世界で最も美しい村

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世界で最も美しい村(せかいでもっともうつくしいむら、: Les Plus Beaux Villages de la Terre: The Most Beautiful Villages of the World)は、フランスベルギーワロン地域)・イタリア日本スペインにおける同様の運動が連携し結成された任意団体である世界の最も美しい村連合会が推進・認定する顕彰事業である[1]

沿革・展開[編集]

1982年フランスの最も美しい村協会設立後、1994年ワロン(ベルギー)の最も美しい村協会フランス語版1998年ケベック(カナダ)の最も美しい村フランス語版2001年イタリアの最も美しい村協会が発足。2003年にフランス・ワロン(ベルギー)・イタリアによる「世界で最も美しい村々連盟」を設立。2005年には「日本で最も美しい村」連合が設立され、2010年に日本も加盟。2012年カナダケベックが加盟[注 1]し、同年に新たな定款を策定し、フランスにおける法人格を収得した[2][3]。その後、スペインの最も美しい村協会も加盟した。

連合会長は、2013年時点ではフランスのゴルド村村長でフランスの最も美しい村協会会長でもあったモーリス・シャベール(Maurice Chabert)氏、副会長は美瑛町町長で「日本で最も美しい村」連合会長であった浜田哲であり、2015年には美瑛町で連合の総会を開催した[4]。 また、2023年5月23日~26日には、京都府の伊根町および和束町を会場に、日本での2度目の総会が開催された[5]

最も美しい村運動は、ドイツザクセンスイスリヒテンシュタインレバノンロシアがオブザーバーメンバーとして連合加盟の準備を進めている[6]など、世界的な広がりをみせている。

公式本[編集]

  • Selection du Reader's Digest (2012). Guide des plus beaux villages de France. Selection du Reader's Digest. ISBN 2709823578  …フランスの最も美しい村協会創立30周年記念公式ガイドブック、この1981年度版が最も美しい村運動と協会設立のきっかけとなった
  • 日本で最も美しい村連合『日本で最も美しい村―公式ガイドブック』ハースト婦人画報社、2012年、128頁。ISBN 978-4573022485 

関連運動[編集]

郷土の文化環境を守ろうとする活動としては、最も代表的なものとして世界遺産があるが、UNESCOが主導する創造都市ネットワーク、創造都市から発展した日本の創造農村[7][8]FAO(国連食糧農業機関)が推進する世界重要農業遺産システムなどもある。

民間事業では、エコビレッジスローシティ[9]ジオパークなどが注目されている。

国内では、文化財保護法による伝統的建造物群保存地区重要文化的景観農林水産省による日本農業遺産食と農の景勝地美しい日本のむら景観百選がある。

世界で最も美しい○○[編集]

最も美しい村運動は、類似した選定事業を派生させた。フランスの観光情報サイト「Norte Belle France(私たちの美しいフランス)」では独自に「The Most Beautiful Places of the World(世界で最も美しい場所)」として、「世界で最も美しい山脈」・「世界で最も美しい峡谷」・「世界で最も美しい城」・「世界で最も美しい洞窟」・「世界で最も美しい都市」・「世界で最も美しい砂漠」・「世界で最も美しい島々」・「世界で最も美しい湖」・「世界で最も美しい村」・「世界で最も美しい滝」を選定している[10]

雑誌の『Forbes』も「The Most Beautiful Places In The World(世界の最も美しい場所)」を特集し[11]、メディアが流用したことから様々な「Most Beautiful ○○ World」企画が作られている。

より公共性が強いものとしては世界で最も美しい湾クラブなどがある。

上記の雑誌企画における最も美しい村選定に関しては、途上国インターネット上で「先進国のエゴである」との批判が多数あった[要出典]。実際に美しい村連合に加盟するのは当時は先進国のみで、どれだけ辺鄙なところへ行こうとも最低限のインフラが整備されており、旅行者は田舎暮らしの疑似体験を望むだけで、利便性や快適さを求めずにはいられないという揶揄であった。また、「美しい」の基準もあくまで西洋基準主体であり、サービス衛生状態なども評価対象としており、こうした制度は観光地としても格差社会を助長するとの主張がなされた。先進国側の視点では、無機質都市化近代化が進む中で、失われゆく牧歌的な空間を保護し、精神衛生向上に役立てたい目的もあるが、公的文化施策ではなく利害関係が生じる観光業では理解が進みにくいことは事実である[要出典]

これらは農村観光分野においても共通することとして認識されている。(アグリツーリズム#導入の背景を参照)

一方、国内でも、これまでは取り残された片田舎との位置づけもなされた地域が、地域おこしまちづくりといった活動を通し、「地方の負は文化になりえる」という逆転の発想も生まれている[12]。その延長線上に美しい村運動も位置づけられる。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ケベックは2019年に退会した。

出典[編集]

  1. ^ 世界の最も美しい村連合会”. 「日本で最も美しい村」連合. 2023年10月1日閲覧。
  2. ^ 30周年を迎えた「フランスの最も美しい村々」 - フランス観光開発機構
  3. ^ 祝30周年!フランスの最も美しい村々 - フランス観光開発機構
  4. ^ びえい新聞2013-09-21
  5. ^ 世界に広がる「最も美しい村」運動”. 外務省 (2023年7月16日). 2023年10月1日閲覧。
  6. ^ The Federation of the Most beautiful Villages of the World” (英語). The Federation of the Most beautiful Villages of the World. 2023年10月1日閲覧。
  7. ^ 佐々木雅幸、川井田祥子、萩原雅也『創造農村: 過疎をクリエイティブに生きる戦略』学芸出版社、2014年、272頁。ISBN 978-4761532093 
  8. ^ 創造農村 - 創造都市ネットワーク日本
  9. ^ 島村菜津『スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町』光文社、2013年、285頁。ISBN 978-4334037369 
  10. ^ Beautiful World - Norte Bell France
  11. ^ The Most Beautiful Places In The World - Forbes
  12. ^ 三宅理一『負の資産で街がよみがえる―縮小都市のクリエーティブ戦略』学芸出版社、2009年、207頁。ISBN 978-4761524661 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]