名探偵ポワロ

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名探偵ポワロ』(めいたんていポワロ、原題:Agatha Christie's Poirot)は、1989年から現在まで、イギリスのロンドン・ウィークエンド・テレビ(London Weekend Television)が主体となって制作している、アガサ・クリスティ原作の探偵エルキュール・ポワロ(ポアロとも呼ばれるが、この項目ではポワロと統一)を主人公とした探偵ドラマ。原作を重んじた丁寧な作りが放映開始当初から支持されている。初期は短編を元にした1時間作品が多かったが、短編をほぼ消化した現在では長編を元にした2時間作品に移行しており、全ての原作を映像化すべく年間数本のペースで制作されている。

目次

[編集] 作品の特徴

最も原作に近いポワロと言われるデヴィッド・スーシェの演技が最大の特徴。スーシェは原作を徹底的に研究し、原作ファンにも愛されるポワロ像を生み出した。現在ではスーシェ演じるポワロが一般的なポワロ像になっているほどである。そして時代設定を1930年代中盤に固定することで、原作の持つ独特の雰囲気を演出することにも成功した。また、彼を取り巻くヘイスティングズ大尉(ヒュー・フレイザー)、ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン)、ミス・レモン(ポーリーン・モラン)をレギュラーとして登場させ、ドラマオリジナルのキャラクター性を加えることで、彼らとの掛け合いがユーモラスに描かれているのも特徴といえる。また、登場人物(特にゲストヒロイン)の年齢が原作より高めに設定されており、「大人のドラマ」という側面が強調されている。

良質なシリーズであるため原作全ての映像化を求めるファンは絶えず、スーシェ自身も前向きなようであるが、ここ数年は制作母体が頻繁に変更されたり、開始当初からのプロデューサーが退任するなどの動きがあり、映像化継続の苦労が伺える。

2007年に予定されていた第11シーズンの放送は2008年にズレ込み、告知のあった「オリエント急行殺人事件」を含む各エピソードも先送りとなった。

日本では、NHK1990年から日本語版の放送を開始、ポワロの吹き替えにはベテラン声優の熊倉一雄を起用し人気を博した。熊倉の声質は必ずしもスーシェのそれと似ているわけではないが、その独特の語り口は、スーシェ同様日本におけるポワロのイメージとして定着するに至った。スーシェ本人からも「熊倉の声が最もポワロの声によく似合う」とお墨付きをもらっている。

イギリス版と日本語版とでは放送順が替えられていたり、放送時間の関係で数分のカットシーンが存在する。このカットシーンはDVDには完全版として新たに吹替版が製作され収録されている。

再放送が何度も行われているが、最近ではケーブルテレビに供給しているミステリチャンネルでもよく放送されている。今のところ新作が作られる度に随時日本でも放送の運びとなっているが、版権処理や日本語化作業のため、オリジナル放送からは1年から3年程遅れるのが常である。完成した日本語版は主にNHKの海外ドラマ枠として年末年始や夏休みに初放送されている。近年は衛星放送のみの放映が多い。

ヘイスティングスの声を担当していた富山敬1995年に死去し、それ以降制作された作品は安原義人が吹き替えを担当しているが、未だに富山の声を惜しむファンは多い。

[編集] 主要登場人物

エルキュール・ポワロ:デヴィッド・スーシェ(声:熊倉一雄

詳細はエルキュール・ポワロを参照

元ベルギー警察の警官(原作では警察署長まで務めたが、ドラマでは触れられず)。首都ブリュッセルで活躍していたが、第一次世界大戦の影響でイギリスに亡命した。受け入れ先「スタイルズ荘」で起こった殺人事件を解決し、一躍有名になる。事務所兼住居である、ロンドンのホワイトヘブン・マンションを拠点に、舞い込んでくる事件(自分から首を突っ込むこともしばしば)を灰色の脳細胞を用いて解決していく。
推理方法としては相手の心理や行動を分析するプロファイリングに近い推理法を得意とし、証人への質問も返答の内容より相手の顔色や反応を見るという、いかにも元警官らしい手法を使う(ただし、現場の証拠やそれが示すものを見逃すことはない)。
秩序と方法をモットーとし、かなり几帳面な性格。曲がったことを許さず、机の上の物を始め、少しでも秩序を乱していると感じるものを並べ直してしまう癖がある。ベンチに座る時など常に綺麗かどうか確認するなど、潔癖性の気もある。当然、潮風と船酔いが伴う船旅や埃っぽい中近東旅行は(口では)嫌っているが、いざ実際に行くと大いに楽しむ。趣味は切手収集(ドラマオリジナルの設定)。
世界一の探偵を自称する自信家で、誰もが自分のことを知っていると思っている。だが案外知られておらず、肩を落としてはヘイスティングスに八つ当たりしたりする。この件もあって、何度となく引退をほのめかしてはヘイスティングスをやきもきさせていた。一度だけ本当に引退を表明し田舎に落ち着いたこともあったが、その村で発生したアクロイド氏の殺人事件に関わり、再会したジャップ警部の言葉に押される形で、再びロンドンに戻り(ホワイトヘブン・マンションの部屋は、ずっと押さえてあった)探偵業に復職している。
自慢の口ひげは、カモメの羽を逆さにした感じ(ガルウイング風)で、先端が上を向いている(初期は先端が少しカールしているものも)。原作では髭の形は明確に書かれていないため、スーシェが気に入る(彼の顔に似合う)この形にされた。シリーズ前半と後半とでは髭の形が微妙に変わっている。
母国ベルギーへの愛国心は人一倍。ベルギーが馬鹿にされると癇癪を起こす。太り気味であることを周囲にからかわれているが、大食漢ではなく美食家。健康ブームの影響か、体型について小言を言われることが多いが、「私の身体は完璧だ」と全く動じない。なお実際のスーシェはスマートで、ポワロを演じる際は胸や肩に大量のパットを入れている。
このように一癖も二癖もある人物だが、それがどこかチャーミングで、憎めない人を惹き付ける一面となっている。
原作のポワロはかなり高慢で嫌なキャラクターだが、本ドラマ版ではむしろより高貴で誇り高い人物描写がされている。ただし、長編もの(特に後半シリーズ)では、その孤高さが(老いの侘しさとあいまって)「孤独さ」へ、そして寂しさへと変化しつつある。
ヘイスティングス大尉:ヒュー・フレイザー(声:富山敬安原義人
ポワロの友人にしてパートナー。元は英国陸軍所属の軍人。第一次世界大戦時は中尉だったが負傷。本国に戻ったときにポワロと再会、『スタイルズ荘の怪事件』を機に探偵になる決意をした。現在は大尉に昇格しているが予備役らしく、軍人年金をもらいつつ独身の優雅な年金生活を送っている模様。美人には弱く、何度か恋に落ちたが、あえなく轟沈。『ゴルフ場殺人事件』で、最愛の女性を見つけめでたく結婚(この部分は原作と同じ)。その後ポワロの元から去り、アルゼンチンに移住して牧場を経営する。しかし、投資に失敗して牧場が倒産。再びイギリスに戻ることになった(原作ではそのままアルゼンチンに移住している)。
性格は純粋かつ正義感の強い行動派。視聴者に近い視点で事件を見ているワトソン役である。短絡的な結論に陥りがちだが、愚鈍というわけではなく、時としてポワロにヒントを与えることもある。
趣味はゴルフと車。ゴルフの練習のため海外に行くこともあった。車はスポーツカーがお気に入りで、乗り回すだけでなく、話が止まらない。その熱中ぶりはポワロによく呆れられている。ただ彼のスポーツカーは、ぶつけられたり、ポワロに車のせいで風邪を引いたと言われたり、あまりいい思いはしていない。
ジャップ警部:フィリップ・ジャクソン(声:坂口芳貞
本名ジェームス・ハロルド・ジャップ。ロンドン警視庁、通称スコットランド・ヤードの主任警部。ポワロがベルギー警察にいた頃からの知り合い。ポワロがロンドンで探偵業を始めた当初は対立することもあったが、互いの才能を認め合っており、よき協力者、よき友人として長年つきあっている。
性格は頑固。理屈よりも先に身体を動かすタイプ。事務処理が苦手で、人員削減のあおりで報告書をタイプする羽目になったときは愚痴をこぼしていた。探偵ものに登場する典型的な警察官で、ポワロに先を越されることも多いが、法的処理等の問題があり自由に動けないためでもある。
既婚者で子供はいないが、エミリーという妻と27年間過ごしている。エミリーは、刑事コロンボの妻と同じく、話には登場するが、顔は出てこない。その設定は、第39話『チョコレートの箱』で見事に生かされている。もっとも、第42話『ポワロのクリスマス』において、ジャップ警部が妻の実家でウンザリしているシーンがあり、そこに登場する女性2人のうちのいずれかが警部の妻ではないかとも考えられる。原作では、終始ポワロとヘイステングスの対話で進むエピソードだが、ブリュッセルで行われたジャップ警部の「黄金の枝」の授章式にポワロが付き添い、昔を振り返りながら事件を説明するエピソードとなっている。なぜ夫人が付いてこなかったかと聞かれたジャップは一言、「妻は長旅が嫌いでね」と返している。
ミス・レモン:ポーリーン・モラン(声:翠準子
本名ミス・フェリシティ・レモン。ポワロの有能な秘書。原作では完璧な機械と称されるほど、人間味がなく冷たい印象だが、ドラマでは人間味のある女性として登場している。
原作ではクリスティの別の探偵パーカー・パイン氏の秘書として初登場し、後にポワロシリーズに登場する。ドラマでは第1話から既にポワロの秘書として登場、これまでの経歴は触れられていない。
性格はポワロと同じく几帳面。決まった時間に行動し、決まった時間にポワロにハーブティーを差し出す(ポワロは紅茶(tea)が嫌い)。完璧なファイリングシステムの構築を目指しており、取り扱った事件のデータを事細かに、ファイリングしている。ただしこのシステムは、彼女しか使いこなせないのが難点。ヘイスティングスが動けないとき、女性の視点を必要とするときなどは、ポワロと一緒に捜査をすることもある。一人で外出するときは、笛でタクシーを呼びつけたこともあった。第一次世界大戦中には死体置き場で仕事をしていたらしく、死体は見慣れているという。
身内は母と、姉ハバード夫人が確認できる。一度だけ、恋人が出来たこともあった(第38話『イタリア貴族殺害事件』を参照)。

[編集] スタッフ

Agatha Christie's Poirot
原作:アガサ・クリスティー
製作:ブライアン・イーストマン他
製作総指揮:ニック・エリオット他
脚本:クライブ・エクストン、マイケル・ベイガー、アンソニー・ホロウィッツ他多数
監督:エドワード・ベネット、レニー・ライ他多数
音楽:クリストファー・ガニング
主演:デヴィッド・スーシェ(エルキュール・ポワロ)
制作:カーニバル・フィルム、英LWT、グラナダ・プロダクション、米A&Eテレビジョンネットワーク、アガサクリスティーLtd.
日本語版『名探偵ポワロ』
吹替:熊倉一雄(エルキュール・ポワロ)
台本:宇津木道子 (-53話)、たかしまちせこ (54-57話)
演出:山田悦司 (-45話)、佐藤敏夫 (46-49話)、蕨南勝之 (50-53話)、高橋剛 (54-57話)
制作:(株)テレシス、NHK

[編集] サブタイトル一覧

イギリスでの放送、およびDVDの収録順に準ずる。なお、作中の時間の流れは不特定で、台詞を確認すると細かく前後していたりする。役者のスケジュールの都合で原作で登場していた話に登場しない時もある。

第1シリーズ 第1話~第10話 (各52分)

  • 第01話 コックを捜せ (原題:The Adventure of the Clapham Cook)
  • 第02話 ミューズ街の殺人 (原題:Murder in the Mews)
  • 第03話 ジョニー・ウェイバリー誘拐事件 (原題:The Adventure of Johnnie Waverly)
  • 第04話 24羽の黒つぐみ (原題:Four and Twenty Blackbirds)
  • 第05話 4階の部屋 (原題:The Third Floor Flat)
  • 第06話 砂に書かれた三角形 (原題:Triangle at Rhodes)
  • 第07話 海上の悲劇 (原題:Problem at Sea)
  • 第08話 なぞの盗難事件 (原題:The Incredible Theft)
  • 第09話 クラブのキング (原題:The King of Clubs)
  • 第10話 夢 (原題:The Dream)

第2シリーズ 第11話~第20話 (第11話・第20話:各103分、第12話~第19話:各52分)

  • 第11話 エンドハウスの怪事件 (原題:Peril at End House)
  • 第12話 ベールをかけた女 (原題:The Veiled Lady)
  • 第13話 消えた廃坑 (原題:The Lost Mine)
  • 第14話 コーンワルの毒殺事件 (原題:The Cornish Mystery)
  • 第15話 ダベンハイム失そう事件 (原題:The Disappearance of Mr. Davenheim)
  • 第16話 二重の罪 (原題:Double Sin)
  • 第17話 安いマンションの事件 (原題:The Adventure of the Cheap Flat)
  • 第18話 誘拐された総理大臣 (原題:The Kidnapped Prime Minister)
  • 第19話 西洋の星の盗難事件 (原題:The Adventure of the Western Star)
  • 第20話 生誕100周年記念スペシャル スタイルズ荘の怪事件 (原題:100th Anniversary Special The Mysterious Affair at Styles)

第3シリーズ 第21話~第30話 (各52分)

  • 第21話 あなたの庭はどんな庭? (原題:How Does Your Garden Grow?)
  • 第22話 100万ドル債券盗難事件 (原題:The Million Dollar Bond Robbery)
  • 第23話 プリマス行き急行列車 (原題:The Plymouth Express)
  • 第24話 スズメバチの巣 (原題:Wasps' Nest)
  • 第25話 マースドン荘の惨劇 (原題:The Tragedy at Marsdon Manor)
  • 第26話 二重の手がかり (原題:The Double Clue)
  • 第27話 スペイン櫃の秘密 (原題:The Mystery of the Spanish Chest)
  • 第28話 盗まれたロイヤル・ルビー (原題:The Theft of the Royal Ruby)
  • 第29話 戦勝舞踏会事件 (原題:The Affair at the Victory Ball)
  • 第30話 猟人荘の怪事件 (原題:The Mystery of Hunter's Lodge)

第4シリーズ 第31話~第33話 (各103分)

  • 第31話 ABC殺人事件 (原題:The ABC Murders)
  • 第32話 雲をつかむ死 (原題:Death in the Clouds)
  • 第33話 愛国殺人 (原題:One, Two, Buckle My Shoe)

第5シリーズ 第34話~第41話 (各52分)

  • 第34話 エジプト墳墓のなぞ (原題:The Adventure of the Egyptian Tomb)
  • 第35話 負け犬 (原題:The Underdog)
  • 第36話 黄色いアイリス (原題:The Yellow Iris)
  • 第37話 なぞの遺言書 (原題:The Case of the Missing Will)
本作のみ、ほぼ完全なオリジナル作品(原作からは一部キャラクターのみ流用)
  • 第38話 イタリア貴族殺害事件 (原題:The Adventure of the Italian Nobleman)
  • 第39話 チョコレートの箱 (原題:The Chocolate Box)
  • 第40話 死人の鏡 (原題:Dead Man's Mirror)
  • 第41話 グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件 (原題:Jewel Robbery at the Grand Metropolitan)

第6シリーズ 第42話~第43話 (各103分)

第7シリーズ 第44話~第45話 (各103分)

第8シリーズ 第46話~第47話 (各103分)

第9シリーズ 第48話~第49話 (各103分)

第10シリーズ 第50話~第53話 (各103分)

第11シリーズ 第54話~第57話 (各103分)

第12シリーズ 第58話~第61話

第13シリーズ

  • 第62話 複数の時計(原題:The Clocks) ※イギリスでは2009年12月放送予定

[編集] 日本における関連商品

放送当初から数社がVHSでの発売を行っていたが、全て英語音声日本語字幕で、サブタイトルも日本語版には依っていなかった。NHKの日本語版がメディア化されたのは2001年から2002年にかけてビームエンタテインメント(現ハピネット・ピクチャーズ)より発売されたDVDが最初。第47話まで発売。この時はテレビ放映時のカットシーンは英語音声日本語字幕での収録だったが、その後2005年にカットシーンに日本語吹き替えを追加しパッケージも一新した完全版が第49話まで発売された(旧DVDに収録されていない第48話、第49話のパッケージはリバーシブルになっており、旧DVDのパッケージに揃えることができる)。2007年5月には旧DVDのパッケージに戻り(仕様は完全版)、第10シリーズ第50 - 53話が『ニュー・シーズン DVD-BOX 1』として発売された。2008年2月には、第11シリーズ第54 - 57話が『ニュー・シーズン DVD-BOX 2』として発売された。第58話以降は現在メディア化されていない。

サウンドトラックは1997年日本クラウンから発売されている。14曲収録。ただし、タイトルは同社から発売されていたVHSに依って『名探偵エルキュール・ポアロ』となっている。

求龍堂から、このドラマシリーズ唯一の解説本『テレビ版名探偵ポワロ』(ピーター・ヘイニング著)が1998年に翻訳出版されている。

イギリスではドラマとは関係なく、スーシェやヒュー・フレイザーが朗読する原作のオーディオブックが発売されており、日本でも購入が可能。

[編集] 参考文献

  • ピーター・ヘイニング 著・岩井田雅行/緒方佳子 訳『テレビ版名探偵ポワロ』 求龍堂、1998年、ISBN 4763098381

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク