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CPシステム

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CPシステム(シーピーシステム)またはカプコン・CPシステム(カプコン・シーピーシステム)とは、1988年に『ロストワールド』と共に出荷されたカプコン開発のアーケードゲーム用基板である。対戦型格闘ゲームを代表する『ストリートファイターII』でこの基板が使用されている。後に広く普及したCPシステムIIと区別するためCPシステムIあるいはCPS-1と呼称されることがある。

このシステムのゲームは、多くの種類の海賊版が作成され、とりわけ『ストリートファイターII'』では多く作成された。この海賊版は日本国内でも少数見られたが、海外では正規版よりも多く設置されている店舗もしばしばみられたようである(詳細はストリートファイターIIの項目を参照)。この問題はCPシステムIIの登場で解消された。

CPシステムの概要

CPシステムの特徴
当時リリースされていたシステムボードは、搭載するゲームソフトの交換の際、オペレーター側でゲームソフトウェアを記録したROM ICキットを基板上に用意されたICソケットに挿入して[1]使用する。これに対しCPシステムは、システムボード全体をカプコンのサービス部門へ送付し、ソフトウェアの交換依頼を発注する方法を取る。これはCPシステムがゲームごとに開発されたカスタムICを多用すると共に、必要であればシステム構成の一部を変更する必要がある仕様となっているためである。これはデッドコピー(海賊版)の登場を抑止する意味合いもあった。
縦長アスペクト比のピクセルにより構築される画面仕様
アーケードゲーム機は現在でもブラウン管を縦にした状態で使用することがあるが、CPシステムは家庭用ゲーム機移植する際を考慮したらしく、横画面で使われることが多かった(実際、縦画面で使用されるソフトは3本のみ)。人間の眼球は横に並んでいることもあり、画面の横方向の情報をより多く認識できる。そこで他社のゲーム基板よりも横方向の画面情報を表示するため、X方向へのピクセル数が多くなるように設計された。結果、ゲームの表示画面を形作るピクセルは縦長のものとなった。この仕様はCPシステムIIにも継承されている。

CPシステムの種類

CPシステムは大きく分けて3種類リリースされた。

CPシステム(システムボード版)[2]
最も多く生産され、広く使われた。上述の通り、カプコンのサービスにて動作させるゲームソフトを変更可能。「CPシステム」とは殆どの場合これを指す。
CPシステム[DASH]
「CPシステム(Qサウンド版)」と呼ばれることがある。CPシステムIIの発売と前後してリリース。システムボード版と違い動作させるゲームソフトの変更は不可能。音楽演奏および音声再生部はCPシステムIIと同じQサウンドチップセットに変更され、基板の大部分がプラスチックパッケージに収められている。
CPSチェンジャー
一般家庭向けに通信販売された。CPシステム(Qサウンド版)と同じく基板全体がプラスチックパッケージに収められたゲーム基板部、「CPSチェンジャー」と呼ばれる各種インターフェース部、専用ACアダプターにより構成されている。ゲーム基板部は営業使用できず、家庭向け機器として仕様が変更されている。一部CPシステムII向けゲームソフトも移植された。当時ROMカートリッジをメディアとして使用するネオジオを除く家庭向けゲーム機では技術的問題により、プレイヤーの操作によるキャラクターのアニメーションパターンや画面演出などを細部にいたるまで完全に再現することは困難だったが、基本設計が業務用アーケード基板そのもののCPSチェンジャーでは当然可能だった。市場の予想を上回るネオジオの好調さに刺激されて発売されたようだが、リリースされた対応ゲームソフトの少なさと高すぎる定価での販売、および前述の問題点2つが絡み合っての悪循環が起こった上に、当時次世代機と呼ばれたプレイステーションセガサターンの登場により市場価値が著しく減少してしまい、出荷数も少ないまま早々にカプコンはこの商品の発売を中止した。宣伝も一部雑誌での小さな広告や、顧客へのダイレクトメールのみという小規模なものであった[3]
カプコン発売のスーパーファミコンジョイスティック「CPSファイター」の在庫処分も目的の一つだったようで、セット販売も行われた。そのためスーパーファミコン用のコントローラが使用できる。このコンバータ部はスーパーファミコンのコネクタをJAMMA端子にコンバートする仕組みなので、基板の物理的形状がコンバータに刺さりさえすればJAMMA仕様のアーケード基板でスーパーファミコンのコントローラを使える。
価格は初回販売時に『ストリートファイターII’』とセットで34800円、さらにCPSファイターをセットにしたものが39800円で、当初はこのセットでの販売しかしていなかった。ソフトは統一価格で1本20000円、2本で38000円、3本で55000円。初期発売予定がアナウンスされていたタイトルは以下のとおり。

『ストリートファイターII』のリリース

CPシステム初期の各タイトルは、同時期のゲームと比較してグラフィックもゲーム内容も高水準であった。この点のみでも評価できるが、ゲーム自体は従来のアーケードゲームの延長上にあったといえる。CPシステムの真の功績は、この基板で『ストリートファイターII』が開発されたという点にあるだろう。この頃のアーケードゲームは(例外は多々あるが)基本的に一人プレーであり、対戦相手をコンピュータとして、面クリアーやハイスコアの獲得を目的としていた。対戦型格闘ゲーム『ストリートファイターII』の登場により、この構図が人 対 コンピュータから人 対 人へと変化する(詳細は対戦型格闘ゲームを参照)。

仕様

  • メインCPU: モトローラ 68000 @ 10 MHz
  • サウンドCPU: ZiLOG Z80 @ 4 MHz
  • サウンドチップ(システムボード版/CPSチェンジャー版): ヤマハ YM2151 @ 3.57958 MHz + 沖電気 MSM6295 @ 7.576 kHz
  • サウンドチップ(Qサウンド版): Qサウンド @ 4 MHz
  • 最大色数: 4096色(12bit RGB)
  • タイル当たりの色数: 16色(ピクセル当たり4bit)
  • スクロール面: 3
  • スクロール機能: 水平・垂直方向、ラインスクロール
  • 解像度: 384×224

作品リスト

断りがないものは開発・販売ともカプコン。

リリース日 国内版タイトル名 海外版タイトル名 備考
1988年07月 ロストワールド Forgotten Worlds
1988年12月 大魔界村 Ghouls 'n Ghosts
1989年03月 ストライダー飛竜 Strider
1989年04月 天地を喰らう Dynasty Wars
1989年06月 ウィロー Willow
1989年08月 エリア88 U.N. Squadron
1989年12月 ファイナルファイト Final Fight
1990年02月 1941 1941: Counter Attack
1990年04月 戦場の狼II Mercs
1990年06月 チキチキボーイズ Mega Twins
1990年07月 マジックソード Magic Sword: Heroic Fantasy
1990年10月 U.S.NAVY Carrier Air Wing
1990年12月 ニモ Nemo
1991年03月 ストリートファイターII Street Fighter II: The World Warrior
1991年07月 ワンダー3 Three Wonders
1991年09月 ザ・キングオブドラゴンズ The King of Dragons
1991年11月 キャプテンコマンドー Captain Commando
1992年01月 ナイツオブザラウンド Knights of the Round
1992年04月 ストリートファイターIIダッシュ Street Fighter II': Champion Edition
1992年07月 バース -オペレーションサンダーストーム- Varth: Operation Thunderstorm
1992年09月 アドベンチャークイズカプコンワールド2 Capcom World 2: Adventure Quiz
1992年11月 天地を喰らう2 Warriors of Fate, アジア: Sangokushi II
1992年12月 ストリートファイターIIダッシュターボ Street Fighter II' Turbo: Hyper Fighting
1993年04月 キャディラックス 恐竜新世紀 Cadillacs and Dinosaurs
1993年05月 パニッシャー The Punisher
1993年07月 マッスルボマー Saturday Night Slam Masters
1993年12月 マッスルボマーDUO Muscle Bomber Duo: Ultimate Team Battle
1994年06月 ぷにっきいず Pnickies コンパイルのライセンス表示あり
1994年09月 クイズ&ドラゴンズ Quiz & Dragons: Capcom Quiz Game
1995年01月 クイズ 殿様の野望2 全国版 Quiz Tonosama no Yabō 2: Zenkoku-ban
1995年06月 パン!3 -怪盗たちの華麗な午後 Pang! 3 開発・販売: ミッチェル
1995年10月 ロックマン・ザ・パワーバトル Mega Man: The Power Battle

※その他、1994年にカプコン、トーゴシグマのトリプルネームで発売されたモグラ叩きゲーム、拳聖土竜(けんせいもぐら)のビデオ部分にCPシステム[DASH]が用いられている。

トピック

  • CPシステム第1弾として登場した『ロストワールド』は、独特でインパクトのあるローリングスイッチを備えていたが、このローリングスイッチをCPシステムと呼ぶと誤って解釈した人がいたらしい。

脚注

  1. ^ 実際は基板をソフト込みで購入するので、ROM ICキットは交換する。
  2. ^ 下記の通り、純粋にシステムボードと呼べるCPシステムはこれのみである。
  3. ^ どうやらカプコン内の家庭用ゲーム機を扱う部署ではなく、業務用アーケードゲーム機を扱う部署が担当したらしい。家庭用ゲーム機の企画、開発ノウハウが乏しいまま、この商品プロジェクトは見切り発車させられた可能性は否定できない。[要検証]

関連項目