終活

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

終活(しゅうかつ)とは「人生の終わりのための活動」の略で、人間が人生の最期を迎えるにあたって執る様々な準備やそこに向けた人生の総括を意味する言葉である。

社会背景[編集]

日本の総人口は、第二次大戦後増えてきたが、2010年をピークに下がり始めている。しかし高齢者(65歳以上)の人口はそれ以降も増え続ける。総務省統計局[1]のデータによれば、第2次世界大戦終戦直後は高齢者の割合は5%程度であったが、漸次増加し2035年頃には日本の人口の約3の1を占めるようになる。 日本の社会は、他国とは比較にならないほど急速に少子高齢化が進み、近い将来、団塊の世代が大挙して介護を受け、そしていずれ鬼籍に入る。そのため現代では高齢者の間では、周囲に迷惑をかけずに人生を終わるための準備が流行っている。20世紀初頭のように子供が10人という時代には、分担して親の老後の世話や故人の後始末を行うことができたが、現代のように子供1人が当たり前の時代には、子供へ大きな負担はかけられない。そのため社会現象として“終活”が広がっている。

終活の起源と流行[編集]

主な事柄としては生前のうちに自身のための葬儀などの準備や、残された者に迷惑がかからぬよう生前整理、残された者が自身の財産相続を円滑に進められるための計画を立てておくことなどが挙げられる。これは週刊誌『週刊朝日』から生み出された言葉とされており、同誌元副編集長佐々木広人が生みの親とされる[2]2009年(平成21年)に終活に関する連載が行われた時期以降から「終活本」などと呼ばれるこれに関する書籍が幾つも出版されるなどといった風潮とともに、世間へこの言葉が広まってきており[3]、2010年の新語・流行語大賞にもノミネートされ[4]、2012年の新語・流行語大賞でトップテンに選出された。2012年には北海道に初の終活専門団体 エンディング総合支援サポートの会が発足され平成27年9月には一般社団法人 終活ジャパン協会として法人化された。 2013年には、産経新聞出版より日本初の終活専門誌終活読本 ソナエが発売され、以降2014年にはもしもカレンダーをはじめとして、より気軽に終活に取組むプチ終活といった広がりを見せている。 文藝春秋[5]中央公論[6]をはじめ、その他週刊東洋経済[7]など各種月刊誌、週刊誌、に終活の特集が組まれ、終活は社会の大きな潮流となっている。

終活にかかわる行為[編集]

  • 準備:エンディングノート遺言。どのように葬儀などを執り行うか、また財産分与などの方法を事前に親族に伝えておく。意思表示ができないような障害を負うと手遅れになる。認知症の症状が出る前に意思表示をしておく必要がある。
  • 生前整理:生きて動ける間に行う、身の回りの物品の整理と社会的な関係の整理。難しいことではあるが、欲と役を捨てることが必要となる。
  1. 物理的物品の整理:独居老人が孤独死をして、遺品整理あるいは“親家片”(親の家の片付け)という社会問題が生じている。別居する子供がいる場合でも、遺品が多いと子供にとって親の家の片付けが大きな負担となり、専門の遺品整理業者を雇う場合が多い。体が動く間に、本人にとって本当に大切なできるだけ少量の物だけに絞っておくことが必要である。欲を捨てモノを増やさないことが大切である。また、電子データやインターネット上の登録情報などのデジタル遺品について前もって整理しておく、ログインIDやパスワード等の情報を残して対応を決めておくことも必要である。
  2. 社会的関係の整理:企業や団体で活動している場合には、健康なうちに後継者を育て、いつ動けなくなっても代役がいるようにしておく。またその人がいないと動かないような重要な役は降りて、身軽になっておく必要がある。亡くなった後に、お世話になった方々にメールなどで、感謝とお別れのメッセージを送る代行サービスも現れた。
  • 介護:認知症や寝たきりの末期の高齢者の医療によるケア。延命治療を施すか否かの検討も行う。最近の傾向として不自然な延命は避ける方法に向かっているようである。日本尊厳死協会の会員になり、延命処置に関し意思表示しておくことも一つの方法である。少子高齢化無縁社会が浸透する現代に、介護を受けられずに、孤独死をする人も増えている。孤独死あるいは無縁死をした人は、早ければ数日、遅ければ数か月経過して発見される。このような人々の供養の方法は、確立されていない。
  • 葬儀:葬式は、もともと曹洞宗で行っていたもので、修行中の僧侶が、悟りへの道半ばで亡くなった場合、その無念を慰めるために回向する行事であった。それが他宗にも広がっていった。江戸時代以降に村というコミュニティが確立し、村という共同体の一員の葬儀を組織的に行う際に、寺がその儀式を執り行うようになった[8]。過去においては、その家の宗派に基づいた儀式で、多くの参列者が参加する盛大な葬儀を行うのが慣例であった。昔は町内会が主導して大掛かりな葬儀を行うことも多かったが、最近は人間関係も希薄になり、葬儀は少人数で行うことが主流になりつつある。昔は勤務先の関係で、生前一度も会ったことがない、上司や同僚の親の葬儀に参列することは一般的であった。しかし、この風習もだんだんと薄れてきている。檀家から外れて、墓を使わなくなる場合、または代々の仏教の葬儀を行わない場合、離檀料を請求されることがある。葬儀は、めったに会わない遠い親戚と久しぶりに会い、絆を確かめる良い機会でもあった。従来のような盛大な葬儀は、費用もかかる。最近は家族葬など近親者のみで行うのが一般的となりつつある。葬儀は自分で行うことができないので、任せられる関係を築いておくことが大切と言う人もいる。また終活は不要と言う意見もある[9]。論旨は、死後のことはどうにもならないからということであるが、終活とは死後だけではない。死後のことは終活のほんの一部である。少子化の時代、残された数少ない縁者に迷惑をかけないように準備することが重要なのである。少子化という社会の大きな変化を認識せず、また終活の本質を理解していない論点であるといえる。大企業の役員や、著名な学者であれば、部下や弟子が葬儀を行ってくれることもあろう。しかし、庶民では、血縁者以外に任せることはできない。少子化の時代、自分でできるだけのことは生前に整理しておき、残された少数の者に任せることは最小限にしておく必要がある。
  • 埋葬:遺骨をどのように処理するか。中世までは石塔非建立型の墓地であったが、近世の檀家制度と葬式仏教のなかで石塔建立型墓地に変わっていった[10]。従来、遺骨は家の墓地に埋葬するのが常であったが、子孫が墓地を守る負担を軽減するため、最近は合葬墓や永代供養墓に加え、散骨や樹木葬、樹林葬など自然葬、自然派志向に変わりつつある。また都会では、ビルの中の自動搬送式やロッカー式の新しい形態の墓地も出てきた。慣例として墓所はその家系の長男が継いでいた。20世紀前半までは、一組の夫婦が10人近い子供を産むということは珍しくなかった。そのため墓所の継承には問題を生ずることはなかった。近年の出生率は1.3程度で推移し、墓所を継ぐ男子が生まれないことは珍しくなくなった。日本社会の少子化に伴い、お墓の継承者がいなくなって、墓地が放置され荒れるという問題が生じている。また閉じられたお墓の墓石が、人里離れた奥地に大量に不法投棄されるという問題も起きている。
  • 遺産相続:残された財産の分配・処分。
  • 記録:プロフィール、自分史など故人の記録であり、自費出版する人もいる。古来から墓石に命日と戒名等を彫ったり、過去帳に記録したり、家系図として、故人のデータを保存していた。最近はSNSやウェブに残した記録が、本人の死後も残り続け、これが故人の生きた証となっている。サービスプロバイダ業者はブログやSNSの記録を一々本人が生きているのか確かめることに時間を割かないので、死後も記録が放置され、残るのが現状である。テキストのみならず、写真や動画として記録が残る。残された縁者は、ウェブ上の活き活きとした動画記録を見て、故人を偲ぶことができる。最近は墓石にQRコードを付けて、ブログやFacebookなどへもリンクすることができるようになってきた[11]
  • 記念行事:厳密な意味では終活の範疇から外れるが、故人の没後一定の周期で、故人の遺徳を偲び感謝する集まりである。仏教では命日に縁者が集まって法要を行う。

脚注[編集]

  1. ^ 総務省統計局ホームページ「人口推計」、2015年3月8日時点、http://www.stat.go.jp/index.htm
  2. ^ 「高校生写真の日本一を決める「写真甲子園2016」7月26日(火)遂に開幕!~第23回の優勝をかけた戦いが始まる~」時事通信2016/07/26-19:05
  3. ^ asahi.com(朝日新聞社):〈本の舞台裏〉「終活本」続々発売 - 出版ニュース - BOOK
  4. ^ 新語・流行語大賞 2010 ノミネート語
  5. ^ 藻谷浩介、「30年後の日本“人口激減時代”の衝撃」、文藝春秋、pp.94-111、2013年7月;五木寛之、「2013年のうらやましい死に方(投稿募集)」、文藝春秋、pp.112-119、2013年7月;五木寛之、「2013年のうらやましい死に方(読者投稿)」、文藝春秋、pp.272-306、2013年12月; 玄侑宗久、井上治代、「少子化時代、お墓はどうなる」、文藝春秋、pp.384-391、2013年12月; 森健、「世界の死に方と看取り 12か国を徹底比較」、文芸春秋、pp.240-255、2014年11月; 近藤甘奈、「英国 政府が作ったエンディングノート」、文芸春秋、pp.268-273、2014年11月; 鳥集徹、「アメリカ 宗教が看取りの主役に」、文芸春秋、pp.274-279、2014年11月
  6. ^ 土居丈朗、菅原琢、「老いゆく国のめでたくない現実(対談)」、中央公論(特集「長寿は本当にめでたいか 超高齢社会という迷路」)、pp.18-27、2013年6月;なだいなだ、「人生の終楽章だからこそ“逃げずに”生きたい」、中央公論(特集「長寿は本当にめでたいか 超高齢社会という迷路」)、pp.28-33、2013年6月;久坂部羊、「”安らかな最期“には覚悟がいる」、中央公論(特集「長寿は本当にめでたいか 超高齢社会という迷路」)、pp.34-41、2013年6月;上村悦子、「あなたは、いくつまで生きたいですか」、中央公論(特集「長寿は本当にめでたいか 超高齢社会という迷路」)、pp.42-47、2013年6月
  7. ^ 前野裕香、山田徹也、野口晃、大野和幸、「第2章変わる葬儀・墓」、週刊東洋経済(特集「相続税から葬儀・死生観まで いま知りたい終活」)、pp.56-69、2013年10月26日号; 前野裕香、山田徹也、野口晃、大野和幸、「第3章自分の“最期”の迎え方」、週刊東洋経済(特集「相続税から葬儀・死生観まで いま知りたい終活」)、pp.70-79、2013年10月26日号;「実家の片付け」、週刊東洋経済、pp.36-75、2014年8月23日;並木厚憲、前野裕香、中原美絵子、福田恵介、「年末年始こそチャンス実家の片付け2 整理・整頓、実家を手放す、墓じまい」、週刊東洋経済(特集「実家の片付け2」)、pp.56-103、2014年12月20日号; かきの木坂ケイ、「継承しない墓にシフト 浸透する永代供養墓」、週刊東洋経済、pp.66-68、2013年10月26日
  8. ^ 島田裕巳、『0葬―あっさり死ぬ』集英社、2014年1月29日
  9. ^ 養老孟司、「自分の死後を指図したい!? そんな終活やめればいい」、中央公論(特集「終活戦線異常あり」)、pp.26-29、2014年9月; ひろさちや、「終活なんてしなくていい!」、週刊新潮、pp.48-51、2014年11月13日
  10. ^ 彩流社編集部編、中田ひとみ著、『日本のお葬式はどう変わったか お葬式の今までとこれから』、彩流社、2013年3月
  11. ^ NHK、「死後も“生きる”デジタルデータ」、海外ネットワーク、2013年4月28日放送 http://www.nhk.or.jp/worldnet/archives/year/detail20130428_305.html

関連項目[編集]

外部リンク[編集]