グルジア語

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グルジア語(ジョージア語、カルトリ語)
ქართული
Kartuli
ქართული.png
話される国 ジョージア (国)の旗 ジョージア
アルメニアの旗 アルメニア
アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン
ロシアの旗 ロシア
ギリシャの旗 ギリシャ
トルコの旗 トルコ
イランの旗 イラン
地域 NIS諸国、ヨーロッパ
話者数 410万[1]
言語系統
カルトヴェリ語族
  • グルジア語(ジョージア語、カルトリ語)
表記体系 グルジア文字
公的地位
公用語 ジョージア (国)の旗 ジョージア
言語コード
ISO 639-1 ka
ISO 639-2 geo (B)
kat (T)
ISO 639-3 kat
Kartvelian languages.svg
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グルジア語(グルジアご)あるいは、ジョージア語(ジョージアご)[2]は、南コーカサスにあるジョージア(グルジア)の公用語である。カルトリ語ქართული ენა, kartuli ena)とも呼ばれる[3]

20世紀前半の日本では、ジョルジア語とも呼ばれていた[4][注釈 1]。2015年に日本政府が国家の外名を変更(ジョージアの国名も参照)して以降はジョージア語という呼称を積極的に使用することもなされている[3][5]

グルジア語(ジョージア語)の総話者数は約410万人で、その内、ジョージア国内の母語話者数は多数派民族のカルトヴェリ人を中心に国民の約83%にあたる約390万人である。残りの話者はトルコロシアイランアゼルバイジャンアルメニアアメリカ合衆国ヨーロッパに存在する。漢字による省略形は「具語」ないし「喬語」。

言語[編集]

言語分類[編集]

グルジア語は同じ南コーカサス語族であるスヴァン語メグレル語ラズ語の文章語として用いられていることから最も重要な位置を占めている。スヴァン語、メグレル語は主に北西グルジア方面で、またラズ語はトルコの東黒海沿岸地方からグルジアの国境近辺で話されている。

方言[編集]

グルジア語には18種類の方言が存在する。

方言一覧 日本語表記 英語表記 備考
1 カヘティア Kakhetian ジョージア国東部、クラの東、アラグヴィ川の東
2 カルトリア Kartlian ジョージア国東部
3 インギロ Ingilo ジョージア国東部、アラザニ、主要コーカサス一帯
4 トゥシュ Tush ジョージア国東部、アンディスカイェ コイスの上部
5 ヘヴスル Khevsur ジョージア国東部、アラグヴィ、アルグンの西上部一帯、プシャヴ、ケヴスルの南、アラグヴィ、イオリ上部
6 モヘヴ Mokhev ジョージア国東部、テレク上部、アラグヴィとクサニの西
7 ムティウル-グダマクリア Mtiul-Gudamakrian ジョージア国東部、テレク上部、アラグヴィとクサニの西
8 イメレティア Imeretian ジョージア国西部、主要コーカサス一帯、スラム区域、アジュハロ – アハルツィフ区域、ツヘニス-ツァハリ川
9 ラチュヴェリア Rachvelian ジョージア国西部
10 レチュフム Lechkhum ジョージア国西部、ラチャの西
11 グリア Gurian ジョージア国西部、低リオリの南、ポティ – コブレティ間から黒海に至る地域
12 アジャル、アチャリア Adzhar, Acharian ジョージア国西部、グリアの南、バトゥミ西部
13 イメルヘヴィア Imerkhevian トルコ
14 プシャヴィア Pshavian
15 メスヒア Meskhian
16 キズラル-モズドキア Kizlar-Mozdokian
17 フェレイダニア Phereidanian イラン、現在は話されていない
18 ジャヴァヒア Javakhian

歴史[編集]

グルジア語の変化の度合いを基にして各言語学者たち (G. Klimov, T. Gamkrelidze, G. Machavariani) は以下の推測をしている。紀元前2000年、もしくはそれより以前にスヴァン語が祖語から分岐したとされ、またメグレル語、ラズ語がグルジア語から分岐したのはそれからおよそ1000年後ということである。

グルジア語は豊富な文学的伝統を有している。グルジア語で書かれた最古の文献は5世紀に書かれた Iakob Tsurtaveli による Tsamebay tsmindisa Shushanikisi, dedoplisaMartyrdom of Saint Shushaniki, the Queen.『聖シュシャニク女王の殉教』)という宗教文学である[4]12世紀にはタマル女王に仕えた官吏詩人ショタ・ルスタヴェリShota Rustaveli) による国民叙事詩 Vepkhistqaosani (The Knight in the Panther's Skin.『豹皮の騎士』) が書かれた。

文字[編集]

詳細はグルジア文字を参照されたい。

名前 グルジア文字 音価
1 an /ɑ/
2 ban /b/
3 gan /ɡ/
4 don /d/
5 en /ɛ/
6 vin /v/
7 zen /z/
8 tan /tʰ/
9 in /i/
10 k'an /kʼ/
11 las /l/
12 man /m/
13 nar /n/
14 on /ɔ/
15 p'ar /pʼ/
16 jan /ʒ/
17 rae /r/
18 san /s/
19 t'ar /tʼ/
20 un /u/
21 par /pʰ/
22 kar /kʰ/
23 ḡan /ɣ/
24 q'ar /qʼ/
25 šin /ʃ/
26 čin /ʧ/
27 cin /ʦ/
28 jil /ʣ/
29 c'il /ʦʼ/
30 č'ar /ʧʼ/
31 xan /x/
32 ǰan /ʤ/
33 hae /h/

音声[編集]

子音[編集]

  両唇音 歯音 硬口蓋音 軟口蓋音 口蓋垂音 声門音
破裂音 [p] ფ / [b] ბ / [pʼ] [t] თ / [d] დ / [tʼ]   [k] ქ / [g] გ / [kʼ] [qʼ]1  
摩擦音 [v] [s] ს / [z] [ʃ] შ / [ʒ]   [x] ხ / [ɣ] [h]
破擦音   [ʦ] ც / [ʣ] ძ / [ʦʼ] [ʧ] ჩ / [ʤ] ჯ / [ʧʼ]      
鼻音 [m] [n]        
流音   [l] ლ, [r]        

1/qʼ/ は無放出音、有声音のどちらでもない。

h に似た2種類の音を挙げておく。

またグルジア語には2つ以上の子音が連続した子音連結が多く存在する。

母音[編集]

[ɪ] ი (i)   [ʊ] უ (u)
[ɛ] ე (e)   [ɔ] ო (o)
  [a] ა (a)  

音素配列[編集]

グルジア語の特徴として非常に長い子音連結が存在する。そこでグルジア語特有の音素配列を研究することで各音素の配列規則や配列制限を明確にすることができる。例えば日本語には /st/ という子音連結は配置できないといったものがわかるようになる。以下はグルジア語でも有名な長い子音が連続する例である。 მწვრთნელი mts'vrtneli(コーチ)、 გვფრცქვნი gvprtskvni(君は我々の皮を剥す)。後者はその意味上、通常の会話で用いられることはない。

文法[編集]

形態論[編集]

グルジア語は膠着語であり、動詞を形成するための接頭辞接尾辞を有する。場合によっては8つ以上の形態素で1つの動詞が構成される場合もある。例えば、ageshenebinat (あなたは構築した)という語は a-g-e-shen-eb-in-a-t のように意味上8つの最小単位に分割することができる。

形態音韻論[編集]

グルジア語では語中音消失現象が起きる。単語の最後の音節に母音 a もしくは e があり、その時に接尾辞(特に複数を意味する -eb- )が付着すると大抵の場合にその母音が脱落する。以下に例を挙げておく。 megobari (単数 / 友人) は megobØrebi (megobrebi) (複数 / 友人達)となり最後の音節の a が脱落しているのがわかる。

屈折[編集]

グルジア語の名詞には7格の屈折が存在する。

グルジア語の興味深い特徴としては、ほとんどの屈折言語では主語が主格として、目的語が対格あるいは与格としておかれるのに対して、その逆の現象が多く発生することがある。それは動詞の性質から起こるものであり、それを特に与格構文 (Dative construction) と呼んでいる。また主語に相当する品詞が能格におかれる例としては、他動詞が過去形におかれる場合や、知るなどの動詞の現在形などである。

統語論[編集]

グルジア語は接置詞 (Adposition) が名詞の後ろに付着する形の言語である(多くの場合は接尾辞として付着し、またいくらは別々の単語として配置される)。後置詞ドイツ語前置詞のようにそれぞれに対応する格変化を要求する。

基本的な構文の形式はSVOであるが、英語フランス語のような統語法における厳格さは要求されない。 全ての文で可能な訳ではないがSOV構文も存在する。

文法的には性の別が存在せず、代名詞においても中性である。

冠詞は存在しないが、関係詞の中においていくつかの不変化詞を用いることで定冠詞と同様の意味をもたせることが可能である。

動詞主語目的語の両方の人称によって変化し、主語や目的語を表す名詞は動詞の時制によって変化する。

語彙[編集]

グルジア語は非常に柔軟性のある派生語生成システムを有している。それは1つの語根接頭辞接尾辞などを付着してたくさんの派生語を生成することを意味している。以下はその例である。

語根 -Kart- からの派生語
派生語 意味
Kart-veli グルジア人
Kart-uli グルジア語
Sa-kart-velo グルジア国

カルトヴェリ人とその支族(ミングレル人ラズ人スヴァン人など)の姓名は以下の接尾辞で終わっていることが多い。

接尾辞 備考
-dze 息子(ジョージア国西部)
-shvili 子供(ジョージア国東部)
-ia (ジョージア国西部、サメグレロ
-ani (ジョージア国西部、スヴァネティ
-uri (ジョージア国東部)

グルジア語の数は二十進法に基づいている。20以上100未満の表現は20の倍数と残りの数という風に表現するので、例えば93を表現するには 4 (x) 20 (+) 13 となる。

[編集]

語形成[編集]

グルジア語は柔軟な語派生システムを有しており、接頭辞、接尾辞を語根に付着させて派生名詞を生成することができる。

語根 意味 派生語 意味
-ts'er- 書く ts'er-ili 手紙
-ts'er- 書く m-ts'er-ali 作家
-ts- 与える gada-ts-ema 放送
-tsd- 試みる gamo-tsd-da 試験
-gav- 似ている ms-gav-si 相似の、類似の
-gav- 似ている ms-gav-seba 相似、類似
-šen- 建築する šen-oba 建築物
-tskh- オーブンで焼く nam-tskh-vari ケーキ
-tsiv- 冷たい ma-tsiv-vari 冷蔵庫
-pr- 飛ぶ tvitm-pr-inavi 飛行機
-pr- 飛ぶ gamo-pr-ena 離陸
-om- 戦争 om-ob 宣戦布告する
-sadil- 昼食 sadil-ob 昼食をとる
-sauzme- 朝食 (ts'a)-sauzm-ob (軽く)朝食をとる
-sakhl- gada-sakhl-eba 移転する、移動する(不定形)
-ts'itel- 赤い ga-ts'itl-eba 顔を赤らめる、紅潮させる(不定形)
-brma- 盲目の da-brma-veba 盲目になる、見えなくする(不定形)
-lamaz- 美しい ga-lamaz-eba 美しくなる、綺麗になる(不定形)

複数の子音で始まる単語[編集]

グルジア語の名詞や形容詞にはたくさんの子音連結が存在する。母音の挟まれていない子音群でも基本的には一音一音発音しなくてはならない。それは非母語の話者にとっては非常に発音が困難にみえるかも知れないが、実際には子音と子音の間に挿入母音 -ı- が添加されている。これは英語の rhythm という発音の中にある th-m の間にある発音に似ている。

子音が二重子音 (, , ) の後に続いた場合、挿入母音は二重子音とその子音の間に添加される。

  • წქ (ts'k) は "tsık と発音される

子音がそれ以外の子音の後に続いた場合は以下のようになる

  • ვწერ (vts'er) は の間に挿入母音が添加される

以下、子音連結の数別に例をあげておく

  • 二重子音の例:
    • წყალი, (ts'q'ali), "水"
    • სწორი, (sts'ori), "真っ直ぐな"
    • რძე , (rdze), "牛乳"
    • თმა, (tma), "髪"
    • მთა, (mta), "山"
    • ცხენი, (tskheni), "馬"
  • 三重子音の例:
    • თქვენ, (tkven), "君達"
    • მწვანე, (mts'vane), "緑"
    • ცხვირი, (tskhviri), "鼻"
    • ტკბილი, (t'k'bili), "甘い"
    • მტკივნეული, (mt'k' ivneuli), "痛い"
    • ჩრდილოეთი, (črdiloeti), "北"
  • 四重子音の例:
    • მკვლელი, (mk'vleli), "殺人者"
    • მკვდარი, (mk'vdari), "死んでいる"
    • მთვრალი, (mtvrali), "酔っぱらった"
    • მწკრივი; (mts'k'rivi), "列、screeve"
  • 六重子音の例:
    • მწვრთნელი, (mts'vrtneli), "コーチ"
  • 八重子音の例:
    • გვფრცქვნი (gvprtskvni), "君は我々の皮を剥す"
    • გვბრდღვნი (gvbrdgvni), "君は我々を引き裂く"

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 下宮忠雄1968年の論文に「ジョルジア語の構造」(弘前大学『文経論叢 文学篇』第4集]、NAID 110000399465)がある。

出典[編集]

  1. ^ Encyclopedia of the Languages of Europe By Glanville Price
  2. ^ 吉野&木内 1975, p. 757.
  3. ^ a b 佐川年秀『改訂版 旅のアジア語 45ヶ国55言語会話集』(KADOKAWA、2015年11月19日第1刷発行)511頁「ジョージア語(カルトリ語)」
  4. ^ a b 前田弘毅「グルジア(人)」『中央ユーラシアを知る事典』(2005)pp.178-179
  5. ^ 柘植洋一 「ジョージア語」- 日本大百科全書(ニッポニカ)、小学館。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]