副腎皮質刺激ホルモン

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副腎皮質刺激ホルモン(ふくじんひしつしげき-。adrenocorticotropic hormone,ACTH)は下垂体前葉から分泌されるホルモンのひとつ。視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamo-pituitary-adrenal axis)を構成するホルモンである。39個のアミノ酸からなる。ACTHの1-13番アミノ酸までは、切断されてα-メラニン刺激ホルモン(MSH)となる。

視床下部からの副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)により分泌が刺激される。また、糖質コルチコイドにより分泌が抑制される(ネガティブフィードバック)。

副腎皮質に作用し、糖質コルチコイドなどの副腎皮質ホルモンの分泌を促進する。

副腎皮質刺激ホルモンに関連する疾患

本症に関連する疾患は全て、視床下部(CRH)-下垂体(ACTH)-副腎皮質(主に糖質コルチコイド)系の生理的な機能から論理的に納得できる。以下を理解するためには、自律的分泌亢進と、ネガティブフィードバック機構についての理解が必要である。

増える病気

減る病気

  • ACTH単独欠損症
    下垂体ホルモンのうちACTHだけの分泌が低下する病気。ACTHが低下することで、下流の糖質コルチコイドの分泌も低下する。生理学的にはACTH低下によるネガティブフィードバックで副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が過剰分泌されることによりプロラクチン分泌が上昇し甲状腺刺激ホルモン分泌が低下するはずであるが、そのような症状を呈する患者の報告もある。
    下流の糖質コルチコイドの産生そのものが低下している病気である原発性副腎皮質機能低下症とは少し臨床像が異なっていて、色素沈着がおきないほか(副腎不全では、下流の産生低下に対するネガティブフィードバック欠如を反映した上流のACTH過剰産生に伴いMSHが過剰産生されている)、通常の状態では自覚症状はない場合が多い。ストレス状態に置かれると、それに反応したACTH分泌を行うことができない点が主要な病態であって、普段通常に暮らしている人が、普通の風邪にかかって突然生命の危険に陥る(急性副腎不全を発症する)という臨床的特徴がある。
    原因は明らかではないが、自己免疫疾患ではないかとといわれている。抗下垂体抗体が関連があるとされているが保険適用はない。
  • 汎下垂体機能低下症
    下垂体の全てのホルモンの分泌が低下している病気。この病気にかかった患者の臨床像をひとことで言うならば、「元気がない」。副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンプロラクチンの低下を反映した症状を示す。成人に起こる場合、成長ホルモンの分泌低下を示す明らかな症状はない。
    原因は、頭蓋咽頭腫による下垂体の圧迫や、結核サルコイドーシスシーハン症候群転移性悪性腫瘍など。
  • 副腎性のクッシング症候群
    この疾患は自律的に糖質コルチコイドが過剰となる疾患なので、ネガティブフィードバックによりACTHは低下する。ACTH低下はまさに二次的なものに過ぎず、これが原因で何か症状が起こるということはないが、本症の片側副腎摘出術後に一過性(一年程度)の副腎皮質機能低下症が起こるのは、ACTH分泌が抑制されていたことと、それによる反対側副腎皮質の低形成が原因である。

関連項目