乱視

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
左上:正常な画像 右上:単純な近視
左下:A=0度の正乱視(直乱視) 右下:A=90度の正乱視(倒乱視)

乱視(らんし)は、の屈折異常のひとつ。角膜水晶体が歪んで回転体でなくなる事によって光の屈折がずれ、焦点が合わなくなる。

生物の目は完全ではないため万人が乱視の要素を持っているが、軽微な場合は問題がない事が多い。ものが多重に見えるなど視覚に問題が生じる場合は、屈折補正を要する。

正乱視[編集]

円柱レンズ

光が2か所で焦線を結ぶ乱視。ほとんどの乱視は正乱視に分類される。

症状[編集]

弱い乱視のみで近視のない者や乱視・近視ともに弱い者は、眼鏡等で矯正していなくても近くについては2箇所の焦線の中間に眼が調節することによりそれなりの見え方が得られるので、自覚症状は遠くが見えづらいことが主となり、自覚症状や視力値だけでは近視と区別がつきにくい。弱い乱視と弱い遠視を併せ持っている者は眼の調節力により若いうちは視力に問題を感じないことが多い。しかし、C値の大きさが-1.00Dを超える強い乱視では、遠くも近くも見えづらくなる。

検査[編集]

乱視表

視力検査では、放射状の線からなる乱視表を使って検査する。乱視なら、ピントが合っていない方向の線ははっきり見えるが、ピントが合っている方向の線はぼやけてあるいは二重に見える(ピントの合う合わないと線がぼやけるぼやけないは逆の関係にある)。正乱視の場合、最もはっきり見える線の方向(上下を0度とする)が乱視の軸角度となる。つまり、直乱視(A=0)なら縦線、倒乱視 (A=90) なら横線がはっきり見える。

ランドルト環(いわゆる「C」字)でも、乱視を検査できる。乱視ならば、環の切れ目の角度により視力に差が出る。ただし、正確な検査(特に軸角度)は難しいので、乱視表と併用するか、クロスシリンダーを使う。

クロスシリンダーは、2枚の円柱レンズを垂直に重ねた効果を持つ(1枚の)レンズで、裏返すと縦横が逆転するよう45度の角度に柄が付いている。乱視なら、クロスシリンダーの表と裏どちらを使ったかで視力に差が出る。また、クロスシリンダーをある角度にしたとき最も視力がよくなり、その角度で乱視の軸角度がわかる。

軸角度と度数[編集]

円柱レンズで補正できることから分かるように、乱視には方向がある。これを軸角度という。視力矯正の場合には軸角度をA(Axis)で表し、レンズの軸が水平方向の場合A=0度、鉛直方向の場合A=90度と決められている。A=0付近の乱視を直乱視、A=90付近の乱視を倒乱視、それ以外を斜乱視という。

レンズの強さ(度)はC値(cylindrical value)で呼ばれる。C = -0.50D、A = 77度の場合、矯正するレンズは

C -0.50 A 77

と表す[1]

矯正[編集]

乱視は、眼鏡コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズもしくはトーリックのソフトコンタクトレンズ)、レーシックで矯正できる。

円柱レンズを使えば、乱視自体は矯正できる。円柱レンズによって正常視となる乱視を単性乱視という。

単性乱視でない場合は、円柱レンズによって近視または遠視となるので、さらに凹レンズまたは凸レンズによる矯正が必要になる。この2枚のレンズの機能を1枚で果たすトーリックレンズを使うことが多いが、近視・遠視用コンタクトレンズと乱視用眼鏡を併用することもある。

通常のコンタクトレンズは角膜上で自由に回転するが、乱視用コンタクトレンズは角度を固定しなければならないため、特定の角度で安定する工夫がなされている。

眼鏡による矯正[編集]

眼鏡では、弱い乱視は矯正しないことがある。眼鏡による乱視の矯正は、物が縦長、横長または菱形に歪んで見えることによる空間視の違和感を招くことがあるため、それを避けるためである。弱い乱視ならば矯正しなくても、近視を強めにあるいは遠視を弱めに矯正することにより問題ない見え方を得ることができる。例えば C -0.50Dの乱視があっても、近視を S -0.25D強く矯正すれば2か所の焦線の中間に眼が調節することにより小さな錯乱円が得られるので実用上問題ない視力が得られる。

強い乱視にあってはそのような処方では満足の行く視力が得られないので、問題を覚悟の上で乱視矯正をすることになる。その場合でも、実際より弱くしか矯正しないことも多い。乱視を実際より弱くしか矯正しなくても、近視を強めにあるいは遠視を弱めに矯正すれば問題ない視力を得ることができる。

どの程度の乱視から矯正するか、どの程度まで矯正するかは、患者の要望やそれまでの矯正にもよる。例えば、患者が鮮明な見え方を強く望めば、通常ならば矯正しない弱い乱視でも矯正することになる。強い乱視があったとしても、それまでに矯正したことのない者ならば、まずは実際より弱い矯正から慣らしていくことになる。すでに乱視を矯正する眼鏡に慣れている者ならば、実際に近いところまで円柱度を強めることもできる。

軸角度についても斜めの軸角度では違和感が強く出やすいので、90度か180度かいずれか近いほうにずらして処方することもある。見え方は劣るが、違和感を減らすことが期待できる。

ソフトコンタクトレンズによる矯正[編集]

乱視用ソフトコンタクトレンズでは、軸ずれによる見え方が不安定になることがある。すなわち、コンタクトレンズが角膜上で間違った角度に回転してしまうと、乱視を矯正していないときよりかえって見え方が悪くなってしまう。また、乱視用ソフトコンタクトレンズは乱視用でないものより厚く装用感に劣る。そのため、ソフトコンタクトレンズでは、弱い乱視は矯正しない。弱い乱視を矯正しないことを前提として、弱い円柱度数の乱視用ソフトコンタクトレンズは製造されていない。軸角度も数種類しか製品が用意されていないので、実際とずれていてもその軸角度で矯正する。

ハードコンタクトレンズによる矯正[編集]

ハードコンタクトレンズによる乱視矯正は眼鏡やソフトコンタクトレンズによる矯正とは考え方が異なる。ハードコンタクトレンズを角膜に乗せること自体により乱視が矯正される効果に期待するので、弱い乱視だからといって矯正しないという選択肢はない。乱視の多くは角膜が歪んでいることによるので、角膜の上に乗せられたハードコンタクトレンズと患者の涙液が新たに歪みのない角膜の役割を果たすことにより乱視が矯正される。

不正乱視[編集]

どこにも焦点が結ばれない乱視。角膜の異常により発生する事が多い。不正乱視がまったく無い人もほとんど居ないが、補正無しあるいは近視遠視・正乱視のみの屈折補正で1.0以上の視力が出れば通常問題にしない。

ハードコンタクトレンズにより補正可能だが、コンタクトレンズが使用できない場合、屈折補正の効果が低い場合は外科手術を要する。

注釈、出典[編集]

  1. ^ めだまカフェ 視力はこう読む