SOS

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SOS(エスオーエス)とは、船舶を中心に用いられてきたモールス符号による遭難信号である[1]。また、遭難に限らず救助や助けを求める際の合図として使用することもある[2]

概要[編集]

SOSは、モールス符号の「3短点」「3長点」「3短点」(・・・ ー ー ー ・・・)の信号で構成される。それぞれ1文字ずつ送信されたならば、アルファベットの『S O S』と同じ意味になるが、各文字の間に間隙を入れずに続けて送信される(SOSのように上線を引くのは、字間を空けずに送信する符号であることを示す)。文字列自体は、覚えやすく緊急時にも打ちやすい信号として設定されたものであり、特に文意はない[3][4]“Save Our Souls”(我らを救え)または “Save Our Ship”(我が船を救え)の略とも言われることがあるが、それらは正しくない[3]

日本では、電波法第52条第1号にある遭難通信船舶または航空機が重大かつ急迫の危険に陥った場合に遭難信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう)に使われる遭難信号として、総務省令 無線局運用規則(以下、「運用規則」と略す)「別表第2号 無線電信通信の略符号」の「2 その他の略符号」の「(1) 国内通信及び国際通信に使用する略符号」に定められている。

歴史[編集]

無線通信が実用化された当初の遭難信号はCQDであった。これはマルコーニによって提案され、1904年に採用された。CQは受信局向けの注意喚起であり、Dは"distress"(遭難)を意味する[5]。しかしCQDは長くは使われなかった。1906年万国無線電信会議国際電気通信連合 (ITU) の前身の一つ)の第1回ベルリン会議でSOSが採択され[6]、日本は1908年に批准した[7]。審議の際にCQD、アメリカの手旗信号のND、ドイツの一般呼び出しのSOEが候補として挙げられ、聞き取りやすいSOEを採択することとなったが、Eは1短点(・)で聞き落とす恐れがあるため、3短点のS(・・・)に変更したSOSが採択された。なおCQDは、それを最初に使い出したイギリスの通信士の間で、その後数年間使われた。

CQDが初めて使われたのは1909年1月、バルト海における「フロリダ」と「リパブリック (RMS Republic)」の衝突においてである。この信号で乗客1500人が救われた。

SOSを初めて発信したのは1909年6月10日、アゾレス諸島沖で難破した「スラボニア号 (RMS Slavonia)」である。

SOSは、1912年4月15日、客船タイタニック号が沈没した時にも使用された。SOSが、マルコーニ式電信機を積んだ船の中で初めて使用されたのがこの時である[8]。この時は遭難信号として用いられていたCQDを先に発信し、後にSOSも発信された[9][5]

前述の通り、スラボニア号が初めてSOSを発した為、「タイタニックが最初にSOSを発信した」というのは誤りである。

遭難通信その他の定義[編集]

遭難通信、緊急通信、安全通信、非常通信は、電波法第52条第1号から第4号に規定されている。また、通信の方法や略号は運用規則による。

遭難通信、緊急通信、安全通信は、国際的に定められたもので、電波法もこれに準拠している。なお、遭難通信、緊急通信、安全通信は、船舶又は航空機の通信に関係する無線局だけが行うことができる。非常の場合の無線通信(非常通信を含む)は、日本国内のみを対象とする通信であるが、一般的な非常事態に広く適用できる。特に非常通信は、無線局の判断で開始することができ、種々の災害に対してアマチュア無線局の行った非常通信が大きな成果をあげた事例がある。

第1号 遭難通信SOS電信):メーデー、MAYDAY、遭難(電話))
船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥った場合に遭難信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう(軍用機においては同様の事態を連絡する場合、「Emergency」という語も用いられる)。
第2号 緊急通信(XXX(〃):パンパン、PAN PAN、緊急(〃))
船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥るおそれがある場合その他緊急の事態が発生した場合に緊急信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう(遭難状態の前段階に行う通信である)。
第3号 安全通信(TTT(〃):セキュリテ、SECURITE、警報(〃))
船舶又は航空機の航行に対する重大な危険を予防するために安全信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう。
第4号 非常通信OSO(〃):非常(〃))
地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、有線通信を利用することができないか又はこれを利用することが著しく困難であるときに人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために行われる無線通信をいう(非常の場合の無線通信は電波法第52条第4号に規定される非常通信を含んでいるという見解[10]郵政省電波監理局(現・総務省総合通信基盤局)より示されており、OSOは非常通信にも使用できると解釈される)。
参考 非常の場合の無線通信(電波法第74条第1項)
総務大臣は、地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合においては、人命の救助、災害の救援、交通通信の確保または秩序の維持のために必要な通信を無線局に行わせることができる。同条第2項により、この命令に基づき非常通信を行った無線局は、実費補償を日本国政府から受ける権利を有する。

現状[編集]

非常ボタンを表すピクトグラム

モールス符号による遭難通信の取扱いは1999年で廃止され、船舶からの遭難信号の発信には、Global Maritime Distress and Safety System(GMDSS)による非常用位置指示無線標識装置(EPIRB)が、航空機には航空機用救命無線機(ELT)が使われている。なおモールス符号による通信は、日本では一部の漁業無線陸上自衛隊の野戦通信、またアマチュア無線で用られている。

無線電話における遭難信号は「メーデー」である( フランス語: m'aider より)。 映画やテレビ番組で、遭難時にマイクに向かって「えすおーえす」と絶叫する場面が出ることがあるが、規定に反するのみならず、遭難の事実が伝わらない場合もあるので注意(特に外国局が相手の場合)。

東日本大震災で道路に書かれたSOS、宮城県女川町の江島
電車内に設置された非常ボタン(車内非常通報装置
駅のホームに設置された非常ボタン(列車非常停止警報装置

また、SOS は緊急を知らせる言葉として非常に知名度が高いため、今でも民間人の間では遭難や災害の発生時に救助を求める合図として使用される事がある[11]東日本大震災平成28年熊本地震の際には、食糧や水、負傷者の搬送などを求めるため、避難所となった学校の校庭や屋上などに、上空を飛ぶ飛行機やヘリコプターに見えるように大きく SOS の文字を作っている様子が見受けられた[12][13][14][15][16][17]。但し、対空救難信号は、国際民間航空機関(ICAO)により「V」と定められている。

公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団が「SOS」の文字と受話器や押しボタンを組み合わせて、非常電話非常ボタンを表すピクトグラムを策定しており[18]鉄道車両内や鉄道駅などに表示されている場合がある。

モールス符号の SOS からの派生として、何かの信号を3回ずつ一定間隔で繰り返すことで、救助を求める信号となる(例:光を3回点滅させる、笛を3回鳴らす、銃を3回発砲する、石を3個重ねる、3本の棒切れを等間隔に立てる、周辺の物を燃やして3つの煙を等間隔に立てる、三角を描くように飛行する)[19]

脚注[編集]

  1. ^ 海上保安庁情報通信企画課専門官 小池貞利 (2004年). “コスパス・サーサット衛星による国際的捜索救助システム”. 2016年8月30日閲覧。
  2. ^ 例えば東日本大震災時の避難住民による利用アーカイブ大震災 砂糖なめ飢えしのぐ”. 河北新報. 2016年8月30日閲覧。
  3. ^ a b 日本船舶海洋工学会 海洋教育推進委員会. “SOSはもう古い”. 2016年8月31日閲覧。
  4. ^ 一般社団法人 日本船主協会/海運資料室/海運雑学ゼミナール. “264 「SOS」の意味は「Save Our Ship」??”. 2016年8月31日閲覧。
  5. ^ a b Sean CoughlanTitanic The final messages from a stricken ship” (2012年4月10日). 2016年8月31日閲覧。
  6. ^ 国際無線電信条約 業務規程 第16項(1906年) http://www.earlyradiohistory.us/1906conv.htm Ships in distress shall use the following signal: ...---... repeated at brief intervals. As soon as a station perceives the signal of distress it shall cease all correspondence and not resume it until after it has made sure that the correspondence to which the call for assistance has given rise is terminated. In case the ship in distress adds at the end of the series of her calls the call letters of a particular station the answer to the call shall be incumbent upon that station alone. If the call for assistance does not specify any particular station, every station receiving such call shall be bound to answer it.
  7. ^ 明治41年6月22日交付 明治41年6月23日官報掲載
  8. ^ 第1回万国無線電信会議 電波博物館(電波適正利用推進員協議会)
  9. ^ 神戸大学大学院海事科学研究科 准教授/附属練習船深江丸 通信長/若林伸和. “海上における遭難通信システム”. 2016年8月31日閲覧。
  10. ^ 『電波情報』第68号 昭和40年9月15日
  11. ^ 巨大なSOSの文字のおかげで、自家用ボートの乗組員が救出される―オーストラリアマイナビウーマン、2014年5月6日
  12. ^ 東日本大震災:「SOS」の文字…被災地上空ルポ(毎日新聞 2011年3月13日
  13. ^ 忘れないあの日 カメラが捉えた3. 11河北新報、2015年2月21日
  14. ^ 東日本大震災の記録―避難所の運営をとおして―石巻市立釜小学校
  15. ^ 特集:大規模災害と警察~震災の教訓を踏まえた危機管理体制の再構築~
  16. ^ 東郷隆 (2016年4月17日). “パイプ椅子で「SOS」の文字 熊本国府高校グラウンド”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). http://www.asahi.com/articles/ASJ4K4H4BJ4KTQIP035.html 2016年7月8日閲覧。 
  17. ^ “椅子で作った「SOS」に支援物資届く”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2016年4月18日). http://mainichi.jp/articles/20160418/k00/00e/040/166000c 2016年7月8日閲覧。 
  18. ^ [1]
  19. ^ 藤原宰太郎「名探偵に挑戦」第5集、KKベストセラーズ1995年

関連項目[編集]