嫉妬

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嫉妬(しっと)とは、自分と異なるものや、自分から見て良く見えるもの、自分が欲しい(欲しかった)ものなどを持っている相手を快く思わない感情。僻み(ひがみ)、妬み(ねたみ)、嫉み(そねみ)、やっかみ、ヤキモチ、動詞化して「妬(や)く」、などともいう。英語のjealousyは嫉妬(しっと)によく訳され、envyは妬み(ねたみ)に訳される。この2つは混同されやすいが区別される。[1]

嫉妬は人間関係において、ありふれたものである。それは生後5ヶ月ほどの乳児でも観測されている[2][3][4][5]。嫉妬はあらゆる文化で見られるといわれるが[6][7][8]、ある文化特有の現象であるとの主張もある[9]

感情としての嫉妬は多くの小説、歌、詩、映画と他の芸術的作品のテーマになっている。また、心理学者や社会学者、アーティストらの関心の話題でもある。

嫉妬状態にある人の特徴

  • 下に見える人(もの)を見て悦に入る
  • 上に見える人(もの)を見て反感を抱く

上に見えるものへの反感が向上心と結びついた場合はもはや嫉妬と呼ばれないことが多い。

嫉妬についての考察

  • 弱者が強者に対して抱く嫉妬心や、それらに起因する憎悪や非難といった感情のことを哲学上の概念でルサンチマンと呼ぶ。
  • インターネット上の2ちゃんねるなど21世紀初頭に始まる匿名掲示板における誹謗中傷の氾濫は、現社会で鬱屈している嫉妬心の表出であるとする見方がある。嫉妬に基づく行動は一般に好ましくないものとされるため、現実社会では丸めた形で現れることが多いが、匿名社会においては剥き出しのままぶつけられるとされる[要出典]
  • 嫉妬は一般的には社会で忌み嫌われる感情であるとされているが、その反面、大衆の嫉妬心を煽る目的が根底にあるとされるマスコミによる著名人や一部の組織に属する者たちに対するバッシングといった行為が日常的に頻繁に行われており、嫉妬という感情が社会において与える影響や問題は決して小さくない。[要出典]
  • 嫉妬という感情を覚えはじめるのは思春期である。この時期は「まわりから愛されたい」という気持ちが爆発する。よって、スポーツ万能で周りからちやほやされている人などをみて、「気に食わない」(=嫉妬)という感情が生まれる。
  • 人間以外の動物にも「嫉妬」の感情は存在する。複数のペットを飼っていて、特定の個体だけを可愛がったりするとその個体へ嫌がらせをしたり、部屋をわざと散らかしたりすることもある。
  • 社会学者加藤諦三は「妬まずにはいられない症候群(シンドローム)」を、1992年に著している。
  • 17世紀フランスの文学者ラ・ロシュフコーは、他人の美点を誉めそやすことの裏にも、嫉妬があると見る。その人の偉さに対する敬意よりも、自分自身の見識に対する得意があり、実は自分が賛美を浴びたいと思う心があるという[10]。これは、嫉妬が常に怒りや非難という形で表現されるとは限らないということを示唆している。

著名人の発言

  • 劇作家山崎正和筑紫哲也との対談集『若者たちの大神』のなかで「大衆社会で一番怖いのは、平等化からくるねたみだと思う。ねたみというのはね、上下の差が小さくなったときに起きるものです。それに、ねたみはいわゆる公の憤りと非常にくっきりとした違いをもっていますね。これは、たとえ自分のほうに落ち度があると知っていても起こる感情なんです。しかも、これは、ほうっておくと無限に自己増殖するんですね。大衆社会が退廃していく最初のきっかけはねたみなんです。この感情だけは、どうしたらいいのか私には分かりません」と残している。
  • 精神科医土居健郎と英語学者渡部昇一の共著書「いじめと妬み」の中で、2人は共にキリスト教に言及し、土居は「キリスト教的に言えば、妬みは生まれながらにあるもので、誰にでも起こる、どこででも起こりうる心の状態なのです。」[11]と述べ、渡部は「私は、キリスト教で、"愛"の反対は"妬み"だと習いました。」[12]と述べている。土居は「心を打ち明けられる人を持つことがとても大切だと思います。」と述べている[13]
  • 斎藤美奈子の著書『文壇アイドル論』(2002年、岩波書店)によれば、1980年代以降、「ねたみ・そねみ・しっとを解放」したのが林真理子の「功績」のひとつだとしている。
  • パリス・ヒルトンは「嫉妬するということは、相手より自分が下であると認めてしまうこと」[14]「嫉妬というのは邪悪な感情。神様は優しい心の人にカルマを与えるの。私は一度も嫉妬したことがないわ」と発言している[15]

関連項目

脚注・出典

  1. ^ M.Hewstone, etc.,Psychology,BPS Blackwell,2005,page127
  2. ^ Draghi-Lorenz, R. (2000). Five-month-old infants can be jealous: Against cognitivist solipsism. Paper presented in a symposium convened for the XIIth Biennial International Conference on Infant Studies (ICIS), 16–19 July, Brighton, UK.
  3. ^ Hart, S. (2002). Jealousy in 6-month-old infants. Infancy, 3, 395–402.
  4. ^ Hart, S. (2004). When infants lose exclusive maternal attention: Is it jealousy? Infancy, 6, 57–78.
  5. ^ Shackelford, T.K., Voracek, M., Schmitt, D.P., Buss, D.M., Weekes-Shackelford, V.A., & Michalski, R.L. (2004). Romantic jealousy in early adulthood and in later life. Human Nature, 15, 283–300.
  6. ^ Buss, D.M. (2000). The Dangerous Passion: Why Jealousy is as Necessary as Love and Sex. New York: Free Press.
  7. ^ Buss DM (December 2001), “Human nature and culture: an evolutionary psychological perspective”, J Pers 69 (6): 955–78, doi:10.1111/1467-6494.696171, PMID 11767825. 
  8. ^ White, G.L., & Mullen, P.E. (1989). Jealousy: Theory, Research, and Clinical Practice. New York, NY: Guilford Press.
  9. ^ Peter Salovey. The Psychology of Jealousy and Envy. 1991. ISBN 978-0898625554
  10. ^ 『ラ・ロシュフコー箴言集』邦訳:二宮フサ,岩波文庫,ISBN 4003251016
  11. ^ 「いじめと妬み 戦後民主主義の落とし子」、土居健郎/渡部昇一 共著、PHP文庫、1997年、154ページ
  12. ^ 「いじめと妬み 戦後民主主義の落とし子」、土居健郎/渡部昇一 共著、PHP文庫、1997年、75ページ
  13. ^ 「いじめと妬み 戦後民主主義の落とし子」、土居健郎/渡部昇一 共著、PHP文庫、1997年、156ページ
  14. ^ 著書「Confession of ann air reply」
  15. ^ bounce.com. “インタビューファイル パリス・ヒルトン”. 2008年12月18日閲覧。

外部リンク