抵抗器
3本の抵抗器 | |
種類 | 受動素子 |
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電気用図記号 | |
または、 |
抵抗器(ていこうき、resistor)とは、一定の電気抵抗値を得る目的で使用される電子部品であり受動素子である。通常は「抵抗」と呼ばれることが多い。
電気回路用部品として、電流の制限や、電圧の分圧、時定数回路などの用途に用いられる。集積回路など半導体素子の内部にも抵抗素子が形成されているが、この項では独立した回路部品としての抵抗器について述べる。
概要
抵抗器においてもっとも重要な値は抵抗値であり、これは電圧と電流の比をSI単位の1つであるオーム(Ω)で示したものである。 1ボルトの電圧を加えたとき、1アンペアの電流[1]が流れると、その部品は1オームの電気抵抗を持つと言う。
抵抗器の中の抵抗を生じる素材は抵抗体と呼ばれ、抵抗体に流れる電流によって生じる抵抗によって発熱する。 理想的な抵抗器は、素子に加えられる電圧や流れる電流に関わらず、一定の電気抵抗を示すことであるが、実際の抵抗器は理想と異なり温度などの要素によって抵抗値が多少は変動する。自己発熱により温度が変わった場合や周囲環境の変化でも電気抵抗値の変動が最小となるように設計・製造されている。
主な定格
- 抵抗値
- 電気抵抗の値。基本単位はΩ(オーム)であり、必要に応じてk(キロ)やM(メガ)といったSI接頭辞が使われる。固定抵抗器の場合、JISやISOで制定されたE系列と呼ばれる等比数列刻みの値で生産されている。実際の回路設計では、材料部品の品目数を少なくするため、E12(10・12・15・18・22・27・33・39・47・56・68・82を基数とする倍数値)で設計されることが多い。他にE24も使われている。
- 定格電力
- 抵抗器は、電力を消費することにより発熱するので、定格電力が規定されており、その範囲内で使用することが求められる。単位はW(ワット)である。小はチップ抵抗にみられる1/32Wから、大はセメント抵抗やホーロー抵抗など数百Wのものまである。
- 定格電圧
- 抵抗にかけられる電圧の上限。通常の回路では定格電圧は定格電力によって制限される場合が多いが、高い電圧を扱う回路において、高い抵抗値の素子を用いる場合や、小型のチップ抵抗器を用いる場合には注意が必要となる。
- 抵抗許容差
- 定格抵抗値に対する偏差の許容値で単位は % である。一般的には誤差と称される。
- 抵抗温度係数
- 抵抗器の温度変化に対する抵抗値変化の割合。単位は ppm/℃ である。
分類
抵抗器はその形状や機能、構造によって幾つかの種類が存在する。
形状による分類
現在、電子機器で使用される小型抵抗器の大部分は、リード線(金属製の脚)を持たない表面実装(表面実装技術)パッケージ(チップ抵抗と呼ぶ事が多い)となっている。これらは非常に小さい角板状の形状をしており、抵抗体の保護には樹脂又は低融点のガラスが用いられる。主に使用されている種類は次の通りである。
分類 | 読み方 | サイズ | 備考 |
---|---|---|---|
3216 | サンニーイチロク | 3.2mm×1.6mm | |
2125 | ニーイチニーゴ | 2.0mm×1.25mm | 2012と称されることも多い |
1608 | イチロクゼロハチ | 1.6mm×0.8mm | イチロクマルハチとも |
1005 | イチゼロゼロゴ | 1.0mm×0.5mm | イチマルマルゴとも |
0603 | ゼロロクゼロサン | 0.6mm×0.3mm | |
0402 | ゼロヨンゼロニー | 0.4mm×0.2mm |
携帯電話機等の小型電子機器では0603のような微細なサイズのものが多く使用されている。さらに小さい0402も一部で使われ始めている。
一昔前までは、抵抗器本体からリード線を出した形状のものが主流であった。現在でも大電力品や特殊な用途の抵抗器では、このタイプのものが使われている。リード線タイプの抵抗には、抵抗器本体の両端からリード線を出したアキシャルリードパッケージという細長い形状のものと、抵抗器本体の片端から2本のリード線を平行に出したラジアルリードパッケージとがある。また、リード線の持つ抵抗による影響を避けるために四本のリード線を引き出した四端子抵抗器と呼ばれるタイプも存在する。
非常に大電力の抵抗器では、ねじ止め式の端子やヒートシンクを備えたものもある。
また、抵抗体本体の保護の方法によっても幾つかに分類される。 抵抗器本体を樹脂塗装で保護した簡易絶縁型、絶縁塗装をより入念に行った絶縁塗装型、絶縁にほうろうを用いたほうろう型、樹脂やガラスに封止したモールド型、セラミックや樹脂のケースに収め封止したケース型などがある。
機能による分類
- 固定抵抗器
- 抵抗値が一定の抵抗器
- 可変抵抗器
- 抵抗値を変更することができる抵抗器。「ポテンショメータ」とも言う。
- 英語では可変抵抗器全般を指してポテンショメータの語が使われるが、日本語でポテンショメータと言った場合、多回転型や、高精度な角度検出用のものを特に指しているのがふつうである。
- 狭義では、つまみなどが付き、簡単な操作で抵抗値が変えられるようになっているものを特に指して「可変抵抗器」と言う。バリオームあるいはボリュームとも言う。抵抗体を露出させた固定抵抗器の端子間に、スライダと呼ばれる可動端子を設けることによって実現する。スライダを直線的に移動させる形状のものと、円周上を移動させる形状のものがある。
- 半固定抵抗器
- 広義の可変抵抗器の一種で、ユーザーは通常操作せずドライバ等で操作し、回路定数の調整等抵抗値を一度変更したらそのままの値で使用するものを「半固定抵抗器」と言う。トリマポテンショメータまたはトリマーボリュームとも言う。
- シャント抵抗器
- 電流測定用に回路に挿入する抵抗器。抵抗値が小さい(0.2mΩ-数Ω程度)。大電流測定用に数万Aを流せるものや、精密測定用に誤差±0.01%程の高精度なものがある。
構造・抵抗体による分類
- 金属皮膜抵抗
- 厚膜型
- 汎用に使える高精度(誤差1%程度)抵抗器。俗にキンピと略される。一般的な炭素皮膜に比べ雑音などの特性は良いが、価格が二倍程度に高くなる。
- 薄膜型
- 高精度(誤差0.05%のものもある)。低温度係数だが厚膜型より高価。
- 酸化金属皮膜抵抗
- 中電力(1-5W程度)向け。耐熱性良好。サンキンと呼ばれる。
- 炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)
- 通常、小型の抵抗器というとこれを指す。誤差5%程度。雑音や周波数の特性はよくないが、価格が極めて安いため、一般的に幅広く使われている。
- ソリッド抵抗
- 特性は炭素皮膜に似ているが、雑音がやや大きい。寄生インダクタンスが低く、高周波向け。断線が起こりにくいという意味では信頼性はよいが、温度係数が非常に大きく、また経年変化によっても抵抗値が大きく変化(増加)するため、精密な抵抗値を求められる用途には使われない。
- 巻線抵抗
- 抵抗体に螺旋状の金属線を用いたもの。高精度を目的としたものと、電力容量を重視したものがある、温度係数が少ない。無誘導巻きとしインダクタンスの低減を図ったものもある。
- ホーロー抵抗
- 巻線抵抗の一種、抵抗体を保護するためにホーローを用いたもの。自己が発生する熱に対して非常に強いため、数十~数百Wの大電力用に使われる。
- メタル・クラッド抵抗
- 巻線抵抗の一種、絶縁した上で金属製の外装を取り付けてある。放熱板に取り付けて大電力用に使用する。
- セメント抵抗
- 大電力(2-20W程度)用途に用いられる。抵抗器本体をセラミック製のケースに収め、セメントにより封止したもの。
- 酸化金属皮膜型
- セメント抵抗のうち、抵抗体に酸化金属皮膜を用いたもの。比較的大きな抵抗値のものに多い。
- 巻線型
- セメント抵抗のうち、抵抗体に金属線を用いたもの。小さな抵抗値のものに多い。
- 金属箔抵抗
- 金属のインゴットを圧延し造られる、極めて高精度。温度係数も極端に低い。非常に高価。
- 金属板抵抗
- 極めて低い抵抗値が得られる。mΩオーダーまで。
- ガラス抵抗
- 超高抵抗値(100MΩから1TΩ)が得られる。
- 集合抵抗:複数の抵抗器を1つのパッケージに封入した抵抗器。ネットワーク抵抗、抵抗アレイとも言う。
- 厚膜型
- 同一抵抗値を手軽に多数並べるときに使う。
- 薄膜型
- アナログ回路等で、相対的な抵抗値のばらつきを低減したい場合に用いる。
- 液体抵抗器
- 液体を抵抗体として利用したもの。
表示
カラーコード
従来より、小型抵抗器には色の帯により抵抗値と誤差を表現するカラーコードが使われてきた。帯は4本から6本で構成されており、抵抗器の端に近い位置にある帯から順に読む。 なお固定抵抗器の色による表示は JIS C 5062 (IEC 62) で定義される。
例えば、青・灰・橙・金で並んでいる場合、
- 68×103・±5%
- = 68 × 1000 (Ω) ・±5%
と変換し、68000Ω ±5% = 68kΩ±5% と読むことができる。
色帯の数が多い場合でも、指数と誤差についての扱いが同様である。 残りの色帯は数字として読む。 たとえば、青・灰・茶・赤・茶で並んでいる場合、6・8・1・102・±1%と変換し、上記の例と同じように68.1kΩ±1%となる。 こういった表記は金属皮膜抵抗に多いが、上記の例(カーボン被膜抵抗に多い)と比較した時に、指数を表す色帯の色が違っている点に注意したい。
現在、小型の抵抗器ではチップ型が主流になっており、カラーコードを見かける機会も少なくなってきている。
文字表示
チップ型などでは、3桁(xxy)や4桁(xxxy)の数字や文字で抵抗値を表示する場合があるが、1005サイズ以下のチップ抵抗では小さすぎて判読困難なため、表示自体が省略されている。文字の意味は xxx×10yΩ、小数点は"R"で表現する。上記画像の「205」と記されたチップ抵抗の場合、20×105=2,000,000Ω=2MΩ である。
セメント抵抗やホーロー抵抗などのような表面積が広い抵抗器では、「2W 100ΩJ」のように定格電力、抵抗値と誤差を表す記号等を本体に直接印刷しているものが多い。抵抗値については、上記チップ型同様の数字記号を用いる場合もある。
抵抗器の図記号
日本では、抵抗器の図記号は、従来はJIS C 0301(1952年4月制定)に基づき、ギザギザの線状の図記号で図示されていたが、現在では国際規格のIEC 60617を元に作成されたJIS C 0617(1997-1999年制定)に基づき長方形の箱状の図記号で図示することになっている。 旧規格であるJIS C 0301は、新規格JIS C 0617の制定に伴って廃止されたため、旧記号で抵抗器を図示した図面は、現在ではJIS非準拠な図面になってしまう。しかし、拘束力は無いため、現在も従来の図記号が多用されている。
関連する他の電子部品
抵抗器は環境変化で抵抗値が変化することが無いように配慮されているが、逆に温度によって抵抗値が大きく変化するように作られたサーミスタと呼ばれる電子部品があり、温度センサとして使用される。 また、同じように環境変化によって抵抗値が変化する素子としては、「CDS(光電導セル)」という電子部品があり、これは光の量によって抵抗値が増減する。
実際の電子回路では、受動素子の1つであるコンデンサとともに用いられることが多く、両者の頭文字を取って CR と表現されることが多い。
鉄道車両における抵抗器
電気機関車や電車においては直流モーターの電流を調節するために、長らく抵抗器を使った制御方式(抵抗制御)が採用されてきた。近年の半導体や交流モーターを使った新しい制御方式では不要なため、姿を消しつつある。
材質と冷却方式から、以下の様に分類される。
抵抗体
鋳鉄グリッド式
古くから使われてきた方式。重いことと、熱容量が少ないことから、新性能車では極初期に使われただけであった。
ニクロムリボン式
上記に変わって主流となった方式。軽量であることと、発電ブレーキの装備に伴い、容量を増やす必要から、新性能車ではこれが主流となった。
冷却方式
自然通風式
古くから使われてきた方式。発熱量が少ない場合は、これで充分だった。国鉄新性能車(発電ブレーキ付き)では採用例が少ない(151、301、103-1000 / 1200 / 1500、105、119、121系等)。私鉄では、ブロアーファンの故障リスクが無い事から発電ブレーキ付きの車両でもこの方式が主流で、床下は抵抗器で埋め尽くされた。特に近鉄、南海、神戸電鉄等では1両に積みきれずに2両に亘って搭載される場合もあった。
日本以外では屋根上に搭載される場合が多い。日本では名鉄のモ600形が屋根上に抵抗器を搭載されていたほか、抵抗制御ではないがJR北海道の721、781、785系も屋根上に抵抗器を搭載している(これらは抵抗制御を行う車両ではない。あくまで発電ブレーキを作動させるためだけの抵抗器である)。
強制通風式
- 発熱量が多い場合に有効な方式。国鉄新性能車は大部分がこの方式。私鉄では採用例が少なく、相鉄、東急、小田急、京王、名鉄、阪神、名古屋市営地下鉄等に採用例があるくらいである。中でも、名鉄や阪神にはGE・東芝製MCM制御装置(制御装置と抵抗器が一体化)の採用例があり、これも強制通風式となる。ブロアーファンが故障した場合や、何らかの事情により送風を止めた場合は、発熱量の問題で力行は可能だが発電ブレーキが使用不能となる。