GRAS

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GRAS(グラス)とはGenerally Recognized As Safeアクロニムであり、日本語では一般に安全と認められると翻訳されるアメリカ食品添加物ステータスである。 動物実験などによる充分な毒性データがないものの、長年の食経験や科学的な知見などを総合して評価した場合に、食品添加物としての使用に際立ったリスクがないとみなされた物質がこれに該当する。

制定の経緯[編集]

アメリカにおいて1958年の食品添加物規制の大幅な改訂の際に設けられた制度である。 このときに食品添加物にポジティブリスト制度が設けられた。 すなわち、法律に指定されていない添加物は使用禁止とすることになった。 そこで従来から慣習的に使用されていた食品添加物をどうするかが問題となった。 そこで、それらの食品添加物のうち、食経験や科学的な知見から専門家が判断して一般的な使用法においてリスクがないものとみなされた物質をGRAS物質として使用できるようにすることとなり、連邦規則集第21編 Part170.30に規定された。[1] これがGRAS物質のリスト化のはじまりである。 経緯としては日本における既存添加物リストの制定と類似している。

制度の概要[編集]

この制度の開始により1958年時点で用いられていた添加物の中で充分な毒性データがないものがGRASとされた。 GRASとされた物質はその後にFDAによって再評価がなされる。 再評価によってもGRASであることが確認された場合、GRAS確認済み物質というステータスとなる。 動物実験などによる毒性評価がなされた場合には、GRASではなく通常の食品添加物に移される。 また再評価の結果、使用禁止になる場合もある。 例えばサイクラミン酸はGRAS物質であったが、ラットへの大量投与により膀胱癌の発生が確認されたため、1969年にデラニー条項により使用禁止となった。

この制度の特徴としてGRAS物質の認定には専門家による評価があればよく、政府(FDA)の承認を要求していない点があげられる。(なお、1997年からはFDAに評価の手順を届出、その手順に従って正しく評価が行われたことを確認する制度となっている。) そこでアメリカのフレーバー業界団体であるFlavor and Extract Manufacturers Association(FEMA)では1965年から独自に専門家によるパネル(FEXPAN)を設立し、フレーバーに関するGRAS物質リストを審査するようになった。 このリストはFEMA GRASと呼ばれ、多くの国でフレーバーの規制に採用されている。 FEMA GRASの審査法はデシジョンツリーを使用したものである。[2] JECFAのフレーバーの安全性評価においてもFEMA GRASの審査法は採用されておりデファクトスタンダードとなっている。 日本においても2002年に食塩へのフェロシアン化物の使用の認可からスタートした食品添加物規制のハーモニゼーションにおいて、フレーバー物質の評価方法として一部採用されている。

脚注[編集]

  1. ^ 日本食品科学研究振興財団のFDA 21CFR 和訳サイト
  2. ^ 日本におけるアセトアルデヒドのデシジョンツリーによる審査。リンク先8ページ目