ピーター・ナヴァロ

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ピーター・ナヴァロ
White House National Trade Council Director Peter Navarro in Orval Office in January 2017 (cropped).jpg
ホワイトハウス国家通商会議ディレクター
就任
2017年1月20日
大統領 ドナルド・トランプ
前任者 新設ポスト
個人情報
生誕 (1949-07-15) 1949年7月15日(69歳)
政党 民主党
教育 タフツ大学 (BA)
ハーバード大学 (MPA, PhD)

ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro, 1949年7月15日 - )は、経済学者・公共政策学者。現在、カリフォルニア大学アーヴァイン校ポール・メレージ・ビジネススクール英語版教授。2017年1月20日、ドナルド・トランプ次期大統領から指名を受け、新設された国家通商会議(現・通商製造業政策局)のトップ[1]に就任した[2][3]

教職に付く以前、ナヴァロは東南アジアアメリカ合衆国平和部隊に所属していたほか、ワシントンD.C.エネルギー環境政策のアナリストとして勤務していた[4]

キャリア初期[編集]

ナヴァロは1972年タフツ大学を卒業し、学士号を取得した。1979年にはハーバード大学ケネディ行政学スクールから公共経営学の修士号を取得、また、1986年には同大学から経済学博士号を取得した[5]。タフツ大学卒業直後、ナヴァロはアメリカ合衆国平和部隊に就職し、タイに3年間滞在した[5]

実績[編集]

政策アナリスト[編集]

1970年代、ナヴァロは政策アナリストとしてアーバンサービスグループ、マサチューセッツエネルギーオフィス、アメリカ合衆国エネルギー省に所属した[5]

ナヴァロの論考は次に挙げる媒体で発表されている。『Barron’s』、『Business Week』、『The Los Angeles Times』、『The Boston Globe』、『The Chicago Tribune』、『The International Herald Tribune』、『The New York Times』、『The Wall Street Journal』、『Harvard Business Review』、『MIT Sloan Management Review』、『The Journal of Business』。

その他、Bloomberg TV、ラジオ、BBCCNNNPRMarketplaceといったメディアにも出演した。また、CNBCへの寄稿、60 Minutesへの出演も果たした[6]。加えて、投資に関する論考をthestreet.comに寄稿している[7]

2012年、ナヴァロは自著『中国による死(Death by China)』をもとにしたドキュメンタリー映画を監督・プロデュースした[8]。この映画は原作と同じタイトルで上映され、ナレーターとしてマーティン・シーンが起用された。

大学教員[編集]

ナヴァロは経済学公共政策学教授としてカリフォルニア大学アーヴァイン校で20年以上教鞭をとっている。研究テーマは、エネルギー問題ならびにアメリカ合衆国とアジアの関係である[9]。担当したMBAコースでは、何度も優秀教員賞を受賞している[10]

カリフォルニア大学アーヴァイン校に着任する前、1981年から1985年まで、ナヴァロはハーバード大学エネルギー・環境政策センターの研究員を務めた。その後、カリフォルニア大学サンディエゴ校の助教授に就任し、ビジネスと政策学を教えた[5]

政治[編集]

ナヴァロはカリフォルニア州サンディエゴで3度出馬している。1992年に市長選に立候補し、全党予備選挙で首位となるも、決選投票で共和党のスーザン・ゴールディング(Susan Golding)に敗れた[11]。1996年、第49選挙区の下院議員選に民主党候補者として出馬するも、共和党のブライアン・ビルブレイ(Brian Bilbray)に敗れた[12]。2001年、ナヴァロは第6選挙区サンディエゴ市議会特別選挙に出馬したが、予備選挙で落選した[13]

2016年、ナヴァロはドナルド・トランプの大統領選キャンペーン(en)の政策アドバイザーに就任した[3]。2016年12月21日、ナヴァロはドナルド・トランプ次期大統領の指名を受け、ホワイトハウス国家通商会議(NTC)という新設のポストに就任した[14]。2016年、ナヴァロはドナルド・トランプの大統領選キャンペーン(en)の政策アドバイザーに就任した。この背景には、ナヴァロが選挙期間中からトランプ陣営の政策顧問を務めたこと、筋金入りの中国脅威論者であることが指摘されている[15]。一方で国家通商会議が廃止されて「通商製造業政策局」(OTMP)に改組されてから影響力の低下が指摘されており[16]、大統領就任後のトランプは選挙中に訴えた就任当日の中国為替操作国指定を撤回[17]したことからナヴァロの政権への影響力を疑問視する見方も出ている[18]。しかし、ナヴァロは当初から中国の為替操作国指定の判断は財務省に委ねるとしていた[19]。また、ナヴァロは日本非関税障壁や貿易赤字も問題視している[19]。米国が日本を含む中国など世界各国に対して鉄鋼アルミニウムの輸入制限(36年ぶりの通商拡大法231条発動)を適用し、スーパー301条(通商法301条)に基づいて25%の関税を賦課する中国製品1300品目(500億ドル相当)を特定する原案を発表したことに対して中国は米国製品160品目(500億ドル相当)に同率の関税案で報復した際は「中国に公平な競争条件を求めてる」とトランプ大統領を擁護しつつ米中貿易戦争の可能性をナヴァロは否定した[20]。米国の同盟国にも関税を課すことを辞さないナヴァロと対立し、日本や欧州連合と共同で中国の不公正な貿易慣行に対処することを主張[21]していたゲイリー・コーン国家経済会議委員長の退任で発言力が増してるとされてるが、ナヴァロは実際の交渉をスティーヴン・マヌーチン財務長官ロバート・ライトハイザー通商代表に委ねている[22]G7の国々に対しても市場開放を主張しており[23]保護主義に反対する共同声明をまとめた議長国カナダジャスティン・トルドー首相に対しては「地獄に落ちる」と批判した[24]

2018年5月3日、マヌーチン財務長官、ライトハイザー通商代表、ウィルバー・ロス商務長官ラリー・クドロー国家経済会議委員長らとともに北京を訪問して中国の劉鶴国務院副総理らと通商協議を行った[25]。この際もナヴァロは交渉を他のメンバーに任せており、劉副首相が訪米して行われた第2回の通商協議では外されるも[26]、結局出席することになった[27]。閣内ではマヌーチン財務長官との対立も報じられており、米中貿易戦争を留保したとするマヌーチンの発言に対しては「これは貿易摩擦であり、貿易戦争では既に北米自由貿易協定(NAFTA)や中国の世界貿易機関(WTO)加盟で米国は負けてる」と批判し[28]、マヌ―チンが対米投資制限は中国以外も対象に大統領令ではなくて財務省などで管轄する対米外国投資委員会(CFIUS)で行うとしたことにもナバロは反対するもトランプ大統領は前者を支持した[29]。6月に訪中したロス商務長官と中国の交渉で行われたZTEの制裁解除は米中関係の友好を重視するトランプ大統領の決定と擁護しつつ追加違反もあれば米国事業を閉鎖させると述べた[30]

ナヴァロは政府主導の中国経済と市場主導の米国経済のモデルは「地球火星のように離れてる」とし、WTOに加盟してから中国は2015年時点で世界の自動車の3割近く、船舶の4割、テレビの6割強、コンピューターの8割強を生産して世界の製造業を支配するに至ったとして人工知能ロボット工学などでも脅威になりつつある中国の知的財産権問題など不公正な貿易慣行への対処を主張している[31]。また、軍用無人機でも中国は市場を奪ってるとして米国の輸出規制緩和を推し進めている[32]。ジャスティン・ウォルファース(Justin Wolfers)によると、ナヴァロの見解は「主流派からかけ離れ」ており、経済学界で「常識となっている重要な教義のほとんどを受け入れていない」という特徴がある[33]

私生活[編集]

ナヴァロの妻は建築家のレスリー・レボン(Leslie Lebon)。現在、カリフォルニア州ラグナビーチ在住[34]

著作[編集]

脚注[編集]

  1. ^ (ダイヤモンド社 2017)
  2. ^ Peter Navarro is about to become one of the world’s most powerful economists”. The Economist (2017年1月21日). 2017年1月30日閲覧。
  3. ^ a b President-Elect Trump Appoints Dr. Peter Navarro to Head the White House National Trade Council”. GreatAgain (2016年12月21日). 2017年1月19日閲覧。 “President-elect Donald J. Trump today announced the formation of the White House National Trade Council (NTC) and his selection of Dr. Peter Navarro to serve as Assistant to the President and Director of Trade and Industrial Policy.”
  4. ^ Peter Navarro”. The Globalist. 2016年8月26日閲覧。
  5. ^ a b c d Navarro, Peter (2016年8月). “Peter Navarro Curriculum Vitae”. UCI Paul Merage School of Business. University of California, Irvine. 2017年1月6日閲覧。
  6. ^ Peter Navarro”. The Paul Merage School of Business. 2016年8月26日閲覧。
  7. ^ Articles by Peter Navarro”. TheStreet. 2016年8月26日閲覧。
  8. ^ Economist Peter Navarro says U.S. manufacturing is suffering 'Death by China'”. cleveland.com. The Cleveland Plain Dealer (2012年9月7日). 2017年1月19日閲覧。
  9. ^ Navarro, Peter. “Peter Navarro Bio”. The Paul Merage School of Business. University of California, Irvine. 2017年1月6日閲覧。
  10. ^ Teaching Awards”. The Paul Merage School of Business. 2016年8月26日閲覧。
  11. ^ Election Results – Mayor, City of San Diego”. City of San Diego. 2016年8月26日閲覧。
  12. ^ California's 49th Congressional District Elections”. Ballotpedia. 2016年8月26日閲覧。
  13. ^ Election History – Council District 6, City of San Diego”. City of San Diego. 2016年8月26日閲覧。
  14. ^ ‘Death by China’ author to lead Trump trade office”. www.ft.com. Financial Times. 2017年1月19日閲覧。
  15. ^ (ダイヤモンド社 2017)
  16. ^ “米、国家通商会議を衣替え 対中強硬派の影響力低下か”. 東京新聞. (2017年5月4日). http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017050401000700.html 2017年5月9日閲覧。 
  17. ^ “米大統領が見解転換 「中国は為替操作国でない」”. AFP. (2017年4月13日). http://www.afpbb.com/articles/-/3124952 2017年5月9日閲覧。 
  18. ^ “戦い続けるナバロ氏、米国家通商会議の廃止後も”. WSJ. (2017年5月9日). http://jp.wsj.com/articles/SB11771792383444074472204583134410049174852 2017年5月9日閲覧。 
  19. ^ a b “ナバロ氏が「日本に高い非関税障壁」と言及、通商関係見直しに意欲”. 産経ニュース. (2017年3月7日). http://www.sankei.com/world/news/170307/wor1703070002-n1.html 2017年9月26日閲覧。 
  20. ^ “中国関税発動、報復の連鎖激化せず 米国高官、貿易戦争を否定”. フジサンケイ ビジネスアイ. (2018年4月4日). https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180404/mca1804040500005-n1.htm 2018年4月7日閲覧。 
  21. ^ “焦点:米国の対中通商政策、ナバロ氏ら主導で遠のく交渉機運”. ロイター. (2018年4月9日). https://jp.reuters.com/article/trump-trade-idJPKBN1HG0JD 2018年4月9日閲覧。 
  22. ^ “トランプ政権高官、中国との貿易摩擦でトーンダウン”. ウォール・ストリート・ジャーナル. (2018年4月9日). http://jp.wsj.com/articles/SB10376223459405434294104584152521013518750 2018年4月9日閲覧。 
  23. ^ “The Era of American Complacency on Trade Is Over”. ニューヨーク・タイムズ. (2018年6月8日). https://www.nytimes.com/2018/06/08/opinion/trump-trade-g7-russia-putin-navarro.html 2018年6月11日閲覧。 
  24. ^ “NAFTA再交渉不調の責任はカナダにある-トランプ米大統領側近”. ブルームバーグ. (2018年6月11日). https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-11/PA4S3N6K50XT01 2018年6月11日閲覧。 
  25. ^ “Trump's top economic advisers are embarking on a trip that could make or break the US-China trade fight”. ビジネスインサイダー. (2018年5月3日). http://www.businessinsider.com/trump-china-trade-war-trip-mnuchin-ross-navarro-lighthizer-2018-5 2018年5月4日閲覧。 
  26. ^ “ナバロ米国家通商会議委員長、中国との通商協議から外される”. ブルームバーグ. (2018年5月17日). https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-16/P8U9O16TTDS001 2018年5月16日閲覧。 
  27. ^ “Top Trump Adviser Navarro to Take Part in China Talks After All”. ブルームバーグ. (2018年5月20日). https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-05-16/top-trump-trade-adviser-is-said-to-be-excluded-from-china-talks 2018年5月16日閲覧。 
  28. ^ “ナバロNTC委員長、ムニューシン長官の貿易戦争「保留」発言を批判”. ブルームバーグ. (2018年6月2日) 
  29. ^ “投資制限「CFIUSで」 トランプ大統領が示唆”. 日本経済新聞. (2018年6月27日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32287930X20C18A6000000/ 2018年6月29日閲覧。 
  30. ^ “中国ZTE、追加違反あれば米事業閉鎖へ=ナバロ氏”. ロイター. (2018年6月11日). https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-zte-idJPKBN1J613M 2018年6月11日閲覧。 
  31. ^ “【寄稿】中国の比較優位は偽物=ナバロ氏”. ウォール・ストリート・ジャーナル. (2018年4月16日). http://jp.wsj.com/articles/SB12403095601924873365004584166682526975664 2018年4月17日閲覧。 
  32. ^ 無人機輸出の規制緩和 武器売却拡大へ方針” (2018年4月20日). 2018年6月18日閲覧。
  33. ^ Wolfers, Justin (2017年1月11日). “Why Most Economists Are So Worried About Trump”. The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2017/01/11/upshot/why-most-economists-are-so-worried-about-trump.html 2017年1月12日閲覧。 
  34. ^ Flaherty, Somer (2012年10月12日). “Architects at Home”. Laguna Beach Magazine. http://lagunabeachmagazine.com/architects-at-home/ 2013年10月17日閲覧。. 
  35. ^ Peter Navarro – Books”. ISBN Search. 2016年8月26日閲覧。

参考文献[編集]

  • ダイヤモンド社 (2017), “トランプ側近からのメール 米中戦争突入の戦慄シナリオ”, 週刊ダイヤモンド (ダイヤモンド社) 第4664号: 32-35 

外部リンク[編集]