紙巻きたばこ

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紙巻きタバコ(かみまき-)とは、刻んだタバコの葉をで巻いてあるたばこのことである。シガレット(英:cigarette)とも呼ばれる。

パイプなどと違い他の喫煙器具を要せず、着火装置さえあればタバコ単体でそのまま喫煙可能なように加工されているため広く普及しており、特に日本では単に「たばこ」と言えば紙巻きタバコを指す事が殆どである。

なお、タバコ全体に係る内容については、喫煙の項を参照。

概要

一般的な紙巻きタバコ(画像はドイツのF6)
シャグタバコの代表的な銘柄「ドラム」

形状は刻みタバコを紙で筒状に巻いたもので、銘柄にもよるが直径は約6mm、長さは7~10cmほど。1本あたり約0.7gの葉が使われる。ただし長さや太さには銘柄(製品)による差異がある。

葉を巻く紙は、タバコの葉をこぼさず包み、かつ喫煙時には中の葉へ燃焼に適度な酸素を与え、また葉と同じペースで燃える必要があるため、特別な紙が使用されている。具体的には、ライスペーパー(シガーペーパー[1]と呼ばれる燃焼速度・排煙量・臭気・紙色のコントロールに炭酸カルシウムを添加されたものが利用されている。

タバコ会社により、紙巻タバコ1本に含まれるニコチン量のコントロール、喫煙時に摂取するニコチン量の制御が行われている。日本では、たばこ事業法に基づく財務省令により国際標準化機構(ISO)が定めた方法でタール・ニコチン量が測定されて、タバコ製品の包装に表示されている。実際の喫煙により摂取されるニコチン量は異なるが1~3mg前後である。表示上のニコチン量や製品名のマイルド(MildまたはMilds)、ライト(Lights)と言う記載は健康に関する安全性やリスクの軽減を意味しない。[2]

現在では、吸い口の部分にニコチンタールなどを吸収するフィルターがついたものが主流となっている。このフィルターには主にアセテート繊維が利用されており、日本たばこ産業の製品では日本フィルター工業が生産、活性炭を加えたチャコールフィルターがよく使われる。ただしフィルターは煙中のタールを吸着させることが主目的で、また完全にフィルターで吸収されるわけではない。フィルターのない製品には、両切り口付きといった製品がある(後述)。別途シガレットホルダープラスチックなどでできた吸い口)も販売されており、これを接続する者もいる。日本国外の製品では、一部にこの吸い口を残すものも見受けられる。

紙巻き煙草の税率が高いEU諸国では、あらかじめ長い煙草を作り、自分で切ってさや紙に詰める製品もある(ドイツのStax TrioやWest Quickies等)。また、刻みたばこ(いわゆるシャグタバコ)とシガレットペーパーを別々に購入し、自分で手巻きして喫煙する方法も一般的である。こういった国の街のタバコ屋では、一般に見られる20本詰めの紙巻きタバコパッケージのほか、刻みタバコとシガレットペーパーが併せて販売されているケースがほとんどである(日本でも多くの喫煙具専門店では同様のものが販売されている)。紙を巻くための専用の器具も存在し、ハンドルを回すことで紙巻きタバコの形になる。

たばこ葉には、有毒で習慣性の強いニコチンが含まれているので、乳児等が誤って口にしないよう、吸い殻も含め十分な注意が必要である。タバコを吸う人のうち、約半数はタバコに関連した病気で死亡するとする調査報告[3]や、タバコを吸う人は、そうでない人に比べて寿命が約14年短くなるという指摘も存在する[4]


歴史

17世紀中頃には、スペイン領アメリカ植民地で吸われていたパペリトと呼ばれる紙巻きタバコがスペインに伝えられていた。19世紀クリミア戦争の頃までには、近東やロシアにまで広がっていたとされる。カサノヴァの「回想録」や、ゴヤの「凧揚げ」に紙巻きタバコを吸う描写がみられる。

19世紀中頃から、工業化の進展に伴って人々の生活のテンポが速まるにつれ、より手軽に短時間で楽しめる紙巻きタバコの需要が伸びていった。

南北戦争後のアメリカでは、様々な巻上機(シガレットマシン)の開発が試みられた。またこの頃、原料となる葉たばこを効率よく仕上げる熱風送管乾燥(フルー・キュアリング)が開発された。

その喫煙の手軽さから20世紀に入り広く社会に浸透し、今日ではたばこと言えば紙巻きたばこを指すほどに広く普及している。

一方、20世紀中頃から喫煙の健康への影響が指摘されるようになり、1980年代以降先進国を中心に喫煙を規制する動きが広がっており、これらの地域では消費が減少している。


喫煙方法

日本で販売されている紙巻タバコ

一本あたりの平均的な燃焼時間は3–5分程度で、概ね半分から2/3程度吸ったら火を消して、吸殻として捨てる。

この場合、フィルター近くにタバコの葉が残るため、吸殻の残った部分を惜しんでギリギリまで吸う人もいる。また吸殻に残った葉の部分に再度火を付けたり(いわゆる『シケモク』)、ほぐして紙に巻き直すか煙管を使い吸う方法もあるが、かつて日本が貧しかった時代はともかくとして、個々の事情を別にすると近年はあまり見られない。「一度吸った物をまた吸う行為」自体を忌避するのもさることながら、シケモクでは饐えたような香りがしてしまうことから、喫味が低下するためである。この辺は、再点火して喫煙する葉巻(2度目以降の点火だと葉が適度に湿り気を帯びて風味が良いとして好まれる)との違いになっている。

火のついた先端は非常に高温で800度近くにもなる。紙巻きタバコは火と灰が剥き出しに近いので、人混みの中で安易に扱うと周囲の人に火傷を負わせることになりかねない(特に人ごみでは子供の目の高さに先端がくる事が多くなる)ほか、可燃物に引火し火災を引き起こす可能性もあるので、燃焼しているタバコの扱いには注意を要する。また、喫煙に際して必ず灰と吸殻が生じるので、これを散らさないために灰皿のある場所で吸うか、携帯灰皿を携行する。

形態・分類

長さによる分類

キングサイズないしロングサイズが現在では主流。

  • ミニサイズ - 長さ65mm、もしくは70mm未満。日本国内では現在流通していない。ミニ・スターが最後の製品だった。
  • レギュラーサイズ - 長さ70mm。ピース(10)ホープ (10)など。
  • ロングサイズ - 長さ80mm。
  • キングサイズ - 長さ85mm。
  • スーパーキングサイズ - 長さ100mm。これを「ロングサイズ」、「100mm(ひゃくみり)」、と呼ぶ向きもある。パッケージには通常「100's」と記載。
  • 120mmサイズ - 長さ120mm。日本国内では1970年代後半に発売された「ジョーカー」のみ。現在は流通していない。

吸い口による分類

  • 口付き
吸い口部分が、厚手の紙を筒状(つまり空洞)になっているもの。日本国内では、1977年の朝日廃止と共に市販品では消滅したが、2006年まで恩賜のたばこに使われていた。海外には、まだ口付きの製品が見られる。
  • 両切り
たばこの両端まで葉が詰まっているもの。フィルター付きに押されて種類は減ったが製品はまだ残っており、日本ではピース(10)ゴールデンバットなどが製造されている。
  • フィルター付き
吸い口にフィルターが付いたもので、現在の主流。たばこのニコチン・タール等を吸収するほか、たばこの葉が口に入らないなどの利点もある。19世紀から製品は存在したが傍流にすぎず、1950年代ごろから世界的に普及をみせた。日本では1957年ホープ (10)が最初の製品である。

元来、紙巻きタバコは口付きの製品から普及した。両切りより前に口付きが普及したのは、製造の際手作業で紙を巻いていた時代には、両端とも葉の長さを揃えることが困難だったためである。機械が本格的に導入されて以降は両切りが主流となり、後にフィルター付きが普及し一般的になった。

使用する葉による分類

製造たばこ定価法第1条において、使用している葉の質によって以下のように分類していた。

  • 一級品
上質の葉たばこを主原料に用い、精選した他の原料葉たばこと配合し、上級銘柄としての特色及び品位を保つように調製したもの
  • 二級品
上質及び中質の葉たばこを主原料に用い、選別した他の原料葉たばこと配合し、中級銘柄としての特色を保つように調製したもの
  • 三級品
中質及び下質の葉たばこを主原料に用いて調製したもの

該当銘柄(1985年3月時点)

製造たばこ定価法は、1985年4月1日たばこ事業法施行に伴い廃止されたが、廃止時点で三級品であった銘柄は課税額が安く抑えられており[5](経過措置扱い)、これらの銘柄は「旧三級品」と呼ばれる。

ニコチン量による分類

銘柄により、1本あたりの紙巻きタバコの喫煙のタール・ニコチン量によるバラエティがあるものがある。このタール・ニコチン量の測定については、60秒置きに2秒間で35mlを吸い、フィルター付きなら30mm・両切りなら23mmとなるまでこれを繰り返し、吸い込まれたタール・ニコチンを計測する方法による。なお、実際に喫煙で摂取することになる量とは異なり、JTホームページで明記されている。

パッケージ

日本では一般的に「ソフトタイプ」と「ボックスタイプ」の2つに分けられている。ボックスタイプには、クラムシェル形とフリップトップボックス形に分かれる。近年は、フリップトップボックス形のボックスタイプに人気がある。また、香りが逃げるのを防ぐため、フィルム包装が施されていることが多い。香りを逃がさないために缶入りにした製品もあり、ピース(50)が現在でも流通している。

パッケージには、法律で義務づけられているタバコ警告表示と、「ライト(Lights)」「マイルド(MildまたはMilds)」等の製品名を持つものについては、それらの記載が健康に関する安全性やリスクの軽減を意味しない旨が、あわせて記載されている。

なお、たばこの箱は証拠写真など物の写真を撮影する場合において被写体の横に置くことで被写体の物の大きさを示すための比較対象物として利用されることがある。

その他

ファイル:A pack of Bidi.jpg
ビディ
  • 日本では欧米の外国ブランドの紙巻きタバコを、俗に「洋モク」と呼ぶ。ただ、一般に洋モクと呼ばれるものでも、キャメルなどの旧R.J.Reynolds製品など、日本たばこ産業で国内生産しているものもある。また、マールボロのように、かつて国内でライセンス生産されていた関係で、現在も日本向けに独自のブレンドを施しているものもある。
  • テレビドラマや映画等のその扱いにより心理状態や状況を表す小道具として使われることが多かった。喫煙率の低下に伴い使用される頻度は減ったが、現在でも特に1990年代以前を描く場合に表現方法としてよく見られる。煙管の項の該当項目も参照。
    • 灰皿に強く押しつけて火を消すことにより、怒り・いらだち・強い決意などを表す。
    • 煙を他人の顔に吹き付けることにより、その人への侮蔑・見下しを表す。
    • 大量に吸い殻のある(地面に吸い殻が大量に足元に転がっている、灰皿に吸い殻が山盛りとなるなど)描写が、長い間じっとしている(長い時間同じ場所で待っている、何かに没頭しているなど)ことを表すためによく使われた。例として、デートの待ち合わせや、刑事の張り込みなど。しかし、喫煙マナー向上が叫ばれ、ゴミの投げ捨てや路上喫煙を禁止する法律や条例が制定された国・地域があることもあり、現在ではほとんど見られない。
  • キースブラックストーンなどは、リトルシガーと呼ばれ、形状は紙巻きたばこと同様で、軽いものは肺喫煙できるが、巻紙に葉を練りこんだシートペーパーを使用しているため、葉巻に分類されている。逆に、インドで作られているビディは、黒檀の葉で巻かれているが、葉巻の規格はタバコの葉に限られているため、こちらは紙巻に分類されている。

脚注

  1. ^ ライスペーパーとは言っても、食用のライスペーパーとは関係がない。スペルはどちらもrice paper
  2. ^ タールニコチン含有量推移厚生労働省 最新タバコ情報
  3. ^ BMJ
  4. ^ NYC
  5. ^ 国たばこ税道府県たばこ税・市町村たばこ税たばこ特別税を合わせた額は、通常のたばこが1,000本につき12,244円なのに対し、旧三級品は5,812円。

関連項目