Energy) という規格も策定されている[7]。
日本国内仕様
[編集]総務省令・告示にDECT方式の技術基準・技術的条件(後述)があることは、外国仕様のDECT方式のコードレス電話が日本国内で使用できることを意味するものではない。日本国内では、技術基準適合証明と技術基準適合認定の両者が認証された技適マークを表示した製品を使用しなければならない。なお、日本で許可された周波数帯は1893.5MHz - 1906.1MHz間の5波である[8]。
これに関連して、2012年(平成24年)2月14日、日本でのDECT普及促進のため、DECTフォーラム内に、その会員となっている日本企業7社(サジェムコム、ダイアログ・セミコンダクター、日本DSPグループ、日本電気、パナソニック システムネットワークス、ユニデン、ランティック ジャパン)からなるジャパンワーキンググループが設立された。その活動としては、例えば、一般消費者が小売店でDECT方式の製品を見たときに、容易にそれが判別できるような統一ロゴマークの制定と普及を進めていくことになっている[9][10]。ただし、DECTロゴがあるからと言ってWi-FiやPHSのように他社製品との相互接続性があるわけではなく、原則として自社のDECT方式対応機器相互のみの接続に限られる。
日本のDECTの技術的条件
[編集]- 周波数帯:1.9GHz (1880MHz - 1978MHz・2010MHz - 2025MHz)
- 通信方式:TDD-TDMA・自律分散型マルチチャネルアクセス無線
- 搬送波:間隔 1782kHz・伝送速度 1152kb/s・多重化チャネル数 12
- 変調方式:GMSK
- 音声符号化方式:32kb/s ADPCM (G.726)
- データ通信:回線交換・パケット通信(ISDNと共通のHDLCを元にしたLAPC)
- セル半径:25 - 100m
- トラフィック密度:10000アーラン/km2
脚注
[編集]- ^ 平成22年総務省令第93号による電波法施行規則改正
- ^ 平成22年総務省令第94号による無線設備規則改正
- ^ 平成22年総務省告示第389号 無線設備規則第49条の8の2第1項第1号イただし書等の規定に基づく時分割多元接続方式狭帯域デジタルコードレス電話の無線局等に使用する無線設備の技術的条件等(総務省電波利用ホームページ 総務省電波関係法令集)
- ^ ARIB STD-T101 時分割多元接続方式広帯域デジタルコードレス電話の無線局の無線設備
- ^ “sXGPはローカル5G導入へのファーストステップ ビー・ビー・バックボーンが打ち出した新戦略 | ビジネスネットワーク.jp”. businessnetwork.jp. 2020年10月22日閲覧。
- ^ 情報通信審議会 情報通信技術分科会 小電力無線システム委員会 第29回資料(2010年2月19日開催) (PDF) 総務省 - 情報通信審議会 - 会議資料
- ^ “DECTフォーラム J-DECT | ビジネスネットワーク.jp”. businessnetwork.jp. 2020年4月13日閲覧。
- ^ 平成14年総務省告示第129号 電波法施行規則第6条第4項第5号及び第6号の規定に基づくデジタルコードレス電話の無線局及びPHSの陸上移動局が使用する電波の型式及び用途等第1項第2号(総務省電波利用ホームページ 総務省電波関係法令集)
- ^ “1.9GHz帯コードレス電話のDECT Forum、新たな用途も視野に日本部会を設立”. EE Times Japan. (2012年2月17日)
- ^ DECT Forum Announces Newly Formed Japan Working Group (PDF)
参考文献
[編集]関連項目
[編集]- 移動体通信:規格の比較
- PHS
- ND16問題 - PHS/DECTコードレス親機の電波と、東経110度CSデジタル放送の特定チャンネルが干渉する問題。
- Generic Access Profile
- GSM Interworking Profile