T・S・エリオット

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T.S. Eliot
T・S・エリオット
T.S. Eliot, 1923.JPG
誕生 1888年9月26日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス
死没 1965年1月4日(満76歳没)
イギリスの旗 イギリスロンドンケンジントン
職業 詩人、劇作家、文芸批評家
言語 英語
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国イギリスの旗 イギリス
主な受賞歴 ノーベル文学賞
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ノーベル賞受賞者ノーベル賞
受賞年:1948年
受賞部門:ノーベル文学賞
受賞理由:今日(こんにち)の詩文学への卓越した貢献に対して

トマス・スターンズ・エリオット: Thomas Stearns Eliot1888年9月26日 - 1965年1月4日)は、イギリス詩人劇作家で文芸批評家である。代表作には、5部からなる長荒地』(The Waste Land1922年)、詩劇『寺院の殺人』(Murder in the Cathedral1935年)、詩劇論『詩と劇』(Poetry and Drama1951年)などがある。

生涯[編集]

誕生はアメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス。1898年にスミス学院に入学する。1904年、セントルイス万国博覧会を探訪中、フィリピン会場のイゴロット村に魅せられる。翌年発表された短編「昔は王様だった男」はその探訪成果である[1][2][3]。1906年に入学したハーバード大学では、アーヴィング・バビット等に師事し、卒業後、ヨーロッパ各地と米国を往復し、研究活動を行う。その後はソルボンヌ大学マールブルク大学オックスフォード大学にも通う。1917年から1925年までロイズ銀行の渉外部門で働いた[4]。1927年にイギリスに帰化し、イングランド国教会に入信する。「文学では古典主義、政治では王党派、宗教はアングロ・カトリック」と自身を語っている。

有名な「四月は残酷きわまる月(April is the cruellest month)」で始まる長編詩『荒地』で第一次世界大戦後の不安を描きだした。また、評論『伝統と個人の才能』(Tradition and the Individual Talent、1919年)によって、保守主義の思想家としても知られている。この中で、エリオットは「詩人とは表現するべき個性を持たず、特定の表現手段を持つ人で、それは個性ではなく手段であり、その中で印象や経験が特殊な予期せぬ状態で結合する。」と書いている。

1948年度のノーベル文学賞を受賞した。

作品[編集]

荒地[編集]

1921年に初稿を執筆。エズラ・パウンドの助言により、エピグラフコンラッド闇の奥』の引用)の変更や、エピソードの削除等を行った。

フレイザー金枝篇』の聖杯伝説を骨格として、聖書ダンテシェイクスピアなどの引用をちりばめ、意識の流れの手法も用いて、第一次世界大戦後の荒廃した世界と救済への予兆を描きだした。末尾にはサンスクリット語も使用され、インド思想の影響も指摘されている。

1922年に文芸誌に発表した。433行の難解な詩であり、すぐには理解されなかったが、1930年代になってF・R・リーヴィスらに評価されるようになった。

四つの四重奏[編集]

1935年から1942年発表の "Burnt Norton" "East Coker" "The Dry Salvages" "Little Gidding" を1つにまとめたもの(1943年)。『荒地』のような緊張感はない。初期と比べると宗教的な主題が強くなる。

寺院の殺人[編集]

1935年に発表された。殉教者トマス・ア・ベケットを主人公とする。無韻詩で書かれている。『寺院の殺人』(1935年)の第2幕に登場する「誘惑者」と主人公トマスの対話は、シャーロック・ホームズの『マスグレーヴ家の儀式』を真似たものである。

カクテル・パーティ[編集]

1949年発表の詩劇。エウリピデスの「アルケスティス」に想を得て、弁護士エドワード・チェンバレンとその妻、映画脚本作家ピーター・キルプ、女性詩人シーリア・コプルストーンの4人の恋愛関係を精神科医のヘンリー・ハーコート・レイリー卿が解決する。現代社会を喜劇的に描いたものである[5]

  • 福田恆存訳 小山書店 1951年 のち『エリオット全集』

その他[編集]

1939年、児童向けの詩 『キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法』を発表した。ポッサムおじさんは、エズラ・パウンドがエリオットにつけたあだ名である。エリオット没後に、ウエスト・エンドブロードウェイにおけるアンドリュー・ロイド・ウェバーミュージカルキャッツ』の原作となった。

脚注[編集]

  1. ^ Bush, Ronald, 'The Presence of the Past: Ethnographic Thinking/ Literary Politics'. In Prehistories of the Future, ed. Elzar Barkan and Ronald Bush, Stanford University Press. (1995).
  2. ^ Narita, Tatsushi. T. S. Eliot, The World Fair of St. Louis and 'Autonomy. Published for NCCF-Japan. Nagoya: Kougaku Shuppan, 2013.
  3. ^ Narita, Tatsushi. T. S. Eliot and his Youth as 'A Literary Columbus' . Nagoya: Kougaku Shuppan, 2011.
  4. ^ Peter H. Butter: T.S. Eliot. In: Herman J. Weiand (Hrsg.): Insight IV. Analyses of Modern British and American Drama. Hirschgraben Verlag, Frankfurt a. M., ISBN 3-454-12740-8, S. 62. Siehe auch Gisela Trahms: Schamane mit Bowler. (vgl. weblinks). Kuna datiert davon abweichend Eliots Eintritt in das Verlagshaus Faber & Gwyer (später Faber & Faber) auf das Jahr 1923. Vgl. Franz Kuna: T.S. Eliot. Friedrich Verlag, 2. rev. Auflage, Velbert 1972, S. 8.
  5. ^ 斎藤勇『英米文学辞典』より

著作集・訳書(近年)[編集]

伝記[編集]

参考文献(近年)[編集]

  • T.S.エリオット『三月兎の調べ:詩篇 1909-1917年』クリストファー・リックス編、村田辰夫訳、国文社、2002年、ISBN 4772004998
  • T・S・エリオット『クラーク講演』ロナルド・シュハード編、村田俊一訳、松柏社、2001年、ISBN 4881989995
  • 小川聖子『二十世紀の洗礼者T.S.エリオット:詩と思想の創造的分析の試み』溪水社、1999年、ISBN 4874405428
  • 川野美智子『T.S.エリオット研究:午後の遠景』大阪教育図書、2004年、ISBN 4271117080
  • 高柳俊一・佐藤亨・野谷啓二・山口均・編『モダンにしてアンチモダン:T.S.エリオットの肖像』研究社、2010年、ISBN 978-4-327-47223-8
  • 高柳俊一『T.S.エリオットの思想形成』南窓社、2002年、ISBN 4816500138
  • 丹波菊井『T.S.エリオットの詩と文学:わが始めにわが終りあり、わが終りにわが始めあり』近代文芸社、2002年、ISBN 4773368241
  • 西部邁「個性の滅却:トーマス・エリオット」(『思想の英雄たち 保守の源流をたずねて』 198-212頁に所収)、角川春樹事務所ハルキ文庫〉、2012年、ISBN 978-4-7584-3629-8
  • 成田興史「T. S. エリオットとトランスパシフィック・イマジネーション:若き日の詩人をめぐる仮説設定を主軸に」(成田興史編『英米文学・英米文化試論:太平洋横断アメリカン・スタディーズの視座から』に所収)、晃学出版、2007年、ISBN 978-4-903742-02-1
  • 佐伯惠子『T.S.エリオット詩劇と共同体再生への道筋』、英宝社、2011年、ISBN 4269721162
  • クレイグ・レイン『T.S.エリオット:イメージ、テキスト、コンテキスト』山形和美訳、彩流社、2008年、ISBN 9784779113550
  • 船木満洲夫『形而上詩人とT.S.エリオット』宝文館出版、1999年、ISBN 483201501X
  • 村田俊一『T.S.エリオットのヴィア・メディア-改宗の詩学-』弘前大学出版会、2005年、ISBN 4902774038
  • 村田辰夫『T.S.エリオットと印度・仏教思想』国文社、1998年、ISBN 4772004556
  • 山田祥一『T.S.エリオット論考』鳳書房、2007年、ISBN 4902455064

関連項目[編集]

外部リンク[編集]