電子工作

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電子工作(でんしこうさく)とは、大量生産を目的としない電子機器の設計や製作のことである。趣味や小規模の実験・試作を目的として行われる。本項では趣味としての電子工作について述べる。

概要[編集]

かつてはラジオ音響機器の製作に代表されるようなアナログ回路が主流であったが、現在ではデジタル回路を用いたコンピュータメカトロニクスなど多様な対象分野がある。自由研究技術家庭の実技として行われることも多い。研究者・技術者の中には、子供の頃から電子工作を趣味として行ってきた者もおり、電子工作を通じて養われたセンスが業務に役立つこともある[1]

Arduinoの様な安価で簡便なプラットフォームを手芸と組み合わせるなど、電子工作と芸術分野の融合が増えてきている。日本の各地で様々なイベントが開催されているほか[2]、子どもを対象とした電子工作キットの製作教室などが多く開催されている[3][4]

一方で、戦後から1970年代までに発刊されていた電子技術やラジオ関係の雑誌が、1990年代以降ほとんど姿を消している。「模型とラジオ(科学教材社)」や「ラジオの製作(電波新聞社)」などのように廃刊したり、現在オーディオ雑誌となっている「無線と実験」などのように路線変更を行った。

従来は男性向けの趣味とみられることが多かったが、女性向けのイベントも開催されている[5][6][7]。ただし、パソコンプラモデルなど、比較的層が近い趣味で男性向け趣味とみられていたものに比較すると、女性のホビイストの割合が少ない。

形態[編集]

初心者の場合には、組み立てキット(必要な部品一式と説明書をまとめた製品)を利用するか、書籍や雑誌から希望する製作記事を選び、それにしたがって製作することが多い。キットや製作記事には部品の一覧表や実体配線図、部品の規格などが詳しく説明されている。プリント基板を製作するためのマスク紙(銅箔面のパターンを印刷したトレーシングペーパー)が付属されていることがある。電子部品の専門店によっては「初級者向きキット」と題したキット類も販売されている[8]

初心者向け電子工作の定番として、次のようなものがある。

特にアナログ回路では、簡単な回路でそれほどの高性能が必要とされない場合、アマチュアレベルにおける基本的な設計・製作技術は現在までの30年にわたり大きな変化はほとんどない。そのため、古い文献を参考にした場合で同型の部品が見つからなくても、互換性のあるものや代替品があればそのまま製作できることが多い。

製作技術としては、一般にデジタル回路よりもアナログ回路の方が難しいとされるので、デジタル回路の製作を目的とする場合でも、アナログ回路での経験を積んでおくのが良いと言われている。[誰によって?]

技術的な特徴[編集]

工業的な電子機器の製作と比較して、小規模な回路や1台や2台しか作らないような回路では、プリント基板ではなく穴あき基板ユニバーサル基板)を用いて配線することが多い。これはあらかじめ多数の穴を格子状に開け、部品の形状に合わせて銅箔を貼り付けたベークライトガラスエポキシなどの板である。これに部品をはんだ付けすることにより、回路を形成する。穴あき基板の他、ラグ板なども使われる。

外装は、配線した基板等を箱型のシャーシに収め、穴を開けてスイッチ可変抵抗器などの機構部品を取り付ける形態が多い。電子工作用のシャーシとして、アクリル樹脂スチロール樹脂ポリカーボネートアルミなどでできた各種の製品がある。(100円ショップ等で売っている密閉容器等もケースとして流用可能。)

近年ではPICAVRのようなマイコンRaspberry Piのようなシングルボードコンピュータを用いたソフトウェア制御による電子工作も増えている。これらのマイコンにはタイマーADコンバータシリアル通信PWMといった、従来は個別の部品で構成していた機能がワンチップに収められている。一方で、集積回路の発達で電子機器のブラックボックス化が進んでしまい、動作原理が理解しにくくなっていることも指摘されている。

自分でパーツを集めて電子工作を行い製作させたとしても、それと同等の物を購入した方が安く、高性能な物を得られる場合も多い。

部品の調達[編集]

電子工作に用いる部品を入手するには、大きく分けて部品単体で購入する方法と、電気製品などの分解・解体し入手する方法がある。一方で、不要となったが資源回収として受け付けられない電子部品などの処分方法も問題となっている。

部品単体の調達[編集]

電子部品専門店では新品やジャンク品が店頭で販売されている。秋葉原などの大きな電気街においては、電子部品の需要が減ったことから、専門店の閉店・廃業が相次いでいる。しかし、パソコンのパーツを扱う専門店が増えており、電子工作用の部品も扱う形で、地方都市を中心に新規に出店していることがある。電子部品は同じ規格の製品でも店によって価格が異なる。

Digi-Keyなどのインターネットによる通信販売を利用することで、最新で高性能な部品が入手しやすくなったと評価する声もある[9]。電子工学の専門誌には、通信販売の広告として非常に細かい字で書かれた部品リストが掲載されている[10]

仲間同士、またはインターネットオークション、雑誌の仲介欄などを利用した譲渡・売買で入手する場合もある。

電子部品は大量に買うと単価が非常に安くなることがある。メーカーは採算が合わない製品を直ちに製造中止する傾向があることから、アマチュアには入手が難しくなっている電子部品も多い。電子機器の高集積化に伴い表面実装が一般となり、従来のようなリード線のある電子部品が減少しつつある。特に、新しい半導体では表面実装用しか生産されないことが多い。表面実装用の部品は非常に小型で半田付けに高等な技術が必要とされ、電子工作で一般に用いられるユニバーサル基板も利用できないため、ハードルの高いものとなっている。

既存製品の分解による調達[編集]

不要あるいは動作しない電気製品などの分解・解体し入手することもある。ジャンク品を入手し部品を取り出す方法などがある。

電子機器を拾い集めて部品を取り出す行為も挙げられるが、近年は粗大ゴミの収集が有料化されている地域が多いため難しくなっている。

製作の方法[編集]

ブレッドボードでバイナリ・カウンタを組んだ例
空中配線されたTRFラジオ

一般的な方法として、基板(ユニバーサル基板やプリント基板など)に電子部品を差し込み、裏面ではんだ付けをして通電させて製作する方法がある。もっとも壊れにくいとされている。

エッチングしていない全面銅箔の基板(生基板またはプリント板と呼ばれる)に直接はんだ付けして製作することもある。この方法は特に高周波回路を製作するときによく使われる。アース部分が広くなるのでグラウンドインピーダンスが下がり、高周波回路を製作するときには好都合であるが、比較的小型の部品を使わなければならず、銅箔が広いため、はんだ付けするとき熱が逃げ易く技術が必要になる。

ブレッドボードを使って電子部品を穴に挿して配線する方法もある。はんだ付けが必要なく思い立ったらすぐに実行できるメリットがある。おもに電子回路の試作や動作テストに使用されるが、まれにボードをそのままケースに入れて完成品とする場合もある。高周波回路には不適といわれているが、10MHz前後までは配線の工夫次第で作動させることができるとの検証結果もある[11]。また、チップ部品が使えない。

ラグ板を使ってラグに電子部品を接続して配線したり、部品のリード線の硬さを利用し空中配線する手もある。衝撃などにも弱く、実験のための仮組みに用いられる程度である。電子部品一つ一つに導線をはんだ付けし、部品同士を通電させて製作する。空中配線とも呼ばれる。この方法を使用すると嵩張ってしまうことがあるが、放熱の関係上、こちらが一番有利になることもある。

脚注・出典[編集]

  1. ^ 「教えて先輩! ~会社ってどんなところ!?~」トラ技Jr 2012 3・4(トランジスタ技術 2012年3月号 別冊付録)、CQ出版、2012年3月1日、p43。
  2. ^ 日常生活をも変える「電子工作」はここまで進化したっ! Device Plus(ローム) 2014年5月28日
  3. ^ 2014年8月8日開催 みんなでチャレンジ! 電子工作教室村田製作所
  4. ^ イベント情報 土日講座「簡単でおもしろい電子回路入門」千葉市科学館
  5. ^ 電子工作女子のお茶会 2012 エレキジャック・フォーラム 2012年4月
  6. ^ IT×ものづくり教室「Qremo」、女子限定の電子工作ワークショップを9/23(火・祝)開催 LITALICO 2014年9月17日
  7. ^ 電子工作からはじめよう! 大学が取り組む理系ガールの今 fabcross(メイテック) 2014年10月6日
  8. ^ 組み立てキット-初級者向きキット 秋月電子通商
  9. ^ トランジスタ技術 2011年10月、CQ出版、2011年10月1日、p61
  10. ^ 例えば、トランジスタ技術CQ出版)に広告を掲載している秋月電子通商は、自社のウェブサイトでもPDFで公開している。トラギPDF広告ダウンロード(トランジスタ技術掲載広告)
  11. ^ 『エレキジャック』vol.1

関連項目[編集]

工具
はんだごて - ニブラ#ハンドニブラ - シャーシパンチ
計測器
回路計 - オシロスコープ - SWR計 - ディップメータ - アンテナ・アナライザ