日本の漫画賞

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日本の漫画賞(にほんのまんがしょう)では、日本において漫画作品に与えられる賞について解説する。

日本における漫画賞は大別してプロの漫画家による発表済みの作品を対象にするものと、新人の応募作品を対象とするものがある。以下便宜的に前者を「漫画賞」、後者を「新人賞」と表記する。

漫画賞

日本における新人向けでない漫画賞には以下のようなものがある(創立年順)。いずれも年に1回開催される。

このうち小学館漫画賞講談社漫画賞は漫画出版の大手が主催する賞であり、受賞作品は自社系列の出版社による作品が大半を占める。日本漫画家協会賞日本漫画家協会会員の漫画家によって選出されており、他に比べてキャリアの長いベテランの作品が入賞することが多い。比較的新しい賞である手塚治虫文化賞文化庁メディア芸術祭マンガ部門はいずれもその年に発表された最も優れた作品を顕彰することを目的とするが、前者は審査員が主に評論家、作家からなり、後者は主に漫画家からなる点に違いがある。この2賞でともに大賞を受賞したのは2012年現在まで『バガボンド』(井上雄彦)と『失踪日記』(吾妻ひでお)のみであり、さらに日本漫画家協会賞の大賞を受賞しているのは『失踪日記』のみである。この3賞は「特別賞」や「功労賞」などを設けて漫画の発展に寄与した人物への表彰も行なっている。2006年から続く書店員投票型マンガ賞全国書店員が選んだおすすめコミック日本出版販売が運営しており、毎年1000人以上の書店員が投票に参加している。2008年に創設されたマンガ大賞は各書店のマンガ担当者などの有志によって選定される。

作品のジャンルが限定されるものの中で文藝春秋漫画賞は主にギャグ漫画や4コマ漫画を表彰するユニークな賞であったが2002年に廃止された。星雲賞コミック部門ではSF・伝奇作品が対象となる。また日本SF大賞でも漫画作品が対象とされることがあり、過去に『童夢』(大友克洋)、『バルバラ異界』(萩尾望都)が受賞している。

新人賞

漫画新人賞は新人漫画家の発掘を目的としており、雑誌ごとに独自の賞を設けている場合が多いが、小学館新人コミック大賞白泉社アテナ新人大賞のように出版社主催のものもある。新人賞は年に数回行なわれるものがほとんどである。ここではWikipedia日本語版に記事があるものを挙げる。

新人賞の抱える問題

新人の発掘を目的とした新人賞だが、漫画産業の発展という立場から見ると問題があると中野晴行『マンガ産業論』は指摘している[1]

  • 新人賞に応募する者はたいていその雑誌の読者であるから、連載している漫画家に影響を受け、作風が似通ってしまう。
  • 商業誌はあくまでも即戦力を求めているのであり、斬新で実験的な漫画でなく人気が出る漫画が入選する。
  • 応募者がどうしてもマイナー誌でなくメジャーな人気雑誌に偏る。
  • 新人賞を受賞しデビューしても、編集者によって作風が矯正させられる場合がある。

そして出版社・編集者が新人漫画家を「実力主義」の名目で使い捨てにせず、先行投資として大切に育成するべきと主張している。

国際漫画賞

漫画の表現形式は日本のマンガ(MANGA)、アメリカのアメリカン・コミックス、ヨーロッパのバンド・デシネのように各文化圏で独自の発展を遂げているため、ノーベル文学賞カンヌ国際映画祭のような世界的に権威のある賞は存在しない。日本では2007年から麻生太郎外務大臣の提唱により国際漫画賞が開催されており国を超えた作品の募集を行なっているが、受賞作品はいずれも日本の漫画(MANGA)の影響を強く受けているものである。ほかに講談社モーニング」もモーニング国際新人漫画賞(M.I.C.C)を2007年より開催しておりバンド・デシネやアメリカンコミックスも募集の対象としている[2]が、第1回は日本の漫画の影響が強いものが入賞している。この他読売新聞社が1979年より開催している読売国際漫画大賞があり、これは専ら1コマ漫画を対象にしている。近年では、2012年より言語の壁を意識せずに執筆活動を行うことを目的としたサイレントマンガ・オーディションが、月刊コミックゼノンを発行する株式会社ノース・スターズ・ピクチャーズの主催(運営:株式会社コアミックス)により開催されている。この漫画賞は、日本国内の読者だけでなく、同時に全世界への発信を目的としている点がの他の漫画賞と比較して特徴的である。

日本国外の国際漫画賞の例としてフランスのアングレーム国際漫画祭で行なわれるものがある。主にバンド・デシネを対象としているが、日本の作品の紹介が進んだことにより日本の翻訳作品のノミネートも増えている。2007年には水木しげるが日本人で初めて最高賞であるベストコミックブック賞を受賞した(『のんのんばあとオレ』)。

出典

  1. ^ 中野晴行『マンガ産業論』筑摩書房、2004年、200-202頁。
  2. ^ M.I.M.C第2回募集要項