2016年アメリカ合衆国大統領選挙におけるロシアの干渉

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2016年アメリカ合衆国大統領選挙におけるロシアの干渉(2016ねんアメリカがっしゅうこくだいとうりょうせんきょにおけるロシアのかんしょう)は、2016年アメリカ合衆国大統領選挙において共和党ドナルド・トランプ候補(当時)を勝利させるために、ロシア連邦サイバー攻撃SNSを使ったプロパガンダの手段を用いて行ったとされる一連の世論工作、選挙干渉を扱う。2017年になるとロシアゲートという表現でも報道されるようになった[1]

概要[編集]

ODNIは「最近のアメリカ選挙におけるロシアの活動と意図」の評価を断った。

アメリカ国家安全保障会議(NSC)欧州理事会のベンジャミン・リード元特別補佐官によると、2015年には既に、ロシア情報機関と関連が疑われるハッカー集団が民主党全国委員会(DNC)の情報システムに侵入。その後の、ヒラリー・クリントン候補に不利な電子メールの大量流出に繋がった[2]。 このデーターは官庁などの漏洩したデーターを収集するサイト、ウィキリークスにて公開されている。このサイバー攻撃からロシアの関与が疑惑として持たれていた。トランプ大統領は、介入の存在は認めてロシアに対する非難や制裁を行っているが、トランプ陣営とロシアの共謀は否定している[3]

時系列[編集]

2016年[編集]

10月、アメリカ国土安全保障省及び国家情報長官官房は、大統領選挙においてサイバー攻撃による妨害が行なわれていたことを認める声明を出した。

大統領選は11月8日に投票が実施された。トランプは総得票数で対立候補のヒラリー・クリントン民主党)より少なかったものの、獲得選挙人数では上回り、当選を決めた。

12月9日、米紙『ワシントン・ポスト』は、アメリカ中央情報局 (CIA) の秘密評価報告書を引用し、「サイバー攻撃はロシア政府機関のハッカー集団によるもので、ドナルド・トランプ側の勝利を支援するものである」と報道した[4]

12月29日、オバマ大統領(当時)は、ロシア政府が米大統領選に干渉するためサイバー攻撃を仕掛けたとして、アメリカ駐在のロシア外交官35人をペルソナ・ノン・グラータとして国外退去処分、2つのロシア関連施設閉鎖など新たな制裁措置を発令。これに対してロシア政府は反発したほか、トランプ陣営も「ロシアが攻撃した証拠はない」と表明したものの[5]、トランプ側は2017年1月8日になって「プーチン大統領がサイバー攻撃を指示した」とする報告書を「受け入れる」との声明を出した[6]

2017年[編集]

1月20日、トランプ大統領が就任した。以降はトランプ政権下の動きである。

2月13日、マイケル・フリン国家安全保障問題担当大統領補佐官が辞任。辞任理由は、前年12月、民間人の立場でロシアの駐米大使とロシアへの制裁をめぐって協議したこと(ローガン法に抵触する可能性)、また、その事実を隠していたことにあった[7]

5月9日、トランプ大統領は、ジェームズ・コミー連邦捜査局 (FBI) 長官を解任した。この背景として、「FBI長官がロシアの選挙介入とトランプ氏の選挙活動との共謀の可能性に関して捜査していたことにある」との報道もなされた[8]。後日、トランプ大統領は、解任理由として「目立ちたがり屋で、組織を混乱させていた」ことを挙げている[9]

5月17日、アメリカ司法省は、トランプ大統領の陣営がロシアによるサイバー攻撃などに関与したのではないかとされる疑惑に関し、ロバート・ミュラー元連邦捜査局長官を特別検察官英語版に任命した[10]

5月23日、CIA前長官ジョン・ブレナンはトランプ政権がロシアと結託していた根拠と情報があると、下院情報委員会で証言した。[11]

7月26日、FBIは、昨年夏までトランプ大統領の選挙対策本部長だったポール・マナフォートの自宅を家宅捜索した。税金関連の書類や外国金融機関の取引記録を探していたという[12]

8月3日、ミュラー特別検察官が首都ワシントン大陪審を招集したことが明らかになった。大陪審はトランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニアらがロシア人弁護士と面会した問題を巡って召喚状を出したが、召喚対象は明らかになっていない[13]

フェイスブック社は9月6日、ロシア国内から運営されていた約470件のアカウントを閉鎖したと明らかにし、ロシアによる選挙干渉疑惑を捜査するアメリカ政府当局に報告した。大統領選挙やそこでの候補者、投票について直接言及はしていなかったものの、銃規制などでアメリカ社会を分断するような政治広告を2017年5月までの2年間で約3000件掲載したという[14]

10月30日、ミュラー特別検察官がマナフォート元選対本部長と、マナフォートのビジネスパートナーでトランプ陣営ではマナフォートの代理人を務めたリック・ゲーツ英語版の2人をマネーロンダリングや脱税など12の罪で、トランプ陣営で外交顧問だったジョージ・パパドプロスを偽証の罪でそれぞれ起訴した[15][16]。また、12月1日には、フリン前国家安全保障問題担当大統領補佐官を連邦捜査局に対する偽証の罪で起訴した[17][18][19]

2018年[編集]

2月16日、ミュラー特別検察官はロシアの個人13人と企業3社を起訴したと発表した。ソーシャルメディアTwitterFacebook)でアメリカ人になりすましたアカウントを作り、世論工作を行った容疑[20]。容疑者達は政治集会やソーシャルメディアでフェイクニュースを流布するなど、トランプ政権に繋がりのある人物を複数回接触していたことが明らかとなっている[21][22]

3月15日にトランプ政権は、選挙介入などを理由にロシアの5団体と個人19人に制裁を科した。その多くはウクライナ紛争への関与なども含めて既に制裁対象となっており、ロシアの2大情報機関であるロシア連邦保安庁 (FSB) とロシア連邦軍参謀本部情報総局 (GRU) が含まれる[23]

6月8日、ミュラー特別検察官はマナフォート元選対本部長を司法妨害罪で追起訴し、政治コンサルタントのコンスタンティン・キリムニック英語版を同罪で起訴した。マナフォート被告は自身のマネーロンダリングと銀行詐欺の公判における証人2人に対しキリムニック被告を通じて接触し、偽証するよう働きかけていたという[24][25]

6月15日、ワシントン連邦地裁はマナフォート元選対本部長の保釈取り消しと収監を命じ、同日中に収監された[26]

7月13日、ミュラー特別検察官は民主党関係施設などをサイバー攻撃を行ったとして、GRUの情報当局者12人を起訴した[27]

8月21日、バージニア連邦地裁の陪審はマナフォート元選対本部長の審理で、起訴された18の罪のうち脱税や銀行詐欺など8つの罪について有罪の評決を下した[28]。また同日、ニューヨーク連邦地裁では、トランプ大統領の元個人弁護士のマイケル・コーエン英語版が、捜査当局との司法取引に応じ選挙資金法違反を含む8つの罪について有罪を認め、トランプ大統領と不倫関係にあったとされるポルノ女優ら2人に対し、トランプ本人の指示で口止め料を払ったことも認めた[29]

欧州との連携[編集]

ロシアによる工作は、ヨーロッパ各国の選挙や政治でも指摘されている。米欧の超党派・官民が連携してこれに対応しようとする「Alliance for Securing Democracy」(ASD) というグループが活動している。このうち2016年米大統領選問題は、在米ドイツ系財団GMF (German Marshall Fund of the United States) を拠点とする「ハミルトン68」が担当している[30]

脚注[編集]

  1. ^ トランプ「ロシアゲート問題」がウォーターゲートより深刻である理由
  2. ^ 「大統領選、1年前から攻撃」米国家安全保障会議の元特別補佐官がロシア・ハッカー軍団の攻撃を明らかに『産経新聞』朝刊2017年11月27日
  3. ^ トランプ氏ツイート連発、ロシアとの共謀否定ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版(2018年2月19日)2018年3月25日閲覧
  4. ^ トランプ氏がロシアのサイバー攻撃が米国大統領選挙に与えた影響に再度、疑問を投げかける 新華社日本語版(2017年1月5日)2017年5月23日閲覧
  5. ^ ロシア外交官35人追放 オバマ氏、大統領選干渉に対抗 日本経済新聞(2016年12月30日)2017年5月23日閲覧
  6. ^ トランプ氏、ロシアの関与認める サイバー攻撃日本経済新聞(2017年1月9日)2017年5月23日閲覧
  7. ^ フリン米大統領補佐官が辞任 The Huffington Post(2017年2月14日)2017年5月23日閲覧
  8. ^ トランプ米大統領、コミーFBI 長官を更迭 The Japan Times(2017年5月19日号)2017年5月23日閲覧
  9. ^ FBI前長官は「目立ちたがり屋」 FNN(2017年5月12日)2017年5月23日閲覧
  10. ^ 特別検察官に元FBI長官…ロシアゲート疑惑 読売新聞(2017年05月18日)2017年5月23日閲覧
  11. ^ トランプ陣営のロシア疑惑捜査「十分根拠ある」=前CIA長官BBCニュース日本語版(2017年5月24日)2018年5月25日閲覧
  12. ^ 米FBI、元トランプ選対委員長を未明に家宅捜索”. BBC (2017年8月10日). 2017年8月11日閲覧。
  13. ^ ロシア疑惑で大陪審 特別検察官が招集 米メディア報道”. 日本経済新聞 (2017年8月4日). 2017年8月4日閲覧。
  14. ^ フェイスブック、ロシア関連の偽アカウント500件閉鎖”. 『日本経済新聞』夕刊 (2017年9月7日). 2017年9月8日閲覧。
  15. ^ “米特別検察官、トランプ陣営元選対幹部2人を起訴 元顧問も偽証認める”. ロイター. https://jp.reuters.com/article/usa-trump-russia-idJPKBN1CZ203 2017年10月30日閲覧。 
  16. ^ “トランプ大統領、元外交政策顧問のパパドプロス被告は「うそつき」”. ブルームバーグ. https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-10-31/OYP42W6JTSE901 2017年12月2日閲覧。 
  17. ^ “訴追のフリン氏、司法取引で捜査協力の意向 ロシア疑惑”. 時事通信. http://www.asahi.com/sp/articles/ASKD22161KD2UHBI001.html 2017年12月2日閲覧。 
  18. ^ “トランプの元選対本部長への12の罪状”. Onebox News. (2017年10月31日). http://oneboxnews.com/articles/manaforts-12-charges-2017-10 2018年6月17日閲覧。 
  19. ^ “トランプ陣営の元選対本部長ポール・マナフォートを訴追へ”. Onebox News. (2017年10月30日). http://oneboxnews.com/articles/prosecuted-paul-manafort-2017-10 2018年6月17日閲覧。 
  20. ^ 米特別検察官、ロシア人13人を起訴 大統領選干渉容疑『朝日新聞』朝刊2018年2月17日(2018年2月17日閲覧)
  21. ^ モラー特別検察官、ロシア人13人訴追-トランプ陣営支援で選挙干渉
  22. ^ “特別検察官が2016年大統領選への干渉の罪で初めての起訴”. Onebox News. (2018年2月17日). http://oneboxnews.com/articles/russians-indicted-new-milestone-2018-2 2018年6月17日閲覧。 
  23. ^ トランプ政権、選挙介入でロシアに制裁フランス通信社日本語サイト(2018年3月16日)2018年3月25日閲覧
  24. ^ “ロシア疑惑、証人への不当干渉でマナフォート被告ら2人を起訴”. AFPBB NEWS. (2018年6月9日). http://www.afpbb.com/articles/-/3177849?act=all 2018年6月9日閲覧。 
  25. ^ “特別検察官はトランプ陣営元選対本部長を司法妨害で追起訴”. Onebox News. (2018年6月11日). http://oneboxnews.com/articles/mueller-captures-manafort-and-kilimnik-2018-6 2018年6月17日閲覧。 
  26. ^ “証人買収でトランプ陣営元選対本部長の保釈取り消し収監へ”. Onebox News. (2018年6月16日). http://oneboxnews.com/articles/paul-manafort-sent-to-jail-2018-6 2018年6月17日閲覧。 
  27. ^ “米特別検察官、ロシア軍関係者12人起訴 首脳会談直前”. 朝日新聞. (2018年7月14日). https://www.asahi.com/sp/articles/ASL7G0QY3L7FUHBI04F.html 2018年7月22日閲覧。 
  28. ^ “トランプ氏の元選対本部長に有罪評決 脱税や銀行詐欺”. BBC. (2018年8月22日). https://www.bbc.com/japanese/45267227 2018年8月27日閲覧。 
  29. ^ “不倫口止め料、トランプ氏の「指示」認める 元弁護士”. 朝日新聞. (2018年8月22日). https://www.asahi.com/sp/articles/ASL8Q2QR6L8QUHBI004.html 2018年8月27日閲覧。 
  30. ^ 【正論】加藤良三元駐米大使「ロシアゲート」の全体像を見よ『産経新聞』2018年3月21日