黒砂糖
黒砂糖(くろざとう)とは、サトウキビの絞り汁を煮詰めて作る黒褐色の砂糖で甘味料として用いる。黒糖は沖縄県と鹿児島県の離島で主に生産される含みつ糖のうち、サトウキビの搾り汁だけを煮沸濃縮以外の加工をせず製品化したものをいう。さらに、「沖縄黒糖」は2006年(平成18年)4月に特許庁の地域団体商標の登録を受けた文字商標で、同年6月には財団法人食品産業センターの「本場の本物」認証制度に認定され独自のマークを印刷され販売されている[1]。一般に黒糖(こくとう)のほかマスコヴァド(英: muscovado)や、産地の奄美大島から称される大島糖(おおしまとう)なども含め黒糖と呼ばれることもある。
黒砂糖をbrown sugarと訳している和英辞典もあるが、これは多少糖蜜を残して精製した三温糖や赤砂糖、主にコーヒー用に用いる結晶状のコーヒーシュガーなどのことである。
黒糖の歴史
沖縄では1623年(元和9年、琉球王朝尚豊3年)に、中国から儀間真常が製糖法を習得し普及させ、沖縄の生活や文化、農業や経済と深くかかわりながら発展した。現在では、沖縄県と鹿児島県の離島や、他の農作物の生産が厳しい島々で、生産され特産品なっている。さとうきびのみから製造される、黒糖は沖縄県の伊江島、粟国島、伊平屋島、多良間島、小浜島、与那国島、西表島、波照間島の8つの離島で生産され、総生産量は年間8~9千tである[1]。
成分
主成分である糖分の他にカリウム、鉄、カルシウム、亜鉛ほか多くのミネラル成分を含み、特有の香味を持つ[1][2]。
製法
「黒砂糖」と呼ばれているものは大きく分けて3種類あり、それぞれ製法は異なる。
黒糖
サトウキビの茎の絞り汁を加熱し、水分を蒸発させて濃縮したものを冷やし固めて作る。酸性を中和し、不純物を沈殿させやすくするために、絞り汁に石灰を混入するが、糖分の分離精製をしておらず、砂糖の分類としては「含蜜糖」に当たる。
加工黒糖
黒糖に蔗糖、廃糖蜜などを加えて成分を調整したもの、もしくは粗糖(ザラメ)に糖蜜を混ぜた再製糖である。2012年4月1日から「黒砂糖」や「黒糖」と商品表示ができるのは、サトウキビの搾り汁を使った商品に限られる。黒糖に粗糖や糖みつを混ぜた商品は誤認を避けるため「加工黒糖」に改まる。
テンサイ糖
テンサイについては糖分を高度に精製する必要があることからサトウキビと同じような黒糖を作るのは難しいとされてきたが、2006年に北海道網走市の業者によって甜菜黒糖が製品化市販され食品材料としても供給されている。サトウキビ由来の黒糖とは異なる、オリゴ糖などの特徴的な成分を含有する。現在においても1社のみが生産している。
消費者庁が黒糖の製法に関して「サトウキビ」のみを原材料と定義したことで、2010年12月21日の網走市議会において、北海道の基幹作物の「甜菜」を原材料としたものも「黒糖」と表示することを認めるよう決議し、関係先に意見書を送達した。
流通
日本では沖縄県や鹿児島県などサトウキビ栽培が盛んな地域では一般的な甘味料として流通しているが、その他の地域ではミネラル分を豊富に含むことから健康食品として扱われることも多く、主に健康食品売り場や郷土産品売り場などで見掛けられる。
産地
海外では、バルバドス、フィリピン、ベトナム、フィジーなどが著名な産地であり、英語ではBarbados sugarとの呼び名もある。台湾もかつては大量に製造し、輸出していたが、近年は衰退している。
特徴や用途
その色から「黒」と形容されているが、これは型に流し込んだブロック状の塊の状態でのことであり、取り出して粉砕し、粉末にすると褐色となる。蜜分を多く含むことから白砂糖と比べると固まりやすく、大抵はブロックを砕いた程度の状態で販売されている。これを砕いたりすり潰したりしあるいは煮溶かして料理や菓子の材料にしたり、コーヒーや紅茶に入れる甘味料として使われる他、飴のように直接口にして風味を楽しむ。
黒砂糖はサトウキビのアルカロイドなどの各種成分を含んでいるため、蔗糖などの糖分は80%強と砂糖の中で最も低い。本来は不純物であるカルシウムや鉄など各種のミネラル分が糖蜜に多く含まれているため渋み・苦味といった味も多く、カラメルのように甘みも強く感じられるために味わい深いがその独特の香りや味わいのために料理や菓子の材料としてはやや用途を選ぶ。
なお、昔からの産地である九州・沖縄地方では黒砂糖を使った郷土菓子や料理などが多い。
黒糖の表示問題
本来黒糖はサトウキビの絞り汁を煮詰めたものであるが、中には加工黒糖や粗糖(ザラメ)に糖蜜を混ぜた再製糖が「黒糖」として販売されていた(本来の黒糖は原材料表示でサトウキビだけが表示されている)。しかし消費者庁は2011年(平成23年)3月20日付でJAS法解釈通知の『食品表示に関するQ&A』を改定、黒糖と黒砂糖の定義を同じとした上で、黒砂糖の定義に当てはまらないものの表示に黒糖という表現が使えないようになった[3]。
黒蜜
糖蜜#廃糖蜜も参照の事。
黒砂糖を水に溶かして煮詰め、とろみをもたせたもの、あるいは精糖の段階で出る糖蜜を黒蜜(くろみつ)という。みつまめ、わらびもち、くず餅、地方によってはところてんなどにかけて食べる。台湾ではかき氷や豆腐花と呼ばれる豆腐のデザートにも用いる。詳細は糖蜜を参照。
黒砂糖を使うお菓子
日本
これら素朴な郷土菓子(駄菓子を含む)の他、企業から発売されている一般向けの菓子の中にも黒砂糖を使った製品が見られる。
- ちょっちゅね - 沖縄県地域で発売されている菓子で、「黒糖とサンゴのカルシウム入り」と表示されている。
- チョコっとぅ。 - チョコと黒糖で作られている黒糖菓子で、全国の沖縄アンテナショップなどで発売されている。
- 黒のショコラ - 「黒=黒糖」に「ショコラ=チョコ」を練りこんでいる大人向けの黒糖菓子で、全国の沖縄アンテナショップや関東のコンビニなどで発売されている。
台湾
脚注
- ^ a b c 沖縄県黒砂糖協同組合公式サイト[1][2]
- ^ Smooth Life - 黒糖の栄養と効能がスゴイ!おすすめの活用法とは?
- ^ 消費者庁ニュースリリース
参考文献
- 伊藤汎 監修『砂糖の文化誌 ―日本人と砂糖』八坂書房、2008年。ISBN 978-4-89694-922-3。