春琴抄

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春琴抄』(しゅんきんしょう)は、谷崎潤一郎による中編小説1933年(昭和8年)6月、『中央公論』に発表された。盲目三味線奏者春琴に丁稚の佐助が献身的に仕えていく物語の中で、マゾヒズムを超越した本質的な耽美主義を描く。句読点や改行を大胆に省略した独自の文体が特徴。

あらすじ

物語は春琴の墓を訪ねる「私」のモノローグから始まる。

大阪道修町薬種商鵙屋の次女、春琴(本名は琴)は9歳の頃に眼病により失明して音曲を学ぶようになった。春琴の身の回りの世話をしていた丁稚の佐助もまた三味線を学ぶようになり、春琴の弟子となる。わがままに育った春琴の相手をさせようという両親の思惑とは裏腹に、春琴は佐助が泣き出すような激しい稽古をつけるのだった。やがて、春琴が妊娠していることが発覚するが、春琴も佐助も関係を否定し、結婚も断る。結局、春琴は佐助そっくりの子供を出産した末に里子に出した。

やがて春琴は20歳になり、師匠の死を期に三味線奏者として独立した。佐助もまた弟子兼世話係として同行し、我が儘がつのる春琴の衣食住の世話をした。春琴の腕前は一流として広く知られるようになったが、種々の贅沢のために財政は苦しかった。

そんな中、春琴の美貌が目当てで弟子になっていた利太郎という名家の息子が春琴を梅見に誘って口説こうとするが、春琴は利太郎を袖にしたあげく、稽古の仕置きで額にケガをさせてしまう。その一か月半後、何者かが春琴の屋敷に侵入して春琴の顔に熱湯を浴びせ、大きな火傷を負わせる。春琴はただれた自分の顔を見せることを嫌がり、佐助を近づけようとしない。春琴を思う佐助は自ら両眼を針で突き、失明した上でその後も春琴に仕えた。佐助は自らも琴の師匠となり、温井(ぬくい)琴台を名乗ることを許されたが、相変わらず結婚はせずに春琴の身の回りの世話を続けた。

春琴は明治19年に脚気で亡くなり、佐助もまた、その21年後の明治40年に亡くなった。

文体

春琴抄は、改行句読点鈎括弧などの記号文字を極力使わない特徴的かつ実験的な文体で書かれており、10行近く句点がない事も珍しくなく、文章の区切りとして数ページ毎に空行がある他は、作中で一度も改行を使っていない。 通常なら明らかに句点を必要とする場所でも句点を使わずに書いてある事も多く、例えば「…した。すると…」とか「…であろう。最初は…」といった場所が「…したすると…」とか「…であろう最初は…」となっている。

映画

春琴:田中絹代/佐助:高田浩吉
春琴:京マチ子/佐助:花柳喜章
春琴:山本富士子/佐助:本郷功次郎
春琴:渡辺督子/佐助:河原崎次郎
春琴:山口百恵/佐助:三浦友和
春琴:長澤奈央/佐助:斎藤工

テレビドラマ

春琴:山本富士子/佐助:市川猿之助
フジテレビ シオノギテレビ劇場1965年10月7日 - 10月14日
前番組 番組名 次番組
春琴抄
フジテレビ 木曜22:00 - 22:45枠
春琴抄
(これより「シオノギテレビ劇場」)
戸田家の兄妹

舞台

佐助:大地真央/春琴:春風ひとみ
佐助:絵麻緒ゆう/春琴:月影瞳
佐助:絵麻緒ゆう/春琴:紺野まひる
佐助:早霧せいな/春琴:和音美桜(役替わりAパターン)
佐助:蓮水ゆうや/春琴:すみれ乃麗(役替わりBパターン)
佐助:チョウソンハ/春琴:深津絵里
佐助: 蔡浙飛/春琴:章益清
深津絵里:(操偶飾演):春琴
  • 2016年「極上文學 第10弾 春琴抄」(全労済ホール/スペース・ゼロ、OBP円形ホール)
演出:キムラ真、脚本:神楽澤小虎、音楽:橋本啓一、キービジュアル:中村明日美子 / 製作:CLIE、企画:MAG.net、制作:Andem
足立英昭伊崎龍次郎大高洋夫川下大洋鈴木裕斗富田翔藤原祐規桝井賢斗松本祐一和田琢磨

オペラ

テレビアニメ

外部リンク