駅長

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東日本旅客鉄道東京駅の駅長室

駅長(えきちょう)とは、鉄道駅における最高責任者・管理者である。

語源

元々「駅長」とは、古代の律令制における官道の「駅家(えきか/うまや)」の長の事を指した。

古代の駅は兵部省の管轄下にあり、監督業務は現地の国司が担当し、実際の業務は駅戸と呼ばれる駅周辺の農家が行い、そのうち富裕で経験豊富な1名が駅長に任ぜられた。駅長の職務は駅使の送迎・接待、駅馬駅子駅船の用意、駅家・駅田の管理、駅稲の収納・支出など、駅家に関する運営業務全般を扱った。駅長は終身制であったが、駅長の死去もしくは老病になどよる駅長の交替時に駅馬やその他駅家の備品を欠失させていた場合には、前任の駅長(あるいはその家族)がその欠失分を弁償しなければならなかった(天災などの不可抗力によるものは除く)。その代わり、在任中の課役(調雑徭)は免除されることになっていた[1]

菅原道真が「駅長莫驚時変改 一栄一落是春秋(駅長驚くことなかれ 時の変わり改まるを 一栄一落、これ春秋)」という漢詩を読んでいるが、これは藤原時平陰謀によって失脚し、大宰府へ流された道真が、流されていく途中で立ち寄った駅家の駅長の同情に対して答えたものである。

日本の駅長

国土交通省である鉄道係員職制によれば、「駅長は、運輸長の命を受け、駅務を統括し、構内の秩序を保持し、その所属係員を監督する」鉄道係員である。

JRの駅長

JR(旅客鉄道会社・旧国鉄)は、もともと鉄道省が直接運営していたため、駅長をはじめとする鉄道員は、今でいうところの公務員であった。大多数の現業職員は吏員であり、主要駅の駅長は高等官であり、官吏の処遇を受けた。戦前の駅長の社会的地位は高く、地方では警察署長、学校長と並び地元の名士として扱われた例も珍しくない。

JR(旅客鉄道会社・旧国鉄)においては駅長室のある方からプラットフォーム(いわゆるホーム)を1番線と名付けた。また駅構内における運転取り扱い業務(分岐器の転換や場内信号機・出発信号機の信号現示など)も本来は駅長が行うが、大規模駅では駅長1人での操作は到底出来ないので、駅長に代わってこの業務を行うことを命ぜられた駅員も駅長と呼ばれる(この場合の駅長は、役職名を指しているのではない。社内では当務駅長と呼ばれる)。またローカル線の駅で、業務を外部に委託している駅では、駅長にあたる人を駅務長と呼ぶ場合もある。このようなローカル線では、近年のCTCの普及により、全国的に無人駅が増加しているため、複数の駅を一つの管区として一管区に一人の駅長が配置される。この場合の職名は管理駅長と称される。

東京駅在来線および東北上越長野新幹線東日本旅客鉄道東海道新幹線東海旅客鉄道)のように複数のJRやほかの鉄道事業者にまたがっている場合は、それぞれの駅長がいる(東京駅の場合はさらに東京地下鉄丸ノ内線の駅長である、区長[2]がいる)。またJR東日本の東京駅長は現場職では唯一の取締役となっている。

私鉄の駅長

私鉄(民鉄)の場合も同じように、通常全駅に駅長がいるわけではなく、主要駅にのみ配置されていることが多い。この場合、複数の駅を一人の駅長が管理する。小田急電鉄などはさらに細かく、「○○管区○○管内」と称して、その管区の中での各駅の管理駅が決められているような事もある。この場合の職名は鉄道事業者により異なるが、管区長と称している会社もある。その下に駅長がいる場合もあり、一概には言えない(前述の小田急の場合、町田管区を例にあげれば、町田駅管区長が町田駅長を兼任して、新百合ヶ丘管内と登戸管内もそれぞれの駅長と共に管理している)。

他の係員との区別

駅長の制帽の鉢巻には大抵、赤地に金線が2本(太線1本、細線1本)入っているので外見上から判別できる。助役の制帽は赤地に金線の太線1本であることが多い(現在のJR東海の制帽の鉢巻には一般の係員でも金線の太線1本が入っており、駅長・助役との識別は鉢巻の地色による)。

JRの駅長は制服のボタンが2列(タブル)になっており、夏場は白い服を着用する。なお副駅長も同様に白い服を着用するが、制帽の金線は駅長が2本、副駅長が1本となっていることで区別できる。

駅長の業務

大規模・中規模駅の駅長は基本的に日勤と呼ばれる勤務(8時30分から17時15分が主流[要出典]エラー: 「2012年05月」は認識しません。「yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。)で、土日は公休が基本だが、祝日は出勤のケースが多い[要出典]エラー: 「2012年05月」は認識しません。「yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。。そのため夜間や土日では、ダイヤが乱れたときに「駅長を出せ!」と駅員を怒鳴っても、駅長は不在の場合がほとんどである。

主な業務は駅長室での執務の他、朝礼や主任会議、会合などへの出席が挙げられる。

小規模駅の駅長は、駅自体の配置要員が少ないため一般職と共に勤務ローテーションに入り、出札・改札業務、運転取り扱い業務などのほか、駅舎清掃も行う。また、駅長は商工会や観光協会など地域の会合へ出席することがある。そのため、大規模・中規模駅の駅長と比べると業務量は多く、当直勤務になることもある。地方の駅においては地元の名士とみなされることも多く、入学式卒業式やイベントなどに参加することもある。

駅長への昇級

通常は、各社で独自に実施する昇級試験を受けて昇進する。ただ駅長への昇級試験を受けて合格したからと言って、駅長に着任する訳ではない。副駅長や総務助役、首席助役などを経験して駅長になる場合もある。小規模な駅の駅長は大規模な駅の総務助役に相当するものとされている支社も多く、一度駅長に着任したが、次の異動先で総務助役・副駅長に着任することも少なくはない。JRの傾向では現場出身者(助役昇級)よりも支社出身者(課長級)が駅長になるケースが多い。

民鉄においては、昇級試験により登用する会社もあるし、年功により登用する会社もある。小規模な会社の場合、登用試験の制度が整っていないため、年功や抜擢により登用される会社が多い。

名誉駅長

地方観光地にある駅では、「観光駅長」などの名称で観光協会の職員や任期を限った契約で勤務する駅長を配置するところが存在する。女性であることが多く、存在意義については後述の一日駅長に近いが、一定期間勤務するものは出改札など通常の駅業務も行う。

一日駅長

有名人などを招き、一日駅長としてイベントを行うことがある。特別なたすきなどで飾られた制服や制帽を身につけ、通常の駅長が受け持つ複雑な業務ではなく、利用客や地域住民とのふれあいを目的とする。一日署長などと同様のイベントである。稀に犬などの動物も一日駅長とすることがある。

変わり種駅長

貴志駅のたま駅長(2007年2月12日撮影)

和歌山電鐵貴志川線貴志駅では、2007年にの「たま」が駅長に任命されて話題を呼んだ。たまの主な業務は(招き猫のように)「客招き」である。これにならって他の鉄道会社でも駅に縁の深い猫や犬を名誉駅長に任命するケースが現れた。

IGRいわて銀河鉄道奥中山高原駅では犬の駅長マロンが就任した。マロンは2008年6月24日に駅長を委嘱され、その後2009年8月29日に死去した

他にも肥薩線霧島温泉駅では、近所に住む2歳の男の子が「ちびっ子駅長」として九州旅客鉄道(JR九州)より委嘱を受けている。

このほか鉄道駅とは直接関係しないが、東急東横線祐天寺駅近くにあるカレー店「ナイアガラ」の店舗コンセプトは鉄道であり、店長は「駅長」と称している。

脚注

  1. ^ 田名網宏「駅長」(『国史大辞典 2』(吉川弘文館、1980年) ISBN 978-4-642-00502-9
  2. ^ 2008年2月16日放送 アド街ック天国より

関連項目