波形メモリ (音源チップ)

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波形メモリ(音源チップ)(はけいめもり おんげんちっぷ)は1980年代にビデオゲーム機に用いられたディジタル音源の一つ。波形メモリ音源とも呼ばれる。

特徴[編集]

PSG音源とよく誤解されるが三角波・のこぎり波・正弦波に近い音も発音可能でPSGより音色の自由度が高い。

PCM音源に似た原理(構成)だがより単純で、一つの音色に使うメモリは平均32バイトと非常にローコストである。(多くは合計1Kバイト未満、一方PCMは数Mバイト超のものも存在する)しかも制御方法によってはPCM音源に近い発音をさせることも可能。

音が細かい矩形波で構成されている為、音程が低くなればなるほど模倣の元となった波形の音色との開きが出てくる。例えば正弦波を模倣した波形で低域を再生した際、正弦波本来の音よりも「プツプツ」というクリックノイズが目立つ現象が発生する。

ゲーム機用音源においてはVCF、すなわちフィルターパラメータやエンベロープ制御機能を伴わない為「時間的な音色変化の無いアナログシンセの簡易版」的音源として用いられる。ただし成熟期(スペースマンボウとそれ以降)には高速に波形を更新することで時間的な音色変化を実現している。また、制御する側で1周期ごとに波形を更新すればPCM音源のようにサンプリング音声を発声させることも可能。

ナムコの業務用ビデオゲームでは波形メモリ音源単独で使われていたが、他の環境(PCエンジンなど)では波形メモリ以外の音源、主にPSGpAPU、ノイズジェネレータ等と組み合わせて使われている。

ゲーム機に搭載された主な波形メモリ音源チップ[編集]

各音源のスペック[編集]

  • 波形メモリのサンプル数(1ループあたり)
    • 8~32 : WSGなど
    • 32 : SCCなど
    • 64 : FDS音源など
  • 波形メモリの量子化ビット数
    • 4 : N106など
    • 5 : PCエンジン、PC-FX
    • 6 : FDS音源など
    • 8 : SCCなど
  • 和音数
    • 1 : FDS音源など
    • 5 : SCCなど
    • 6 : PCエンジン、PC-FX
    • 最大8 : N106など

FDS音源(ファミコンディスクシステム音源)の特徴[編集]

ファミコンディスクシステムに採用されたFDS拡張音源(RP2C33に組み込み)は、 波形メモリを土台としながらも位相変調 (phase modulation)による FM的な周波数の変調が可能(そのためFM音源の一種に数えられることがある)、 変調(PWM)により出力波形を生成、などの特徴があり、独特のサウンドを持つ。

波形メモリ音源を使った主なゲーム[編集]

波形メモリ音源チップのエミュレータ等[編集]

その他各種ゲームマシン・PCエミュレータの一部に組み込まれている。また2009年以降はAdobe Flex3およびAdobe FlashCS4以降のダイナミックサウンド生成機能(ActionScript3拡張ライブラリの1つ)を用いた波形メモリ音源チップのエミュレートが可能[1]となっている。

脚注[編集]

  1. ^ ただし音源の再現にはAction scriptによるプログラミングやライブラリの組み込みによる「エミュレート環境の構築」が必要