メキシコ軍

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メキシコ軍
Fuerzas Armadas de México
派生組織 Logo de Ejército Mexicano.svg メキシコ陸軍
Naval Jack of Mexico.svg メキシコ海軍
Logo de Fuerza Aerea Mexicana.svg メキシコ空軍
指揮官
最高司令官 エンリケ・ペーニャ・ニエト大統領
国防大臣 サルバドール・シエンフエゴス・セペダスペイン語版(国防大臣)
ビダル・フランシスコ・ソベロン・サンススペイン語版(海軍大臣)
総人員
徴兵制度 徴兵制度
関連項目
歴史 en:Military history of Mexico
メキシコ独立戦争
ヤキ戦争
テキサス独立戦争
菓子戦争
米墨戦争
レフォルマ戦争
フランス干渉戦争
メキシコ革命
クリステーロス戦争
第二次世界大戦
冷戦
サパティスタの反乱
メキシコ麻薬戦争
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メキシコ軍(メキシコぐん、スペイン語: Fuerzas Armadas de México)は、メキシコ軍隊。陸軍常備軍 223,000名、海軍艦艇 88隻、空軍作戦機107機を擁する。

メキシコにおいては全軍種を統括する国防大臣は存在しない。したがって、国軍最高司令官(元帥)である大統領の下で陸海軍は完全に独立した組織となっており、その最高位の軍人(陸軍大将および海軍大将)が陸および海軍大臣として入閣している。なお、空軍は陸軍に従属するものとされている。また、メキシコ陸軍は、国防省[1]Secretaría de la Defensa Nacional: SEDENA)が所管しているため、慣習的に、陸軍大臣が国防大臣と呼ばれている。メキシコ海軍は海軍省Secretaría de Marina: SEMAR)が所管し、海軍大臣が置かれている。

2015年現在、メキシコには重大な対外脅威が無いため、主な任務は麻薬カルテルやサパティスタ民族解放軍など国内の犯罪・武装組織への対応である。特に2000年代以降は警察と癒着し重武装した麻薬カルテルの抗争が激化したため、都市部の治安維持や麻薬の密輸取り締まりに重点を置いた独特の編成となっている。

陸軍[編集]

メキシコ陸軍空挺部隊

メキシコ陸軍は、常備軍 223,000名(治安部隊を含む)、予備役 582,000名を有しており、司令部と警備部隊、独立部隊に編成されている。警備部隊の担任区域は、12個軍管区の下で45個軍区に割り振られている。

編成[編集]

メキシコ陸軍の基幹部隊は、3個軍団と複数の独立連隊/大隊である。各軍団は3個ずつの旅団を有しており、これは主な機動兵力となる。一方、これ以外に独立大隊・独立連隊が編成されていて、これらは警備部隊として運用される。通常、ひとつの戦区に1個大隊が配備されており、いくつかの戦区では、これに騎兵連隊などが追加される。

旅団のうち6個が戦闘部隊であり、その内訳は、1個機甲旅団と2個歩兵旅団、1個機械化歩兵旅団、1個空挺旅団、そして大統領警護旅団である。このうち、機甲旅団は1990年代より進められている地上戦力の再構築の一環として編成されたもので、兵力は25,000名、3個機甲連隊および1個機械化歩兵連隊によって編成されている。

また、警備部隊として運用されるもののうち、独立連隊としては、1個装甲騎兵連隊、19個機械化騎兵連隊、1個機械化歩兵連隊、7個砲兵連隊がある。ただし、これらの独立連隊は、規模においては独立大隊と同等である。独立大隊としては、18個歩兵大隊(約300名)、3個砲兵大隊がある。

これらの戦術部隊とは別に、3個特殊作戦旅団が編成されており、計9個特殊作戦大隊がある。

装備[編集]

パレード中の陸軍空挺部隊

メキシコ陸軍は練度は高いものの、おおむね軽装備の歩兵部隊であり、重装備については限られたものとなっている。

主力小銃としてはH&K G3が使用されてきたが、近年、小口径の5.56mm NATO弾を使用するFX-05シウコアトルによる更新が進んでいる。この銃については、ドイツ製のH&K G36との関係が取り沙汰されたが、H&K社が法的問題は存在しないとの見解を示したことで解決された。このほか、特殊部隊ではM4カービンも使用されている。拳銃H&K P7ベレッタM92のほかにFN Five-seveNも使用されている。分隊支援火器としてはセトメ・アメリミニミ軽機関銃が使用されてきたが、H&K MG4の導入も開始された。汎用機関銃としてはアメリカ軍にあわせてM60機関銃M240機関銃が、重機関銃としては古典的名作であるブローニングM2重機関銃が使用されている。長射程の対戦車火力としてはミラン対戦車ミサイルM40 106mm無反動砲が、近距離での対戦車火力としてはRPG-7B-300 ロケットランチャーが採用されている。

このように小火器が充実する一方で、遠戦火力は比較的限定的である。歩兵部隊用の迫撃砲としてはM29 81mm 迫撃砲が主力であるが、M1 81mm 迫撃砲もまだ残っている。また、榴弾砲としては、いずれも古典的名作であるM101 105mm榴弾砲オート・メラーラMod56 105mm榴弾砲が運用されている。Mod56 105mm榴弾砲は軽量で、容易に分解・輸送できるので、軽輸送機からの空投や小型ヘリコプターによる空輸も可能である。自走砲としては後述の国産装甲輸送車「DN」にM8 75mm自走榴弾砲砲塔を搭載したDN-V Bufaloが存在する他、口径を81mmとしたDN-V PMも装備している。

機甲火力は極めて限定的なものであり、主力戦車軽戦車ともに持たない。しかし、歩兵戦闘車及び装甲兵員輸送車は充実している。その主力となるのは、セドナ・ヘンシェル HWK-11英語版歩兵戦闘車(メキシコのセドナ社とドイツのヘンシェル社の共同開発)、AMX-VCI英語版装甲兵員輸送車、90mm低圧砲を搭載した装輪式のERC 90装甲車と、これをもとにしたVCR装甲兵員輸送車英語版である。また、セドナ「DN」装甲兵員輸送車シリーズなど、国産の装備も増えつつある。このほかにも、治安作戦における車両機動力の要請から、自動車化のレベルは極めて高く、ハンヴィーなどをはじめとするソフトスキンの大型/中型/小型トラックを多数保有している。また交通量の多い都市部での運用を想定し、多くの車両にはパトランプがあらかじめ装備されている。

空軍[編集]

飛行中のC-130MK1ハーキュリーズ

メキシコ空軍(スペイン語: Fuerza Aérea Mexicana, FAM)は、陸軍に従属するものとされており(行政的には陸軍航空隊と位置付けられている)、人員は11,770名、航空機合計は390機で、そのうち作戦機 107機、武装ヘリコプター 71機である。

メキシコが重大な経空脅威に直面してはいないことから、その防空力は限定的なものであり、主力戦闘機F-5E/F タイガーII(計10機)である。その一方、密輸機を取り締まる必要から空中早期警戒機を保有しており、ブラジル製のエンブラエル E-99を1機(また、海洋哨戒型を2機)運用している。

メキシコ空軍において、重点は治安作戦の支援におかれており、ピラタス PC-7(60機)はCOIN機として運用される。また、前述のP-99のほか、偵察型のPC-7やビーチクラフト キングエアなど、相当数の監視機が配備されており、国境線において密輸監視にあたっている。

航空輸送戦力としては、有名なC-130(12機)、An-32(3機)、アラバ軽輸送機(12機)がある。

また、メキシコ軍においては陸軍がヘリコプターを持たないため、その運用は空軍が行なっている。武装ヘリコプターとしては、小型のMD 530F(20機)、大型のUH-60 ブラックホーク(6機)がある。また、輸送戦力の主力はMi-8(8機)、発展型のMi-17(19機)、大型のCH-53D(4機)である。

海軍[編集]

練習帆船「クアウテモック」

メキシコ海軍(スペイン語: Armada de México、略称SEMAR}}は、49,510平方キロメートルに及ぶ海域と、9,330キロメートルに及ぶ海岸線の警備を任務として、人員 56,000名、艦艇 189隻、航空機 130機を有する。

メキシコ海軍は、メキシコ湾・カリブ海艦隊、太平洋艦隊、航空集団の3つの基幹部隊を編成している。

主力となる水上戦闘艦はいずれもアメリカ海軍の中古艦で、ケツァルコアトル級駆逐艦(旧米 ギアリング級) 1隻、ブラヴォー級フリゲート(旧米 ブロンシュタイン級) 2隻、アレンデ級フリゲート(旧米 ノックス級) 4隻が就役している。ただし、メキシコ海軍はアスロックを運用しておらず、また、これらの艦はいずれも艦対艦ミサイル艦対空ミサイルの発射機を搭載していないことから、その任務は洋上哨戒に限られている。

このほか、軽武装の哨戒艦が30隻配備されているが、このうち、 ウリベ級英語版スペイン語版(988t; 6隻)、ホルジンガー級英語版スペイン語版(1,022t; 4隻)、シエラ級英語版スペイン語版(1,335t; 3隻)、ドゥランゴ級(1,554t; 4隻)、オアハカ級英語版スペイン語版(1,678t; 6隻)は艦載機としてヘリコプターの運用が可能である。そのほか、輸送用としてニューポート級戦車揚陸艦 2隻がある。

メキシコ海軍はかなりの規模の航空部隊を有するが、それにもかかわらず、対潜哨戒機を持たないという点で非常に特徴的である。艦載機の主力はMBB Bo 105(11機)であるが、これは小型の武装ヘリコプターで、洋上での対テロ/密輸阻止に用いられる。

また、固定翼航空機としてはイスラエルより引き渡されたE-2早期警戒機(3機)があり、密輸阻止に大きな効果をあげている。このほか、CASA C-212海洋哨戒機(7機)、An-32輸送機(6機)がある。

なお、メキシコ海軍は、練習帆船として「クアウテモック」(ARM Cuauhtémoc)を有していることでも知られている。同船は、練習航海の一環として、たびたび日本にも寄港している。これは、海軍が練習用として帆船を運用する少ない例のひとつである。

このほか、メキシコ海軍は、保有する艦艇の整備修理と哨戒艦艇や小型艦艇の建造を行うための海軍省造船所スペイン語版スペイン語: Astilleros de la Secretaría de Marina、略称:ASTIMAR)をメキシコ湾岸に2か所、太平洋岸に3か所保有している。

メキシコ湾岸
太平洋岸

2000年代に入ると、国内の麻薬カルテルの抗争が激化。政府、警察、陸軍関係者が金銭や暴力、恐喝により協力を強要されたことから、摘発さえままならない状況となった。こうした状況の中、2006年に就任したフェリペ・カルデロン大統領は、麻薬組織との対決路線を選択。麻薬組織との関係が薄い海軍を組織的に利用して摘発に乗り出した。2009年12月16日、メキシコ海軍がベルトラン・レイバ・カルテルの拠点を襲撃して組織のボスを射殺する成果を収めた例があるが、襲撃した場所は海軍とは全く関係のない内陸部の都市クエルナバカ市であった[2]。また、2014年には、海兵隊がシナロア・カルテルのトップ、ホアキン・グスマンを逮捕している[3]

脚注[編集]

  1. ^ 中米スペイン語圏ではSecretaríaは、日本語の省に相当しており、官房ではなくと訳される。空軍の独立と共に陸軍省から改組された
  2. ^ “メキシコ海軍、有力麻薬密輸組織トップを銃撃戦で殺害”. AFP.BB.NEWS. http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2675872/5054302 2010年9月17日閲覧。 
  3. ^ “メキシコ:麻薬密輸の首領を逮捕”. 毎日新聞. (2014年2月23日). http://mainichi.jp/select/news/20140224k0000m030077000c.html 2014年3月11日閲覧。 

関連項目[編集]