コンテンツにスキップ

宗谷トンネル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Tam0031 (会話 | 投稿記録) による 2012年5月25日 (金) 15:05個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎概要: サハリントンネルにリンク)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

宗谷トンネル(そうやトンネル。仮称)は、将来、日本北海道ロシア連邦サハリン(日本名:樺太、以下サハリンと表記)の間に建設される可能性のある海底トンネル

概要

稚泊トンネル(ちはくトンネル)とも言う。これは青函トンネル青森函館を結ぶ青函連絡船から採用されたように、北海道の稚内と樺太の大泊との間に運行されていた稚泊連絡船に因む名称である。

北海道の最北端・宗谷岬とサハリンの最南端・クリリオン岬(日本統治時代の名称:西能登呂岬)の間は約43kmで、この直線上で宗谷海峡(ロシア名:ラペルザ海峡)の最深部は約70mである。北海道とサハリンでは、地質には大きな違いがなく、技術的な側面では、トンネルの建設は青函トンネルよりも難しくはないと見込まれる。

さらに、タタール海峡(日本名:間宮海峡)にも海底トンネル(サハリントンネル)を建設し、バイカル・アムール鉄道シベリア鉄道との直通運転を行い、モスクワからさらに西側の西欧方面とも直通運転を行い、上野パリロンドン行きなどの欧亜直通列車に組み込み、一大物流網の中継地とすることも視野に入れられている。実際、スターリン時代に間宮海峡トンネルの建設が開始されたが、その後、建設は中断され現在に至っており、近年、建設再開の動きもある。

建設推進の動き

そもそもサハリン州自体の人口が減少の一途をたどっており、2010年以降島全体の人口が50万人にも満たず、ガス田開発以外の産業基盤が弱いサハリンへトンネルを築造してもまるで採算性が合わないため、これまでのところ、このトンネルの建設について日露政府間で公式に話し合われたことはないが、建設推進の動きとして、シベリア鉄道国際化整備推進機構発足準備委員会(山口英一会長)によるものや、杉村太蔵衆議院議員による北海道新幹線のシベリア鉄道乗り入れ案などがある。日本と欧州を結ぶルートとして比較すると、日韓トンネルと比べても、はるかに建設費が安く済み、また、効果も大きいとされている。

ロシア側では、2009年1月16日にロシア運輸省のアンドレイネドセコフ運輸次官が当該のトンネル建設に関しての可能性を目下検討していると述べた。なお、トンネルではなく大橋とする構想もある。

2011年12月15日にプーチン首相が会見において間宮海峡から架橋した上で、「日本までトンネルを建設することも可能で、われわれは検討中だ」と表明し、「シベリア鉄道を日本の貨物で満載することにつながる」と期待感を示した。しかし、先述の通り、日露間政府で検討している事実はないとされている[1]

ロシア側としては、間宮海峡の最狭部で海底トンネルまたは橋でロシア本土に鉄道網を結び付けたい計画であるが、サハリン州とロシア本土のみの交通需要だけでは経済的には引き合わないとしてプーチン首相始め政府高官やサハリン州関係者は本計画を積極的に推進している。

建設による効果

ロシア側は、プーチン首相の発言などから、日本との貨物列車による物資輸送による貿易活性化によってサハリン州や極東地域の経済の活性化を期待している。一方、日本側では、政府や当事者である北海道旅客鉄道(JR北海道)と日本貨物鉄道(JR貨物)は本計画に対して何の見解も表明していないため、どのような効果が見込まれるかは不明である。

問題点・課題

従来は北海道以南の在来線とサハリンの鉄道の大半は線路の幅(軌間)が同じ1067mm(狭軌)で敷設(サハリン内については、日本統治時代にさかのぼる)されたため、トンネルが建設されてしかるべき設備の建設や車両の導入がなされれば、技術的には鉄道の直通運転が可能になるとされていた。しかし、現在サハリンではロシアと同じ1520mm軌間(広軌)への改軌を進めており、これが完成するとサハリンと北海道の間で台車交換もしくはフリーゲージトレインもしくは北海道旅客鉄道が開発中のトレイン・オン・トレインの導入、貨物の積み替え基地の建設といった対策が必要になる。

現在日本貨物鉄道の貨物列車の北限は北旭川駅となっており、当駅以北の宗谷本線には貨物列車が乗り入れておらず、名寄駅までの第二種鉄道事業の許可を有しているが、合理化のために1996年9月以降トラック輸送に切り替えられている(詳細は「名寄駅」の項目参照)。

そのため(貨物列車が通ってないため当然といえるが)宗谷本線は現在貨物列車の運行を前提としておらず、ダイヤ上のボトルネックになることは確実である。これらの問題点の解決には設備の増強が不可欠であるが、北海道旅客鉄道、日本貨物鉄道共に経営基盤が弱く、北海道新幹線などの他計画もあり、そのような資金を捻出する余裕はない。両社とも、日本政府と同様に本計画に関して何の見解も表明しておらず、本計画は事実上ロシア側(特にサハリン州)は積極的に推進しているが、日本側は一部の物好きな鉄道ファンなどをのぞき推進や反対以前に意見の表明すらしていないのが実情である。

出典

関連項目

外部リンク