黒色矮星

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Star Life Cycle Chart.jpg

黒色矮星[1](こくしょくわいせい、英語: black dwarf[1])とは、白色矮星が冷えて電磁波による観測が不可能となった天体のことである。仮説上の天体であり、実際の存在は確認されていない。質量太陽の8倍程度以下の恒星が最終的に行き着く先として想定されている。白色矮星が冷えて黒色矮星になるために必要な時間は、宇宙年齢よりも長いと考えられていることから、現在の宇宙には存在しないだろうと考えられている。また、最も低温な白色矮星の温度が宇宙の年齢の観測的な上限の一つとなる[2]

黒色矮星という名前は、およそ0.08太陽質量を下回り、水素核融合を維持することが出来ない軽い天体に対して用いられたこともある[3][4]。現在ではこれらの天体は一般に、1970年代に付けられた名称である褐色矮星と呼ばれる[5][6]

概要[編集]

質量が太陽の8倍程度以下の恒星は最終的に赤色巨星に進化した後、外層部のガスを放出して白色矮星となる。白色矮星はもはや核融合を起こさないため熱源が無く、放射によってエネルギーを失い冷えていく一方である[2]。こうして徐々に温度が低下して放射量も減少していき、最終的に電磁波を使って直接観測することが不可能になった天体を黒色矮星と言う[7][8]

黒色矮星が存在したとしても、定義により放射をほとんど行わないため、可視光を含めた電磁波によって黒色矮星を捉えることは困難である。実際に観測する方法としては、褐色矮星と同じように重力の影響を介した検出が考えられている[9]。黒色矮星が観測可能な恒星と連星系を構成していれば、恒星の固有運動への影響から存在を知ることができる。単独の黒色矮星であっても、背景にある天体に及ぼす重力レンズ効果を利用して検出できる可能性がある。

形成[編集]

白色矮星は放射によって冷却し、次第に温度は低下して放射量も減少していく。そのため低温な白色矮星ほど年老いた天体である。2012年にはアリゾナ州MDM天文台英語版の 2.4 m 望遠鏡を用いて、表面温度が 3900 K (スペクトル分類での M0 の温度に相当する) を下回るほどに冷却した様々な白色矮星が発見されている[10]。これらの白色矮星の年齢は110億から120億歳だと推定されている[10]

天体の遠い将来の進化は、ダークマターの性質や陽子崩壊の可能性とその割合などのあまり理解が進んでいない物理的な問題に依存するため、白色矮星が黒色矮星の状態になるためにどれほどの時間が必要かは詳しくは分かっていない[11]ジョン・D・バロウフランク・ティプラーは、白色矮星が 5 K にまで冷えるのには 1015 年が必要だと推定している[12]。しかし、もしWIMP (冷たい暗黒物質の候補である仮説上の重い粒子) が存在した場合、これらの粒子との相互作用によって天体が温められ、5 K を下回るにはおよそ 1025 年の時間を要すると考えられている[11]。もし陽子が安定ではない場合、白色矮星は陽子崩壊によって解放されるエネルギーによっても温められうる。Fred C. Adams と Gregory Laughlin による推定では、仮説上の陽子の寿命を 1037 年とすると、太陽と同じ質量の年老いた白色矮星の有効温度はおよそ 0.06 K になるとされている[11]。これは低温ではあるが、1037 年後の宇宙マイクロ波背景放射の温度よりも高いと考えられる[11]

太陽の将来[編集]

太陽がおよそ80億年後にでのヘリウム核融合を終えると、外層を惑星状星雲として放出して白色矮星となる。その後数兆年以上の時間をかけ、徐々に光を放出しなくなる。この状態では肉眼で太陽を見ることは出来ず、重力的な影響が明白であっても光学的に確認することができなくなる。太陽が黒色矮星の状態にまで十分冷えるには 1015 年 (1000兆年) 程度の時間が必要と考えられるが[12]、上記の様に WIMP との相互作用などの影響によってさらに長い時間が必要となる可能性もある[11]

出典[編集]

  1. ^ a b 『天文小辞典』地人書館、初版第1刷、113頁。ISBN 4-8052-0464-8
  2. ^ a b Heger, A.; Fryer, C. L.; Woosley, S. E.; Langer, N.; Hartmann, D. H. (2003). “How Massive Single Stars End Their Life”. Astrophysical Journal 591 (1): 288–300. arXiv:astro-ph/0212469. Bibcode2003ApJ...591..288H. doi:10.1086/375341. 
  3. ^ R. F. Jameson; M. R. Sherrington; A. R. Giles (1983-10). “A failed search for black dwarfs as companions to nearby stars”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 205: 39–41. Bibcode1983MNRAS.205P..39J. doi:10.1093/mnras/205.1.39P. 
  4. ^ Kumar, Shiv S. (1962). “Study of Degeneracy in Very Light Stars”. Astronomical Journal 67: 579. Bibcode1962AJ.....67S.579K. doi:10.1086/108658. 
  5. ^ brown dwarf”. 2019年2月20日閲覧。
  6. ^ Tarter, Jill (2014). “Brown Is Not a Color: Introduction of the Term 'Brown Dwarf'”. In Joergens, Viki. 50 Years of Brown Dwarfs – From Prediction to Discovery to Forefront of Research. Astrophysics and Space Science Library. 401. Springer. pp. 19–24. doi:10.1007/978-3-319-01162-2_3. ISBN 978-3-319-01162-2. https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-319-01162-2_3. 
  7. ^ Johnson, Jennifer. “Extreme Stars: White Dwarfs & Neutron Stars (pdf)”. Ohio State University. 2007年5月3日閲覧。
  8. ^ Richmond, Michael. “Late stages of evolution for low-mass stars”. Rochester Institute of Technology. 2006年8月4日閲覧。
  9. ^ Charles Alcock; Robyn A. Allsman; David Alves; Tim S. Axelrod; Andrew C. Becker; David Bennett; Kem H. Cook; Andrew J. Drake et al. (1999). “Baryonic Dark Matter: The Results from Microlensing Surveys”. In the Third Stromlo Symposium: The Galactic Halo 165: 362. Bibcode1999ASPC..165..362A. 
  10. ^ a b 12-Billion-Year-Old White-Dwarf Stars Only 100 Light-Years Away”. Space Daily (2012年4月16日). 2019年2月20日閲覧。
  11. ^ a b c d e Fred C. Adams & Gregory Laughlin (1997-04). “A Dying Universe: The Long Term Fate and Evolution of Astrophysical Objects”. Reviews of Modern Physics 69 (2): 337–372. arXiv:astro-ph/9701131. Bibcode1997RvMP...69..337A. doi:10.1103/RevModPhys.69.337. http://xxx.lanl.gov/abs/astro-ph/9701131v1. 
  12. ^ a b Barrow, John D.; Tipler, Frank J. (1988). The Anthropic Cosmological Principle. Oxford University Press. ISBN 978-0-19-282147-8. LCCN 87-28148. 

関連項目[編集]