豆腐
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100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 318 kJ (76 kcal) |
1.88 g | |
食物繊維 | 0.3 g |
4.78 g | |
飽和脂肪酸 | 0.691 g |
一価不飽和 | 1.056 g |
多価不飽和 | 2.699 g |
8.08 g | |
トリプトファン | 0.126 g |
トレオニン | 0.33 g |
イソロイシン | 0.4 g |
ロイシン | 0.614 g |
リシン | 0.532 g |
メチオニン | 0.103 g |
シスチン | 0.112 g |
フェニルアラニン | 0.393 g |
チロシン | 0.27 g |
バリン | 0.408 g |
アルギニン | 0.538 g |
ヒスチジン | 0.235 g |
アラニン | 0.331 g |
アスパラギン酸 | 0.893 g |
グルタミン酸 | 1.397 g |
グリシン | 0.316 g |
プロリン | 0.436 g |
セリン | 0.381 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(1%) 4 µg |
チアミン (B1) |
(7%) 0.081 mg |
リボフラビン (B2) |
(4%) 0.052 mg |
ナイアシン (B3) |
(1%) 0.195 mg |
パントテン酸 (B5) |
(1%) 0.068 mg |
ビタミンB6 |
(4%) 0.047 mg |
葉酸 (B9) |
(4%) 15 µg |
ビタミンB12 |
(0%) 0 µg |
ビタミンC |
(0%) 0.1 mg |
ビタミンD |
(0%) 0 IU |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 7 mg |
カリウム |
(3%) 121 mg |
カルシウム |
(35%) 350 mg |
マグネシウム |
(8%) 30 mg |
リン |
(14%) 97 mg |
鉄分 |
(41%) 5.36 mg |
亜鉛 |
(8%) 0.8 mg |
マンガン |
(29%) 0.605 mg |
セレン |
(13%) 8.9 µg |
他の成分 | |
水分 | 84.55 g |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース(英語) |
豆腐(とうふ)は、煮た大豆の搾り汁(豆乳)を凝固剤(にがり、石膏など)によって固めた加工食品である。しっかりした食感のものは、型に入れたり、布地に包んだりしたうえで重しを乗せて、水分を押し出し、減らす工程が加わる。伝統的製法の堅豆腐[1]のほか、現代では代替肉やスナックバー状、麺[2]、米飯状[3]に成型した豆腐も製造・販売されている。
東アジアと東南アジアの広範な地域で古くから食されている大豆加工食品であり、とりわけ中国本土(奥地を含む)、日本、朝鮮半島、台湾、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、マレーシア、インドネシアなどでは日常的に食されている。現代ではアメリカ合衆国などにも普及している[2]。加工法や調理法は地域ごとに異なる。
名称[編集]
豆腐[編集]
豆腐という文字が最初に現れたのは、中国の陶穀『清異録』(965年)であると、江戸時代の『豆腐百珍』[4]の巻末にある。
現代では、中国も日本も「豆腐」と呼んでいる。日本では一部「豆富」「豆冨」としている業者があり、これは食品に対して「腐」という字を用いるのを嫌ってのことと考えられる。 中国でも「腐」を避け、菽乳、方壁、小宰羊(宰羊:羊の肉)等の異名があったと前述の『豆腐百珍』巻末に書かれている。
豆腐の「腐」の意味は、中国古代医学書『難経』[5]にある腐熟の「腐」であるとする説があり、中国で腐熟とは胃での初期消化のことで、白くどろどろした状態ともある[6]。 このことから、豆腐の「腐」は消化の悪い大豆を腐熟したものであるという説がある[7]。
「本来は豆を腐らせた(発酵させた)ものが豆腐、型に納めたものが納豆だったが、両者が取り違えられた」と名称の由来が語られることがあるが、これは誤った俗説である。納豆が日本独自の言葉であるのに対し、豆腐は中国から伝来した食品であり中国でも豆腐と呼ばれており、取り違えられることはあり得ない。
豆富[編集]

元禄時代に絹ごし豆腐を発明した豆富料理店「根ぎし 笹乃雪」では、9代目当主が、20世紀前半頃、食品に「腐る」という字を用いることを嫌って豆富と記すようになって以降、「腐」という文字を使わない表記が日本中に広まったとしている[8][注 1]。また、豆腐を好んだ日本の作家・泉鏡花は、極端な潔癖症でもあったことから豆府と表記した。
tofu[編集]
アメリカ合衆国やイギリスを始めとする英語圏のほか、ドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏等々、世界の様々な言語圏で、"tofu " (ドイツ語名詞の語頭は大文字のため "Tofu ")が単語として定着している。なお、英語表記ではtofuのほかsoybean curdも用いられる[9]。
中国語閩南方言由来もしくは広東方言由来であるtau-fuという表記も、ヨーロッパの中華料理店などでは頻繁に見られる。また、北京語では豆腐はdòufu(トウフー)と日本語に近い発音になる。
歴史と調理法[編集]
中国[編集]
豆腐の起源については諸説ある。16世紀に李時珍によって編纂された『本草綱目』では、豆腐は紀元前2世紀前漢時代の淮南王で優れた学者でもあった劉安によって発明されたとしている[10][11][12]。また、本草項目よりも前の12世紀の朱熹(朱子)の著作に「世に伝う、豆腐はすなわち准南王の術」というくだりがあり、これ(豆腐准南王(劉安)起源説)が朱子学を通じて世に広まったともされる。現代の淮南市には「豆腐村」があり、劉邦の孫でもある劉安が不老長寿の食べ物を研究させていたときに偶然生まれたのが豆腐であるという伝説が残る[13]。しかし、真偽については必ずしも明らかではなく[14]、劉安の著した『淮南子』にも豆腐の文字は出てこない[13]。
豆腐の原料となる大豆は遅くとも紀元前2000年頃までには中国の広い範囲で栽培されていたと考えられ、大豆加工食品は前漢時代の馬王堆漢墓からも出土しているとされるが、日本豆腐協会では劉安の時代の中国には豆腐の原料となる大豆が存在しなかったとしている[10][13]。大豆が中国に入ってきたのは劉安の活躍した約半世紀後のことであるという見方もある[13]。
また一説には豆腐の起源は8世紀から9世紀にかけての唐代中期であるともいわれている[9][12]。実際、6世紀の農書『斉民要術』には諸味や醤油についての記述はあるものの豆腐の記述が見当たらず、文献上「豆腐」という語が現れるのは10世紀の『清異録』からである[13][12][15]。唐代には北方遊牧民族との交流によって、乳酪(ヨーグルト)、酪(バター)、蘇(濃縮乳)、乳腐(チーズ)などの乳製品が知られていた。このことから、豆腐は、遊牧民族の乳製品を漢民族がアレンジし、豆乳を用いて乳製品(特にチーズ)の代用品(乳「腐」から豆「腐」へ)として、発明されたものであるという説が唱えられている(篠田統(しのだおさむ)など)[13][注 2]。「腐」の文字は、中国では「くさる」という意味ではなく、「やわらかい固体」を意味することが多いことから、豆乳を固めてつくられた植物性チーズに「豆腐」の字を充当したものとも考えられる[13]。
一方、乳腐は北方遊牧民族の常食の乳餅のことであるという見方もある。『本草綱目』での乳腐には「釈名:乳餅」とあり、他でも乳餅としている書物が多い[16]。このことから、乳腐は漢人の一部が胡人の乳餅を「乳腐」(畜乳で作った豆腐に似たもの)とも称したのではないかという説もある[7]。いずれにせよ、豆腐の起源については、未解明の部分が今なお存在する[13]。
中国においては、伝統的には豆腐は生で食べるのではなく発酵豆腐などとして食べていたとされる[11]。また、中国の伝統的な豆腐は日本の豆腐よりも堅いが、これは油を用いる調理法が主流のため水分が少ないほうが都合がよかったためとされる[11]。少なくとも唐代後半には造られていた豆腐は、南宋末期のころには一般に普及し、明朝や清朝の時代になると豆腐の加工品も盛んに作られるようになった[11]。安徽省南部で伝統的に生産されてきた毛豆腐は、白い毛カビが付着した発酵豆腐であり、現在も伝統食品として流通している。
今日、中国南部や香港・台湾では、日本の絹ごし豆腐のような滑らかな豆腐を冷やしてシロップをかけ、アズキやフルーツをトッピングして食べるデザートがあり、これを「豆花」と呼んでいる[17]。
日本[編集]


日本の豆腐は柔らかくて淡白な食感を特徴とする独特の食品として発達した[11]。
一般に豆腐は中国から日本へ伝えられたとされる。遣唐使によるとする説が最も有力とされるが[18]、その一員でもあった空海によるという説、鎌倉時代の帰化僧によるとするなど諸説ある。ゆばやこんにゃくなどとともに鎌倉時代に伝来したとみる説もある[11]。ただ、1183年(寿永2年)の奈良・春日神社の供物帖の中に「唐府」という記述がある[18][9][12]。
鎌倉時代末期頃には民間へ伝わり、室町時代には日本各地へ広がった。そして江戸時代にはよく食べる通常の食材となったとされる[9][11]。この江戸時代の豆腐は、今日でいう木綿豆腐のみであった[9]。
豆腐は庶民の生活に密着しており、江戸では物価統制の重要品目として奉行所から厳しく管理されていた。「豆腐値段引下令」に応じない豆腐屋は営業停止にされるため、豆腐屋は自由に売値を決めることは出来なかった[19]。江戸後期には各藩で財政難となり大名の献立にもしばしばのぼる食材であった[20]。下野国壬生藩の鳥居家の食事記録を調べると、菜は月に1日を除いて全て豆腐料理が出されていた[20]。
一方、江戸において豆腐料理屋は評判で、江戸で初めて絹ごし豆腐を売った「笹の雪」はいまだに続いている老舗である。当時、庶民に親しまれたのは豆腐の田楽であり、豆腐を串に刺して焼き、赤みそを付けて食べる料理であった[21]。
天明2年(1782年)に刊行された『豆腐百珍』には、100種類の豆腐料理が記述されている[20]。また、豆腐は様々な文学でも親しまれてきた。当時より、豆腐は行商もされており、前述の豆腐百珍は大きな人気を得るほど一般的な料理であった。行商の豆腐屋はラッパや鐘を鳴らしながら売り歩いていた。関東地方では、明治時代初期に乗合馬車や鉄道馬車の御者が危険防止のために鳴らしていたものを、ある豆腐屋が「音が“トーフ”と聞こえる」ことに気づき、ラッパを吹きながら売り歩くことを始めたものである。その由来のようにラッパは「豆腐」の高低アクセントに合わせて2つの音高で「トーフー」と聞こえるように吹くことが多いが、地域や販売店によっても異なり、「トー」と「フー」が同じ音高の場合もある。2つの音高を使うラッパの場合、1つのリードで2つの音高が出る仕組みになっており、呼気と吸気で音高が変わる。スーパーなどが増えて歩き売りをする豆腐屋が減ったものの、近年では昭和の頃のように地域に密着した商売をする人も出て来ており豆腐屋のラッパが復刻されている[22][23][24]。近畿地方では、豆腐屋はラッパではなく鐘(関東ではアイスクリーム屋が用いていた)を鳴らしていた[25]。
近代工業が発達するに連れて豆腐の製造作業の機械化も進み、わずかの大豆から効率よく豆腐が大量生産できるようになり、より安価で提供されるようになった。柔らかいタイプの豆腐は昭和以前には[注 3]個人経営の豆腐屋で毎日作られ、動かすことで形が崩れることの無いよう、売る間際まで店頭の水槽の中に沈められているものであった。
現代日本でも豆腐は非常に一般的な食品であり、そのまま調味料をかけて食べられるほか、様々な料理に用いられている。冷奴や湯豆腐、味噌田楽などのように主要食材になるほか、汁物や鍋料理の具材、料理のベースになる食材として使われるなど用途は多彩になっている。
技術進歩で、常温で120日保存可能な豆腐も販売されている[26]。厚生労働省によると日本では、かつて細菌の繁殖で健康被害が発生したことから、1974年に、おおむね10度以下の冷蔵保存か、水槽内で冷水を絶えず交換しながら保存するなどの製造・保存基準が定められたという。国内メーカーは1986年から常温保存用の豆腐(無菌充填など)を輸出しており、これに関して業界団体は災害時の販売・配布の観点からも基準の見直しを要望してきた[27] [28][29]。
水にさらさず直接容器にすくい上げたものは「寄せ豆腐」「おぼろ豆腐」と言う。ほぼ同様の沖縄の伝統食品として「ゆし豆腐(ゆしどうふ)」がある。
堅豆腐(固豆腐)や五箇山豆腐など非常に硬い豆腐があり、これは濃度の高い豆乳を使用したり、多めに凝固剤を使用したり、重石で脱水したりする事による。
沖縄諸島[編集]
沖縄県地方の豆腐も、日本同様中国との交易を通じて伝来したものであり、中国の豆腐と似ていて固くしまり、ずっしりとした重量をもち、「しま豆腐」と呼ばれる[30]。中国同様、生しぼりの豆乳で製造し、強く押圧して水分をしぼる[30]。しかし、天然の石膏が豊富で内陸が深く広大な中国大陸では凝固剤として石膏が用いられることが多いのに対し、琉球列島では日本同様「にがり」が凝固剤として用いられる[30]。
朝鮮半島[編集]
朝鮮半島では「두부(トゥブ)」といい、中国同様固い豆腐である[30]。高知県(土佐国)の「一升豆腐」は、安土桃山時代に長宗我部元親が李氏朝鮮より豆腐職人を連れ帰り、彼らに造らせた豆腐が起源だとされる[30]。
ミャンマー[編集]
ミャンマーでは「トーフー」という[30]。シャン族はヒヨコマメから豆腐を作っている(「ビルマ風豆腐」を参照)。
ジャワ島[編集]

欧米諸国[編集]
17世紀に清で布教したスペインのドミニコ会宣教師ドミンゴ・フェルナンデス・ナバレテはその著書の中で「teu fu」を豆から作られる中国のチーズとして紹介した。18世紀にナバレテの書物の英訳を読んだベンジャミン・フランクリンは豆腐に強い興味を示し、イギリス東インド会社のジェームズ・フリントに「tau-fu」の製法を問い合わせた。フリントはフランクリンあての1770年1月3日づけの手紙で「towfu」の製法を説明した。これが英語で初めて豆腐に言及した文献と考えられている[31]。
20世紀末期以降のアメリカを始めとする欧米諸国では、高カロリー・高脂質の動物性食品や嗜好食品を多く摂る不健康な食習慣への反省と健康的な食品への関心の高まりによる健康ブームに伴い、健康の視点から優れた食品と言える豆腐が注目を集めるようになった。
しかし、1980年代までのアメリカでは、家畜のエサである大豆から作られたイメージなどから、消費者調査で不人気ナンバーワンの食品に位置づけられたこともあった。日常的にスーパーマーケットの棚に並ぶようになったのは、森永乳業のアメリカ現地法人が売り込みに成功した1990年代以降である[32]。以降、菜食主義者にとってはバーベキュー、ステーキ、ハンバーガー、ジャーキーなどの肉の代替品として豆腐が使われている。
種類[編集]
豆腐には、薄い豆乳を凝固させて圧搾・成形した種類のもの(例:木綿豆腐、ソフト豆腐)と、濃い豆乳全体を凝固させた種類のもの(例:絹ごし豆腐、充填豆腐)とがある[33]。
豆腐の一般的な分類[編集]
今日、豆腐は木綿豆腐、ソフト豆腐、絹ごし豆腐、充填豆腐の4種に大別される[9]。
- 木綿豆腐
- 豆乳に凝固剤を加えて凝固させ穴の開いた木綿豆腐用の型箱に布を敷いて流し込み圧搾・成形した豆腐[33]。表面に布目が付くことからこの名がある[33]。普通豆腐ともいう[34]。英語表記はregular tofu[34]。絹ごし豆腐よりも型崩れしづらいため、煮炊きする料理に向いている。
- 脱水と成型という過程を通じ水溶性ビタミンの含有量が大きく減少するもののタンパク質、カルシウム、鉄などが多く含まれている。カルシウムが欲しいなら絹ごし豆腐よりも木綿豆腐が優れている[35]。重量100 gあたりのエネルギー80 kcal、たんぱく質7.0 g、灰分0.7 g[36]。
- ソフト豆腐
- 絹ごし豆腐状に凝固させたものを木綿豆腐の型箱に流し込んで軽く圧した、木綿豆腐と絹ごし豆腐の中間程度の濃度の豆腐。京都では嵯峨豆腐と言われる[33][37]。重量100 gあたりのエネルギー59 kcal、たんぱく質5.1 g、灰分0.7 g[36]。
- 絹ごし豆腐
- 木綿豆腐製造時よりも濃い豆乳と凝固剤で凝固し絹ごし用の型箱に流し込んでゲル状に固めて水にさらした豆腐[33][37]。笹の雪ともいう[14]。英語表記はKinugoshi-tofuあるいはtofu with whey[37]。木綿豆腐に比べて崩れやすい反面で、口の中で崩れるように舌触りが良いため、冷や奴や湯豆腐などに向いている。
- 吸水総量は原料大豆重量の5倍から6倍となる[33]。水分を抜かないので、ビタミンB1など水溶性ビタミンが残る上にマグネシウムも多く含まれている。代謝の促進には木綿より絹が優れている[35]。重量100 gあたりのエネルギー62 kcal、たんぱく質5.3 g、灰分0.7 g[36]。
- 充填豆腐
- 充填豆腐(じゅうてんとうふ)は、絹ごし豆腐製造時の濃い豆乳を冷却後に凝固剤を加えて合成樹脂製の角型の容器に充填して摂氏約90度で40分から50分加熱し成形した上で冷却した豆腐[38][34]。英語表記はpackaged-tofu[34]。衛生的で保存性が高いのが特徴[14][34]。加熱で凝固させるので殺菌されて衛生的なため、長期保存に優れている。更に品質が均質で輸送性に優れている上に葉酸(ビタミンB9)の含有量は他の種類の豆腐の約2倍である[39]。重量100 gあたりのエネルギー59 kcal、たんぱく質5.0 g、灰分0.8 g[36]。第二次世界大戦後に発明され、発展した[40]。
- 高野豆腐
- 鎌倉時代に生まれ、「氷豆腐」「凍り豆腐」(こおりどうふ)または「凍み豆腐」(しみどうふ)とも呼ばれる。寒天同様、昔は冬場に晴天の多い地域で凍結と乾燥を交互に繰り返して仕上げたが、現代では工場で一年中生産できる。豆腐を凍結と解凍を繰り返して水分が抜け乾燥状態になっているため、豆腐の栄養成分が凝縮されている。カルシウムとリンなどミネラルが特に豊富で、ビタミンEやタンパク質も多い健康食材である[41]。水(多くは出汁を含んだもの)で戻して用いる。凍り豆腐の水煮重量100 gあたりのエネルギー115 kcal、たんぱく質10.7 g、灰分1.3 g[36]。
堅豆腐[編集]
堅豆腐 / 固豆腐 (かたとうふ[42])は、現在の日本で一般的となっている製法と異なり、濃度の高い豆乳を使ったり、にがりの代わりに海水を使うなど、様々な方法を用いて保存できるようにした種類の豆腐のことで、なかには荒縄で縛って持ち運びできるほど堅いものもある。狭義では日本各地で昔ながらに作られ続けている堅豆腐のみを指すが、広義では、文字どおりに同種の堅い豆腐全般を指す総称となっている。
狭義の堅豆腐、すなわち、日本の堅豆腐は、そもそも日本で作られ始めた当時のものに近い[42]。つまり、本来的には豆腐は堅豆腐、もしくは、それに似た「堅い豆腐」であった。例えば江戸時代の浮世絵に描かれた豆腐もその多くは大きくしっかりとした長方体の堅豆腐である[42]。現代では流通の不便な豪雪地帯や山岳地域あるいは離島などだけで変わらず作られ続ける伝統製法となっている[42]。堅豆腐を作る地域としてしばしば例に挙げられる場所としては、加賀地方(石川県)の白山麓の一円の各所がその一つであり[42]、なかでも旧・石川郡白峰村(現・白山市白峰)の石豆腐や、富山県五箇山の岩豆腐はよく知られている[42]。これらの地では、肉類を食べるように堅豆腐が調理され、食べられている[42]。
- 水分を減らしたもの
- 濃い豆乳
- 海水利用
製法[編集]
原料[編集]
大豆[編集]
大豆は唯一の原料とも言えるものである[43]。まず第一に、タンパク質の含有分の高い事が求められ、香り、また遺伝子組み換えをしているか否かなどの安全面が考慮されることが多い。豆腐に適した大豆品種としてはフクユタカやエンレイなどが挙げられる。油糧用(大豆油用)や飼料用を除く食品用大豆の国内自給率は2013年度は25%(大豆全体では7%)[44]、輸入大豆の約7割はアメリカ産である[45]。アメリカ産大豆の作付け面積の9割は遺伝子組み換え大豆であるが[46]、日本へ輸出されている大豆は非遺伝子組み換え大豆である[47]。
国産大豆や有機大豆、非遺伝子組み換え大豆など、特色のある原材料を使用していることを表示する場合、「国産大豆使用」などと表示できるのは、100%その原材料を使用している場合のみで、100%未満の割合で使用している場合は「国産大豆○○%使用」もしくは「国産大豆○割使用」などと、使用割合を表示しなければならない。なお、使用割合は切り捨てまたは最小値を表示しなければならない[48][49]。
また、遺伝子組み換え大豆を使用している場合、「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」という表示が義務づけられている[50]。遺伝子組み換え作物の表示の詳細については、遺伝子組み換え作物を参照。
凝固剤[編集]
化学的には豆腐の凝固は豆乳の蛋白質が凝固剤によりゲル化することで起こる。したがって、豆腐は架橋された蛋白質の網目構造に多数の水分子を取り込んだ構造である。
大別するとマグネシウムイオンあるいはカルシウムイオンが蛋白側鎖のカルボキシル基を架橋してゲルを形成する場合(塩析)と、酸が蛋白質の高次構造を変える(変性)ことによりゲルを形成する場合(酸凝固)とがある。前者には凝固剤として硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等が使用され、後者はグルコノデルタラクトンが使用される。グルコノデルタラクトンの徐々に酸(グルコン酸)へと変化する性質が利用されている。なお、グルコン酸はグルコースの有機酸なので安全性は高い。
中国では伝統的に塩鹵(塩化マグネシウム)溶液、山礬(ハイノキ)や酸漿(ホオズキ)の葉のしぼり汁、石膏(硫酸カルシウム)などが使われたが[51]、現在では石膏を粉末とし水に溶いたものを凝固剤とすることが多い。古来の日本の伝統的な製法では製塩の過程で生じるにがりが主に使われていた。日本でも硫酸カルシウムやグルコノデルタラクトンなどの凝固剤が多く使われていた時期があったが、近年は見かけなくなりつつある。また、中国や韓国でもこの製法を用いる工場がある。
一般的ににがりと呼ばれているものは、塩化マグネシウムが主成分で、古くは、塩田で海水から塩を作るときに、いっしょに抽出される副産物であった。また、塩を運搬する途中でにがり成分が分かれて梱包した俵に染み出すこともあり、海から遠い街道沿いではよく利用されていた。
現在では、工業化されて塩化マグネシウムの純度の高いものや、海外の岩塩採掘場で採取されたもの、あるいは国内外の工業的な製塩の過程で抽出されたものが多く、実際に塩田から取っているものは少ない。また一部豆腐製造業者の間では、凝固剤の総称として「にがり」の呼称を使っている場合もあり、注意が必要である。
第二次世界大戦前までは、このにがりを凝固剤に使用するのが主流であったが(一部では硫酸カルシウム[すましこ]も使われていた)、やがて統制品に指定されたため入手が困難となった。そこで同じように凝固反応を起こし、入手の容易な硫酸カルシウム(すましこ)への転換が進んでいった。硫酸カルシウムはにがりの主成分である塩化マグネシウムと比べて適正な凝固反応が起こるいわゆる凝固のストライクゾーンが広いため、保水性が高く肌理の細かい高品質な豆腐が、比較的容易に作りやすかった。そのため、戦後も機械化が進むにつれ、凝固材として使いやすい硫酸カルシウムへの転換が進んでいった。1980年代後半になって、にがりで作られた豆腐の味が見直され始め、最近ではスーパーマーケットなどで容易に塩化マグネシウムやにがりを使った豆腐が入手できるようになった。
水[編集]
おいしい豆腐の条件として水が挙げられる[52]。豆腐の約80 - 90%は水であり、また、豆腐の製造工程でのさらし水が良くなければ淡白な豆腐の味を損ねることになるためである[52]。
古典的な製法[編集]
江戸時代の日本では、落語の題材になったり、『豆腐百珍』のような料理本まで出るほど、広く庶民の食べ物となっていた豆腐は、比較的加工の度合いも低く、経験さえ積めば誰にでも容易に製造できたため、大正時代から昭和時代の第二次世界大戦前にかけては、一つの町内に一軒ずつ製造業者が存在するほどであった。辺鄙な田舎であることを表すのに「酒屋へ三里 豆腐屋へ二里」という狂歌[注 4]もある。また、味噌などと同様に、各集落で共同で作られることもしばしばあった。
まず原料の大豆を、一夜(12時間ほど)真水に漬けておく。翌朝、十分に漬けあがった大豆を適度に水を加えながら石臼でクリーム状に磨り潰す、このクリーム状に磨り潰された大豆のことを「呉」と呼ぶ。次に呉を釜に移し、適度に水を加えて濃度を調整し薪にて炊き上げる。この時、呉はサポニンの作用で激しく泡立つため、消泡剤として食用油に石灰を加えたものを適度に振りかける。十分に炊き上がった呉を、布で濾して豆乳を木桶に取る。この豆乳が冷えないうちに凝固剤としてにがりを適度に加え、櫂と呼ばれる木の板で撹拌する(にがりを打った以降の一連の作業を寄せと呼び、職人の技の見せ所である)。豆乳の濃度、温度、にがりの量、そして適度な「寄せ」がそろうと、豆乳は水と分離することなく固まり始め、やがておぼろ状、またはプリン状の豆腐となる。これを崩しながら内側に布を敷いた型の中に盛り込み、蓋をして重石を掛け、硬く水を切ると豆腐(木綿豆腐)となる[注 5]。
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- 石臼
- 石臼で磨り潰されることにより、必要な蛋白分や糖分のみが液中に飛び出し、渋みの多い皮の部分はあまり細かくなることなく、おからとして排出されやすくなると言われている。工業化された製法では、グラインダーで豆を微細に削る。石臼を使うと、呉の焼け(酸化)が少なくなるとも言われている。
- 釜
- いわゆる地釜(五右衛門釜)である。直火で炊き上げるため、呉が非常に焦げ付きやすく、濃く粘度の高い呉を使って、現在のような高濃度の豆乳を作ることは、事実上不可能であった。大豆固形分濃度は推定7 - 8%であったと考えられる。現在は蒸気釜で炊き上げるため焦げることはなく、豆腐の場合10 - 13%の豆乳が一般的である。
- 消泡剤
- 呉を炊くと、大豆中のサポニンが激しく泡立つため、釜から呉が容易に吹きこぼれてしまう。また泡立った呉から取った豆乳もメレンゲ状の泡に包まれてしまうので、まともににがりを打ち、寄せの作業をすることが出来ない。このため古くから消泡剤を使うのが一般的であった(『豆腐集説』 1872年[明治5年])。また消泡剤は乳化剤としての側面も持っていて、呉液を乳化させることにより大豆中の旨み成分(大豆油のアミノ酸等)を豆乳の中に引き出す重要な役割も担っている。他方、最近では消泡剤を使用しない豆腐も注目を集めている。
- にがり、寄せ
- さまざまな寄せの方法があるが、典型的な例として、桶の中の豆乳をにがりと反応させながら、櫂で中心に「寄せる」作業を行う。この時、豆乳は、蛋白の分子がにがりに反応して水の分子を包みながら網の目状に繋がり始め、大きく見るとプリン状になり、豆腐となる。釜で炊かれた豆乳は、前述の通り濃度が低いので、蛋白分子が繋がった網の目構造の網の目が粗いものとなる(濃度が高いと緻密な網となる)。このため水をその網に十分に捕らえることが出来ないので離水しやすく、木綿豆腐を作ると、水切れがよく非常に硬い豆腐が出来上がる。ゆえに、古来の豆腐というのは、このように非常に硬い木綿豆腐であったと考えられる。
またこの方法で作られた豆腐は、最近まで山間部や離島などに残っていた。1980年(昭和55年)前後の岐阜県の徳山村や根尾村などで、この古典的な製法が確認されている。最近では、山間部で、逆に濃度の濃い豆乳を使って作った硬い豆腐を土産物的に売っているが、これは近代的に作られた似て非なるものである。
現代日本の豆腐製造業[編集]
現代の日本における豆腐製造業者には、工場で大量生産する大手企業もあるが、中小企業や個人商店も非常に多い。全国豆腐連合会では、これは豆腐製造が微妙な技術を要することや、長期保存ができないなど、豆腐の特性が関係していると分析している[53]。
また、中小企業側は中小企業事業分野調整法により、大企業が進出しようとする場合、都道府県知事を通じて経済産業大臣に調整(進出計画の撤退、縮小)の申し出をすることができる[54][出典無効][55]。そのため、当初大手メーカーは海外市場で販売を行っていた[54][出典無効][55]。しかし、包装技術の向上(真空充填、チルドなど)により長期保存、大量輸送が可能となり、また流通構造が大きく変化した現在では牛乳販売店などの宅配網や、インターネット等を中心に販売している[54][出典無効][55]。また、一部ではチルド製品を店頭販売している業者もある[56]。日本最大の製造業者は相模屋食料である。
一方、中小企業を中心とする従来の店頭販売では、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの事業者の価格決定権が強く、特売(安売り)が当たり前になってしまい、特売が希望小売価格状態になってしまって経営を圧迫している。さらに、原料である大豆はそのほとんどをアメリカに依存しているが、原料である非遺伝子組み換え大豆生産量はアメリカにおける生産数の一割以下であり、遺伝子組み換え価格の約3倍もする。また、アメリカのエネルギー安全保障政策でバイオ燃料作物への転作が進んだことによる原料の急激な高騰や、原油価格高騰[57]による包装等の資材価格高騰も経営を圧迫している。こうした影響もあり、2003年度の全国の豆腐業者は約14000軒だったが、9年後の2012年度には約9000軒まで減少している[57]。また、製造工程から出てくるおからは現在の法律上は産業廃棄物扱いであり、男前豆腐店の事件など不法投棄や処分費問題をかかえている。
豆腐の関連食品[編集]
豆腐の副産物[編集]
- おから :豆腐製造過程で出る副産物食品。栄養豊富な食品であるが、現代の日本では食品廃棄物であることが多い(あくまで現代日本に限ったことであり、時代と地域によって市場価値は大きく異なる)。
豆腐の二次加工品[編集]
- 焼き豆腐 :表面を焼いて、焼き目を付けたもの。
- 乾燥豆腐:豆腐を塩蔵乾燥、凍結乾燥したり、燻製で乾燥して保存性を高めた豆腐。
- 油揚げ :薄く切った豆腐を中心部まで火が通るように揚げたもの。
- 厚揚げ :厚く切った豆腐を揚げたもの。中が生の状態である事から「生揚げ」とも呼ぶ。
- がんもどき :豆腐を崩して野菜を混ぜあわせて成形し油で揚げた加工品。
- 腐乳
- 豆腐よう
- 臭豆腐
- 醸豆腐
- 熏豆腐
- 鶏糕
- 塩豆腐 - 水を切った豆腐(絹豆腐でも木綿豆腐でもよい)にまんべんなく塩をふり、キッチンペーパーで多重にくるんで、冷蔵庫で1~3日ほど寝かせる。大量の水分が出るのでペーパーは何回か取り換える。完成するとモッツァレッラのようになる。これをカプレーゼなど様々な料理に使う。
- 豆腐カステラ - 秋田県の郷土料理。
豆腐を模した食品[編集]
食品のなかには大豆とにがりを使用していなくても柔らかく豆腐状の物があり、「かわり豆腐」などと呼ばれる。
- 玉子豆腐
- 胡麻豆腐
- 杏仁豆腐
- 牛乳豆腐
- ごどうふ - 日本(長崎県と佐賀県)の郷土食。
- ピーナツ豆腐・ジーマーミ豆腐
- くるみ豆腐-磨ったくるみを葛粉などで固めた、日本(岩手県)の郷土食[58]。
- カシ豆腐 - イチイガシのドングリから抽出した澱粉を固めた、日本(高知県)の郷土食。
- 蕎麦豆腐‐蕎麦粉を葛などのデンプンで固めた食品。
- ムク - 大韓民国の食品。澱粉を固めた食品
- ハウピア - ハワイのココナッツミルク豆腐。
- ひよこ豆豆腐 - ミャンマーのビルマ風豆腐。
- 血豆腐
日本国外の豆腐[編集]
フィリピンには「タホ (taho)」と呼ばれる菓子があり、水分の多い温かい豆腐(プリン状の豆乳)にタピオカと黒蜜をまぶして食べる。現地では朝食前にタホを食べる習慣があり、毎朝、天秤を担いだ「タホ売り」が家々を回る。この際、フィリピンのタホ売りは、かつての日本の豆腐の行商と同様にラッパを吹き鳴らして合図をする。
また、チェコのプラハでは、牛乳の代わりに豆乳を使って作ったチーズ(アナログチーズ)を "tofu" として売っている。プレーンタイプのほか、燻製タイプなど数種が、スーパーマーケットのチーズ売場で見られる。
豆腐料理[編集]
種類[編集]
冷奴など生で食されることも多いが、調理される料理も非常に多い。
- 日本で一般的な料理
豆腐を具材の一つとする一般料理は多い。豆腐をメインの具材とした料理もある。
- 湯豆腐
- 味噌汁
- 味噌田楽・木の芽田楽
- 豆腐の味噌漬け
- 揚げ出し豆腐
- 擬製豆腐
- 炒り豆腐(煎り豆腐)
- 豆腐ハンバーグ
- すき焼き
- 卯の花
- 夫婦炊き :豆腐(主に焼き豆腐)と油揚げの煮物。
- 空也豆腐 :豆腐の上に卵をかけて蒸し、葛餡をかけた料理。「空也蒸し」とも言う[59][60]。
- 日本の郷土料理
- 半助豆腐 :大阪の郷土料理
- どじょう豆腐 :店によっては「どぜう豆腐」「地獄鍋」「地獄煮」「どじょう地獄」などと呼ぶ。
- チャンプルー :沖縄の郷土料理。
- 冷や汁
- 山掛け : 豆腐にとろろをかけたもの。「山掛け豆腐」「いもかけどうふ」とも呼ぶ[61]。
- 日本以外の料理
- 豆腐百珍
日本で江戸時代に著された『豆腐百珍』には、その名のとおり100種類の豆腐料理が紹介されている。
豆腐の調理法[編集]
切り方[編集]
豆腐は、冷奴や湯豆腐などでは奴切り、味噌汁や吸い物などでは賽の目切りや色紙切りなどに調理される[62]。
水切り[編集]
豆腐を揚げたり、焼いたり、炒めたりする場合など豆腐料理の種類に応じて水切りが必要となる場合がある[62]。
栄養[編集]
植物性蛋白質が豊富。カロリーは比較的低いため[63]、健康的な食品として欧米などでも食材として使われるようになっている。製法工程上、食物繊維の多くは製造過程で滓として分けられるおからのほうに含まれるため、豆腐は、大豆の加工品でありながら食物繊維の含有量は少ない。
絹ごし豆腐100g中には、水分89.4g、蛋白質5.0g、脂質3.3g、糖質1.7gが含まれ、58kcalのカロリーがあると言われている[64]。脂肪エネルギー比は51.7%であり、原料となる乾燥大豆の38.6%を上回る。
文化[編集]
慣用句[編集]
とても柔らかいものの例として用いられている。
- 豆腐に鎹
- 木材をつなぎ止めるものである鉄製の鎹(かすがい)を軟らかい豆腐に打ち込もうとする様を表す、日本語慣用句で、「手応えが無い」という意味。類似表現に「糠に釘」「暖簾に腕押し」がある。
- 豆腐の角に頭をぶつけて死ね
- 古典落語の演目『穴どろ』に登場する罵倒の台詞に由来する。角の尖った四角い物とは言え、柔らかな豆腐の角に頭を打ち付けても死ぬようなことは不可能であるのに、真に受けて本当に豆腐に頭をぶつけて死のうとする、それほどに愚かな者だと嘲る言葉である。類似表現として「うどんで首吊って死ね」「自分の耳齧って死ね」が存在する。
- 畑の肉
- 豆腐はタンパク質が豊富であることから[65]。
伝説[編集]
日本には、豆腐あるいは豆腐売りをモチーフにした豆腐小僧という妖怪の伝説がある。
落語[編集]
日本において、庶民の日常食材として使われた豆腐は落語にも登場する。
- 酢豆腐
- 通人ぶった若旦那に、腐った豆腐を「酢豆腐」と称して言葉巧みに食わせてしまう。
- 釜泥
- 大盗賊・石川五右衛門が釜茹でで処刑された後、子分たちが「親分の仇」とばかりに方々の大釜を盗み出して壊すという暴挙に出る。2度も大釜を盗まれ、商売上がったりの豆腐屋は・・・。
- 鹿政談
- 端々に豆腐にちなんだクスグリが用いられる落語。奈良の豆腐屋が店先のおからを盗み食いした獣を打ったところ、当たり所が悪かったのか死なせてしまった。これが春日大社のお使いとされるシカのうちの一頭であった。神鹿を殺すことは過失であっても死罪に問われたことから、豆腐屋は捕縛されて裁きを受けることになってしまう。
その他[編集]
家畜の飼育者や動物園の一部は、餌として豆腐やおからを与えている。
パソコンにおいて、フォントが対応していないために表示できない文字は、小さい四角(□)で置き換えられることが多く、これをネットスラングで豆腐と呼ぶ。Googleが配布している「Noto」というフォントの名前はこのスラングに由来(no more tofu)しており、インターネット上で表示できない文字を無くすという意味が込められている[66]。
中国においては血豆腐と称される動物の血液から作られた食品があるが、形状が豆腐に似ていることから命名された。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 日本の豆腐は豆腐ようなど一部を除いてほとんどが発酵していないものである。中国では豆腐を発酵させた腐乳や臭豆腐も一般的。
- ^ この説には腐乳は清朝(『隋園食単』岩波書店 1980年)になってからであるという反論がある。著者は北方遊牧民族に腐乳が見当たらないとも書いてある。
- ^ 古来の豆腐は堅いタイプであるため、豆腐の全史からすれば、柔らかい豆腐のデリケートさは最近のものである。
- ^ 「ほととぎす自由自在にきく里は酒屋へ三里豆腐やへ二里」(ほととぎすの声が聞けるような場所は、近くの酒屋豆腐屋へ2里3里もある不便な田舎だ)江戸時代後期に、ほととぎすの多い郊外へ引っ越すことが流行った。当時の見さかいのない風流ばやりを馬鹿にした句。
- ^ 古典的製法の古文書は『豆腐集説』を参照のこと
出典[編集]
- ^ 水を抜いて固める、堅豆腐 日本豆腐協会(2021年5月25日閲覧)
- ^ a b 「豆腐 健康志向で新商品/肉のように加工■食べやすく棒状に」『読売新聞』朝刊2021年4月15日くらし面
- ^ 「豆腐・こんにゃく食べ方革命」『日経MJ』2021年5月10日フード面
- ^ 醒狂道人何必醇 輯『豆腐百珍』正編(1782年)
- ^ 滑壽(写作) 呉勉学『難経本義』(三十一難) 宋代
- ^ 『中国語大辞典』角川書店 1994年
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- ^ 『古代日本のチーズ』角川書店 1996年
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参考文献[編集]
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