鼻メガネ

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C-bridge型の枠無しタイプの鼻メガネをチェーンを付けて着用している セオドア・ルーズベルト
Oxford型の鼻メガネを着用している 後藤新平
Hard-Bridge型の鼻メガネを着用している 佐藤春夫
Hard-Bridge型の鼻メガネ。表のツマミを挟んで持つ事で、裏の鼻パッドのバネを広げて装着する
初期のC-Bridge型の鼻メガネを着用している オーギュスト・ロダン

鼻メガネ (:Pince-nez)は、19世紀から20世紀初頭の欧米で流行した眼鏡の種類。フィンチ型とも呼ばれる。

鼻メガネの概要[編集]

耳当てのテンプル(ツル)がなく、鼻を抑えることで装着する眼鏡である。15世紀から17世紀の間に一般庶民に徐々に浸透し、1840年代に現代的な鼻メガネが登場した。1880年から1900年にかけて大流行した。1930年代後半からは主に中年男性の間で密かに流行している。日本では吉田茂後藤新平佐藤春夫らが愛用していたことでも有名である。初期は金属製のリム(眼鏡の枠)だったが、次第に枠無し(Rimless)のもの、さらにセルロイド製のものが登場してきた。高級なものでは現在の眼鏡と同様に純銀製(スターリングシルバー)のもの、鼈甲製のものも存在する。鼻パッドは、初期はブリッジと一体化された金属製のもの、あるいはコルクを貼り付けたものだったが、後年にはセルロイドを添付したものが作られた。写真のセオドア・ルーズベルトのように右のレンズ脇にチェーンをつなぐ輪が付いている、あるいはレンズ自体に穴が開いているものがあるが、写真の後藤新平の例のようにチェーンを取り外して装着する人々も多かった。チェーンの先には(主に女性用に)ヘアピン、耳かけ、服に留められるピンバッジなどがつけられ、鼻メガネが外れても落ちるのを防いでいた。

現代でもハード・ブリッジ型の鼻メガネを復刻させて製造・販売することがある。また映画『マトリックス』において、登場人物の一人であるモーフィアスがつけていた鼻メガネがオリジナルモデルとして販売された。

鼻メガネの種類[編集]

  • ハード・ブリッジ (Hard-Bridge)、もしくはフィンガーピース (Fingerpiece)-1890年代から1950年代にかけて広まり、鼻メガネのタイプとしては一番多く製造された一般的な型である。レンズとレンズをつなぐブリッジは現在のものと変わらないが、左右それぞれに独立した鼻パッドの機構が存在し、金属コイルのバネ圧によって鼻パッドで鼻を押さえ込む。右下の写真のように表の取っ手を指で挟むことで、裏の鼻パッドを広げて鼻に装着し、取っ手から指を離すと鼻パッドが圧着する。片手で持って装着できるという他の鼻メガネのタイプには無い利便性もあり、鼻メガネの中では一番ポピュラーで広まった型である。ただし、鼻パッドの機構が独立しており、他の鼻メガネよりも機構が複雑で調節がしにくく、内部の金属巻線が経年劣化のために折れやすいといった欠点も存在する。
  • C-ブリッジ (C-Bridge) -鼻メガネのタイプとしては古い、シンプルな機構の型で1820年代から1940年代にかけて広まった。レンズとレンズをつなぐブリッジがΩの形になっており、金属ブリッジ自体のバネ圧によって鼻パッドで押さえ込む。両手で2つのレンズを上下からつまんで、ブリッジを広げて鼻に装着する。年代が下るにしたがって、ブリッジに使える金属が多様化し、ブリッジが小さくなりデザイン的にも洗練されていった。名前の由来は縦にするとブリッジが「C」の字に見えるため。
  • スプリング・ブリッジ (Spring Bridge)-1890年代から1930年代にかけて広まった型で、両レンズの最上部をコイルスプリングで結んでいるもの。装着方法はC-ブリッジ型と同様に両手でレンズを持ってスプリングを伸ばして装着する。2つのレンズ上部をつなぐ大きなスプリングの存在が不可欠なため、上述した他の型と違って枠無しのタイプは作れない。
  • オックスフォード眼鏡 (Oxford spectacles、または略してOxfords)-1930年ごろに広まった型で、19世紀にオックスフォード大学教授が誤って持ち手を折ってしまった柄付きめがね(オペラグラスの一種en:lorgnette)に鼻パッドとスプリングをつけて鼻の上に載せたのが始まりとされる。ただし、その証拠となるようなものはなく、噂話の域を過ぎるものではない。形状・機構としては上述したスプリング・ブリッジ型に近く、スプリングの代わりに一本の細い金属板で2つのレンズをつないでおり、その板バネの力で鼻パッドが鼻を押さえる。その多くは半分に折りたたんで留める事ができ、長いチェーンで首から提げたり、革ケースなどに入れて小さく携帯しやすいように作られている。スプリング・ブリッジ型と同様に、その機構上から枠無しのタイプは作れない。

コメディ・グッズとしての鼻メガネ[編集]

一般的なツル付きメガネに鼻がついているもの。ほとんどが黒縁で独特の眉毛口ヒゲもついていることが多い。

元々はコメディ俳優グルーチョ・マルクス(Groucho Marx)の扮装を模したもので、海外では文字通りグルーチョ眼鏡(en:Groucho glasses)と呼ばれる。(他にfunny glasses等の呼び名もある)

現在でも宴会芸等で需要があり、パーティー・グッズとして安価に売られている。

日本のドリフ世代以降、あるいはマルクス兄弟などの喜劇映画を好んでいた世代にとっては、「鼻メガネ」と言う言葉は即座にお笑いに直結する。

漫画表現としての鼻メガネ[編集]

漫画・アニメに於いて、眼鏡の装着によってキャラクターの外観を大きく変えることなく、眼鏡キャラクターとしての個性も表現する為の漫画的デフォルメ描写。

大抵の場合、ごく小さな眼鏡。もしくはレンズが大きいにも拘らずきちんと鼻に乗っていない。レンズ部分が殆ど目に掛かっておらず、見た目、眼鏡としての機能を果たしていない。つまり老眼鏡使用者の掛け方と同じである。

ゆえに、キャラクターの瞳の印象が見た者に素直に伝わる。その為、瞳を大きく描く美少女系の絵柄に於いてはこの表現が用いられる事がしばしばある。また、キャラクターの造形もしくは絵柄(前述の美少女系も含む)によっては普通の眼鏡を掛けさせる事が困難な(あるいは、掛けさせると不恰好となる)為、それを回避するためにこの表現を用いることもある。もしくは逆ナイロール眼鏡が使われることがある。

鼻メガネ類似のもの[編集]

  • 鼻載せメガネ(Nose spectacles) - 鼻メガネ、さらには眼鏡の原型。15世紀から18世紀にかけて作られた。鼻パッドは無いか、あるいは簡素なもので調整できず、単純に鼻の上に載せて使用された。鼻を押さえる機構がないためにフィンチ型とは区別される。当然のことながら装着して歩いたりすることはできず、室内で読書をする時のために使われた。
  • つる無しメガネ - 鼻メガネの現代版として、鼻パッドに粘着素材を使用したもの。古典的な鼻メガネのように金属のバネ圧で圧着していないため、鼻に装着跡がつきにくいという利点があるが、その分落ちやすく、鼻パッドを適時、清掃・交換する必要がある。