ミッドウェイ (2019年の映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミッドウェイ
Midway
Battle of midway-deployment map.svg
ミッドウェー海戦の戦闘過程
監督 ローランド・エメリッヒ
脚本 ウェズ・トゥック
製作 ローランド・エメリッヒ
ハラルド・クローサー
製作総指揮 マーク・ゴードン
マルコ・シェパード
ウェズ・トゥック
ハン・サンピン
ドン・ユー
ジェフリー・チャン
ブレント・オコナー
カーステン・ロレンツ
ウテ・エメリッヒ
アラステア・バーリンガム
ゲイリー・ラスキン
出演者 エド・スクライン
パトリック・ウィルソン
ルーク・エヴァンズ
アーロン・エッカート
ニック・ジョナス
豊川悦司
浅野忠信
國村隼
マンディ・ムーア
デニス・クエイド
ウディ・ハレルソン
音楽 トーマス・ワンダー
ハラルド・クローサー
撮影 ロビー・バウムガートナー
編集 アダム・ウルフ
製作会社 サミット・エンターテインメント
セントロポリス・エンターテインメント
配給 アメリカ合衆国の旗 ライオンズゲート
日本の旗 キノフィルムズ[1]
公開 アメリカ合衆国の旗 2019年11月8日[2][3]
日本の旗 2020年9月11日[4]
上映時間 138分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
日本語
製作費 $59,500,000[5]
興行収入 アメリカ合衆国の旗 $56,846,802[6]
日本の旗 4億円[7]
世界の旗 $127,420,861[6]
テンプレートを表示

ミッドウェイ』(原題:Midway)は、2019年制作のアメリカ合衆国戦争映画

太平洋戦争中の1942年ミッドウェー島付近で行われたミッドウェー海戦を題材にした映画。ローランド・エメリッヒ監督[8]

あらすじ[編集]

アメリカ海軍駐日武官として東京に駐在していたエドウィン・レイトン山本五十六から「日本を追い詰めるな」と警告を受けた。その数年後の1941年12月、日本海軍の機動部隊が真珠湾を空襲し太平洋戦争が開戦。空母エンタープライズのディック・ベストたちは日本艦隊の追撃に向かうが空振りとなる。戦艦アリゾナに乗艦していたベストの親友は戦死する。

山本は南雲忠一が真珠湾の燃料タンクを破壊しなかったことに不満を抱く。新しく太平洋艦隊司令長官に任命されたチェスター・ニミッツは、日本軍の攻撃を防げなかった責任を感じ実戦部隊への転属を申し出たレイトンに引き続き情報分析を担当させる。

エンタープライズはマーシャル諸島を攻撃し、ベスト機の爆撃で飛行場を破壊する。さらに空母ホーネットから発艦したドーリットル隊が日本本土を空襲し、山本は米機動部隊を撃滅するためMI作戦を計画する。

レイトンの部下のロシュフォートが日本海軍の暗号を解読し、攻撃目標はミッドウェー島だと突き止める。アメリカ軍は珊瑚海海戦で損傷した空母ヨークタウンを突貫工事で修復し、空母3隻をミッドウェー島近海に配備する。

そして運命の日アメリカ軍は日本艦隊を迎え撃ち、大きな犠牲を払いながら空母赤城加賀蒼龍を撃破する。飛龍からの反撃でヨークタウンが大破するが、ベストたち生き残りのパイロットによる最後の攻撃で飛龍も炎上し雷撃処分される。山本は「ミッドウェー島を艦砲射撃すべき」という進言を却下し撤退する。ハワイの米太平洋艦隊司令部は日本側の無線を傍受して、初めて自分たちが勝ったことを知る。

キャスト[編集]

アメリカ軍[編集]

役名 俳優 日本語吹替[9][10] 備考
ディック・ベスト英語版大尉 エド・スクライン 加瀬康之 第6爆撃中隊長
エドウィン・レイトン少佐 パトリック・ウィルソン 咲野俊介 太平洋艦隊情報主任参謀
ウェイド・マクラスキー少佐 ルーク・エヴァンズ 桐本拓哉 第6空母航空団司令
ジミー・ドゥーリトル中佐 アーロン・エッカート 志村知幸 陸軍航空軍
ブルーノ・ガイド兵曹 ニック・ジョナス 奈良徹
チェスター・ニミッツ大将 ウディ・ハレルソン 内田直哉 太平洋艦隊司令長官
ウィリアム・ハルゼー中将 デニス・クエイド 菅生隆之 第16任務部隊司令官
ユージン・リンゼイ少佐 ダレン・クリス 最上嗣生
レイモンド・スプルーアンス少将 ジェイク・ウェバー
ジョセフ・ロシュフォート中佐 ブレナン・ブラウン 白熊寛嗣
ロイ・ピアース大尉 アレクサンダー・ルドウィグ 川田紳司
ハズバンド・キンメル大将 デヴィッド・ヒューレット 野川雅史 太平洋艦隊司令長官。真珠湾での太平洋艦隊壊滅の責任を取り更迭される。
アーネスト・キング大将 マーク・ロルストン 海軍作戦部長
クラレンス・ディキンソン大尉 ルーク・クラインタンク 上田燿司
ジョン・フォード ジェフリー・ブレイク英語版 映画監督。代表作に『駅馬車』等。

日本軍[編集]

役名 俳優 備考
山本五十六大将 豊川悦司 連合艦隊司令長官
山口多聞少将 浅野忠信 第二航空戦隊司令官
南雲忠一中将 國村隼 第一航空艦隊司令長官
加来止男大佐 嶋本叙也(ノブヤ・シマモト) 空母飛龍艦長
源田実 ピーター・シンコダ 第一航空艦隊航空参謀
赤城通信員 ケイシー・ライン・メイザック
藤田勇中佐 ヒロ・カナガワ 巻雲艦長
諸石高大尉 ケン・タキカワ 巻雲水雷長
東條英機 ヒロモト・イダ 内閣総理大臣
昭和天皇 ヒロアキ・シンタニ 第124代天皇
青年将校 加藤龍太

その他[編集]

役名 俳優 日本語吹替 備考
アン・ベスト マンディ・ムーア 清水はる香 ディック・ベストの妻
ダグネ・レイトン レイチェル・ペレス・フォスケット 種市桃子 エドウィン・レイトンの妻
ジャック・マッケンジー ディーン・シャーラー フォードの撮影技師
ミリセント・マクラスキー クリスティー・ブルック 櫻庭有紗 ウェイド・マクラスキーの妻

評価[編集]

本作は批評家からの賛否両論があった。

映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには141件のレビューがあり、支持率48%、平均点は10点満点で5.23点となっている。サイト側による批評家の見解の要約は「『ミッドウェー』は現代の特殊効果によりバランスのとれた視点で有名な物語を再訪するが、その脚本は褒められたものではない。」となっている。

Metacriticには28件のレビューがあり、加重平均値は47/100となっている。

史実再現性[編集]

日本海軍の艦船については、戦艦大和をはじめ、空母赤城飛龍など、機動部隊に随伴する多数の大小艦艇が登場し、対空機銃の形状にいたるまで、そのほとんどがよく再現されている(しかし、飛龍の艦橋形状などに多少の誤りは見られる)。空母加賀のみ、飛行甲板に日の丸がマーキングされていなかったり、艦橋が左舷にあったりと、実物とは決定的に異なる描写が見られる。(実際の加賀の艦橋は右舷にある)また、遠景のみが登場する空母蒼龍は、飛龍と同型になっているのか、船体のほぼ中央に艦橋が配置されている(実際の蒼龍は右舷の艦首よりに艦橋が配置されている)。

また本作では、米航空部隊が急降下爆撃で日本空母を仕留めたことについて、実際には当時の米軍パイロットの技量は拙劣で、緩降下爆撃しかできなかった[11][信頼性要検証]という一部書籍の指摘があるが、戦前から急降下爆撃を研究して1919年に初めて急降下爆撃を実現したのはアメリカ陸軍航空隊であり[12]、実戦においても急降下爆撃が実施されている。

アメリカ側の評価では、NHHC(Naval History and Heritage Command)部長で元海軍少将のサミュエル・J・コックス、軍事評論家、歴史家からは過去の『ミッドウェイ』(1976)や『パールハーバー』(2001)と比較して現実的に正確であろうとしていると評価されている[13]

しかし、一方ではエピソードの「ハリウッド化」も指摘されている。マーシャル群島空襲時における被弾した九六式陸上攻撃機の突入を、駐機されていたドーントレスの後部機銃で防いだ整備士ブルーノ・ガイド兵曹のエピソードは、撃退後のブルーノの行動が映画の姿とは異なる。サミュエル・J・コックスの指摘を紹介するUSAトゥデイによれば、ブルーノは自らの英雄的行動によってむしろ除隊できなくなることを恐れ、そのために名乗り出ることなく隠れていた。しかし、結局は発覚してハルゼーの元に連れて行かれ、昇進させられている[14]

関連作品[編集]

脚注[編集]

  1. ^ hikita (2019年11月13日). “巨匠ローランド・エメリッヒの超大作『MIDWAY』(原題)日本公開決定”. SCREEN ONLINE. 近代映画社. 2020年1月19日閲覧。
  2. ^ D'Alessandro, Anthony (2018年9月5日). “Roland Emmerich's WWII Epic 'Midway' To Open Veterans Day Weekend 2019”. Deadline. https://deadline.com/2018/09/roland-emmerichs-wwii-epic-midway-to-open-veterans-day-weekend-2019-1202457811/ 2018年9月6日閲覧。 
  3. ^ “日米海戦描く映画『ミッドウェー』予告編公開!浅野忠信、豊川悦司、國村隼ら出演”. フロントロウ. (2019年6月28日). https://front-row.jp/_ct/17283493 2019年10月7日閲覧。 
  4. ^ “構想20年、製作費120億円! エメリッヒ監督が“ミッドウェイ海戦”描く新作、9月公開”. 映画.com. (2020年6月5日). https://eiga.com/news/20200605/5/ 2020年6月5日閲覧。 
  5. ^ Film and Television Tax Credit Program Program 2.0 (Report). California Film Commission. p. 9. http://film.ca.gov/wp-content/uploads/CFC-Approved-Projects-List.pdf 2018年10月4日閲覧。. 
  6. ^ a b Midway (2019)”. Box Office Mojo. 2020年1月17日閲覧。
  7. ^ 『キネマ旬報』2021年3月下旬特別号 p.36
  8. ^ “R・エメリッヒ監督最新作「MIDWAY」'20年秋公開!豊川悦司がハワイプレミアに参加:映画ニュース - 映画.com”. 映画.com. (2019年11月13日). https://eiga.com/news/20191113/3/ 2019年12月16日閲覧。 
  9. ^ ミッドウェイ DVD”. TCエンタテインメント. 2020年12月21日閲覧。
  10. ^ ミッドウェイ(2019)”. ふきカエル大作戦!! (2020年1月15日). 2020年1月19日閲覧。
  11. ^ 柳田邦男零戦燃ゆ』文芸春秋、1984年。 
  12. ^ 兵頭二十八、宗像 和弘『日本の海軍兵備再考』銀河出版119頁
  13. ^ 037: Special Edition—Battle of Midway Movie(Naval History and Heritage Command)
  14. ^ Bryan Alexander (2020年2月15日). “How accurate is Roland Emmerich's WWII movie starring Nick Jonas?”. USA Today. 2020年7月10日閲覧。

外部リンク[編集]