グリース

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グリース(grease)またはグリス潤滑剤の一種で、よりも粘度が高く流動性が無いため常温では半固体または半流動性を呈する。基本的には液状潤滑油カルシウムナトリウムリチウムアルミニウム石鹸脂肪酸の塩)等の増ちょう剤(増稠剤)を均一に拡散させ、ゼリー状にしたもの。(ちょう度を参照のこと)

性質[編集]

グリースは増ちょう剤によって構造粘性を有している。すなわち低せん断速度では見かけ上高粘度を示すが、高せん断速度では粘度が低下する非ニュートン流体である。更に塑性流体であり、ずり速度を変化させた場合に対するずり応力の変化が一意にならない性質揺変性、チクソトロピーを持つ。また温度を上げてゆくと構造粘性を失うが、この温度を滴点と呼ぶ。増ちょう剤は金属への高い親和性を有しているので液状潤滑油よりも部材への吸着性が良い。潤滑剤として一般潤滑油と比較した特徴を列記する。

  • 比較的低速度・大荷重に適する
  • 密封性が良い
  • 飛散・漏洩が少ない
  • 抵抗が大きい
  • 放熱性・冷却性が悪い
  • 温度や速度の条件が変わると、ちょう度が大きく変化する。

用途[編集]

主にすべり軸受転がり軸受ベアリング)、あるいは接触する面が動くために潤滑剤の膜を付着した状態に保つのが難しい摺動面に用いられる。グリースの種類と用途を列記する。

  • カルシウム石鹸基グリース:別名カップグリースで一般用、低速軽荷重すべり軸受けや摺動面に使用される。
  • カルシウム複合石鹸基グリース:万能型でころがり軸受けやすべり軸受けに使用される。EP剤を添加し極圧グリースとして使われる。
  • ナトリウム石鹸基グリース:機械的性能が良好、耐水性に劣るものもある。ころがり軸受けに使用される。
  • アルミニウム石鹸基グリース:金属への粘着性が良い。自動車シャーシ開放歯車に使われる。
  • リチウム石鹸基グリース:中小型のボールベアリングに広く採用され高速適性も有する万能型グリース。
  • 非石鹸基グリース:増ちょう剤にベントナイトなどの非石鹸を使用。他のグリースの使用温度が70–150°Cなのに対し200°Cまで使用可能な高温適性型。

グリースは使用中に異物の混入や高温による劣化などがあるので定期的な更新が必要。平滑面では定期的な洗浄と再塗布、ころがり軸受けではグリースガンを用いて新しいグリースを注入し、古いグリースを押し出す方法が一般的である。

添加剤[編集]

いくつかのグリースには性能を向上させるためにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が加えられている。ギア用グリースは生石灰(酸化カルシウム)を混合して鉱油で薄めたロジンと数パーセントのからなる。特殊な用途を持つグリースにはグリセリンソルビタンエステルが添加されており、低温条件などで使用される。「極圧 (EP, extra pressure)」と名づけられたグリースは高い圧力負荷がかかる場合のためのものであり、普通の物では圧縮により塗布した部品が接触して摩擦磨耗が起こってしまうようなときに用いる。極圧グリースには通常グラファイト二硫化モリブデンといった固体潤滑剤が含まれている。固体潤滑剤は金属の表面に結合し、金属面が互いに接触すること、および潤滑剤の膜が薄くなりすぎた際に摩擦・磨耗が起こるのを防ぐ。

その他のグリース[編集]

上記のもの以外に、室温では柔らかい固体であるような潤滑剤もしばしばグリースと呼ばれる。しかしながら、それらは油・脂肪酸塩グリースとは異なり塑性流体であるとは限らない。ワセリンのような石油ゼリーもグリースと呼ばれることがあり、食品類を扱うような機械・装置に一般的に用いられている。

シリコングリース[編集]

ヒートシンク用のシリコングリース

シリコングリースは不定形シリカフュームを添加したポリシロキサン化合物であり、潤滑剤として用いられ、腐食されにくい。油を主成分としないためゴムシールなど油に弱い部位にしばしば使われる。高温でも安定であり、純粋な形で、または酸化亜鉛等熱伝導率の高い粒子を添加してコンピュータのGPUやCPU 用のヒートシンクを接着する際等に使われる(放熱グリス)。

フルオロエーテルグリース[編集]

エーテル (C−O−C) 結合を持つフッ素樹脂は柔軟性に富み、化学的に安定であることから環境調和型のグリースとしてしばしば使用される。デュポン社のクライトックス (Krytox) などが知られる。

実験室用グリース[編集]

実験室で使われるグリース。左はクライトックス、右はシリコングリース。使いやすいように注射器に入れられている

アピエゾン (Apiezon)、シリコングリース、フルオロエーテルグリースがコックやガラス器具のすり合わせ用の潤滑剤として一般的に用いられる。グリースはすり合わせが固まって取れなくなるのを防いだり、高真空系で空気が漏れるのを防ぐ。

アピエゾンや類似の炭化水素を主成分とするグリースは高真空を作る際に最も適している。また、大部分の有機溶媒に可溶である。そのためペンタンヘキサンを使ってふき取るのが容易だが、反応混合物を汚染しやすい。

シリコングリースはアピエゾンやフルオロエーテルグリースよりも安価である。比較的不活性であり、普通は反応に影響を及ぼすことはないが、これも反応混合物を汚染しやすく、化合物の構造決定に用いられる 1H NMR で δ 0 付近のピークとして検出される。溶媒を使ってふき取るか、細かい構造を持つ器具の場合はアルカリバスに浸すことによって除去できる。

フルオロエーテルグリースは溶媒、酸、塩基、酸化剤に対して安定である。しかしながら高価であり、また除去するのが困難である。

水溶性グリース類[編集]

グリースが持つ潤滑剤としての性能や高い粘度を有し、かつ性が無く油を主成分としない物質が必要とされる場合がある。カルボキシメチルセルロース (carboxymethyl cellulose, CMC) はそのような場合に用いられる水溶性グリース類の1つである。CMC は溶液けん濁剤および潤滑剤として使われ、さらに潤滑能が求められる場合はシリコングリースが添加される。外科的処置やパーソナル・ルブリカント (personal lubricant) として用いられるこの種の潤滑剤のうち、最も一般的なものはKYゼリーである。

関連項目[編集]