飛び出し坊や
飛び出し坊や(とびだしぼうや)とは、児童が道路に飛び出して自動車などと接触する事故を防止する目的で、ドライバーへの注意喚起のために、通学路などに設置されている看板のことである。
概要
[編集]交通戦争と呼ばれた昭和30年代頃から、ドライバーに飛び出し注意を促す看板が日本各地で製作されるようになり、児童が道路に飛び出す姿をモチーフとするものも現れた。始めは板に児童の絵を描いただけのものが多かったが、のちに児童の形に板をくり抜くタイプが生まれ、そちらが主流となった。現在では東北地方から九州まで日本各地にあるが、特に近畿地方に多く滋賀県内の設置数は日本一といわれる[1]。
飛び出し坊やは、滋賀県八日市市社会福祉協議会(現・東近江市社会福祉協議会)の発案によって、1973年6月に地元の看板製作会社「久田工芸」で男の子型と女の子型の11体の飛び出し人形が製作され、八日市市(現・東近江市)内に設置されたのが始まりとされる[2][3][4]。みうらじゅんは、ここで製作されたものが現在主流となっている飛び出し坊やの元祖であるとして、「0系」と命名している[5]。飛び出し坊やへの関心の高まりとともに、滋賀県内では「0系」を基にしたゆるキャラやグッズや文房具なども作られている[6][7]。
製作・設置は主に地元のPTAや町内会が行なっている。飛び出し坊やは立て看板や幟などと同じ道路占用物であり、民有地以外に設置する場合は道路管理者の道路占用許可が必要であるが、交通安全啓発を目的とするものであるため、無許可で設置してあっても黙認されているケースがある。しかし、設置場所や設置方法によっては飛び出し坊やが通行の妨げになる場合があり、都市部で見かけることは少なくなっている。例えば、2003年9月に兵庫県神戸市西区で乗用車と飛び出し坊やの接触事故が発生し、飛び出し坊やを設置した地元の小学校PTAが車の修理費用を負担した事例がある[8]。
他、滋賀県近江八幡市安土町では、地元の中学生が手掛け設置した飛び出し坊やが、2019年11月までに一部が盗難に遭っていることが明らかになっている[9]。
デザイン
[編集]目に入りやすいデザイン・色遣いが多い。手作りのものとホームセンターで売られている既製品がある。地域や年代ごとに様々なデザインがあり、特に手作りのものは、細かなデザインの違いが多い。児童に人気のある漫画やアニメのキャラクターが描かれることも多く、なかには著作権上問題となりそうなものもある。その地域の特色にちなんだご当地もののデザインも存在し、交通事故防止だけでなく、まちおこしに活用する動きもある[10]。「坊や」や「小僧」などの名称からわかるように、多くは男の子のデザインであるが、女の子や高齢者のデザインもある。「まちおこし」目的の例として、アニメ版『けいおん!』で主人公たちが通う学校のモチーフとされた豊郷町立豊郷小学校のある豊郷町には、同作のキャラクターをモデルにした「飛び出し坊や」が設置された(そのほか『らき☆すた』の泉こなたや初音ミクもあり)[10][11][12]。
一部の飛び出し坊やには、顔の部分に写真をはめ込んだものもある。そのバリエーションの多さとユニークさから、みうらじゅんなど飛び出し坊や撮影を趣味とする者がおり、『VOW』やABCテレビ『探偵!ナイトスクープ』やtvk『Saku saku』などメディアで取り上げられることもある。
2023年11月に公開された映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』では、滋賀県のアイテムとして登場し[13][14]、「発祥の地」である東近江市の商工会では映画のキャラクターをモチーフにした「飛び出し坊や」を地域フェアで展示している[15]。
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「0系」を『けいおん!』の登場人物風にアレンジした豊郷町の「飛び出し女子高生」
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ 9県 ロングセラーいまむかし(上) 滋賀県東近江市 とひだしとび太くん 久田工芸 交通安全見守り続け 2015年11月23日 中日新聞 朝刊 朝刊地方総合 15頁
- ^ ひがしおうみ社協だより第36号、2011年3月5日、東近江市社会福祉協議会発行。
- ^ 「飛び出し坊や ゆかいな114体 発祥の地・東近江で紹介=滋賀」、読売新聞大阪朝刊、2013年4月3日、28頁。
- ^ 「飛び出し坊や、誕生40年 「発祥の地」の東近江で歩みたどる写真展 /滋賀県」、朝日新聞大阪地方版/滋賀、2013年3月24日、34頁。
- ^ テレビ朝日『タモリ倶楽部』「琵琶湖の周りに大量発生!!飛び出し坊やMAP2012in珈琲琵琶湖」 2012年1月6日放送。
- ^ “あの「飛び出し坊や」ブレイクのきっかけは、工場の暴走だった?!”. AERA dot.. 朝日新聞出版 (2015年10月17日). 2017年9月14日閲覧。
- ^ 「とび太くん」」とコラボ 愛荘のコクヨ ふせん、ノートを発売 2015年4月7日 中日新聞 朝刊 朝刊びわこ総合 17頁
- ^ “「飛び出し坊や」消えちゃう? 神戸”. 神戸新聞ニュース (神戸新聞社). (2023年11月26日). オリジナルの2003年12月23日時点におけるアーカイブ。 2023年11月25日閲覧。
- ^ “盗難の「飛び出し坊や」を作り直し 滋賀 近江八幡”. NHKニュース. (2019年12月13日). オリジナルの2019年12月14日時点におけるアーカイブ。 2023年11月25日閲覧。
- ^ a b “「飛び出し坊や」の王国・滋賀 進化の行き先は、まちおこし”. MSN産経west. (2011年11月25日). オリジナルの2011年11月27日時点におけるアーカイブ。 2023年11月25日閲覧。
- ^ 京都新聞滋賀版 2010年6月15日[要ページ番号]。
- ^ “「飛び出し坊や」の聖地!滋賀・豊郷には「飛び出しガールズ」も?”. オリコンニュース. (2019年6月28日) 2023年11月25日閲覧。
- ^ “とびだしとび太、「翔んで埼玉」で存在感 実は50歳、発祥の地は今”. 朝日新聞. (2023年11月23日) 2023年11月28日閲覧。
- ^ どうのるも (2023年10月8日). “【東近江市】「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」の作中にも登場! 今年は飛び出し坊や誕生50周年です”. Yahoo!ニュース 2023年11月28日閲覧。
- ^ 2023年11月24日の投稿 - 東近江市商工会facebook
参考文献
[編集]- 「2016年度第1回調査「飛び出し坊やを調べよう」結果報告」(PDF)『フィールドレポーターだより』第47号、琵琶湖博物館、2016年。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- mahorova
- 飛び出し坊や50周年記念サイト - 東近江市観光協会