混信

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混信(こんしん)とは、無線による放送無線通信において、同一周波数あるいは隣接周波数の他局の電波が混じり正常な受信(視聴や聴取)が困難になることを指す。

日本では、総務省令電波法施行規則第2条第1項第64号に「混信」を「他の無線局の正常な業務の運行を妨害する電波の発射、輻射又は誘導」と定義している。 そして、地上基幹放送および移動受信用地上基幹放送については、一定以上の電界強度を保証するため、総務省令基幹放送局の開設の根本的基準基幹放送局毎に放送区域を設定するものとしている。

ラジオ放送の混信[編集]

放送区域内では、他局と混信することなく、安定して聴取できることになっている。しかし、同一周波数や隣接する周波数に、他局が強力な電波を発している場合、ラジオ局のお膝元でも混信を起こすことがある。

日本での状況[編集]

中波放送[編集]

CBCラジオの1053kHzに対する以前の統一革命党の声放送(後に救国の声放送に改称。2003年(平成15年)8月廃局)や現在の朝鮮中央放送の混信は、放送区域の中京圏でも聞きづらい事がある。CBCラジオでは愛知県尾張北部(一宮市犬山市など)や岐阜市とその周辺の受信状況を改善するために、各務原市中継局(639kHz・500W)を新設したほどである。

敢えて放送区域外のラジオ放送、特に小出力局を聴取しようとする場合、混信との闘いになる。例えば、夜間の東京では、中波1098kHzを信越放送ラジオ福島郡山局が使っており、番組表を見比べたり、地元ニュースやローカルCMの違いで識別するしかない。さらに、距離的にもあまり離れていない和歌山放送岐阜放送は、共に県域放送であるが、親局同士が同一周波数1431kHzで放送(中継局では山陰放送が複数、ラジオ福島・長崎放送が1局ずつ使用)している事例もあり、これらの地元では他県局の聞き取りは不可能であり、遠方での受信も区別は困難である(指向性のあるアンテナを使っても、日本列島のほぼ中程にあるこの2局は、方位的に切り分けできない場合が多い。)。

なお、ユーラシア大陸に近い山陰地方鳥取県島根県山口県)や九州北西部(福岡県佐賀県北部・長崎県熊本県鹿児島県)、台湾に近い沖縄県瀬戸内海沿岸部では混信は発生しやすく、特に夜間、地元のラジオ放送でも聴き辛くなる事が多い。

対策として周波数の変更や中継局の設置の他には、FM中継(サイマル放送)がある。1991年(平成3年)11月にNHK沖縄県西表島祖納中継局として、12月に富山県北日本放送黒部市に新川局としてFMによる中継局を設置した。これ以降、東京都ではNHKが小笠原諸島の父島・母島両中継局、富山県では北日本放送が先述の新川中継局と砺波市に設置した砺波中継局、鹿児島県ではNHKが奄美諸島の一部中継局、沖縄県ではNHKが先島諸島の一部中継局と南大東中継局琉球放送ラジオ沖縄では全ての中継局で実施している。 2014年(平成26年)には、アナログテレビ放送の帯域を再利用するFM補完中継局として全国的に普及する方針が策定された。

この他、路側放送局の付近にAFN送信所がある場合、1620kHzでは混信を起こすことがある。これは、AFNの第2高調波(810kHz×2=1620kHz)が、路側放送の周波数と同じであるために発生するもので、対策としては1629kHzを使用することとしている。

FM放送[編集]

1992年(平成4年)1月にコミュニティ放送の制度が始まり、全国で次々と開局している。コミュニティ放送局に許される空中線電力は原則として最大20Wである。県域放送局の空中線電力は最大10kW~最小500W(親局)中継局では最大1kW~最小1W程度であり、コミュニティ放送局よりも電波がはるかに強い。

コミュニティ放送局の送信周波数が県域放送局のすぐ近くに割り当てられると、コミュニティ放送局から少し離れた地域では、県域放送局の電波により混信が発生する場合がある。例えばむさしのFM(東京都武蔵野市)は78.2MHz / 20Wで放送しているが、bayfm(※送信所は千葉県船橋市)は200kHz下の78.0MHz / 5kWで放送している。このため、エフエムむさしのを同局の放送区域である武蔵野市で受信する分には良好に受信できるが、少し離れた地域で聴こうとするとベイエフエムの強力な混信を受ける。

FM(周波数変調)の受信にはいわゆる弱肉強食特性がある。これは、同一または非常に近接した周波数の複数のFM電波を受信した場合、電波の弱い方が強い方にかき消されて聞こえなくなるという性質である。この良否を表すのがキャプチャーレシオである。

このため、コミュニティ放送局は県域放送局との混信により、聞こえにくくなるだけでなく、電波が届いていても全く聞こえなくなることも起こる。受信地点において、コミュニティ放送局の方角と県域放送局の方角とが十分に離れていれば、指向性アンテナの使用で混信を回避できる場合がある。

テレビ放送の混信[編集]

テレビ放送では通常、放送区域内では混信を起こさないようにチャンネルが割り当てられている(スピルオーバー潰しのために隣接県の放送局とあえて同一チャンネルにすることも多い。)。しかし、放送区域外の局を受信する場合、同一チャンネルの他局の電波と混信を起こすことが多々ある。総務省に混信が起きている旨相談しても放送区域外であることを理由に混信とは認めてもらえない。このため現状ではアンテナの指向性でしか回避する方法がない。

放送区域内であっても近隣都道府県の中継局の電波が混信してしまう事がある。

日本での状況[編集]

地上デジタルテレビ放送では、適正にチャンネルが割り当てられていれば混信の影響を受けにくい。受信機であるテレビ側においてデジタル信号に基づく訂正機能が働くことも大きい。ただ、著しい外部電波の影響を受けるとベリノイズが発生したり、場合によっては全く視聴できなくなる。

これに対して、従来の地上アナログ放送は混信の影響を非常に受けやすいものであった。

混信すると、画面に横線が入ったり、別の音声がかぶったり、ビートノイズが混じったりする。場合によってはまったく目的の番組が受信できないこともある。太陽活動の活発な年や、春先から夏にかけては特にVHF帯Low側(1〜3ch)で電離層や気象条件の影響で混信が発生することがあった(本来届かない電波が届いてしまうため)。なおUHF帯(13〜62ch)は周波数が高く、電離層を突き抜けてしまう(反射されない)ため、この原因による影響は受けない。しかし、フェージングによる受信障害はUHFにおいても発生する。

瀬戸内海沿岸部や朝鮮半島に近い山陰地方から九州北部の日本海側では放送区域内であっても混信が起こりやすかった。関東地方では東部を中心にテレビ埼玉長野放送とが、KBS京都の場合、愛知県では三重テレビ親局33ch・浜松中継局テレビ静岡34ch・中京テレビの親局35chと、三重テレビも愛知東部や静岡県西部地方では浜松中継局テレビ静岡34chや静岡朝日テレビ親局33chと混信する事があった。この場合は混信していない他の中継局を視聴するか、電離層や気象条件が原因である混信は、収まるのを待つしかなかった。

弱肉強食特性は、映像と音声で別の局になる場合もある。大分市南部(稙田地区)で十文字原(本局・デジタルでも変わっていない)で受信すると、松山局・北九州局なども拾ってしまうが、10chで映像が「笑っていいとも」(テレビ西日本)・音声が「おもいッきりテレビ」(南海放送)あるいは、その逆という場合であった。

混信の影響を受けやすい地域の放送局では「外国電波の影響によりテレビの受信が困難になっている地域があります。ご了承ください。」などのテロップが挿入されることがあった(混信がひどい場合にはそのテロップの文字さえも判読困難な場合すらありえた。)。このような混信の影響を受けやすい地域では住民等の要望によりチャンネルが変更されたり、新たに中継局が設置されることもあった。

地上デジタルテレビ放送でもチャンネル割当てによる混信の影響が起きており、例えば茨城県南部ではNHK水戸放送局TOKYO MXと混信して受信が困難になる場合があったため、東京スカイツリーへの移転の際にTOKYO MXの親局チャンネルが変更されるなどチャンネルが変更されるケースも見られる。

無線通信の混信[編集]

国際電気通信連合憲章では、連合の構成国や構成国の無線局に対し、有害な混信を避けるように定めている(第6条、第45条等)。

日本では、電波法第56条に、無線局は他の無線局等に混信を与えずに運用しなければならないことが定められているほか、他の条文でも混信に関しての規定が定められている。

二周波複信で運用される業務無線の場合は、混信が発生しないように、使用周波数・サービスエリア・局数が管理されているので、混信なく通信できるようになっている。ところが、異常伝播発生時や高層ビルの高層階、山岳の山頂付近では、いわゆるスピルオーバーが発生し、混信となる。また、同一周波数または隣接周波数で不法無線局が運用されても混信となり、社会問題に発展することもある。

一周波単信で運用される業務無線の場合も、混信が発生しないように、使用周波数・サービスエリア・局数が管理されているが、移動局は他の移動局が送信中かどうかを知ることができないため、例えば、他の移動局が基地局と通信中で、かつ、その移動局の電波が弱くて受信できない時に、空き状態であると判断し送信すると、基地局に対して混信を発生させることになる。

アマチュア無線の場合は、総務省告示アマチュア局が動作することを許される周波数帯(通称、アマチュアバンド又はハムバンド)に基づき割り当てられた周波数で告示アマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別(通称、バンドプラン)により指定された電波型式を使用することが義務付けられているのを除き、局数・運用時間などを管理するルールや仕組みがないため、混信を防止する手立ては基本的に無い。VHF帯以上のFMでは決まった間隔をあけて切りの良い周波数を使うことが習慣化しており、混信が発生した際は譲り合いにより解決する(一定の周波数しか使えないわけではないので、逆に柔軟に運用ができるとも言える。)。SSBやCW(モールス符号による電信)などでは、一定の間隔をあけて送受信するなどと言う概念すら無く、自由に周波数を決めて交信が行われる。そのため全く同一周波数でなくても、隣接する周波数からの混信がある状態での通信が当たり前に行われており、混信がある中で遠距離の局や小出力の局と交信すると言うこと自体が、アマチュア無線家にとっては楽しみでさえある。

関連項目[編集]