豆汁

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左から豆汁と焦圏と辣絲。

豆汁(とうじゅう、中国語: 豆汁儿dòuzhīr)、酸豆汁儿suān dòuzhīr))は、緑豆を煮てから、すりおろして作った豆乳乳酸発酵させた、少し酸味のある飲料。北京の伝統的な栄養食品のひとつ。春雨の製造過程ででる上澄み液も利用する事が出来る。

概要[編集]

豆汁は、緑色をおびた灰色をしており、味にはわずかに酸味と渋みがある[1]。口当たりは滑らかで後味が長く残る[1]。米のとぎ汁にも似た臭いがあり、初めて飲む場合には酸味もあり腐敗したような味があって、飲み込むのも難しい[2]

北京では人気の高い軽食であり、豆汁と焦圈(ジャオジュエン、揚げドーナツ)は日常的に食されている[1]が、特に春や冬に食されている[2]。北京では「豆汁・焦圈・鹹菜絲」という言葉もあり、3つはいずれも欠かせない組み合わせとしされている[1][2]。豆汁を1杯、焦圈を数個、さくさくとした焦圈は豆汁の中に入れて食され、塩辛い味の漬物の千切りを加えることで、五味のうちの苦味を除いた酸味甘味辛味塩味の4つの味を味わえる[1][2]

もともとは、緑豆をすりつぶしてでん粉をとったり、春雨を作ったあとの残り汁から作られていた[1]。緑豆の粕をろ過した後に残った粕を発酵させて作った汁だった[1]

緑豆を水につけてふやかし、ミキサー擂り鉢ですりつぶして「生豆汁」とし、これを元に作るものもある。「生豆汁」を発酵させないレシピ[3]もあるが、それでは酸味がほとんど出ず、風味が異なる。

歴史[編集]

宋代に既にあったことが知られている。20世紀初頭までは、「売豆汁児的」と言われる行商人天秤棒で担いで北京の町を売り歩いていた。天秤棒の片側には豆汁を入れ、木の蓋をかぶせた土鍋を下げ、もう片方には木の枠に、薬味にする賽の目切りや細切りにした大根の漬け物や、洗い水、ブラシを入れて、腰掛けとともにぶら下げて担いだ。焦圏や焼餅も合わせて売る例もあったという[4]

乾隆18年(1753年)には、豆汁は清皇帝御膳としても提供された[1]

麻豆腐[編集]

豆汁を発酵させる過程で、タンパク質が多く沈殿する場合があるが、それを用いて麻豆腐というものを作ることも行われた。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 北京の伝統的な健康軽食 豆汁と焦圈がお勧め!”. CRI online 日本語. 中国国際放送 (2023年1月16日). 2024年4月3日閲覧。
  2. ^ a b c d 豆汁焦圈”. 北京観光 (2022年8月24日). 2024年4月3日閲覧。
  3. ^ 張鉄元 編 (2010). 老北京風味小吃. 北京・化学工業出版社. p. 4. ISBN 978-7-122-08601-3 
  4. ^ 斉放 編 (1998). 消逝的職業. 北京・百花文芸出版社. p. 78. ISBN 7-5306-2656-6 

関連項目[編集]