肥大型心筋症
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肥大型心筋症 | |
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概要 | |
診療科 | 循環器学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | I42.1-I42.2 |
ICD-9-CM | 425.4 |
OMIM | 192600 |
DiseasesDB | 6373 |
MedlinePlus | 000192 |
eMedicine | med/290 ped/1102 radio/129 |
Patient UK | 肥大型心筋症 |
MeSH | D002312 |
肥大型心筋症(HCM: Hypertrophic cardiomyopathy)は、明らかな原因がないにもかかわらず、局在性の心筋肥大を起こす病態である。
概念
本症は心筋肥大による左心室の拡張障害が主体である。拡張期が短縮することにより、心室に血液が充分に流れ込まなくなる。その結果、全身に流れる血液量が不足したり、心室→心房への逆流が起こることによりひいては肺水腫に至って呼吸困難を呈したりする。
心房細動の合併が多い。
分類
大動脈弁付近の壁肥厚による閉塞性肥大型心筋症 (HOCM) と、心尖部の壁肥厚による非閉塞性肥大型心筋症 (HNCM) に分類される。HOCMの基本病態は、心流出路狭窄による心拍出量低下であり、一方、HNCMの基本病態は、心室筋肥大による左室拡張能の低下および不整脈である。欧米では前者が多いが、日本では後者が比較的多い。また、肥大が心尖部に限局したapical HCMと呼ばれる病態も報告されている。初報告は日本でなされており、また日本人に多いとされている。
これらの研究の結果、現在では、心筋の異常な肥大こそがHCMの本質であり、各分類は、その肥大する部位の差によって、左室流出路狭窄が起きるか否かに過ぎないと認識されるようになっている。
症状と所見
臨床症状
各種検査所見
閉塞性肥大型心筋症においては、下記のような所見が見られる。
- 聴診
- 胸骨左縁 第3、4肋間から心尖部を中心として、収縮期 駆出性雑音、IV音を聴取する。
- 心電図
- 左室肥大、異常Q波、ST-T変化、巨大陰性T波(apical HCMの特徴)が見られる。ただし、HCMに特有の所見はなく、むしろ、自覚症状に乏しい割に、心電図上の変化が派手であることが、HCMの特徴と言える。
- 頚動脈波
- 二峰性脈(pulsus bisferiens:spike and dome型)が認められる。大動脈弁閉鎖不全症の二峰性脈とは異なる。急激な立ち上がりのあと、収縮中期から後期にゆるやかな2つ目の峰を形成する。
- 心エコー
- 非対称性心室中隔肥厚(ASH)
- 僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM)
- 大動脈弁の収縮中期 半閉鎖
- などが見られる。
- 心臓カテーテル検査
- 左室拡張末期圧(LVEDP)の上昇が特徴的である。
- 左室流入路と流出路の収縮期圧較差(20mmHg以上)が認められる。
- 病理学検査
- 肥大した心筋細胞が見られる。これらの配列においては、樹枝状分枝や渦巻き状などの錯綜配列が特徴的である。錯綜配列は、肥大した心室中隔を中心に分布する。
遺伝との関連
本症のおよそ半数は常染色体優性遺伝であり、トロポニンTなどのサルコメア遺伝子異常が報告されている。
治療
最大の問題である、突然死の予防が最重点となる。
過激な運動を避け、また、心筋の拡張能を改善するためと、心筋の負荷を軽減するために、β遮断薬が使われる。しかし、喘息を合併している場合のようにβ遮断薬が禁忌の症例にはカルシウム拮抗剤などが用いられる。大動脈弁狭窄や僧帽弁逆流が高度な場合には、心室中隔切除術などの外科的手術を行う。場合によっては突然死予防のため植え込み型除細動器が必要になる。