VI号戦車

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VI号戦車(ろくごうせんしゃ、:Panzerkampfwagen VI)は、ドイツ第二次世界大戦時に使用した重戦車である。

概要[編集]

VI号戦車と呼ばれる戦車には、I型とII型の2種類の戦車が存在し、それぞれティーガーIティーガーIIと呼ばれる。この2種は、当時の世界最強の戦車の1つとして評価されている。ティーゲル戦車と表記されることもある。英語読みでは、タイガー戦車と表記される。

開発当時、ドイツ国防軍赤軍T-34戦車に苦戦を強いられていた。ドイツ軍はそのことを受けて元々対空用として製造された88mm高射砲対戦車砲として戦車に搭載し、VI号戦車が誕生した。

当時のドイツ軍戦車の中で最も巨大だった本車は、総統アドルフ・ヒトラーのお気に入りとなった。以後、終戦までVI号戦車は使用され続けた。しかし、重量が当時の水準からすると非常に重かったため、変速機や足回りなどのトラブルが多く稼働率は低い水準にとどまり、また、構造の弱い道路の通行が困難だったり、複雑な設計が量産性を妨げた。しかし、その大火力重装甲はそれらの欠点を補ってあまりあるもので、当時まともに対抗しうる他国製戦車はほとんど存在しなかった。

I型(Sd Kfz 181)[編集]

1943年チュニス近くでアメリカ軍に鹵獲されたティーガーI

1937年に陸軍兵器局から開発指示のあった35t級戦車に由来する。ヘンシェル社はこれに基づきDW I・DW IIと呼ばれる戦車試作した。さらに、1938年9月9日にVK3001として提示された仕様に基づきVK3001(H)が試作される。この車両がVK3601(H)・VK4501(H)と発展してVI号戦車となる。一方、ポルシェ社は1939年からVK3001(P)の開発を開始し、VK4501(P)(俗に言うポルシェティーガー)へと発展した。ちなみに、フェルディナント・ポルシェの設計したVK4501(P)はエンジンで発電して電動モーターを駆動する事で変速機を廃するという画期的な方式(電気式)だったが、如何せん機械的信頼性に乏しい代物だった。

2社による設計が比較された結果、ヘンシェル社の製品が採用され、ポルシェ博士の設計した物は採用されなかった。ただし、製造は前倒しで始まっていたため、その車体はエレファント重駆逐戦車として利用された。また、エレファント大隊指揮戦車として実戦参加したポルシェティーガーも存在する。

従来のドイツ戦車のデザインを踏襲しつつも、重厚な装甲とともに56口径88ミリ砲という高射砲を元にした強力な砲を採用し、対戦車・対陣地戦闘に威力を発揮した。また、I型の初期のものには、を渡らずに渡河する場合のために潜水装置が付いていた。

接地圧の低下のために設計された幅の広い履帯を装備したまま貨車に乗せるとトンネルを通過することができないため、鉄道での輸送時は一番外側の転輪と外側から2番目の転輪およびフェンダーを外し、輸送用のために設計・製造された幅の狭い履帯を装備することとなった。また、転輪は当初は外周にゴムタイヤが付いていたが、後期型(およびII型)ではソ連戦車のものを参考にしたゴム内蔵式の鋼鉄製転輪が使用された。これは、の部分が直接履帯に当たるため音が煩くなるが、ゴム部品の消耗を抑えることができた。

アメリカ軍M4 シャーマンの前面装甲を2,000m超の距離から貫通でき、逆にM4の75mm砲では接射でも打ち抜かれない前面装甲を持っていた。同様にイギリスやソ連の大半の戦車にも圧倒的な優位を誇っていた。そのため、連合軍では「タイガー戦車を相手にする時は必ず3両以上の戦車で迎撃する事」と言われていた程である。

II型(Sd Kfz 182)[編集]

ドイツのムンスター戦車博物館に展示されるティーガーII

英語での俗称の「キング・タイガー」(Kingtiger)がドイツ語に逆輸入され、ケーニヒス・ティーガー(Königstiger, 王虎。独語での原意は「ベンガルトラ」)とも呼ばれる。71口径8.8cm砲を搭載。垂直面で構成された車体を持つI型と異なり、パンターの車体同様にソ連戦車で実用化された傾斜装甲を採用している。ポルシェ型向けにクルップ社で設計され、先行して部品の製造が行われ、ヴェクマン社で組み立てられた砲塔を持つ初期生産型50両と、ヘンシェル型向けに同じくクルップ社で設計された砲塔を持つそれ以降の生産型がある。ポルシェ型向け砲塔は前面・側面が丸みを帯びており、砲塔前面においてショットトラップ(跳弾が車体上面を直撃する)を生じる危険性があった。

同時期に開発が進められ、この車体を延長して固定式戦闘室に12.8cm砲を搭載したヤークトティーガーが製造されている。

登場作品[編集]

文献[編集]

関連項目[編集]