遅れネット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

遅れネット(おくれネット)とは、放送番組を、例えばそれを制作した放送局(発局)以外の放送局でも放送する(ネットする)時に、発局と同日・同時刻に放送するのではなく、発局の放送から数十分 - 数日、場合によっては数週間から数年の遅延を経て放送することである。

概要[編集]

遅れネットに対し、発局とネット局で同時に放送すれば同時ネットである。発局と同日・同時刻だとしても番組の内容が違えば同時ネットではない。極稀にだが、発局より早い先行ネットもある。遅れネットと先行ネットを合わせて時差ネットと言う。

また、必ずしもネットの場合に限らず時差放送とも言う。ディレイ放送遅延放送とも言うが、これには、(本放送と遅延放送の間ではなく)撮影と放送の間に遅れがある場合、つまり、生中継風の収録放送や、生放送の際にトラブル防止のため数秒から数分遅らせて放送することも含む。

遅れネットの場合、「この番組は○月○日に(制作局の放送局名又は制作局の所在する地域名)で放送されたものです」旨の断りを示すテロップを表示することがある[1]

遅れネットの場合は、同時ネット局とは放送時間帯が異なる場合も多々あるため[2]、番組によっては遅れネット局では放送時間帯を反映させたセリフや映像を差し替える例もある(お詫び放送で見られる)。

発局とは異なる系列のネット局で遅れネットが実施される場合もある。当該地域に系列局が存在しない場合に多く見られるが、中には当該地域に系列局が存在するにも関わらず別系列の局で実施される場合もある[3]

独立局を中心にBSデジタル放送局の番組が遅れネットされる例もあるが、放送局の運営元が地上波キー局のグループ内の別会社であることなどからネットワークの縛りがないためグループの親元のキー局とは別系列の局で遅れネットされることも少なくはなく、[4]関西の一部の独立局におけるテレビ東京系番組の購入制限の対象にもなっていない[5]

発局でローカル枠に当たる時間帯で放送されている場合や、発局の系列局が少ない(特にTXNネットワーク)などの理由から、同時ネット局よりも遅れネット局のほうが多い例もある。

遅れネット・遅れ放送の目的[編集]

編成の独自性[編集]

キー局とローカル局[編集]

日本の民間放送ネットワークは、いわゆるキー局ローカル局との上下関係によるものと見られがちであるが、日本では、経営の異なる放送事業者(各放送局)は互いに対等であり、あくまでも、放送事業者同士の契約(業務協定)によって成立しているものがネットワークである。すなわち、基本的に各放送局は独立した存在であり、基本協定(ネットワーク基本協定)においては、それぞれの自主編成権と放送免許条件は互いに尊重されることが大前提となっている。しかしながら現実問題として、東京都・大阪府と「それ以外の地域」の放送局では、特に番組制作能力などについて大きな差があることから、業務協定においては事実上、キー局とローカル局の主従関係が成立している。ただしこれについては民間放送業界内部でもネットワークの短所(ローカル局の個性が発揮されず、日本の放送の大原則である「地域放送」の存在意義そのものが問われるもの。)としてとらえられている[6]

ネットワークによる利便性は大きい(ナショナルスポンサーの全国展開要請に応じられる、番組制作費の回収や営業面で大きな長所があるなど。)ので、今日、ほとんどの放送局がいずれかのネットワークに属しているが、発局の番組を受けて同時刻に放送するか、あるいは放送しないのかといったことは、全て契約によるものであり、遅れネットもその契約の中に存在する[6]

具体的には、例えばキー局がその番組を放送する時間帯に、ローカル局の自社制作の番組が編成されたとき、あるいは複数の系列に属している放送局が一方の系列局の番組を受けて放送するといった編成がされたときにとられる方法で、裏送りのものを自社収録して後日放送する、あるいは番組素材を収録媒体として受け(テープネット)、放送するといったものが、遅れネットになる。

NHKの地方局[編集]

ネット放送とは元来、全く独立した放送局が同じ内容の放送をおこなうというものであるが、NHKの各地方局にも番組編成上、民放の「地域枠」「全国枠」に相当する枠がある。そのため、総合テレビでは地域枠を優先した結果として時差放送となることがある。 2020年3月から開始されたネット配信のNHKプラスでは、NHKの地方局で地方情報番組に差し替えいる場合は南関東の番組を視聴できる。

一例としては下記のような例がある。時間はいずれもJST

  • チコちゃんに叱られる!』 - 本来の放送時間である金曜日の20時 - 20時45分の枠が地域情報番組の定期放送枠だった名残で、地域情報番組に差し替えられることが珍しくないため、翌土曜日の8時15分 - 9時までの枠に予め全国同時放送の再放送が用意されている。
    • 実際、本来の時間帯に地域情報番組を編成した地方および放送局は、再放送の枠が本放送および遅れネットとして扱われており、番組終了間際の次回の放送時間帯告知テロップは、再放送の時間のみを表記したものに差し替えられていることが大半である。近畿では、2019年10月4日(5日)放送分から本来の時間帯での放送を開始した。
  • 月曜0時深夜アニメ枠 - 関西地方ではこの時間に『まちけん参上!』を放送していたため、2020年3月まで0時45分 - 1時10分に遅れネットだった。

同一事業者の別チャンネル[編集]

同一放送事業者が同じ放送区域の複数チャンネルで同じ番組を放送する場合でも、各チャンネルの編成の独自性が強いと、時差放送となる。

NHKの総合教育の間で稀に見られたが、多チャンネル化により、衛星波地上波の間などで増えてきた。

再放送(狭義には同一チャンネル内)の一種とも言える。

時差の調整[編集]

複数のタイムゾーンにまたがる国で、全国同時ではなく同じ地方時に放送するためには、タイムゾーンごとに1時間ずつ放送時刻を遅らせることになる。

アメリカ合衆国の場合、本土には4つのタイムゾーンがあるので、1時間ごとに遅らせれば、東部標準時帯が最速で、他は1・2・3時間遅れとなる。ただし実際には、東部中部山岳部標準時帯では同時ネットし太平洋標準時帯でのみ遅らせるなど、さまざまなパターンがある。

タイムシフトチャンネル[編集]

複数のチャンネルで同一内容(個々の番組ではなくチャンネル全体)を時間差で放送することがある。本放送を見られない視聴者を想定しているが、家庭用録画機器や見逃し動画配信の普及により、かつてより必要性は減っている。

多チャンネル化の進んだ国でよく行われている。日本では、地上デジタル音声放送試験放送のDRP大阪が4チャンネルを使って、2010年6月まで放送していた。

他言語での放送[編集]

報道番組など本来なら同時ネットしたい生放送番組を他言語で放送する場合、翻訳や権利上の都合で放送できない映像を編集するために1時間程度遅らせることがある。

日本ではNHKがBS1の海外ニュース番組で行われている。また、日本語国際放送のNHKワールド・プレミアムでも、オリンピック期間中はほとんどのニュース番組で、FIFAワールドカップ期間中は一部のニュース番組で権利上の都合で放送できない部分が多い映像を編集(部分削除)するために1時間程度配信を遅らせる措置がとられる(ただし、災害・地震・その他重大なニュースなどがあった場合は期間中であっても国内同時放送に変更される場合がある)。

遅れネットによる不都合[編集]

  • アニメ・特撮・ドラマでは、正月バレンタインデークリスマスなど特定の季節を舞台にしたシナリオ(劇中の季節)と、放送される時期が一致しない。これは、キー局および同時ネットでの本放送に合わせることを前提にしているためで、遅れネットによる季節のずれや不一致が考慮されていない(クリスマスのシナリオが正月 - 春に放送されることもある[7])。かつて放送の『愛の劇場』でも夏休み向け作品が遅れネット局では9月に放送されていた。
  • アニメの放送期間中に番組改編期をまたぎ、その時間帯がキー局でのバラエティ・ドラマ・ドキュメンタリーなどの放送枠と重複する場合、それらの同時ネットが優先されて最後まで放送されず打ち切りになる例がある[8]
  • キー局での放送終了後に、その番組に出演していた者が事件や事故などの不祥事刑事罰逮捕など)を受けた場合、または急死した場合[9][10]、はたまた番組自体に問題(悪質なやらせなどの発覚)が生じた場合、遅れ放送の地域では番組そのものが未放送となることがある。旅番組などにおいて放送終了後に地震台風などの自然災害で撮影先に重大な被害が生じた場合も同様である。
  • 2010年代後半になるとTVerなどによる番組の無料の見逃し配信が定着したが、キー局など制作局での放送日時を基準に無料の見逃し配信を行なっている番組については、同時ネットでない放送地域では完全に「先行配信」となり、遅れネットで放送する時期には、無料の見逃し配信が終了して、過去分の配信を行なっている配信サイトから有料で見逃し分を視ざるを得なくなったり、見逃し配信しか行っていない番組では、遅れネットで放送する時期に見逃し分が見れない。
  • フジテレビ系列及びTBS系列及びクロスネット局では一部時間帯はマルチ編成が実際されずに、遅れネット配信にしている事例がある。詳しくはマルチ編成の項を参考。

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ 局によっては「○月○日に(制作局の放送局名又は制作局の所在する地域名)で放送されました」と表示される所もある。
  2. ^ 例えば同時ネット局Aでは毎週土曜日18:00 - 19:00に放送しているが、遅れネット局Bでは毎週日曜日10:00 - 11:00に放送しているなど。
  3. ^ 3大都市圏の広域局の放送エリア内にある独立局で他地域の同系列局制作のローカル番組が遅れネットされたり、(例:『ピカルの定理』(深夜時代)・『たかじん胸いっぱい』・『ドラマ特区』)系列局がクロスネット局であるために同局で放送しきれない番組が別系列の局に譲渡され遅れネットされるパターンが多い。(例:福井県と宮崎県における『スーパー戦隊シリーズ』)また近年ではキー局で放送される深夜アニメにおいて、製作委員会側の意向でその地域に単独加盟の系列局があるにも関わらず別系列の局で遅れネットされる例が増えている。(例:『アサルトリリィ BOUQUET』)
  4. ^ 日本テレビ系のミヤギテレビやTBS系列の山陽放送でBSフジの『ガリレオX』が遅れネットされる等。
  5. ^ 例:KBS京都での『突撃!隣のスゴイ家』の遅れネット。
  6. ^ a b 『放送ハンドブック:文化をになう民放の業務知識』日本民間放送連盟編、東洋経済新報社、1992年3月16日(原著1991年5月23日)、第4刷 p248-251。ISBN 4-492-76085-7
  7. ^ 再放送および当該週が報道特別番組等にともなう放送順延で季節がずれる場合はこの限りではない。後者の場合は本放送でもこれが起こり得る例がある(『スイートプリキュア♪』で実例あり)
  8. ^ アニメ作品の玩具製造会社とのタイアップ化が進む現在では、玩具製造会社がメインスポンサーを務める全国ネットのアニメ番組が新たに編成されることでその枠にもともと編成されていた遅れネットのアニメ番組が打ち切られるという例も散見される。(例:『カミワザ・ワンダ』開始を受けた琉球放送の『新ウルトラマン列伝』打ち切り)
  9. ^ 近年では『志村でナイト』における2020年3月31日未明の沖縄テレビが該当。一方で出演者が急死した場合であっても放送を見送らずキー局での放送日と追悼コメントを記したテロップを付加した上で予定通り放送される例も少なくはない。(同じ『志村でナイト』における4月4日サンテレビが該当。)
  10. ^ 2020年5月には『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』が出演者の急死(自殺)により同様の事態が発生しているが、その自殺は後に番組自体の問題に起因するものであったことが判明している。

関連項目[編集]