フリーダム級沿海域戦闘艦

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フリーダム級沿海域戦闘艦
USS-Freedom-130222-N-DR144-174-crop.jpg
基本情報
艦種 沿海域戦闘艦 (LCS)
運用者  アメリカ海軍
就役期間 2008年 - 現在
前級 オリバー・ハザード・ペリー級(FFG)
アヴェンジャー級(MCM)
次級 インディペンデンス級
要目
軽荷排水量 2,707トン[1]
満載排水量 3,292トン[1]
全長 115.2 m[1]
最大幅 17.4 m[1]
吃水 3.96 m[1]
機関方式 CODAG方式
主機 フェアバンクス・モースコルト
 -ピルスティク16PA6B STC
 ディーゼルエンジン×2基
MT30ガスタービンエンジン×2基
推進器 ウォータージェット推進器×4軸
出力 115,400馬力
速力 45ノット[2]
航続距離 3,550海里 (18kt巡航時)[1]
乗員 中核乗員15から50名
作戦要員75名(ブルー、ゴールド各班)
兵装 Mk.110 57mm単装速射砲×1基
RAM近SAM 21連装発射機×1基
搭載機 MH-60R/Sヘリコプター×2機
C4ISTAR COMBATSS-21戦術情報処理装置
FCS ドルナ 電子光学式
レーダー TRS-3D 3次元式
・航法用×2基
ソナー 2087型曳航ソナー搭載可能
電子戦
対抗手段
・電波探知妨害装置
・DL-12T 12連装デコイ発射機×1基
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フリーダム級沿海域戦闘艦英語: Freedom-class littoral combat ship)は、アメリカ海軍沿海域戦闘艦(LCS)の艦級。アメリカ海軍の関連団体であるアメリカ海軍協会USNI)では哨戒艦[1]ジェーン海軍年鑑ではフリゲートとして種別している[2]

来歴[編集]

自爆攻撃によって損傷した「コール」。

沿海域戦闘艦のコンセプトは、1998年、当時海軍戦争大学NAVWARCOL)の校長であったアーサー・セブロウスキー提督が提唱したストリート・ファイター・コンセプトに由来する。これは、同提督が提唱し、アメリカ海軍の新たな指導原理として採用されたネットワーク中心戦 (NCW)の概念に基づき、アメリカ海軍が採るべき方針について洞察するなかで見出されたもので、従来のハイ-ロー-ミックスの概念に起源を有しつつも、これを根本から覆している、きわめて大胆なコンセプトであった。スプルーアンス級駆逐艦オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートに見られるような従来のハイ-ロー-ミックス・コンセプトにおいては、高戦闘力・高コストのユニットが前線に配置され、低戦闘力・低コストのユニットは後方など脅威レベルの低い区域に配置される。これに対し、ストリート・ファイター・コンセプトで建造される艦は、低コストではあるが、NCWを活用して強力な戦闘力の発揮を導き、かつ、その名のとおりに沿海域の前線で攻撃的に活用されるのである[3]

当時、アメリカ海軍は既に、新世代の水上戦闘艦のあるべき姿としてSC-21コンセプトを採択し、これに基づいて巡洋艦級のCG-21、駆逐艦級の DD-21の整備計画を策定中であったが、SC-21計画は2001年に突如中止され、ストリート・ファイター・コンセプトを導入しての再計画が行なわれた。これは、下記の2点について、従来のSC-21計画には重大な問題が内包されていることが判明したことによるものである[3]

  1. 多様化する任務に単一の設計で対処するには限界がある。(当該任務に不要な兵器群を全て船に携行すると費用も整備要員も膨張する)CG-21とDD-21は同一の設計に基づくこととなっていたが、計画開始後に次々と追加される任務に対応するため、先行して計画されたDD-21は、既に巡洋艦級と評されるまでに肥大化しており、なおも装備不足が指摘されていて、その一方、肥大化によって沿海域での戦闘には不適となりつつあった。
  2. 2000年に発生した米艦コール襲撃事件で確認されたとおり、沿海域戦闘においては、安価な武器でも、高価格・高性能な艦に近寄り、大きな損害を与えうる (Cheap Killの危険性)。従って、少数の高価格・高性能な艦に頼り、これを不用意に前線に展開することは極めて危険である。自爆ボートなどの民間擬装船は、優れたレーダーを持つ大型艦にも接近攻撃が可能で、(魚雷艇の魚雷に対するジャミングもリアクションタイムが必要な事もあり)回避力に優れた高速小型艦を量産して前方展開することが望ましい。

また冷戦終結後より、アメリカ軍戦争以外の軍事作戦(MOOTW)のニーズ増大に直面していた。麻薬戦争では、密輸阻止を目的とした海上治安活動が行われていたが、沿岸警備隊だけでは戦力が不足しており、アメリカ海軍も支援にあたっていた。海軍は、主としてオリバー・ハザード・ペリー級スプルーアンス級アーレイ・バーク級を充当していたが、スプルーアンス級およびアーレイ・バーク級では重厚長大に過ぎ、一方小型のオリバー・ハザード・ペリー級は、密輸業者が使用する高速船を追蹤するには速力が不足であった。またスプルーアンス級は2000年ごろ、オリバー・ハザード・ペリー級も2010年ごろの退役が見込まれていたことから、代替艦の建造が必要になっていた[4]

このことから、SC-21計画中止後の再編成において、ミサイル巡洋艦CG(X)』、ミサイル駆逐艦DD(X)』との組み合わせのもと、MOOTW任務に適合する新型水上艦として、ストリート・ファイター・コンセプトをより具体化して計画されたのが、沿海域戦闘艦LCSである[3][4]

設計[編集]

本級は、LCS計画に対してロッキード・マーティン社が提出した設計にもとづいて建造されている。なお主契約者であるロッキード・マーティン社はリード・システム・インテグレータとして開発を統括しており、その下に、船体基本設計を担当するギブス&コックス社やフィンカンティエリ社、ロールス・ロイス社など、様々な企業が分担する形で開発作業が進められた。

船体[編集]

設計は半滑走船型の単胴船型(セミプレーニング・モノハル)であり、フィンカンティエリ社が建造した高速船デストリエーロ」やMDV-3000型高速フェリーなどで開発された技術が導入されている。主船体はとして抗堪性に配慮する一方、軽量化のため、上部構造物にはアルミニウム合金が多用されている[5]

極めて優れた運動特性を有しており、全速航送時でも8船長以下で360度旋回が可能であり、30ノット・満載状態では、3船長で180度回頭できる。また浅吃水をいかして、浅海域への進出能力が優れているほか、入港可能な港湾数も増加しており、従来のミサイル駆逐艦が全世界で362港であったのに対し、本級では2,500港以上となっている[5]。当初は、他の艦と同様に灰色の低視認塗装を用いていたが、沿海域での活動を想定していることから、ネームシップは2013年2月より新しい迷彩塗装に変更されている[1]

機関[編集]

主機関にはCODAG方式を採用しており、巡航機としてはSEMT ピルスティク16PA6B STCディーゼルエンジン(単機出力8,700馬力; フェアバンクス・モースコルトによるライセンス生産機)、加速機としてはロールス・ロイス マリン トレントMT30ガスタービンエンジン(単機出力48,275馬力)が搭載される。推進器としてはロールス・ロイス社製のカメワ153SIIウォータージェット推進器が採用された[1][2]。静止状態から最大戦速まで2分以下、30ノットから停止までの距離は3船長以下である[5]

ただし、米海軍初のロールス・ロイス社製ガスタービンで、しかも新開発の大出力エンジンであるマリントレントMT30ガスタービンエンジンを採用したこともあって、機関部のトラブルが散見されており、2010年9月12日には1番艦でマリントレントMT30のタービン翼飛散事故[6]、2015年12月には3番艦、また2016年1月には2番艦で減速機の故障が生じた[7]。対抗馬にあたるインディペンデンス級では、アメリカ海軍でも長い採用実績があるゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジンを採用したこともあり、乗員からは好評とされている[8]

装備[編集]

本艦は、自衛用の最低限の装備を基本として、これに加えて、任務に対応するための各種装備を柔軟に搭載することを計画している。これらの装備は、艦のC4ISRシステムを中核として連接され、システム艦として構築される。

固定装備[編集]

アメリカ軍の新しい戦闘指導原理であるネットワーク中心戦 (NCW)コンセプトに準拠して開発された本艦にとって、最重要の装備といえるのがC4ISRシステムである。戦術情報処理装置としては新開発のCOMBATSS-21が搭載された[2]。これは、艦隊で運用されてきたイージスシステム(AWS)、AN/SQQ-89統合対潜戦システムと共通の技術を用いて開発されたオープンアーキテクチャ化システムである[5]

主センサーとしては、比較的簡素なTRS-3D 3次元レーダーが搭載されている[1][2]。ただし必要に応じて、AN/SPY-1Kのような多機能レーダーに換装できる余地が確保されている[5]

Mk.110 57ミリ単装速射砲

艦砲としては、船首甲板にユナイテッド・ディフェンス社のMk.110 57ミリ単装速射砲を装備する。砲射撃指揮装置(GFCS)としては、電子光学式のFABA社製ドルナを用いている。また近接防空ミサイル・システムとして、後部上部構造物上にRIM-116 RAMの21連装発射機を搭載する[1][2][5]

ミッション・パッケージ[編集]

沿海域戦闘艦のコンセプトにもとづき、本級は装備のモジュール化を進めている。代表的なミッション・パッケージとしては下記のようなものがある[9]

対機雷戦(MCM)
30フィートまでの浅深度の機雷に対してはMH-60S搭載のALMDS機雷探知機およびAMNS機雷処分具、30フィート以深の機雷に対してはROVを用いた遠隔機雷捜索システム(RMS)を用いる構成とされている[9]
対水上戦(SuW)
艦固有の57ミリ単装速射砲に加えて、Mk.46 30ミリ単装機銃2基と艦対艦ミサイル(SSM)、MH-60Rから構成される。SSMとしては、当初は将来戦闘システム(FCS)の一環として陸軍が開発していたNLOS-LSを採用する予定であったが、FCS計画自体の中止に伴って、2010年にNLOS-LSの開発も中止されてしまったことから、海軍は、暫定策としてグリフィンを搭載して、2019年までにより長射程のSSMによって更新する計画としている[9]
対潜戦(ASW)
当初は、遠隔機雷捜索システム(RMS)のROV(RMMS)が対潜捜索用ソナーを兼用する計画であったが、この場合、対潜戦の際に母艦の速力・運動性が大幅に制限されることから断念され、タレス社の2087型曳航ソナーをセンサーとして、発見した敵に対してMH-60Rを指向する方式とされている[9]
船尾ランプから発進する搭載艇

これらのミッション・システムを収容するスペースとして、第2甲板の後半部がミッション・ベイとされており、面積は6,500 ft² (600 )に及ぶ。この甲板は舟艇の運用にも用いられ、船尾側には船尾ランプ(スリップ・ウェイ)が設けられており、航走しながらでも搭載艇の発進・揚収が可能である。搭載艇としては、11メートル型複合艇2隻が搭載される。また右舷側にもクレーンを備えたハッチが設けられており、ここは舟艇の運用のほか、ROVなどの着水・揚収にも用いられる[1][5]。舟艇の発進・揚収はシーステート4まで可能である[10]

その上部の船尾甲板には5,200 ft² (480 )のヘリコプター甲板が設定されており、上部構造物後端部は床面積5,680 ft² (528 m²)のハンガーとされている。搭載機はミッション・パッケージにおうじて決定されるが、MH-60R/Sヘリコプターのみであれば2機、混載であればMH-60R/Sヘリコプター 1機とMQ-8無人航空機3機を搭載できる[1]。航空機の運用はシーステート5まで可能である[10]

同型艦[編集]

当初は、プロトタイプにあたるフライト0として2隻(LCS-1、LCS-3)の建造が予定され、インディペンデンス級との比較試験の後、勝者が量産型(フライト1)の建造に移行する予定とされていた。しかし2010年11月、計画は変更され、両クラスを並行して整備することとされた[8]。全艦、ロッキード・マーチン社製。

# 艦名 起工 進水 就役 母港
LCS-1 フリーダム
USS Freedom
2005年6月2日 2006年9月23日 2008年11月8日 カルフォルニア州
サンディエゴ海軍基地
LCS-3 フォートワース
USS Fort Worth
2009年7月11日 2010年12月7日 2012年9月22日
LCS-5 ミルウォーキー
USS Milwaukee
2011年10月27日 2013年12月18日 2015年11月21日 フロリダ州
メイポート海軍補給基地
LCS-7 デトロイト
USS Detroit
2012年11月8日 2014年10月18日 2016年10月22日
LCS-9 リトルロック
USS Little Rock
2013年6月27日 2015年7月18日 2017年予定
LCS-11 スーシティ
USS Sioux City
2014年2月19日 2016年1月30日
LCS-13 ウィチタ
USS Wichita
2015年2月9日 2016年9月17日
LCS-15 ビリングス
USS Billings
2015年11月2日 2017年7月1日
LCS-17 インディアナポリス
USS Indianapolis
2016年7月18日
LCS-19 セントルイス
USS St. Louis
2017年5月17日
LCS-21 ミネアポリス・セントポール
USS Minneapolis/St. Paul
LCS-23 クーパーズタウン
USS Cooperstown
LCS-25 マリネット
USS Marinette

登場作品[編集]

小説[編集]

『米朝開戦』
「フリーダム」が登場。Navy SEALsを乗船させており、北朝鮮へ向かおうとする貨物船臨検を行う。

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. pp. 856-857. ISBN 978-1591149545. 
  2. ^ a b c d e f Stephen Saunders, ed (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. p. 928. ISBN 978-0710628886. 
  3. ^ a b c 大熊康之 「第7章 セブロウスキー提督のNCW大変革」『軍事システム エンジニアリング』 かや書房、2006年、219-277頁。ISBN 4-906124-63-1
  4. ^ a b 香田洋二「現代水上戦闘艦の新傾向を読む (特集 世界の水上戦闘艦 その最新動向)」、『世界の艦船』第832号、海人社、2016年3月、 70-77頁、 NAID 40020720323
  5. ^ a b c d e f g ロッキード・マーチン LCSプログラム・チーム「ロッキード・マーチン社案 (特集・注目の米沿海域戦闘艦LCS) -- (米LCS2案の技術的特徴)」、『世界の艦船』第643号、海人社、2005年6月、 82-87頁、 NAID 40006738870
  6. ^ Cavas, Christopher P. (2010年9月23日). “Gas turbine engine on LCS Freedom breaks”. Navy Times. 2015年5月30日閲覧。
  7. ^ CNN: “米海軍の最新鋭艦2隻、相次ぐ故障で航行不能に” (2016年1月26日). 2016年5月13日閲覧。
  8. ^ a b 川村庸也「どうなる!? 米沿海域戦闘艦建造計画」、『世界の艦船』第737号、海人社、2011年2月、 108-111頁、 NAID 40017440295
  9. ^ a b c d 川村庸也「大量建造される沿海域戦闘艦の問題点と可能性 (特集 近未来の米水上艦隊)」、『世界の艦船』第788号、海人社、2013年12月、 90-93頁、 NAID 40019837787
  10. ^ a b Lockheed Martin Mission Systems & Training (MST) (2012年). “FREEDOM Variant - Littoral Combat Ship (PDF)” (英語). 2016年5月14日閲覧。