Power Architecture
開発者 | |
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ビット数 | 32ビット/64ビット(32 → 64) |
発表 | 2005年 |
バージョン | 2.06 |
デザイン | RISC |
タイプ | Register-Register |
エンコード | Fixed/Variable |
ブランチ | Condition code |
エンディアン | Big/Bi |
拡張 | AltiVec, APU, DSP, Cell |
オープン | Yes |
レジスタ | |
Power アーキテクチャ |
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Power Architecture(パワーアーキテクチャ)は、IBMなどによるRISCマイクロプロセッサ(CPU)用のアーキテクチャ名である。
当初は32ビットであったが、後に64ビット化された。Power Architectureの普及団体はPower.orgで40を超える企業や組織が参加している。Power Architectureをベースにしたプロセッサには、POWER、PowerPC、PowerQUICC、Cellなどがある。
「Power Architecture」は、IBMの以前の世代の用語である「POWER architectures」とは異なる。「POWER architectures」は、IBMのPOWER、PowerPC、Cellなどの全製品の各アーキテクチャを幅広く含んだ、過去の用語である。「Power Architecture」は、プロセッサーアーキテクチャ、ソフトウェア、ツールチェーン、コミュニティ、エンドユーザー用アプライアンスなどを含んだファミリーネーム(総称)であり、製品や技術の仕様を記述した厳密な用語ではない。
用語
[編集]混同し易い用語を以下に簡単に記載する。
用語 | 説明 |
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POWER | Performance Optimization With Enhanced RISCの略。IBMにより設計されたマイクロプロセッサのアーキテクチャ。
→詳細は「POWER (マイクロプロセッサ)」を参照
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PowerPC | Power Performance Computingの略。POWERから派生した32/64ビットの命令セットを持つ、シングルチップのマイクロプロセッサで、いくつかの新しい要素を含む。AIM連合と呼ばれるApple・IBM・モトローラにより設計された。
→詳細は「PowerPC」を参照
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PowerPC-AS | PowerPC-Advanced Seriesの略。コードネームは「Amazon」。PowerPCの純粋な64ビットの派生で、POWER2仕様のいくつかの要素を含む。IBMのRS64ファミリープロセッサとして使用された。
→詳細は「RS64」を参照
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POWERn | 「n」には自然数が入る。IBMが製造するハイエンドのマイクロプロセッサのシリーズで、POWER、PowerPC、PowerPC-ASなどの命令セットとは異なった組み合わせが使われている。 |
Cell | Cell Broadband Engine Architecture(CBEA)の略。IBM、ソニー、東芝が設計したPower Architectureベースのマイクロプロセッサである。
→詳細は「Cell Broadband Engine」を参照
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Power Architecture | POWER、PowerPC、Cellなどや、ソフトウェア、ツールチェーン、エンドユーザー機器などを指す幅広い用語。当記事で説明する。 |
Power ISA | 最新のPOWERおよびPowerPCの命令セットを結合した、新しい命令セット。IBMとフリースケールにより設計された。 |
歴史
[編集]RISC的なコンピュータは古くからあるが、一般にはパターソンのバークレーRISC(en:Berkeley RISC)とヘネシーのMIPS(R2000)からRISCの歴史は始まるものとされる。しかし、それに先行するIBMの801が、彼らに大きな影響を与えている。IBMは801からの派生であるROMPを完成させ、IBM RT-PCに使った。そして、RS/6000のCPUに向けて開発されたのが、Power Architectureであり、最初のPOWERであるPOWER1である。POWER1のシングルチップ向け機能削減版がRISC Single Chip(RSC)である。
1992年にはApple・IBM・モトローラが「AIM連合」を形成し、POWERプロセッサの幅広い市場向けバージョンを開発した。その結果はPOWERアーキテクチャの修正されたバージョンである、PowerPCアーキテクチャとなった。PowerPCの最初の実装は1993年のPowerPC 601で、RSCをベースとし、アップルのPower MacintoshやIBMのRS/6000システムで使用された。
IBMはPOWERアーキテクチャをRS/6000システム用に拡張し、1993年には8チップのPOWER2プロセッサが、更に1996年にはシングルチップバージョンの "POWER2 Super Chip"(P2SC)が登場した。
1990年代の初期にIBMはCISCベースのAS/400コンピュータの、RISCアーキテクチャへの移行を検討した。この新アーキテクチャ開発はコードネーム "Amazon" と呼ばれ、PowerPC-ASが生まれた(このプロジェクトで働くエンジニアの中では "Advanced Series" または "Amazon Series" とも呼ばれた)。PowerPC-ASは、RSCベースのマルチプロセッサのサーバープラットフォームとなった。IBMリサーチ研究所での開発は続けられ、64プロセッサ内部接続のサポートのためのRSCの拡張や、POWER2機能に対するAS/400やRS/6000機能の追加などが行われた。開発は終了して64ビットのA10およびA30プロセッサとなり1995年に発表され、1997年にはRS64系列となりAS/400およびRS/6000で使用された。
平行してAIM連合は1995年から1997年にかけてPowerPCの開発を進め、以下の第2世代PowerPCプロセッサをリリースした。
- PowerPC 602 - セットトップボックスやゲーム機用
- PowerPC 603 - 組み込み市場や携帯コンピュータ用
- PowerPC 604 - ワークステーション用
- PowerPC 620 - サーバー用の64ビットの高性能プロセッサ
602と620は広く普及しなかったが、603と604およびその後継は、それぞれの市場で非常に普及した。モトローラとIBMはまた、組み込み用の実装で使われたPowerPC拡張の "Book E" を作成した [1] 。この実装にはモトローラのPowerQUICCプロセッサや、IBMのPowerPC 400ファミリーがある。
AIM連合の最後の努力は第3世代PowerPC(G3)で、1997年のPowerPC 750である。その後はモトローラとIBMはPowerPCアーキテクチャの開発で別の道に分かれた。このG3プロセッサは、コンピュータと組み込みの両方の市場で広く使われ、IBMはその後の数年、750 ファミリーの進化を続行した。しかしモトローラはPowerPCのSoC とPowerPC 7400で組み込み市場にフォーカスし、それを第4世代PowerPC(G4)と呼んだ。このプロセッサはAltiVecとSIMDユニットを取り入れた。この "PowerPC G4" は1999年に登場し、AppleのMacintoshや、通信市場の色々な企業に使用された。
1998年に登場したPOWER3は、PowerPCとPOWER2のアーキテクチャを統合したが、IBMのRS/6000サーバーでしか使われなかった。
2000年にはPowerPC-ASアーキテクチャの最後の実装であるRS64-IVが登場し、AS/400とRS/6000で使用された。(これらのサーバーは、その後 eServer iSeries と eServer pSeries と改名され、更に Power Systemsに統合された。)IBMはまた、任天堂のゲーム機であるニンテンドーゲームキューブ用に、PowerPC 750CXeベースのGekkoを提供した。またIBMは実験的な64ビットPowerPCプロセッサであるRivinaを開発し、1GHzを超える最初のマイクロプロセッサとなった。
2001年にIBMは、PowerPC-ASとPOWER3を統合し置き換えるPOWER4を発表した。
2002年にアップルは新しいハイエンドのPowerPCを強く要望し、IBMに64ビットのPowerPC 970を開発させた。アップルはこれを第5世代PowerPC(G5)と呼んだ。PowerPC 970はPOWER4から派生し、いくつかのサーバー用機能が外されたが、AltiVecと互換性のあるIBM独自のVMX拡張命令ユニット持っていた。PowerPC 970とその後継は、アップルやIBMやいくつかのハイエンドの組み込みアプリケーションで使われた。
2003年にはTundraがモトローラから、マイクロコントローラのPowerPC 100ファミリーを買収した。また2003年には、CulturecomがIBMから、V-Dragon プロセッサに関するPowerPCテクノロジーのライセンスを取得した。2004年にはモトローラが半導体部門を、新会社であるフリースケール・セミコンダクタに分離した。
2004年にIBMから発表されたPOWER5は、POWER4の進化版であった。2005年には改良版のPOWER5+が登場し、PowerPC仕様書はv.2.01に更新され[2]、更に v.2.02 に更新された[3]。また2004年には、AMCCがIBMから、PowerPC 400ファミリーに関する知的財産権のライセンスとスタッフを取得した[4]。モトローラはフリースケールとなったが、PowerPCファミリーのe200、e300、e500、e600、そして将来の64ビットのe700を発表した。同年には、IBMと15の他の会社により、Powerアーキテクチャに関する製品開発を推進する使命を持った組織である、Power.orgが設立された。その目的はPowerアーキテクチャテクノロジーの開発、実現、および推進である[5]。
2005年には、IBM、ソニー、東芝の共同開発4年目にてCellプロセッサの仕様書がリリースされた[6]。この第一の用途はPlayStation 3である。Cellは1つの64ビットのPowerアーキテクチャコアと、SPEsと呼ばれる8つの独立したSIMDを持つ。IBMはまた、マイクロソフトのXbox 360用に3コアの64ビットプロセッサであるXenon-processorを提供した。任天堂も前世代に引き続き32ビットのPowerPCベースとなるBroadwayプロセッサをWiiに採用したため、奇しくも第7世代のゲーム機の3つ全てがIBMのPowerアーキテクチャプロセッサを採用することになった。なお、PlayStationシリーズおよびXboxシリーズは次の第8世代、任天堂も第9世代には他アーキテクチャへ移行しており、現代ではPowerアーキテクチャを採用したゲーム機は存在しない。
2007年3月にIBMは、ハイエンドのマイクロプロセッサで5.0GHzまでスピードアップでき、POWER5より倍の性能を持つPOWER6を発表した。POWER6はPOWERシリーズにVMX(Vector Multimedia Extension)拡張命令ユニットと、DFU(10進数演算をサポートするFPU)を追加した[7]。
2010年2月8日に POWER7 を発表。 Vector Scalar Extension (VSX)拡張命令ユニット追加[8]、プロセスルール45nm[9]。
2012年10月に POWER7+ を発表。プロセスルール32nm。
2014年4月に POWER8 を発表。プロセスルール22nm。
2017年12月にPOWER9を発表。プロセスルール14nm。FinFET SOI
2019年8月にPOWER9 Advanced I/Oを発表[10]。
2022年2月にPOWER10を発表。プロセスルール7nm[11]。
実装例
[編集]プロセッサ
[編集]- IBM
- ソニー、SCE、IBM、東芝
- Freescale
- Xilinx
- Virtex FPGA
- Culturecom
- クレイ
- SeaStar、SeaStar2、SeaStar+ 通信プロセッサ(スーパーコンピュータのCray XT3、XT4、XT5で使用)
システム
[編集]- スーパーコンピュータ
- メインフレーム
- 日立 AP7000(OSはVOS1/LS、VOSK/LS)
- サーバー
- パーソナルコンピュータ
- Apple Power Macintosh、Power Mac、インテル以前のiMac・iBook・PowerBook
- Genesi Pegasos、Open Desktop Workstation、EFIKA(PowerPCベース)
- ゲーム機
- ピピンアットマーク(ハードウェアとOSの設計はアップル)
- 任天堂 ゲームキューブ、Wii、Wii U
- マイクロソフト Xbox 360
- ソニー・コンピュータエンタテインメント PlayStation 3
- その他
オペレーティングシステム
[編集]Power Architecture版が現在存在する、あるいは過去に存在したオペレーティングシステムには以下がある。
- Linux
- NetBSD、OpenBSD、FreeBSD、OpenDarwin
- Classic Mac OS[14], Mac OS X
- OS/2[14]、AIX、i5/OS
- Solaris[13]、OpenSolaris
- Windows NT[13]
- Plan 9
- BeOS[14]
- OS-9
- eCos
- INTEGRITY
- uC/OS-II
- VxWorks
- QNX
- LynxOS
- OSE
- MorphOS
- AmigaOS 4
脚注
[編集]- ^ “PowerPC Book E v.1.0”. IBM (2002年5月7日). 2007年3月16日閲覧。
- ^ “PowerPC Architecture Book”. IBM (2003年12月10日). 2007年3月16日閲覧。
- ^ “PowerPC Architecture Book, Version 2.02”. IBM (2005年2月24日). 2007年3月16日閲覧。
- ^ “AMCC and Power Architecture technology”. IBM. 2008年2月24日閲覧。
- ^ “Power.org initiative to advance community of electronics innovation”. Power.org (2004年12月2日). 2008年2月24日閲覧。
- ^ “Cell BE Architecture v.1.0”. IBM (2006年3月10日). 2007年3月16日閲覧。
- ^ Eisen, L.; Ward, J. W.; Tast, H.-W.; Mading, N.; Leenstra, J.; Mueller, S. M.; Jacobi, C.; Preiss, J. et al. (2007-11). “IBM POWER6 accelerators: VMX and DFU”. IBM Journal of Research and Development 51 (6): 1–21. doi:10.1147/rd.516.0663. ISSN 0018-8646 .
- ^ “Support for POWER7 processors” (英語). www.ibm.com (2014年4月7日). 2022年4月14日閲覧。
- ^ Boersma, Maarten; Kroner, Michael; Layer, Christophe; Leber, Petra; Muller, Silvia M.; Schelm, Kerstin (2011-07). “The POWER7 Binary Floating-Point Unit”. 2011 IEEE 20th Symposium on Computer Arithmetic: 87–91. doi:10.1109/ARITH.2011.21 .
- ^ servethehome (2019年8月19日). “IBM Power9 Advanced IO at Hot Chips 31” (英語). ServeTheHome. 2022年4月14日閲覧。
- ^ Rao, Rahul M.; Gonzalez, Christopher; Fluhr, Eric; Mathews, Abraham; Bianchi, Andrew; Dreps, Daniel; Wolpert, David; Lai, Eric et al. (2022-02). “POWER10™: A 16-Core SMT8 Server Processor With 2TB/s Off-Chip Bandwidth in 7nm Technology”. 2022 IEEE International Solid- State Circuits Conference (ISSCC) 65: 48–50. doi:10.1109/ISSCC42614.2022.9731594 .
- ^ “Introducing Zaius, Google and Rackspace’s open server running IBM POWER9” (英語). Google Cloud Blog. 2021年3月13日閲覧。
- ^ a b c 現在はPower Architecture版の対応中止
- ^ a b c オペレーティングシステムが開発中止
外部リンク
[編集]- 27 years of IBM RISC
- POWER to the people – A history of chipmaking at IBM
- Power Architecture Primer
- PowerPC transition to Power Architecture Guidelines
- Power.org
- IBM's Power Architecture site
- Freescale's Power Architecture site
- AMCC's PowerPC site
- Mercury's Cell BE site
- Tundra's homepage
- P.A. Semi's homepage
- Culturecom's V-Dragon site
- Genesi's homepage
- Linux/PPC homepage