拱猪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
拱猪
各種表記
繁体字 拱豬
簡体字 拱猪
拼音 gǒngzhū
発音: ゴンジュー
テンプレートを表示

拱猪(ゴンジュー)は、中国および中華圏で人気のあるトランプを使ったゲームである。トリックテイキングゲームで、基本的なルールはハーツと同様であるが、大幅に拡張されている。

拱猪は、トーナメントなどで競技される真剣なゲームというよりは、楽しみのために行われるのが普通であるが、一部の団体は拱猪に「華牌」という別の名前をつけてトーナメントを行っている[1]

概要[編集]

拱猪では、Qに非常に大きなマイナス点があり、このカードのことを「猪」(ブタ)と呼ぶ。逆にJは「羊」と呼ばれて、プラスの点がある。したがって、猪を避けて羊を得ることがゲームの目的になる。

ハーツの一種であるブラック・レディに多くのルールを追加したものである。

ルール[編集]

得点の数え方などにさまざまの方式が存在するが、この節では膳书堂文化编(2009)にあるルールに従い、異なる点についてはオプションルール・変種の項で述べる。

4人で競技する。個々の競技者が別々に競技しても、向かいあった2人ずつがチームを組んでもよい。

トランプは通常の52枚のカードを使い、ジョーカーは使用しない。カードのランクはコントラクトブリッジなどと同様、A > K > Q > J > 10 > 9 > 8 > 7 > 6 > 5 > 4 > 3 > 2 である。

ディーラーは各競技者に13枚ずつのカードを配る。

プレイは反時計回りに進む。最初のプレイにおいて、最初のトリックを誰がリードするかは地域差があるが、たとえば2のような特定のカードを持つ人がリードする。2回目以降のプレイでは、前回Qを取った競技者がリードする。このゲームには切り札は存在しない。ほかの競技者は、リードと同じスートのカードを持っていればそれを出さなければならないが、持っていなければ何を出してもよい。リードと同じスートでもっとも強いカードを出した人がそのトリックの勝者となり、場に出たカードのうち点数のあるカードをすべて獲得し、自分の前に表を向けて並べる。点数のないカードはそのまま場に捨てる。トリックの勝者が次のトリックをリードする。以上を手札が尽きるまで繰り返す。

得点[編集]

ハートのカードすべてにマイナス点があり、各カードの点数は以下のとおりである。4がマイナス10点であることに注意。ハートのカード13枚の点数をすべて足すとマイナス200点になる。これとは別な点数体系もある(オプションルール・変種を参照)

カード A K Q J 10 9 8 7 6 5 4 3 2
点数 -50 -40 -30 -20 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -10 -3 -2
  • Q(猪) - マイナス100点
  • J(羊) - プラス100点
  • 10(変圧器) - このカード自身には点数はないが、このカードを獲得した競技者はプラス・マイナスともに得点が倍になる。ただし、10以外にハート・猪・羊を持っていない場合は、プラス50点になる。

特殊ルール[編集]

ひとりでハート13枚すべてを獲得した場合、すべてのカードの正負が逆転する。すなわち、その競技者はマイナス200点ではなく、プラス200点を得る。これを満紅と呼ぶ。さらにQはプラス100点、Jはマイナス100点となる。これを猪羊変色と呼ぶ(ただし猪羊変色は採用しないことも多い)。

ひとりでハート13枚とQJの15枚全部を獲得した場合、プラス500点になる[2]。さらに10も獲得すれば倍のプラス1000点になる。

ゲームの終了[編集]

プレイを繰り返し、だれかがプラス1000点またはマイナス1000点に達したら終了する。点数の多い者が最終的な勝者となる。

オプションルール・変種[編集]

変種は非常に多くのものが存在する。ここでは主要なものを述べるにとどめる。

ハートの点数[編集]

2から9までのハートの点数を、56789をマイナス10点、234を0点とすることがある。この場合もハートの13枚を合計するとマイナス200点になる。

カードをさらす[編集]

中国語では「亮牌・売牌」などと呼ばれる。手札の中にQJA10のいずれかがある競技者が、プレイ開始前にそのカードをさらすことによって、そのカードの点が倍になるルール。

  • Qは、さらすとマイナス200点になる。(亮猪・売猪)
  • Jは、さらすとプラス200点になる。(亮羊・売羊)
  • Aは、さらすとすべてのハートの点数が倍になる。
  • 10は、さらすと、点数を4倍にするカードに変化する(ほかに点数のあるカードがない場合はプラス100点)。

トランプ2組を使う[編集]

他の多くの中国のトランプゲームと同様に、トランプ2組(104枚)を使う変種が存在する。

この変種では、同一の(スートもランクも同じ)カード2枚のペアがあれば、それをまとめてリードすることができる。ペアのリードに対して、同じスートのペアを持っていれば必ずペアをフォローしなければならない。ペアがなければリードと同じスートの任意の2枚を出す。それもなければ任意の2枚を出して構わないが、そのトリックに勝つことはできない。ペアがリードされた場合、トリックの勝者の決定はやや複雑で、ダイヤではペアがペアでないものに勝ち、それ以外のスートではペアでないものがペアに勝つ。ペア同士・ペアでないもの同士では、その2枚を構成する2枚のうちの強い方のカードのランクを比較する。

同じカードを2枚さらすと、そのカードそれぞれの点数が4倍になる。たとえばQを2枚さらすと、1枚あたりマイナス400点になる。

満紅にはハートを全部(26枚)あつめる必要がある。点数もトランプ1組を使うときの倍のプラス400点になる。満紅に加えてQJを集めるときも30枚全部集める必要があり、その点数もトランプ1組を使うときの倍になる。

ゲームはだれかがプラス4000点かマイナス4000点に達したら終了する。

罰ゲーム[編集]

負けた人間にさまざまな罰ゲームをさせることがある。トランプの中から鼻でQを掘りださせるなど。

脚注[編集]

  1. ^ “拱猪”升格“华牌”欲登大雅之堂 (人民日報 2006-09-28 記事)
  2. ^ 騰訊・聯衆などのサイトでは800点で、これを満貫と呼んでいる

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 膳书堂文化编 (2009). 扑克牌玩法与规则. 中国画报出版社. pp. 50-53. ISBN 9787802205857 

外部リンク[編集]