「ポイント」の版間の差分
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一方、[[TeX]]ではこの問題を、より微細なスケールド・ポイント (scaled point, sp) を 1 sp = 1 / 2<sup>16</sup> pt (= 1 / 65,536 pt) と定義して導入し、これを用いて複数のポイントを定義しなおすことによって解決している。TeXにおいてはポイントを 1 pt = 65,536 sp = 1 / 72.27 in. (= 25.4 / 72.27 mm = 0.351 459 80... mm) と定義してあり(TeXポイントと呼ばれる)、一方でビッグ・ポイント (big point, bp) を 1 bp = 65,781 sp [= 65,781 × 25.4 / (2<sup>16</sup> × 72.27) mm = 0.352 773 70... mm] と定義している。アメリカン・ポイントにTeXポイントを、DTP ポイントにビッグ・ポイントを対応させることで、アメリカン・ポイントと DTP ポイントとを(アメリカン・ポイントに対して 0.0170% 程度の[[誤差]]のもとで)併用することができる。 |
一方、[[TeX]]ではこの問題を、より微細なスケールド・ポイント (scaled point, sp) を 1 sp = 1 / 2<sup>16</sup> pt (= 1 / 65,536 pt) と定義して導入し、これを用いて複数のポイントを定義しなおすことによって解決している。TeXにおいてはポイントを 1 pt = 65,536 sp = 1 / 72.27 in. (= 25.4 / 72.27 mm = 0.351 459 80... mm) と定義してあり(TeXポイントと呼ばれる)、一方でビッグ・ポイント (big point, bp) を 1 bp = 65,781 sp [= 65,781 × 25.4 / (2<sup>16</sup> × 72.27) mm = 0.352 773 70... mm] と定義している。アメリカン・ポイントにTeXポイントを、DTP ポイントにビッグ・ポイントを対応させることで、アメリカン・ポイントと DTP ポイントとを(アメリカン・ポイントに対して 0.0170% 程度の[[誤差]]のもとで)併用することができる。 |
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==日本独自の単位系および標準サイズ== |
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[[日本]]においては、[[写真植字機]]において採用された単位「[[級]]」(Q) が存在する (1 Q = 0.25 mm、字送りについては単位を「歯」と読み替える)。級数制は[[国際単位系|メートル法]]をもとにしており、紙の寸法を含めて計算の利便性が良いという利点がある。[[日本語]]対応している [[DTP]] ソフトは級数を扱えるものがほとんどだが、“Q” で入力すると自動的に “pt” に換算して表示するという形でのみ対応しているものもある。日本語用 TeX([[Publishing TeX|pTeX]]) でも Q や H(歯)で文字の寸法などを指定することができる。 |
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日本では長く五[[号]][[活字]](10.5ポイント相当)が'''公文書'''の本文用活字に用いられたことを反映し、後年の和文用の[[ワードプロセッサ]]や[[ワープロソフト]]においても10.5ポイントが標準の文字サイズとして用いられている。公文書において五号活字と同様によく使われた四号活字は旧四号が13.75ポイント、新四号(JIS規格)が13.125ポイント<ref>[[日本工業規格(その他)の一覧|JIS Z]] 8305-1962 (JIS Z 8305:1962)「活字の基準寸法」3.1 表1。</ref>である。 |
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[[明治時代]]から[[大正時代]]初期にかけて、『[[中央公論]]』など多くの雑誌組版は、主記事を五号活字、副記事を六号(旧六号・8ポイント相当)活字に分けて混植する方法を標準としていたが、大正中期には五号と六号の中間にあたる9ポイント活字に統一された。のち8ポイント活字が本文活字にも使用されるようになり、終戦直後の用紙難に伴う紙面制約の影響で戦後は8ポイント活字が標準の本文活字となった。 |
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あまり知られていないことであるが、かつて1960年代まで[[活版印刷]]によって月刊[[雑誌]]や[[小冊子]]などが発行されていた時代、8ポイントや9ポイントというサイズの活字が本文用に使われていた。5号では大きすぎ、6号では小さすぎたため、その中間のサイズで読みやすいポイント活字が使われたのである。主に9ポイントが本文、8ポイントがコラムやニュースなど補助的な記事に使われていた。すなわち雑誌編集の世界では「活字のポイント」から「[[写真植字]]の級」へ移行し、再び「[[DTP]] のポイント」という単位に戻ってきたのである。 |
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===写植のQ数と活字の比較=== |
===写植のQ数と活字の比較=== |
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2019年9月24日 (火) 01:59時点における版
ポイントは、出版において使用される長さの単位である。文字のサイズや余白の幅などの、版面の構成要素の長さを表す場合に使われる。“pt” と略記されることが多く、「ポ」と略記されることもある(例:「11ポ」)。後述するように、歴史的にポイントの定義は数種類あるが、現在は DTP アプリケーションにおいて広く使用されている DTP ポイントが一般的である。これは1 pt = 1/72 in. (= 25.4/72 mm = 0.352 777 7... mm) とされ、1981年にゼロックス社が発売した世界初のビットマップディスプレイを実装した製品である Xerox Star(ゼロックス・スター)で採用され、以後 DTP アプリケーション等において標準となった。版面のレイアウトの単位をポイントにしておくと、文字が占める量を計算しやすいというメリットがある。なお日本の活字は号数制が基本であるが、歴史上ではポイント活字も使われた時期があった。そのときは、1 pt ≒ 0.351 4 mm が用いられた。
ポイントの歴史と定義
ポイントは複数の地域や時代に種々のシステムが成立したため、定義も一様でない。最も古いポイント・システムはフルニエ・ポイント (Fournier's point) とされ、次にディドー・ポイント (Didot's point) が1783年ごろ成立する。これら二つのシステムはフランスで誕生し、大陸で広く使われた。フルニエ・ポイントは、フルニエ (Pierre-Simon Fournier)[1] により提案されたものである。シセロ (Cicéro) 格の12分の1を基準として、ポイントを定義したのである。ディドー (François-Ambroise Didot)[2] はこのフルニエのシステムを改善し、「王のインチ」(Pied de roi) と呼ばれるフランスのインチ格に、1 pt を1/72インチとして適合させた[要出典]。フルニエ・ポイントにおいては、1 pt ≒ 0.348 82 mm で、ディドー・ポイントでは 1 pt ≒ 0.375 9 mm に相当する。
欧州大陸では主にディドーのポイント・システムが使用されていたが、英米では定まったポイント・システムは普及しなかった。アメリカで活字のサイズが統一されるのは、1886年に MS&J (Mackellar, Smiths and Jordan, Letter Founder) のジョンソン・パイカ (Johnson pica) を共通的に使用することが確認されてからである。これをアメリカン・ポイント (American point, American printers' point) という。ジョンソン・パイカは 83 picas = 35 cm とするもので、1 pt = 1/12 picas ≒ 0.351 4 mm である。ジョンソン・パイカが 83 picas = 35 cm とし、それが結局アメリカン・ポイントとして選択されたのは、サイズ体系を維持することで、活字の改鋳を極力避けるためであった。多くの有力な活字鋳造業者がジョンソン・パイカを使用していたため、アメリカン・ポイントを 1 in. = 6 picas、1 picas = 12 pt にしようと運動したホークスの提案は退けられたのである。アメリカン・ポイントは築地活版によって1900年代後半に紹介され、日本でも普及した。
互換性
金属活字のポイントには、アメリカン・ポイントと、ヨーロッパで使用されるディドー・ポイント、フルニエ・ポイントがある。アメリカン・ポイント(パイカ・ポイント)は約 0.351 4 mm で、日本の出版場面ではこちらが主に使われていた[3]。
ちなみに現在 PC で使用されている Microsoft Word などのアプリケーションでは、一般的に DTP ポイント (1 pt = 1/72 in. = 0.352 777 7... mm) を採用している。DTP ポイントはアメリカン・ポイントとの近似性を持たせるために、1/72 in. を採用したと考えられる。
なお上述の通り、アメリカン・ポイントは DTP ポイントと異なる。このため、小さなポイント数ならばともかく紙面全体となってくるとかなりのズレが生じることになる。ゆえにポイント基準で製作された過去の書籍を組み直す際には、当時の組版指示書をそのまま使えないことがある。
一方、TeXではこの問題を、より微細なスケールド・ポイント (scaled point, sp) を 1 sp = 1 / 216 pt (= 1 / 65,536 pt) と定義して導入し、これを用いて複数のポイントを定義しなおすことによって解決している。TeXにおいてはポイントを 1 pt = 65,536 sp = 1 / 72.27 in. (= 25.4 / 72.27 mm = 0.351 459 80... mm) と定義してあり(TeXポイントと呼ばれる)、一方でビッグ・ポイント (big point, bp) を 1 bp = 65,781 sp [= 65,781 × 25.4 / (216 × 72.27) mm = 0.352 773 70... mm] と定義している。アメリカン・ポイントにTeXポイントを、DTP ポイントにビッグ・ポイントを対応させることで、アメリカン・ポイントと DTP ポイントとを(アメリカン・ポイントに対して 0.0170% 程度の誤差のもとで)併用することができる。
日本独自の単位系および標準サイズ
日本においては、写真植字機において採用された単位「級」(Q) が存在する (1 Q = 0.25 mm、字送りについては単位を「歯」と読み替える)。級数制はメートル法をもとにしており、紙の寸法を含めて計算の利便性が良いという利点がある。日本語対応している DTP ソフトは級数を扱えるものがほとんどだが、“Q” で入力すると自動的に “pt” に換算して表示するという形でのみ対応しているものもある。日本語用 TeX(pTeX) でも Q や H(歯)で文字の寸法などを指定することができる。
日本では長く五号活字(10.5ポイント相当)が公文書の本文用活字に用いられたことを反映し、後年の和文用のワードプロセッサやワープロソフトにおいても10.5ポイントが標準の文字サイズとして用いられている。公文書において五号活字と同様によく使われた四号活字は旧四号が13.75ポイント、新四号(JIS規格)が13.125ポイント[4]である。
明治時代から大正時代初期にかけて、『中央公論』など多くの雑誌組版は、主記事を五号活字、副記事を六号(旧六号・8ポイント相当)活字に分けて混植する方法を標準としていたが、大正中期には五号と六号の中間にあたる9ポイント活字に統一された。のち8ポイント活字が本文活字にも使用されるようになり、終戦直後の用紙難に伴う紙面制約の影響で戦後は8ポイント活字が標準の本文活字となった。
写植のQ数と活字の比較
Q数 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 18 | 20 | 24 | 28 | 32 | 38 | 44 | 50 | 56 | 62 |
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ポイント | 5 | 5.5 | 6 | 7 | 7.5 | 8 | 9 | 10 | 10.5 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 22 | 26 | 31 | 34 | 38 | 42 |
号数 | 8 | 7 | - | - | 6 | - | - | - | 5 | - | - | 4 | 3 | - | 2 | 1 | - | - | - | 初 |
(参考:小学館 日本百科大事典 1962年 「写真植字」山岡勤七)
脚注
- ^ fr:Pierre-Simon Fournier, en:Pierre-Simon Fournier
- ^ fr:François-Ambroise Didot, en:François-Ambroise Didot
- ^ 日本工業規格の JIS Z 8305-1962 (JIS Z 8305:1962)「活字の基準寸法」では 2. (2) に「1ポイントは 0.351 4 mm とする」と定められている。『日本工業規格活字の基準寸法』日本規格協会、1967年12月、1ページ。
- ^ JIS Z 8305-1962 (JIS Z 8305:1962)「活字の基準寸法」3.1 表1。