嫌中
嫌中(けんちゅう)とは、中華人民共和国及び中国人に対するクセノフォビア(外国人嫌悪)感情のひとつである。
中華人民共和国に関連する事象(急激な経済成長・中華文化・中華思想・中国共産党による一党支配体制等)を嫌悪する態度の総称であり、日本の場合は歴史認識や政策など、歴史的・政治的・経済的な様々な対立点から、中華人民共和国に対して不信感や嫌悪感を抱くものである。
概要
- 産経新聞は、2005年の中国における反日活動や、東シナ海ガス田問題、靖国参拝問題、尖閣諸島問題、中国で行われている反日教育、2007年から、2008年にかけて相次いで明らかになった中国産食品・中国製品の安全性問題などの諸問題により、日本人の間で中国に対する嫌悪感が広がりつつあるとしている[1]。
- 2010年9月の尖閣諸島における違法操業漁船が、海上保安庁の巡視船に故意に衝突した直後から、中国各所で官製反日デモが繰り広げられ、多くの日本料理店などの日系企業が襲撃を受けた。さらに、環境修復事業の現場踏査していた日本企業フジタの技術者を拘束し、レアアースの輸出禁止処置等を中国か行った。政治的には、橋下大阪府知事の訪中をキャンセルするなど外交予定をめまぐるしく変更した。これらの無法行為により、日本人の嫌中意識は飛躍的に増大し、日本全国で中国に抗議するデモが繰り広げられた。
- 桜井誠は「朝鮮人・支那人(原文ママ)が本質的に非倫理的な文化を持っている」[2]と主張し、韓国や北朝鮮・中国に批判的な見地から嫌悪の対象としている。
- 支那(もしくは「シナ」)という呼称が用いられることがある。支那には「中国」では含まれるチベットやウイグル・内モンゴル・満州・台湾は一切含まれないとして使用する者もいる[3])
- 嫌韓と同様に中華人民共和国、韓国、北朝鮮を一括して「特定アジア」ないし「反日ファシズム」と呼称して嫌悪感を表明する場合が多く、日本の近隣諸国全般(前述のように台湾を除く、モンゴルも対象に含まれない)を批判対象としており、共産主義国家を批判対象とした反共主義とは別のものである。
具体例
- 日本国内でよく聞かれる嫌中の声としては、次のようなものがある。1.民族・社会的な面:日本や世界各地の観光地での観光客のマナーの悪さ、自己主張の強さ、日本国内での中国人による犯罪の増加 2.政治・軍事的な面:歴史認識を引きずる非未来志向の外交姿勢、首相の靖国神社参拝などへの内政干渉、尖閣諸島付近への領海侵犯や軍用機の異常接近 3.経済・ビジネス・環境的な面:GDPで日本を抜くなど経済力による脅威、PM2.5などによる大気汚染(風に乗って日本にも飛来)、食品製造などでの衛生管理のずさんさ、コピー商品や海賊版などによる知的財産権の侵害
世界の嫌中度
米民間調査機関ピュー・リサーチ・センターによる「嫌中度」調査によると、日本が84%、フランスが72%、ドイツが68%、米国が42%と、日本と欧州で嫌中度が高くなっている[4]。特に日本では中国に対し半分以上(55%)が中国を好意的に見ていた2002年からはかなり嫌中度が増している。
アジア
フィリピン
- 香港には多くのフィリピン人メイドたちの間では「香港人はフィリピン人メイドを奴隷のように扱っている」との不満が絶えない。弱い立場にいるメイドをに対する理不尽な動きに対しては、フィリピン国内でも「中国人は視野が狭い」「民族主義的である」「内政干渉である」といった批判がある。
ベトナム
- 2014年にベトナムと中国などが領有権を主張する南沙諸島周辺での船の妨害事件が起きたことから、ベトナム国内で中国系企業への襲撃やデモが相次ぎ、領土問題を契機とした嫌中感情が高まっている。なお、ベトナムはかつて中国の王朝に繰り返し支配されたと侵略の歴史を持ち、歴史的にも対中感情には複雑なものがある。
南北ベトナム統一後も、親中派の民主カンプチアに対する親ソ派のベトナムによる侵攻(カンボジア・ベトナム戦争)を巡って1979年に中華人民共和国との大規模な戦争を起こし(中越戦争)、1989年までたびたび交戦(中越国境紛争)をしている状態であった。 このような中華人民共和国の一連の出来事に対して、毎週日曜日にハノイにある、駐ベトナム中華人民共和国大使館前にて、ベトナム人民が抗議のデモ活動をしている。
北京オリンピックの聖火リレーでは、表立って非難はされなかった。
中華人民共和国とは陸続きのため、中国製品(Made in China, Made in PRC)も多く流通しているが、ベトナムでは華人(主に漢民族)が急増し、不法滞在・不法就労も多発していることから、過去の侵略された歴史を含めて、反中感情を抱く者は非常に多い。
アフリカ
ガーナ
- ガーナ中国友好連合(GCFU)は、ガーナの若者などがこれまでに鉱業分野で働く87人以上の中国人を銃殺したことを発表している。
ザンビア
- 2012年8月、中国人が経営する炭鉱で事件が発生を契機に、労働環境や賃金の改善を求めた労働者による抗議が、暴動に発展した。
- 野党の大統領候補が「私が当選したら中国資本を追い出す」と公約した。2006年9月1日で新華社通信
関連人物
- ユン・チアン(中国人・評論家)
- 柏楊(台湾人・評論家)
- 陳巧文 (クリスティーナ・チャン)(香港人・人権活動家)
- 金完燮(韓国人・評論家)
- 桜井誠(在日特権を許さない市民の会会長)
- 小林よしのり(漫画家)
- ナンシー・ペロシ(アメリカ合衆国下院議長)
- アラン・ウルフ(アメリカ合衆国下院議員)
- リチャード・ギア(アメリカ合衆国俳優)
- セゴレーヌ・ロワイヤル(フランス政治家)
- スティーヴン・スピルバーグ(アメリカ合衆国映画監督)
- チャールズ皇太子(イギリス王太子)
脚注
- ^ “「五輪の中国」好感度は激減 国際世論調査”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2008年6月13日). オリジナルの2008年6月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ 桜井誠ブログ「wikiにみる左翼の狂態」2007年05月18日。
- ^ 漫画家の小林よしのりは自らの著書の「天皇論」にて、著書内で書いている「シナ」にはチベットやウイグル・内モンゴル・満州・台湾は一切含んでいないとしている
- ^ “嫌中、日欧で拡大=米世論機関、24カ国で調査”. goo ビジネスEX. 時事通信 (goo). (2008年6月13日). オリジナルの2008年6月13日時点におけるアーカイブ。
参考
- 『嫌中論 世界中から嫌われる中国』 徳間書店 黄文雄著 ISBN 978-4198621933
- 『「日中友好」という幻想』 PHP研究所 中嶋嶺雄著 ISBN 978-4569625164