コモディティ化
コモディティ化(コモディティ - か、英: commoditization, commodification)は、所定の製品カテゴリー中において、メーカー(製造元企業)ごとの差・違いが不明瞭化したり、なくなること。
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[編集] 概要
コモディティ(英:commodity)化は、市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとっては何処のメーカーの品を購入しても大差ない状態のことである。なお英語の「commodity」は日用品程度の意味しかない。
これらには、幾つかの要因(後述)があるが、消費者にとっては商品選択の基準が販売価格(市場価格)の違いしかないことから市場原理の常としてメーカー側は「より安い商品」を投入するしかなくなり、結果的にそれら製品カテゴリーに属する製品の値段が安くなる傾向があり、反面企業にしてみれば価格競争で安く商品を提供せざるを得ず、結果的に儲け幅(商品として扱ううまみ)が減ることもあり、企業収益を圧迫する傾向がある。
こういったコモディティ化回避の企業戦略としては、付加価値の付与による多機能化など差別化戦略がある訳だが、過剰に機能を追加しても過剰性能で消費者にアピールできない場合もあり、ブランドイメージ戦略も各々のメーカーが同程度の力を注いでいる場合は並列化するまでの時間稼ぎにしかならず、差別化戦略にも限界が存在する。
[編集] コモディティ化の要因
コモディティ化に至る原因は幾つか存在するが、その理由は一様ではない。製品カテゴリーにもよって様々な要素も関係しあい、相互にコモディティ化を推進している場合がある。
- 規格や仕様の存在する製品群・市場
- コンピュータ関連や通信関連の機器に顕著な傾向であるが、これらの製品はメーカーの別無く同じように使え、同じように通信網に接続できることが絶対条件として求められる。従ってそれら通信規格など基本仕様に則っていない製品は市場投入することができず、結果的に並列化する。コンピュータネットワーク関連機器などはこの傾向が顕著であり、サーバ製品も併せてコモディティ化回避のための各社の技術開発が盛んではあるが、規格争いのような市場の混乱を誘発させる現象もしばしば発生する。
- この規格化に関しては、コンピュータ関連や通信以外にも、規格化された所定の記録媒体としてのメディアを再生する必要がある機器の分野にも発生する。卑近な例を挙げればVHSのビデオデッキやCD・DVDのプレーヤーなどがこれに該当し、再生品質の程度を別にすれば廉価な製品の内にコモディティ化著しい製品群が見出せる。
- モジュール化
- 製品を構築する要素がモジュールとしてすでに市場に存在し、製品として流通している場合は、メーカーにとって同等のモジュールを一から自社開発するよりも安上がりである。このため所定の機能を持つモジュールが所定の目的に使われる製品に組み込まれることとなるが、その結果として同じモジュール同士で構成された製品は、メーカーの別なく同程度の性能しか持たなくなる。
- この傾向が強い分野の一つにはパーソナルコンピュータがある。
- 技術の円熟化
- 多くの消費者が求める以上の機能が簡単に実現可能な場合、必要十分な機能を実現する上でのハードルも下がり、結果的に大手から中小まで多くの企業が同等製品の製造と販売に参入してくる。この場合においてはもはや技術力に勝るとか販売ルートの開拓力を持つといった企業自体の力は余り関係なく、消費者は入手利便性・廉価性などで最も優れた製品を手にする。さらには、大手メーカーも海外生産に移行するなどした結果として新興メーカーとの価格的な差異が小さくなり、消費者の選択を左右する要素がメーカー全体の持つブランドイメージの差ぐらいという状況となる場合もある。
- 電卓・トランジスタラジオ・ローエンド帯のホワイトボックスパソコンなどの分野はこの傾向が顕著である。
- 基準・法制度
- 例えば安全基準のように、満たさなければならない性能の下限がすでにあって、それを満たせばよい場合には、その基準を満たした製品だけが市場に流通する点で、コモディティ化が発生する。
- 例えばオートバイ乗車用ヘルメットは、そういった安全基準を満たす必要性においてコモディティ化の傾向が強く、ミニバイク(原付バイク)用乗車ヘルメットは、ホームセンターなどに行くと構造は簡素ながら有名メーカーの製品とは段違いに廉価な製品が並んでいる。これに対して、有名メーカーの高価格な製品は着用時の快適性や意匠性、著名レーサーが公式に同じ物を使っていたりデザインや塗装に関しアドバイザリーを行なったりするタイアップ、国内の安全基準と比較しても遥かに厳格な国際的な安全基準への適合などで差別化を図り、人気獲得とブランドイメージの確立を図ることが要求される。
[編集] コモディティ化の例
コモディティ化が発生している製品群は、視点を変えれば消費者にとっては日常生活に不可欠な日用品となっている製品とみなすことが可能である。これらの商品は無くては困るし、どこのメーカーの製品でも基本的機能をきちんと満たすことが要求されるが、基本的機能のみを求める限りにおいては製造元については細かく問う必要が無い面がある。
生活の必需品という意味では、白物家電(生活家電)が先進国では標準的に普及しているが、これらで例えるならば、掃除機であれば「細かいごみを吸い取って内部に蓄え捨て易くする機能」が、冷蔵庫であれば「中の食品が腐らないよう十分に冷やす機能」が確実に求められるが、あとは消費電力・容量・操作性・デザイン・付加機能などの細かい選択基準があるのみで、基本的な性能や機能は大手・中小の電機メーカー、プライベートブランドの各製品を比較しても大きな差異は無く、消費者はどのメーカーの製品を選んでもほぼ同等の基本的機能を有する製品を手にすることができる。
しかし白物家電の多くではコモディティ化が進行した結果、電機メーカーにとってはうまみの薄い製品群であることには違いなく、これらが経営を圧迫している傾向も強い。ただ消費者は同製品カテゴリーの製品を求めるため、完全に切り捨ててしまう訳にも行かない。このため電機メーカーでは、これらコモディティ化の著しい製品群は人件費が安い地域にある海外生産拠点に生産を移してコストダウンを図ったり、あるいはOEM製品を取り入れて自社生産拠点への注力を回避するなどの対策を図るケースも見られる。他のコモディティ化が著しい分野でも、概ね似たような事情や動向が見え隠れしている。
この「うまみが薄い」という面は販売でも同様で、家電量販店における白物家電には「需要はあるがヒット商品のように一度に大量に売れない(加えて売り場面積の占有率が大きい)」という一面があり、宣伝にも販売にも余り人員やコストを割いていなかったり、売り場の位置や面積も狭く隅っこであるなど、娯楽家電など他分野よりは積極性が感じられない様子が見られる。
ただし、こういった市場の方向性においてもコモディティ化を脱却する手法はいくつか存在し、たとえばデザイン家電のように意匠性に特化したり、あるいは多機能化で優位性を獲得、更にはそれら複合化された付加価値によって新しい利用方法が創出され、従来の単機能製品が持ち合わせていなかった新たな価値観をも創造するケースが見出される。
[編集] コモディティ化の進行と新規参入
市場においてコモディティ化が始まると、それと並行して従来は大手企業や老舗企業の寡占状態にあり高価な製品を主体としてきた市場に、新興勢力が組み付きやすい環境が作り出される場合がある。ここで言う「新興勢力」とは主に中小企業や後発企業・国外メーカーなどで、更には自社では製品の製造設備・開発機能を実質的に持たないファブレス的な企業やプライベートブランド・ショップブランドもその範疇に含まれる。これら新興勢力が、先行する主力メーカーが「スタンダードモデル」などと称するローエンドの廉価な製品と機能的にほぼ同等の製品を、さらなる低価格で次々と市場に投入してくることも見られ、やはりこの場合においても、消費者の中にはメーカーのブランドに関わりなく入手性や価格で購入商品を選ぶ傾向を取る者が出てくる。
こういったコモディティ化の進行に伴う新興勢力の市場参入に関しては、日本では2000年代中頃よりデジタル家電の分野が著しい。この分野では、従来先行していた大手家電メーカーの製品とほぼ同等の基本的機能を、モジュール化によって後発メーカーの製品でも比較的容易に実現させることが可能になった結果、国内外数多くの新興勢力の市場参入に繋がり、これらが投入してきたより低価格な製品はコモディティ化のさらなる進展を促すことになった[1]。
ただその一方で、消費者にとってはこれら低価格帯の製品を主力とする新興勢力側のメーカーと、先行する主力メーカーを比較した場合、企業の持つ知名度や競争力、更には企業全体の体力や規模・ノウハウの蓄積に伴うアフターケアの充実具合の差などが、単純な製品の価格差に見合わない場合もあり、低価格に釣られて新興勢力側のメーカーの製品を購入した結果、「安物買いの銭失い」という諺が端的に表すような状況に陥る可能性も否定しきれない。
このため、消費者がメーカーそのものに対する安心感・信頼性・堅実感なども考慮に入れた上で複数メーカーの製品を比較検討する事はよく見られ、結果として多くの消費者が若干割高であることは承知の上で業界の主力や老舗であるメーカーの製品を選択することもさして珍しいものではないのが現実である。他方では実際に廉価な製品を販売している中小ないし後発・国外メーカーのアフターケアやユーザーサポートの質的不足に不満を抱くケースや、過去には低価格製品を販売していた後発メーカーが経営破綻したり国外メーカーが唐突に日本法人を解散して撤退してしまうなどの事態も発生しており、この様な形でアフターケア体制が崩壊してしまったメーカーの製品や、さらに言えばアフターケア体制の消滅によってメーカー修理が不可能になってしまった故障品などを巡って、消費者のみならず製品を販売した店舗側をも巻き込みつつ混乱したケースも見出せる。
[編集] コモディティ化戦略
コモディティ化戦略は、メーカーが自らコモディティ化を目指す経営・販売の戦略である。
例えば、パソコン用ソフトウェア販売会社のソースネクストは、すでにマイクロソフトがデファクトスタンダードを確立しているオフィススイートを始めとするアプリケーションソフトウェア(パッケージソフトウェア)分野の製品市場にスリムパッケージなど簡略化させたパッケージと既にマイクロソフト側に敗退して小さな市場に落ち着いていたメーカーや新興メーカーのソフトウェア製品などを低価格で販売することで切り込みを掛けている[2]。こういったコモディティ化戦略は、既存市場の高値寡占化傾向が根強いほど、市場は安価な製品を求めておりそこに市場開拓の余地があるはずという視点に基いて展開されてゆく。
[編集] 情報処理業界とコモディティ化
情報処理の業界に於いては、規格化の一方でコモディティ化が進行し易いのは既に述べたとおりだが、その一方でバリュー・チェーンのどこかで脱コモディティ化が発生すると考えられている。これはクレイトン・クリステンセンの説によるが、技術面で頭打ちになるなどコモディティ化が進行すると、アフターサービスや調達性による差別化が発生、ここで消費者が所定のメーカー製品を選択するようになるというものである。
例えば、サーバ製品やネットワーク関連機器メーカーの大手サン・マイクロシステムズが2007年11月14日に、日本で地下に構築された大規模なデータセンターの設置運営を国内10社と共同で行うと発表する[3]など、製品だけではなく総合的なソリューションサービスに展開する企業も出てきている。
[編集] 脚注
- ^ コモディティ化による価値獲得の失敗・デジタル家電の事例
- ^ ソースネクスト、“コモディティ化”を掲げた新事業戦略記者発表会を開催――主力製品を1980円に!!
- ^ サン、IJ、ベリングポイントなど民間企業を中心に12団体が「地底空間トラステッド・エコ・データセンター・プロジェクト」を発足 2007年11月14日 プレスリリース