共生マーケティング

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共生マーケティング(きょうせいマーケティング、: Commensal Marketing, Symbiotic Marketing)あるいはコ・マーケティングCo-marketing)とは、企業と企業、企業と消費者、国と国、人間と自然が共に生きることを大前提とし、利益よりも信頼を最優先する自由市場経済におけるマーケティングをいう。企業同士のコラボレーションはもちろん、企業と消費者がソーシャルメディア等を通じて相互にグローバルに作用し合いながら、コモディティ、コスト、コミュニケーション、チャネル戦略を遂行するというもの。特に消費者の信頼を第一とする食品業界等では関心を持ちはじめ、導入を検討しているところも出ている。企業はかつて公害問題を解決できたのであるから、子育て介護も、地球環境問題と同様に企業経営の中で社会的コストを考慮して考えていくことになるというもの。

従来のマーケティングの4Pを考える[編集]

1960年代の経済の高度経済成長を支えてきた従来のマーケティングは4P〔(Product(製品), Price(価格), Place(場所), Promotion(販売促進)〕のマーケティングミックス要因を中心に遂行すると利益が得られるというものであった。

  • Productは前に導くというラテン語の原義のとおり、オートメーション工場のベルトコンベアから吐き出される量産品でヒューマンタッチではないイメージがあり、造って売り込むというプロダクトアウトの臭いがする。自動車部品の欠陥が増えたり食品偽装が存在したりするのは利益を第一に考えるからである。
  • Priceでは製品価格の概念のみであり、地球環境を踏まえたコストのような概念が含まれていない。
  • Placeでは場所を示すだけで商品のダイナミックな流れを感じることがない。
  • Promotionは販売促進ということであるから、造って売り込むというプロダクトアウトそのものであり、人々の繋がりといったソーシャルな面が足りない。

消費者重視の、よりきめ細かい活動を必要とする低成長時代にあっては4Pではなく4Cで見ていったほうが適切というのが共生マーケティングである。

概要(共生マーケティング・ミックスの4Cの意義)[編集]

共生マーケティングのミックス要因の4C(商品、コスト、チャネル、コミュニケーション)は、1972年度早稲田大学商学研究科修士論文に最初に現れた。4Cとは次のようなもの。

  • Commodity(共生商品)はラテン語で共に便利な、共に幸せにするという意味で、消費者から出発するアウトサイドインの考え方に添った商品である。これは統合マーケティングコミュニケーション(IMC)の考え方と近い。造ったから売ってしまえというプロダクトアウトの考え方では、産地を偽ったり、賞味期限を延長したりするといった商品偽装など無くなるはずもなく、こんなことは以ての外であり、消費者との相互作用によって信頼できる商品やサービスを開発しようという哲学がコモディティに反映していく。はじめからコモディティを創れば、最近言われているコモディティ化にも対処しやすい。
  • Cost(共に立ち上がるという原義)は、プライスだけでなく生産コスト販売コスト、買い物コスト、社会的コストと広く捉えることができる。ノースカロライナ大学のローターボーンも同様のことを言っている。地球環境コスト(原発等の安全対策コストも含まれる)だけでなく、子育てコスト、介護コストも企業が加味して行けば、例えばある化粧品会社のように社内に託児施設をつくることで待機児童の問題にも貢献でき、介護をしている従業員への支援システムをつくることを社会的コストとして加味したり、優良企業と福祉ビジネスとの社会的コストに関する共生によって介護関係の雇用の問題も解決の糸口が見えてくる。
  • Channel(流通経路)の原義はキャナル(運河)であり、このほうがプレイスよりも商品のダイナミックな流れをそのまま表すことができる。納入業者、製造業者、流通業者、消費者が共生できるビジネスモデルを創成する。生産者・製造者・流通業者が共生している食品会社や製造と流通が共生しているアパレル産業などがある。チャネルとしてインターネット販売も考えられ、リアルとネットの融合も考えられる。
  • Communication(原義:意味を共有する)のほうがプロモーションよりも双方向型の共生の考え方に相応しい。ローターボーンの見解も同様である。節約を呼びかける電力会社の広告や社会に呼びかけるACジャパンの公共広告は「プロモーション」ではなく「コミュニケーション」であろう。1990年代に良いといって騒がれた統合マーケティングコミュニケーション(IMC)戦略は4P理論では位置づけられない。これからの経営はアウトサイドイン型で、消費者の心を掴み(consumer insight)、広告等で提案をし、絆を創っていかなければならない。つまり、プロポジションとして、コミュニケーション・ツールをコーディネートし、オーディエンスに順次コンタクトしていくというクロスメディアを考慮することがコミュニケーションであればできる。勿論、市場の調査・分析・報告を行うMarketing Information System(MIS)もコミュニケーションに含まれる。「プロモーション」のカテゴリーではこれらの課題を包含することはできない。コミュニケーション・ツールには広告、販売促進、PR、パブリシティ、CI、インターナル・コミュニケーション、クチコミ、MISなどがある。

共生マーケティングはこれら4Cを遂行することで、人に優しく、地球に優しくでき、生活者の信頼を得て、はじめて商品が売れ、利益が後からついてくるという考え方に基づくマーケティングである。自由競争社会にあって、信頼を損なわないマーケティング、それが共生マーケティングである。この共生マーケティングのフレームワークの一つに7Cs COMPASS MODELがある。

共生マーケティングにおける7Cs COMPASS MODEL[編集]

7Cs compass modelは共生マーケティングを行うための枠組みで、7つのCと、消費者への考慮要件及び外部環境のチェックリストとしてコンパスの4方位(NWSE)で示すというもの。同心円のモデルの中心にあるのが第1C:Corporation(企業、団体)、2番目の円が4等分され第2C~第5C(上記の4C)が配置されている。その外側に第6C:Consumer(消費者、生活者)、さらにその外側に第7C:Circumstances(外部環境)がある。そして、消費者と外部環境にはコンパスの針で4方位(NWSE)で始まるキイワードが示されている。

  • 第1C:Corporation(企業、非営利組織)あるいはCompany(原義:共にパンを食べる仲間)は共生マーケティングの当事者なので、同心円の中心にある。MIS(Marketing Information System)による情報管理によってトップは正しい意思決定を行い、Internal Communication(企業内コミュニケーション)を有効にし、CI(Corporate Identity)のコンセプトを忘れず、信頼を損なうことなく利益を追求する。2012年に(C-O-S)を加えた。これは、マーケティングやマネジメントを遂行する組織(organization)、競合会社(competitor)、利害関係者(stakeholder)も十分考慮しなければならないということである。
  • 第2C~第5C:上記の4C
  • 第6C:Consumer(消費者、生活者)へのコンパスの針が示す4方位(NWSE)は、
    • N=Needs(無くてはならない必要なもの、例えば水、衣類、靴)
    • W=Wants(欲しいもの、例えば、スポーツ飲料、スニーカー)
    • S=Security(安全でなければならない、例えば原発、車、食品等の安全)
    • E=Education(消費者教育、企業と消費者との間にある商品に関する知識の差を縮小すべく消費者情報提供をしなければならない。消費者に不安を抱かせたり風評をなくすために重要)
  • 第7C:Circumstances(外部環境)に関するコンパスの4方位(NWSE)は:
    • N=National and International(国の政治的・法律的・倫理的環境および国際環境:国際関係)
    • W=Weather(気象自然環境:大災害で状況が変わってしまう。自然を取り込む経営が必要。コンビニエンスストアやテーマパークの一部で実施している)
    • S=Social and Cultural(ソーシャルメディア時代の社会福祉および文化的環境は当然踏まえなければならない)
    • E=Economic(経済環境は経営に一番影響するので当然踏まえるべき。アベノミクスなど。)

7Cs COMPASS MODELは、"con,com,co(共に)"で始まるキーワードで組み立てられており、7つのCとコンパスの4方位を考慮すると、「信頼」が得られるというもので、このモデルは、社会主義ではなく自由競争社会にあって、企業の社会的責任(CSR)や顧客満足(CS)、社会貢献を重視する「共生マーケティング」のチェックリストして今日利用されつつある。

従って共生マーケティングは、これらの外部環境を十分踏まえて、なおかつ消費者への考慮要件を満たし、マーケティングミックスの4Cを誠実に遂行し、信頼を勝ち取るマーケティングである。これらの要素を一つでも怠ると信頼度は急降下するので、このモデルのすべての要素を高いところに保つという持続可能性が重要である。

参考文献[編集]

  • 清水公一(1981)「コ・マーケティングにおける広告、CI等の位置づけ」『日経広告研究所報』VOL80、第15巻5号、16-23ページ。
  • Brian Solis(2011) Engage!: The Complete Guide for Brands and Businesses to Build, Cultivate, and Measure Success in the New Web, John Wiley & Sons, Inc.pp.201-202.
  • 小林太三郎監修、嶋村和恵・石崎徹共著(1997)「日本の広告研究の歴史」電通刊,p56,p.266.ISBN4-88553-097-0
  • 日経広告研究所編(1993)「広告を知るための百冊の本」日本経済新聞社,p.28-29.ISBN4-532-64014-8
  • 胡暁云他訳(2005)「広告理論戦略」中国語版、北京大学出版社,清水公一著1,p.62-79.ISBN7-301-08666-0
  • 清水公一『共生マーケティング戦略論』第4版(創成社)ISBN4-7944-2158-3 C3034
  • 胡暁云、張健康著(2007)「現代広告学」中国版、浙江大学出版社,p.353.ISBN978-7-308-05219-1

関連項目[編集]