9mm機関けん銃
概要 | |
---|---|
種類 | 短機関銃 |
製造国 | 日本 |
設計・製造 | ミネベア社 |
性能 | |
口径 | 9mm[1] |
銃身長 | 120mm[1] |
使用弾薬 | 9x19mmパラベラム弾 |
装弾数 | 25発(箱形弾倉)[1] |
作動方式 |
単純吹き戻し式[1] オープンボルト撃発 セミオート/フルオート切替式 |
全長 | 339mm[1] |
重量 | 2.8kg[1] |
発射速度 | 約1,185発/分[2] |
有効射程 | 約25m |
9mm機関けん銃(9ミリきかんけんじゅう)[1]は、長野県の企業であるミネベア社が製造し、1999年に自衛隊が採用した9mm口径の短機関銃[注釈 1]である。防衛省は略称をM9、広報向けの愛称を一般公募から選ばれた「エムナイン」としている。
開発の経緯
当初9mm拳銃の更新用装備火器として主に9mm拳銃を装備している指揮官などの自衛用に開発され、配備が開始された。
配備計画は予定を変更し、空挺部隊、第12旅団、西部方面普通科連隊の指揮官への配備完了をもって陸上自衛隊による調達は終了しているが、航空自衛隊と海上自衛隊による調達は継続している[3]。
配備計画には存在したが74式戦車、60式自走無反動砲などの乗員用の自衛火器である11.4mm短機関銃(M1・M3)は、結局のところ9mm機関けん銃には更新されず、そのまま使用され続け[注釈 2]、更新用には折曲銃床式89式小銃が当てられることとなった[4]。
9mm拳銃は前述のとおり9mm機関けん銃に全て更新されたわけではなく、9mm機関けん銃採用後も自衛用、近接戦闘用火器として使用されている。
一部書籍などで、PKO派遣に伴う部隊装備火器の問題を回避するために開発が始まったとする記述があるものの、実際には、前述の通り9mm拳銃や11.4mm短機関銃(M1・M3)を装備する指揮官・隊員の自衛火器の更新及び火力増強が主な目的であり、PKOに絡む問題は開発とは無関係である。
特徴
下部レシーバー(機関部)は前方へ張り出し、直立形状のフォアグリップ[注釈 3]が取り付けられ、内部に弾倉を収納するため太く握り難いグリップの保持を補助する。銃床は持たず、射手は両手の力のみで銃を保持する必要がある。
機関部の全長を短縮するため、イスラエルのミニ UZI(旧型)同様のL型ボルトを採用し、オープンボルト方式の撃発機構、セミオート/フルオート射撃機能を有する[5]。機関部は切削加工により製造されており、マズルブレーキは、ミニ UZIのように銃身を直接開口したものではなく、銃身覆いと呼ばれる[6]延長部にスリットを開けた形状で、銃口の跳ね上がりの抑制よりもマズルフラッシュの軽減に重点を置いたものになっている。
発射速度を抑制する機構はなく、発射速度は毎分1,200発程度と高速となっており、全自動時の保持射撃は困難である。
セレクターの各ポジションには、64式7.62mm小銃と同様に安全/単射/連射の頭文字である「ア/タ/レ」と記され、「当たれ」の意味が込められているとされる。
陸上自衛隊での調達数は平成11年度70丁、12年度100丁、13年度13丁、14年度56丁、15年度27丁となっており、平成16年度以降は調達されていない。調達価格は一丁につき付属品を含め40万円程度と、同水準の銃器であるミニ UZIやイングラムM10などと比べて高価となっている[7]。
防衛省仕様書で要求されている性能は、「精度試験装置に固定し、単発射撃により射程50mで40cm×40cmの標的に射撃した際に、10発中7発以上命中するものとする」となっている[8]。一方で、部隊内での装備実験で用途や命中精度など[注釈 4]に不具合があるとの意見も出された。
複数の書籍[9][10][11]において、小型の短機関銃のもつ特性の一面である「目標を正確に狙うというよりも至近距離で弾をばらまいて敵を制圧するのに向いている」といった評論がなされている(マシンピストルを参照)。
9mm機関拳銃 | CBJ-MS | M10 | ミニ UZI | TMP | |
---|---|---|---|---|---|
画像 | |||||
口径 | 9mm | ||||
銃身長 | 120mm | 200mm | 146mm | 197mm | 130mm |
全長 | 339mm | 363/565mm(銃床展開時) | 296/548mm(銃床展開時) | 360/600mm(銃床展開時) | 282mm |
重量 | 2.8kg | 2.8kg | 2.85kg | 2.7kg | 1.3kg |
発射速度 | 約 1,185発/分 | 700発/分 | 1,090発/分 | 950発/分 | 850-900発/分 |
運用
1999年から自衛隊が制式採用。第1空挺団用、第12旅団と西部方面普通科連隊の幹部自衛官などの自衛用火器、海上自衛隊の護衛艦と潜水艦の搭載火器、航空自衛隊の基地警備隊用火器として配備されている。また、海上保安庁特殊部隊SSTにも非公式ながら、訓練用火器として配備されている[12]。
陸上自衛隊向けの生産はすでに終了しているが、海上、航空自衛隊向けの生産は現在も継続して行われている[13]。
携帯する場合は、スリングを使って肩から提げるか、専用の収納袋ケースに収納する。専用の予備弾入れなどは確認されていないが、収納ケースに弾納部がある。
登場作品
映画
- 『ゴジラ×メカゴジラ』
- オープニングにて、規制線を警備している自衛官が装備。
- 『図書館戦争』
- 図書隊の銃器として登場。本作中の図書隊の銃器で最も使用頻度が高く、64式7.62mm小銃・89式5.56mm小銃・SIG P220をも凌ぐ。
漫画・アニメ・ライトノベル
- 『アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者』
- 古賀沼美埜里が使用。憂国士団による籠城事件以降、ジュラルミン製スーツケースに入れて持ち歩くようになった。
- 『荒野に獣慟哭す』
- 漫画版で、薬師丸法山をはじめゾンビストのメンバー数名が使用。
- 『続・戦国自衛隊』
- 作品前半では試作型が、中盤以降は量産型が登場。主人公である島二尉(小説版では三尉)が使用する。
- 『図書館戦争』
- 図書隊の銃器として登場。
小説
- 『自衛隊三国志』
- 三国時代へタイムスリップした自衛隊国際連合平和維持活動(PKO)部隊の装備として登場。偵察用オートバイで走行中に片手だけで射撃を行っている。
- 『図書館戦争』
- 図書特殊部隊(ライブラリータスクフォース)が使用。
- 『日中尖閣戦争』
- 特殊運搬艇に2丁搭載されている。
- 『ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記』
- 異世界に飛ばされた自衛隊の装備の1つとして登場。幹部自衛官らが携行して使用する。
ゲーム
- 『SIREN2』
- 永井頼人・三沢岳明・矢倉市子・屍人・闇人が主に使用。女性でも扱える連射火器となっている。
- 『怪盗ロワイヤル-zero-』
- 「9mmマシンガン」の名称で登場。
- 『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』
- ロシア超国家主義派が装備している。
脚注
注釈
- ^ 自衛隊の前身である警察予備隊では、サブマシンガンを「短機関銃」と呼称し、その後発足した自衛隊・防衛庁(当時)もこれを継承した。なお、「拳」の字は常用漢字ではなかったため、『武器等製造法施行規則』(昭和28年9月1日通商産業省令第43号)や、『法律第百十五号(平13・11・2)自衛隊法の一部を改正する法律』においては、「機関けん銃」と表記されている
- ^ 11.4mm短機関銃(トンプソン・サブマシンガン・M3サブマシンガン)更新用として、1960年代にニューナンブM66短機関銃が試作されたが採用されずに終わった。
- ^ 試作品のフォアグリップは木製だったとされる
- ^ 配備された部隊の指揮官のコメントに拠れば、威力不足や命中精度の面から「従来の9mm拳銃や折り曲げ銃床式の89式の方がはるかにマシ」との意見があり、『ここが変だよ自衛隊』などの書籍に掲載されている
出典
- ^ a b c d e f g 『9mm機関拳銃』 陸上自衛隊装備紹介
- ^ 「エリートフォーセス 陸上自衛隊編[Part1]」p139
- ^ 防衛省『平成26年度調達予定品目(中央調達分)』(PDF)参照
- ^ 月刊アームズ・マガジン ‐ 2003年12月号 p35
- ^ ホビージャパン「エリートフォーセス 陸上自衛隊編[Part1]」p34
- ^ 新紀元社 大波篤司「図解ハンドウェポン」
- ^ 防衛省・自衛隊 予算等の概要 平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度
- ^ http://www.mod.go.jp/j/procurement/chotatsu/nds/pdf/y/y1001.pdf
- ^ イカロス出版Jground Vol.17
- ^ 学研歴史群像シリーズ 自衛隊図鑑2002
- ^ 新紀元社 大波篤司 ミリダスJ
- ^ [1]特集海上保安庁特殊警備隊(SST)
- ^ 防衛省装備施設本部公式サイト、中央調達に係わる契約情報より