沖縄科学技術大学院大学

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沖縄科学技術大学院大学
ファイル:Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University Logo.jpg
設立 2011年11月1日
学長 ジョンサン・ドーファン
研究ユニット数 46
研究者数 約200名
予算 119 億円
状況 2011年平成23年)10月24日設置認可
2011年平成23年)11月1日学校法人設立
学校種別 特別な私立
設置者 学校法人沖縄科学技術大学院大学学園[1]
本部所在地 沖縄県国頭郡恩納村字谷茶1919-1
キャンパス メインキャンパス
沖縄県国頭郡恩納村字谷茶
シーサイドハウス
沖縄県国頭郡恩納村字恩納
ホームページ http://www.oist.jp/ja

沖縄科学技術大学院大学(おきなわかがくぎじゅつだいがくいんだいがく、英語:Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University (OIST) )は、沖縄県国頭郡恩納村字谷茶に本部を置く5年一貫制の博士課程を提供する学際的な大学院大学である。教員と学生の半数以上を外国人とし、教育と研究は全て英語で行われる。

沖縄科学技術大学院大学は沖縄において世界最高水準の科学技術に関する教育研究を行い、沖縄の自立的発展と世界の科学技術の向上に寄与することを目的としている。2012年秋に最初の学生を受け入れる予定である。 大学院大学が設立される以前より、その前身の旧独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構(2005年9月設立)にて、先行的研究が進められ、また国際的なワークショップやセミナー等が開催されたことで世界的に知名度が向上している。 現在は、神経科学数学計算科学化学分子科学環境生態学物理科学に大別される5分野で学際的な研究が進められている。 沖縄科学技術大学院大学は以下を基本コンセプトとして掲げている。

  • 世界最高水準 (Best in the World):世界トップクラスの英知を結集し、世界最高水準の科学技術に関する研究及び教育を行う。
  • 柔軟性 (Flexible):政府の規制に沿った柔軟な組織運営を行うほか、政府の資金提供のもと、自主性と運営の柔軟性を保持し、世界トップクラスの大学院大学を目指す。
  • 国際性 (International):教員と学生の半数以上を外国人とし、公用語は英語とする。
  • 世界的連携 (Global Networking):世界、特にアジア・太平洋地域における科学者のネットワークの中心として発展しながら、世界のトップクラスの大学や研究機関と連携し、研究協力や共同研究を行う。
  • 産学連携 (Collaboration with Industry):企業との共同研究や研究成果の産業化に取り組むと同時に、企業を誘致することで、知的・産業クラスターを形成する。

沿革

沖縄科学技術大学院大学の設置に向けた歩みは、2001年尾身幸次内閣府特命担当大臣沖縄・北方対策科学技術政策担当)(当時)が沖縄に国際的な大学院大学を設置するという構想を提唱したことに端を発する。その後、構想検討会及び国際顧問会議における検討を経て、2002年5月、沖縄復帰30周年記念式典において、小泉純一郎内閣総理大臣(当時)が設置構想の推進を表明するに至り、続いて、同年7月に策定された沖縄振興計画において、本構想が沖縄振興施策の柱の一つに位置付けられた。2003年4月には大学院大学の建設予定地として恩納村が選定され、2004年2月に本構想の先行事業となる研究事業 Initial Research Project(IRP)として、4件のプロジェクトが選定された。

2005年3月、沖縄科学技術大学院大学構想の推進主体を設立する独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構法が国会にて可決され、同年9月に独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構が発足した。機構の理事長にはノーベル賞受賞者のシドニー・ブレナーが就任した。

2009年3月には、沖縄科学技術大学院大学学園法案が国会に提出され、衆参両院で全会一致で可決成立し同年7月10日に同法が公布された。学園法により、大学院大学の設置主体として、政府の規制に沿った柔軟な組織運営を行う特別な学校法人が設立されることとなった。

恩納村におけるキャンパスの整備については、2007年3月より造成工事が進められ、翌年、第1研究棟とセンター棟の建設が着工した。2010年3月に同施設の供用が開始され、それまでうるま市の研究施設で進められてきた研究活動は恩納村に移転した。

2012年9月の開学を目指し、2011年3月には文部科学大臣に対し、学校法人沖縄科学技術大学院大学学園寄附行為の認可申請及び沖縄科学技術大学院大学設置の認可申請が行われた。同年10月24日に文部科学大臣による認可を経て、11月1日付で沖縄科学技術大学院大学学園法が施行されたことにより学校法人沖縄科学技術大学院大学学園 (Okinawa Institute of Science and Technology School Corporation) が成立した。

学園及び運営組織

学校法人沖縄科学技術大学院大学学園の意思決定機関として理事会が設置されている。理事会の外部理事は沖縄科学技術大学院大学学園法第7条の規定に基づき、著名な科学者、沖縄の振興に関して優れた識見を有する者、及び大学経営に関して高度な知識及び経験を有する者から構成されている。現在の理事は下記のとおりである。

理事会は沖縄科学技術大学院大学学園の学長を選任し、学長は沖縄科学技術大学院大学の理事長を兼務する。大学の日常的な運営は理事会より学長に委任されている。さらに、理事会は、学園の副理事長を兼ねる大学院大学のプロボースト(上級副学長)を任命する。 初代学長兼理事長にはジョナサン・ドーファンが就任している。ドーファンは国際的に著名な物理学者であり、スタンフォード大学が運営するSLAC国立加速器研究所(旧スタンフォード線形加速器センター)の名誉所長である。

予算

沖縄科学技術大学院大学学園は沖縄科学技術大学院大学学園法の規定により、特別な学校法人として設置されている。通常の私立学校では、私立学校振興助成法に基づく国による補助(私学助成)が教育又は研究に係る経常的経費の二分の一以内の範囲で行われるが、当大学院大学では、同法に基づき、内閣府が予算の範囲内で運営費の二分の一を超えて補助できることとされている。当初は全額に近い補助が行われることが見込まれるが、同法施行から10年後に財政支援の在り方について見直しが行われることとなっている(同法附則第14条)。

2011年度の政府からの補助金の総額は約119億円であり、これに加え、研究助成金、受託研究、寄付金等による外部資金を獲得している。

研究者及び研究ユニット

沖縄科学技術大学院大学には、世界的に著名な科学者が複数在籍している。ノーベル賞(生理学・医学賞)受賞者のシドニー・ブレナーを始め、日本を代表する生物学研究の第一人者である佐藤矩行や、分子遺伝学分子生理学の分野において優れた業績を挙げ、2011年度の文化勲章を受章した柳田充弘、著名な物理学者で、理化学研究所播磨研究所のX線自由電子レーザー施設「SACLA」におけるCバンド主加速器の建設を統括した新竹積等が名を連ねている。

研究ユニット 沖縄科学技術大学院大学では、神経科学、化学・分子科学、数学・計算科学、環境・生態学、物理科学に大別される研究分野において最先端の学際的な研究が行われており、現在44の研究ユニットが発足している。研究ユニットを率いる教員は以下のとおりである。

  • ゴードン・アーバスノット 行動の脳機構ユニット
  • マヘッシュ・バンディ 構造物性相関研究ユニット
  • シドニー・ブレナー 分子遺伝学ユニット
  • トーマス・ブッシュ 量子システム研究ユニット
  • ピナキ・チャカラボティ 流体力学ユニット
  • シーレ・ニコーマック 光・物質相関ユニット
  • ダニ・ケシャヴ フェムト秒分光法ユニット
  • エリック・デシュッター 計算脳科学ユニット
  • 銅谷賢治 神経計算ユニット
  • エヴァン・エコノモ 生物多様性・複雑性研究ユニット
  • イゴール・ゴリヤニン 生物システムユニット
  • グスタボ・ジョイア  連続体物理学研究ユニット
  • 氷上 忍 数理理論物理学ユニット
  • 磯田昌岐 神経システム行動ユニット
  • ホルガー・イエンケコダマ 微生物二次代謝産物研究ユニット
  • 北野宏明 オープンバイオロジーユニット
  • デニス・ コンスタンチノフ 量子ダイナミクスユニット
  • ベアン・クン 光学ニューロイメージングユニット
  • ニコラス・ラスカム ゲノム・遺伝子制御システム科学ユニット
  • タティアナ・マルケス-ラゴ 統合システムバイオロジーユニット
  • 丸山一郎 情報処理生物学ユニット
  • 政井一郎 神経発生ユニット
  • アレクサンダー・セルゲイェヴィッチ・ミケィエブ 生態・進化学ユニット
  • ジョナサン・ミラー 物理生物学ユニット
  • 御手洗哲司 海洋生態物理学ユニット
  • メリー・アン・プライス 発生分化シグナル研究ユニット
  • ヤビン・チー エネルギー材料と表面科学ユニット
  • ファデル・サマテ 細胞膜通過輸送研究ユニット
  • 佐藤矩行 マリンゲノミックスユニット
  • 佐瀬英俊 植物エピジェネティクスユニット
  • ニック・シャノン 量子理論ユニット
  • 新竹積 量子波光学顕微鏡ユニット
  • ロバード・シンクレア 数理生物学ユニット
  • ウルフ・スコグランド 構造細胞生物学ユニット
  • ムックレス イブラヒム・ソーワン ナノ粒子医工学応用技術研究ユニット
  • 高橋智幸 細胞分子シナプス機能ユニット
  • 田中富士枝 生体制御分子創製化学ユニット
  • 外村彰 電子顕微鏡ユニット
  • ゲイル・トリップ 発達神経生物学ユニット
  • ディヴィッド・ヴァン・バクター 神経結合の形成と制御研究ユニット
  • ジェフ・ウィッケンス 神経生物学研究ユニット
  • マティアス・ウォルフ 生体分子電子顕微鏡解析ユニット
  • 山本雅 細胞シグナルユニット
  • 柳田充弘 G0細胞ユニット
  • 杉山(矢崎)陽子 臨界期の神経メカニズム研究ユニット

大学院大学

文部科学省からの認可を受け、2011年11月に沖縄科学技術大学院大学が設立された。沖縄科学技術大学院大学は、学際的な単一の研究科(科学技術専攻)及び専攻(科学技術専攻)を置く、5年一貫制の博士課程を提供する大学院大学であり、2012年9月に最初の学生を受け入れる。1学年の学生数は20名程度となる予定であり、一人の教員が少人数の学生を指導する体制となる。教員及び学生の半数以上は外国人となり、教育研究は英語で行われる。学生には研究生活に必要な支援が提供され、研究に集中できる環境が整えられる。また、博士課程においては、授業とラボ研究のバランスが重視され、学生は、最先端の研究機器が整備されたラボで、世界トップレベルの研究者による指導を受けることとる。

キャンパス

2003年4月に大学院大学の建設予定地として恩納村が選定された。丘陵地にある恩納キャンパスは亜熱帯の豊かな森に囲まれ、美しい沖縄本島西海岸を見下ろすことができる。恩納村のキャンパスは2010年3月より供用が開始された。キャンパス全体の敷地面積は約222ヘクタール、内メインキャンパスは約80ヘクタールである。現在、恩納キャンパスにはセンター棟、第1研究棟があり、建設中の第2研究棟は2012年4月に竣工予定である。将来の建設計画には第3研究棟が含まれる。

課題

  • 尾身科学技術政策担当大臣(当時)の構想にも関わらず、当初、文部科学省はその設立に難色を示した。教員組織が50人になり次第(2007年度17人)、大学院大学設立の申請を行うことを目指しているが、開学時期が当初の計画より遅れている。生命系の研究施設の場合、試薬などの実験材料の入手、納入業者の育成、技術者の確保、環境問題(希少種の存在が確認、廃液問題)など、インフラに未解決の問題が多い。また優秀な研究者を集めるのに十分な魅力を持つのか、という懸念も提示されている。例えば、地元の小中併設校で、世界的な最先端研究者のエリート子弟たちの高度教育ニーズを果たして満たすことができるのかどうかについては疑問が残る。[要出典]
  • 2010年度科学技術関係予算の優先度判定(2009年12月)の場において、学生の確保や経営の見通しに関して大きな懸念が示され、最低ランクとなる「減速」の判定が下されたが、2010年10月に恩納村での開学準備シンポジウムに参加した沖縄政策担当の末松義規内閣府副大臣は「政府、内閣府としてOISTに最大の支援をしたい」との表明をした[2]
  • センター棟と管理棟の建設費が当初計画の138億円から40億円超過したことや、外国人職員によるパワーハラスメントにより退職に追い込まれた職員がいることなどが発覚した。要職を占める外国人職員に対するチェック機能・内部統制機能がないことが問題視されている[3]
  • 柳田ユニット代表がブログ上で、ドーファン新学長の給与年収が6000万円を超えること、新学長の兄弟を客員教授として採用したこと、軍事研究費導入のコンセプトを持っていることなどを暴露。100%税金で運営されているにもかかわらず、形式上は私立大学となっているOISTの運営形態に懸念を示している[4]

参考文献

  1. ^ 平成24年度開設予定大学等認可申請一覧(平成23年4月) 「文部科学省HP」 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/1304906.htm
  2. ^ 総合科学技術会議(第87回)議事次第 (資料2-2-12, 継続) - 琉球新報(2010年10月7日)
  3. ^ 沖縄科学技術大学院大学/OISTの深層 BTJジャーナル NO.053(2010年5月)
  4. ^ 柳田充弘ブログ「楽しかった結婚披露宴、とんでもない沖縄大学院大学の新学長の年収、大学院大学組織のイロハ」(2011年11月06日)、「想定読者、軍事研究費導入議論に否定的でない新学長、そして新学長の兄弟、まず二つの提言」(2011年11月07日)、「想定読者、軍事研究費導入議論に否定的でない新学長、そして新学長の兄弟、まず二つの提言」(2011年11月07日)

関連項目

外部リンク