性別適合手術
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性別適合手術(せいべつてきごうしゅじゅつ)は「Sex Reassignment Surgery」の訳語で、以前は性転換手術の名前で呼ばれていたものである。直訳して「性別再設定手術」「性別再判定手術」「性別再割当手術」などのことばもあったが、正式名称は「性別適合手術」とされており、「性転換手術」等は俗称とされている。
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[編集] 概要
基本的には性器の外観を調整する手術と定義できる。主として、男性型の性器外観を持つ人が女性型の性器外観に変更するか、逆に女性型の性器外観を持つ人が男性型の性器外観に変更するケースであるが、様々な事情や手術を受ける人の意志により微妙なバリエーションも存在する。また女性型から男性型への変更は技術的な理由により、何度かに分けて手術されることが多い。なお、多くは性同一性障害などの場合で、本人の強い意志にもとづくものであるが、周囲の人の勧めにより手術に踏み切っている場合もあるものとみられる。
[編集] 男性型から女性型へ
男性型から女性型への変更(MTF)では、以下の2つの手法が一般的である。
- 陰茎会陰部皮膚翻転法
尿道と直腸の間を切ってスペースを作り、そこに海綿体を除去した陰茎と精巣を除去した睾丸の皮膚を血流を残したまま移植して膣を形成する(これを造膣と呼ぶ)。性感を残すために、動脈と静脈と神経をつないだ亀頭の3分の1を移植して陰核を形成する。性感には個人差が大きく、また術後約1年間は、神経が未結線のために無感覚である。性腺も温存するため若干の体液が出るが、それはカウパー腺液であり、女性のバルトリン腺液及びスキーン腺液とは質・量が全く異なる。このことから、性交渉に必要な分泌液が十分でないことがこの手法の弱点である。また、術後3ヵ月以上の長期間に渡って、プロテーゼ(スティックとも呼ばれる)による拡張ケア(ダイレーション)を行い、膣の収縮を抑えることが必要である。長年の女性ホルモン投与による男性器の萎縮などの理由で陰茎や陰嚢の皮膚が不足する場合に、尿道を利用して造膣することも近年可能になった。日本やタイなどアジア圏ではこの手法が主流である。
- 大腸法
性交渉を重視する場合に用いられる手法。尿道と直腸の間を切ってスペースを作り、下腹部を15cm程度開腹して、小腸と大腸を繋いでいるS字結腸を10数cm切り取り、造膣を行う。分泌される膵液がバルトリン腺液に似た効果をあたえるが、常に分泌し続けるためにナプキンなどで常時ケアをしなければならないという欠点がある。しかし、術後の膣収縮がなくダイレーションが不要な点では安定性がある。米国やスウェーデンなど欧米圏ではこの手法が主流である。
どちらの方法でも難しいのは血行の保持であり、うまくいかない場合はその皮膚に血が通わなくなるため、その皮膚組織が壊死して脱落する可能性がある。
大陰唇・小陰唇の形状にこだわり、数回の手術を希望する者もいる。
[編集] 女性型から男性型へ
女性型から男性型への変更(FTM)で性行為が可能になるまでには、6種類の手術を受ける必要がある。 第一のステージは小さい乳房の場合は乳輪のラインに沿ってU字状ラインで切開し、中の乳腺組織を摘出する。大きな乳腺の場合は、乳頭の下部から逆T字状に切開し、乳腺を摘出する方法が行なわれる。次の手術は子宮、卵巣、卵管の摘出が行なわれる。これらは同時に行なう事が可能である。
次のステージでは膣の内壁を切除し膣を閉じると同時に、尿道を新しく作り陰核の付け根まで移動する。元の尿道口は閉じられる。同時に新しい陰茎になる組織を養成するため、前腕部に臀部などの組織を切取り反転して移植し、シリコンチューブを入れて新しい陰茎の尿道になる組織を約半年間かけて養成する。
次のステージではトンネル状に形成された前腕部の組織を切り取り、丸めて陰茎の形状にし、マイクロサージャリー(顕微鏡下での神経血管接続手術)で陰核の部分に接続する。同時に大陰唇の組織の内部にシリコン性の睾丸を挿入し陰嚢の形状に形成する。切り取られた前腕部には、臀部の表皮をはぎ取り前腕部組織の回復処置を行なうが、完全にもとの状態には戻らない事が多い。
性交渉を望む場合は、陰茎形成時に内部にポケット状の空間を確保し、約1年間後に特殊な折り曲げ可能なインプラントを挿入して完成する。この状態になるとほぼ通常の男性と変わらない機能が得られる。
[編集] 最後のステップとしての手術
このような手術を受ける前に多くの人は、生活習慣の変更に加え、性ホルモンの摂取や、乳房の手術(MTFの場合は豊胸手術、FTMの場合は乳房切除手術)、などにより、既に新しい性の外観を取得している場合が多く、「残るは性器だけ」という状態になってから、手術を受けに来る。日本精神神経学会のガイドライン[1]では手術前に一定期間の性ホルモンの投与や、新しい性での社会生活(RLE - Real Life Experience)を行う事を重要視しており、これを条件にしている病院も多い。
[編集] 日本での事情
2006年7月現在、日本で手術を施行した実績を持つ大学病院は埼玉医科大学、岡山大学、関西医科大学、大阪医科大学、札幌医科大学の5ヶ所(ただし、札幌医科大学における手術についての新聞報道には7ヶ所との記述がある)。このほかが手術の施行を視野に、各科の専門家で構成するジェンダークリニックを設置している。しかしこれらを合せてもとても希望者をさばききれる状態ではなく、また技術的にも不安があるということで、男性型→女性型や女性型→男性型の手術を希望する人の多くが施術医療機関の数が多く技術も進んでいる タイで手術を受けている。日本国内で上記5ヶ所以外にも手術をしている病院は存在するが、誰かの紹介がなければ応じてくれないものと思われる。少数ではあるが外国からわざわざ日本に来てそういう所で手術を受けていく人たちもいる。このような病院は比較的小規模なことが多いがそのような場合でも全身麻酔下での手術であるため手術医に加え専門の麻酔医の参加が必須である。なお誤解無きよう記述しておくと、日本国内に於いて手術を行う事ができるのは上記5医療機関のみ、という訳ではない。日本精神神経学会の「診断と治療のガイドライン」から一学会の制定した指針に過ぎず、法的な拘束力は全くないことに留意しなければならない。医学的にも、精神科医から構成される学会であり、外科医や患者かなどからの認証は全く受けていないことから、遵守すべき根拠は乏しい。逆に、ガイドラインを守ったからといって、あらゆる刑事上、民事上、行政上等の法的責任からは何一つ免れ得ないことにも留意すべきである。
実体法上、国内法令には、同手術の規制は全くない。
さらに、諸事情で、関西医科大学、大阪医科大学、などでも事実上ストップ状態 となっている。
- 2007年9月現在、ガイドラインルートにてコンスタントに性別適合手術を実施している医療機関は唯一、岡山大学病院(2007年1月1日 医療法上の病院名称を岡山大学医学部・歯学部附属病院より変更)で、FtMは木股敬裕教授、MtFはベルギーで研修を受けて帰国した難波祐三郎准教授、長谷川健二郎講師が担当して、週一のペースで行われている。
なお半陰陽のケースで性器を男女どちらかの形に合わせ付ける手術も以前は「性転換手術」の名前で呼ばれたこともあるが、性同一性障害の人を対象とする性別適合手術とは分けて考えるべきである。また半陰陽の人についてはそもそも男女どちらかに合わせる必要があるのかどうかについて最近議論されるようになってきた。

