警察手帳

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警察手帳(けいさつてちょう)は、日本において、警察官皇宮護衛官及び警察職員たる交通巡視員少年補導員に装備品として貸与される手帳である(警察手帳規則(昭和29年7月1日国家公安委員会規則第4号)、以下単に「規則」)。身分を証明するものとして使用される。少年補導員に関しては西日本地区の警察本部(岡山県警奈良県警等)においては交通巡視員に準じて少年補導員にも身分を証明するものとして使用される。

日本の警察では、1874年(明治7年)から各県警で独自の様式のものが使用されていたが、1935年(昭和10年)11月26日に様式が全国統一、2002年(平成14年)10月1日に形状が大きく変更された。

機能[編集]

警察手帳は、証票、記章及びそれを保護している本革部分の総称である。証票は身分証明書の機能があり、記章は一目で警察官等であることを示す機能があり、本革部分は証票及び記章を保護する機能がある。

警察手帳は、警察学校に入校した時点で貸与され、本人の身分証としての役割を果たす(過去には卒業・正式配属の時点で初めて貸与する警察本部もあったという。警察学校学生の間は学生証のみ)。

警察手帳は、警察法第68条1項及び同施行令第9条1項で警察官に貸与することが定められ、その制式と取扱いは前述「規則」で定められている。同規則によれば、警察手帳は取扱いを慎重にし、特に指定がなければ常時携帯義務が課され、これは私服の刑事も例外ではない。着ている衣服に紛失防止紐で常に繋いでおかなければならない。また、司法警察職員としての職務の執行に当たり、警察官、皇宮護衛官又は交通巡視員であることを示す必要があるときは、証票及び記章を呈示しなければならない(警察手帳規則第5条)。

紛失は大問題になることや、勤務時間外の私用でありながら捜査活動中を装って手帳を提示し有料施設内や鉄道の料金・運賃などを不正に免れる事例を防ぐため、普通は勤務中のみの携帯で、職務時間外は所属庁(勤務している警察本部や所轄の警察署)に戻す規則が定められている(出勤時に装備管理部門から受け取り、退勤時に返す。どの手帳が誰の携行品か分からなくなるので個々人の名刺を上に乗せ、紛失防止紐で巻いて留める)。例外として千葉県警察で2006年8月から、勤務時間外(通勤中など)で法律の執行を要する事態に遭遇した場合に備え、自分の責任で厳重に管理する(鞄やバッグに入れたりせず身に着ける)事を条件に、勤務時間中・時間外を問わず、手帳の携帯が常時認められる事になった。また兵庫県警察でも2007年12月からの試行期間を経て、2008年3月1日から正式に常時携帯するようになった。

警視庁の場合、同庁所属警察官への直接取材によれば、2000年代半ばから、勤務時間外の常時携帯が徐々に認められているようである。

形状[編集]

旧規格手帳[編集]

新デザイン警察手帳の形状(警察手帳規則・別図1より)

1935年(昭和10年)11月26日、新規則により様式が全国統一された警察手帳は、従来、その名の通り手帳の形状をして実際に手帳として書き込みが出来るようになっていた。表紙には旭日章と、その下にその警察官の所属する警察組織の名称(「警察庁」、「警視庁」又は道府県警察名)が共に金箔捺しで記されており、表紙を捲った1ページ目に無帽・制服姿の被貸与者写真が貼られ、写真と台紙に跨るように、規定の浮き出し印(エンボス印)が捺され、氏名、「警視庁警部補」などというように階級、所属庁(警察庁(皇宮護衛官の場合はたとえば「皇宮警部補」)、警視庁又は道府県警察本部の事)、職員番号が記されていたここから数ページを「恒久用紙」と言っていた[1]。恒久用紙の他は普通のメモ帳が装填されていた。

旧規格手帳の時代を描いた多くのドラマ映画では単に表紙を提示するだけで身分を示しているシーンが目立ったが[2]、本来は規則第5条で手帳を開いて身分証を提示する事が義務づけられていた。ただ現実には身分証提示が為されない事が多く、身分証を提示しないと警察官である事を証明できない現行規格へのデザイン変更に至る。

ちなみに、ドラマ映画の小道具では表紙に旭日章(または類似した架空の記章)と「警察手帳」の文字が書かれたものが多く使用されたが、これは警察関係者との衝突を避ける、盗難悪用を防ぐ、劇中で登場する警察官の所属に関わらず1種類で済ませる(警察庁、警視庁と各道府県警察で最大48種類×そのシーンで提示する刑事役の人数分……の外被が必要となってしまい、製作及び小道具業者の管理に大変な手間が掛かる)などの理由で作られた架空のもので、このような装丁は実在しない。

現行規格手帳[編集]

2000年(平成12年)3月、当時続発していた警察不祥事への対策を練るため、警察刷新会議が設置された。同年7月に同会議が発表した緊急提言において、警察官の「匿名性」が問題視され警察官の責任所在の明確化を求められた。この提言を受け、名札による個人認識番号の明示[3]と共に[4]、警察官の身分証たる警察手帳のデザイン変更が検討され、2002年10月1日から、新デザインの警察手帳が使用され始めた。

新デザインの警察手帳は、官報号外第142号によると、7月5日に施行された『警察手帳規則の一部を改正する規則』の通達を原典とし、アメリカ合衆国の警察の「バッジケース」に倣い、手帳機能をなくして身分証機能のみに特化した。手帳表面に文字やマークは一切無く、内部の恒久用紙とメモ帳も廃止されることとなった。手帳を開くと上面に冬用制服を着装、脱帽上半身の写真を貼付または印刷し、階級・氏名等を日本語、英語で併記、更に証票番号(職員番号)を明記し、ホログラム表示された直径29ミリの旭日章を貼付したプラスチック製カード型身分証票、下面に金属製の記章(バッジ。逆三角形に近い輪郭、上部にスクロール入り「POLICE」の文字、下部に所属庁・都道府県警察の名称、中央に後光を放つ旭日章。色は金色と銀色のツートーン)が配されることとなった。開陳が容易になることで、身分を証明する証票部分を呈示し易くなった。つまり警察官である事を示すには同時に提示者の階級・氏名も提示しなければならなくなった事になる。なお、あまり知られていない手帳本体の機能としては、上面部分に証票入れの他、名刺入れが装備されている(最低1枚入れておかなければいけない)[5]

手帳外被はドラマや映画等では黒であるが、実際の物は濃い焦茶色(チョコレート色)である。汚損防止にビニールカバーが嵌められている場合もある[6]。なお、この形状変更に伴い、被指定者に交付されて手帳に貼られた「司法警察員の証」を廃止した県警が多数ある。

また、交通巡視員及び西日本の一部の警察本部の少年補導員にも同様式の少年補導員、交通巡視員手帳の貸与が規定されているが、司法警察職員である警察官が所持する警察手帳と区別するため、記章装着部分の上部に、『交通巡視員』若しくは『少年補導員』の文字を金色にて表示している。

なお、身分証は階級が変わらない限り更新されないので(これは旧形式当時からである)、昇任試験を受けなかったり、受験しても不合格だったりすると、いつまでも交付当時(最低階級で巡査長・この階級は余程の事がない限り誰でも勤続11年目でほぼ自動的に昇格する)の顔写真のままである。

取扱いに関する注意事項および違反行為[編集]

  • 警察手帳は職務中の警察官全てが常に携帯しておくものであり、制服勤務の者はもちろんのこと、私服勤務の者でも必ず携帯していなくてはならない。紛失した場合は「戒告」となるなど厳重な処分が下される。失くさないように茄子鐶なすかん。留め金具の一種)付きの紐が付けられており、これを衣服の一部に留めておけば取り落としても紐でぶら下がり、すぐに分かるようになっている。また公務執行時に身分を示す必要のある場合か、市民から要求された場合以外には、出して見せたりなどしてはならない。他人への貸与は厳禁。
  • 外革、表紙にシールなどを貼ってはならない。埼玉県警察でプリクラを貼った警察官が処分された事例がある[要出典]
  • 警察本部等、私服勤務員が通行証を着装している施設内では通行証を貸与されていない警察官は、手帳を折り返して記章部分のみを露出させることでこれに代えることがある。

脚注[編集]

  1. ^ 内容は異動歴や射撃など技能や体力測定の結果記録、司法警察員証明書
  2. ^ 実際にこの提示方法がまかり通っていた事、この方法であれば手帳の外観さえあれば良く、小道具としての身分証を製作する手間を省ける事などがその理由。
  3. ^ 消防吏員自衛官も、統一形式の名札が従来から制定され、勤務中の着用が義務付けられていた。これまでなかったのは警察官のみ
  4. ^ 一部の警察本部では従来から訓令で、内勤の警察官には独自に制定した名札の着用を義務付けていた
  5. ^ 旧規格当時も袖に名刺入れがあり、最低3枚を常備するべき事が定められていた
  6. ^ もっとも、使い込まれてボロボロになった場合には現物を提出することで交換が出来る

関連項目[編集]

外部リンク[編集]