ヤス (トランプゲーム)
1880年ごろのスイスタイプのトランプ。 鈴のAと10(旗) | |
種類 | トリックテイキングゲーム |
---|---|
人数 | 4 (シーバーのとき) |
枚数 | 36 |
順番 | 反時計回り |
カードランク (最高-最低) | A 王 オーバー ウンダー 10 9 8 7 6 (切り札以外) / ウンダー 9 A 王 オーバー 10 8 7 6 (切り札) |
プレイ時間 | 45分から1時間 |
関連ゲーム | |
クラーフェルヤス・ブロット |
ヤス(ドイツ語: Jass)は、アレマン語圏(スイス・リヒテンシュタイン・アルザス・オーストリアのフォアアールベルク州・南西ドイツ)で人気のある、トランプを使ったトリックテイキングゲームである。手役(メルド)のあるポイントトリックゲームに属するが、切り札のJと9に特に高い点数が与えられているところに特徴がある。
特にスイスでは国民的ゲームになっている。
同様のルールをもつゲームは各地で行われており、フランスではブロット(Belote)、オランダではクラーフェルヤス(Klaverjas)の名で呼ばれ、それぞれ非常にさかんに行われている。さらに東欧・中東からインドにまで同系のゲームが広がっている。
使用するカードとランク
[編集]ヤスはスイスタイプのトランプを使ってプレイする地域と、通常(フランスタイプ)のトランプを使う地域がある。どちらでも2から5までの数札を抜いた36枚で競技する。この記事ではスイスタイプのトランプを使う場合を記述する。
スイスタイプのトランプはA・絵札・および6から10までの数札の、合計36枚からなっている。絵札は王(König)・オーバー(Ober、上ジャック)・ウンダー(Under[1]、下ジャック)からなる。また、数札の10には旗の絵が描いてある。
スートも他の地域とは異なり、鈴(Schellen、ダイヤ相当)・盾(Schilten、スペード相当)・野バラ(Rosen、ハート相当)・ドングリ(Eicheln、クラブ相当)からなる。
カードのランクは、切り札以外では通常と同じように、Aがもっとも強く、次に王が強い。しかし切り札ではAよりもウンダーと9が強い。大体においてランクの高いカードは点数も多いが、10(旗)のみは特別である。
シュナプセン・スカート・ピノクルなどのゲームでは、10はAの次に強いカードであるが、ヤスでは点数だけが多いことに注意。
切り札 | ウンダー | 9 | A | 王 | オーバー | 10(旗) | 8 | 7 | 6 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
切り札以外 | A | 王 | オーバー | ウンダー | 10(旗) | 9 | 8 | 7 | 6 | ||
点数 | 20 | 14 | 11 | 4 | 3 | 2 | 10 | 0 |
すべてのカードの得点を合計すると、152点になる。さらに最後のトリックに勝つと5点が得られ、合計157点となる。
ルール
[編集]スイスのヤスは1種類のゲームではなく、類似のルールを持つさまざまのゲームを含んでいる。ここではシーバー(Schieber)というゲームのルールを説明する。
このゲームは4人で競技する。向かいあう2人どうしがチームを組む。プレイは反時計回りに進む。
最初のディーラーは何らかの方法で決める。ディーラーはプレイごとに反時計回りに移動する。
ディーラーは各競技者に、3枚ずつまとめてすべてのカードを配る。各競技者の手札の枚数は9枚になる。
切り札の決定
[編集]ディーラーの右隣の競技者は[2]、切り札スートを宣言するか、または自分のパートナーに切り札決定の権利をゆずる(これをschiebenと言い、シーバーというゲームの名はここから来ている)。ゆずられたパートナーは必ず切り札を決定しなければならない。
宣言できる切り札スートには以下のものがある(地域によってはこれ以外の宣言も可能な変種がある)。
- ドングリまたは野バラ
- 盾または鈴 - 得点が2倍になる。
- Obenabe - 切り札なし(ノートランプ)で、8が8点になる。得点は3倍になる。
- Undenufe - 切り札なしで、8が8点になるのに加えて、カードの強弱が逆になる。すなわち6が一番強くなる。(地域によっては6とAの点数も逆になる。すなわち6が11点、Aは0点)得点は4倍になる。
なお、ディーラーの右隣の競技者が切り札を宣言せずにいきなり第1トリックのリードをした場合、リードしたカードのスートを切り札に宣言したものとみなされる。
プレイ
[編集]最初のトリックはディーラーの右隣がリードする[2]。それ以降は通常のトリックテイキングゲームのルールに従うが、ヤスのマストフォロールールは通常とは異なっており、以下のルールに従う。
- 切り札はいつでも出せる。
- 切り札を出さない場合、リードと同じスートのカードを持っていれば、それを出さなければならない。持っていなければ任意のカードを出してよい。
- 切り札を出す場合、リードが切り札でなく、それまで場に出ている切り札よりも強いカードを持っていれば、それを出さなければならない。
例外:切り札のウンダーはマストフォロールールに従わない。すなわち、リードが切り札で、手札の中に切り札がウンダーしかなくても、ウンダーを出す必要はない。
手役
[編集]ヤスには手役(メルド、Wys[3])がある。よりよい手役をもっている側のチームのみが、手持ちのすべての手役について得点を得られる。もう一方のチームは手役では得点を得られない。ただし、おなじカードを複数の手役に重複して使ってはならない。
手役とその点数は以下のとおりである。
種類 | 点数 |
---|---|
同一スートの3枚のシーケンス | 20 |
同一スートの4枚のシーケンス | 50 |
同一スートの5枚以上のシーケンス | 100 |
同一ランク4枚(A・王・オーバー[4]) | 100 |
4枚の9[5] | 150 |
4枚のウンダー | 200 |
手役の宣言・比較のしかたは複雑である。基本的に、ピケと同様のやり方で、手札を見せずに比較する。
- 点数が多い方がよい
- 点数が同じなら枚数の多い方がよい。
- 枚数も同じならランク(シーケンスでは一番上のカードのランク)を比較するが、通常のランクとは異なり、A > 王 > オーバー > ウンダー > 10 > 9 > 8 > 7 > 6 として計算する。Undenufeではこの順序も逆になる。すなわち6がもっとも強い
- ランクも同じ場合は、切り札が切り札以外よりも強い
- ランクが同じで、どちらも切り札でない場合は、先に宣言した側が優先される
第1トリックにおいて、各競技者は自分の番がきたときに手役の宣言を行う。最初の競技者は自分のもっともよい手役の点数を宣言する。2番目の競技者は、自分の手役より前の人が宣言した手役の方がよい場合は、「よし」とのみ言う。前の人と同じ点数の手役がある場合は、枚数を宣言する。これに対して、前の人は自分の方が多いか・同じか・少ないかを答える。同様にして上記の順序に従って、比較を続ける。3番目・4番目の競技者についても、同様に前の人のうちで一番よい手役と比較する。
王とオーバーのペア
[編集]同じ競技者が同じスートの王とオーバーのペア(ドイツ語: Stöck)を持っている場合、その2番目のカードを出すときにそれを宣言すると、20点が得られる。
得点
[編集]プレイ終了時に、各チームの取った点数を合計する(手役や王とオーバーのペアを含む)。片方のチームが9トリックすべてを取ることをマッチ(Match)といい、100点のボーナスが与えられる。それから切り札の種類によって点数に1・2・3・4のいずれかを掛ける。
ゲームの終了
[編集]プレイを繰り返し、どちらかのチームが2500点[6]以上に達したら終了する。得点の多い側が最終的に勝ちとなる。
通常のトランプで競技する場合
[編集]スイス西部では日本と同様の、フランスタイプのトランプから2-5を抜いた36枚を使用する。その場合、絵札はK=王、Q=オーバー、J=ウンダーのように対応する。また、切り札が黒いスート(スペード・クラブ)のときに点数が2倍になる。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- Parlett, David (1992,2004). The A-Z of Card Games. Oxford University Press. pp. 185-190. ISBN 9780198608707